田淵と甲斐と清水
「ねぇ楓ちゃん!最近、日向君と一緒にいる事多くない?」
田淵が興味津々といった表情で訊いてきた。
「そうかしら?」
立花はとぼけてみせる。
「そうだよ!何か二人でコソコソ話してる」
「・・・もしかして二人は・・・」
「つ、付き合ってるの!?」
田淵が言った後に甲斐が静かに、そして清水が恥ずかしそうに顔を赤らめながら言ってきた。
「そんなことないわ」
三人とは対照的に特に表情を変えることなく淡々と立花は言った。
「隠さなくてもいいじゃない」
「別に隠してるわけじゃ・・・」
頬をぷく~と膨らませ、顔を近づけてる田淵から避けるように体を逸らしながら立花は言った。
「でも・・日向君って悪くないと思う・・・」
「そう~?日向君に楓は勿体ないわ!楓にはもっとふさわしい人がいるわ!」
甲斐は静かに太陽を肯定して、清水は激しく太陽を否定した。
三人それぞれが別のことを言う三人。性格もばらばらで考えもばらばらの三人。そこにさらに立花を加えた四人がよく仲良くできていると思う。
「じゃあ、付き合ってないとして、一体何を話してるの?」
「まぁ、簡単に言うと二人の共通に話題について」
「・・・共通の話題?」
「それって何なの!?」
この三人の特徴として毎回、最初は田淵から話し出して、その後に甲斐、清水と続いていく。
特に皆で話して合わせてるわけではなく、それぞれが話そうとすると自然とこの順番で話すようになっていた。
ちなみに立花はそう言うのは気にせず話している。
「何って・・・ドッペルゲンガーについて」
立花はあえてあっさりとドッペルゲンガーというワードを出した。
変にはぐらかすよりも堂々と口にすることによって、秘密の会話からただオカルト好きの会話を装ったのだ。
「ドッペルゲンガー?」
「・・・って、まさか・・・」
「楓もあのニュースを!?」
三人はドッペルゲンガーに心当たりがあるのか、立花が予想していた反応とは正反対の反応をしてきた。
「え?ニュース?」
驚いたように目を見開いて立花は訊いた。
「ニュースでやってたんだよ」
「・・・ドッペルゲンガーが・・・」
「大量に出現してるって!」
想像もしてなかった情報に立花は少しの間何の反応も出来ずに固まってしまった。
「え?どういうこと?」
「ん?楓もニュースを見たんじゃないの?」
「・・・最近、ドッペルゲンガーが・・・」
「たっくさん目撃されてるって!」
最後の清水が新聞を立花の目の前に出して言った。
「ん?なになに・・・『最近、SNS内で自分のそっくりさん、いわゆるドッペルゲンガーが出現したという書き込みが多くなっている。』?」
その新聞の記事を立花は読み上げた。
「SNSでの書き込みが増えたってだけ?ただの冗談じゃないの?」
立花は疑うように質問した。
SNSではよくあることだ。
例えば、テレビでやってる映画の決め台詞をテレビと同時に書き込もう。だったり、好きな芸能人やアニメのキャラの誕生日を祝おう。などの企画でSNS内が同じような書き込みで埋め尽くされるような事はよく起きている。
なので、立花が冗談だと思うのは当然である。
「まぁ、最近ニュースになるような事件があった訳じゃないし、ネタが無いから無理やりねじ込んだ可能性もあるけど」
「・・・それでも一応取り上げられてるわけだし・・・」
「本当の可能性もあるかもね!」
「まぁ、そうかもしれないわね」
たしかに何の根拠もなくこんな記事を書くことはないだろう。
それがエンターテインメント性を兼ね備えた夕方のニュースならまだしも、このお堅い新聞では話は別だ。
「たしかに興味がないと言ったら嘘になるわね、この記事は」
もう一度、記事に目を通しながら立花は言った。
「でしょ!?ドッペルゲンガーって自分そっくりなんでしょ?一回は会ってみたいと思ってたんだよね~」
「・・・でも、もし会っちゃったら・・・」
「死ぬんだよね・・・」
好奇心旺盛な田淵は何も考えずただ欲望のまま言っているが、他の二人は随分現実的で冷静に言った。
本当にドッペルゲンガーに会い、実際はどのようなことが起こるか知っている立花にはそんな三人の掛け合いはとても平和に感じた。




