憧れの人
「日向君」
立花が去って、すぐに声をかけてきたのは、キッチリと整えられた髪にメガネという特徴を持つ、優等生女子の五十嵐夏帆だった。
「ん?どうした?」
「最近、日向君って立花さんと仲良さそうよね?」
「そ、そうかな・・・」
「そうでしょ?ここ2日くらい一緒にいるのよく見るわ」
「・・・そうかもな」
なぜかイライラした様子の五十嵐に少し恐怖を感じて太陽は答えた。
あれ?俺は尋問を受けてるのかな?
「二人はそういう関係なの?」
「え?」
「だから・・・付き合ってるの?」
少し顔を赤らめて五十嵐は言った。
「は?いやいや!そんなことはない!」
「じゃあ、なんで仲が良いの?」
「別に仲が良いわけじゃないぞ・・・今、一緒にいることが多いのは・・・あれだ・・・共通の趣味というか、話が合うんだよ」
さすがにドッペルゲンガーについて話すわけにもいかず適当に理由を言った。
「ってか、何をさっきからイライラしてるんだ?」
五十嵐の様子が気になって太陽は訊いた。
「腹が立ってるのよ・・・」
顔を俯かせ、拳を握りしめた五十嵐は声を詰まらせながら言った。
「どうした?」
「私は今まで、ずっと勉強を頑張ってきて、自慢じゃないけど良い成績、結果を出してきた・・・でも、立花楓は何もしないで才能だけであっさり私を抜いてしまった・・・」
「・・・そういうことか」
五十嵐のイライラは悔しさから来ていたのだ。
「でも・・・」
「でもくよくよしたってしょうがないわよね!また頑張って今度こそ勝つ!」
太陽が励まそうとした途端、五十嵐は気合を入れたように言った。
「あ、あれ?」
「ん?なんか言おうとした?」
「い、いや、なんでもない。元気になったようで何よりだ・・・」
勝手に人のところに来て、勝手に悩み、そして勝手に自己完結した五十嵐に対して引きつった笑みを浮かべて太陽は言った。
「なんか日向君に当たったみたいになっちゃってごめんなさい」
「あ、ああ、別に気にしてないが・・・頑張れよ、勉強。俺が言うのもなんだけど」
優しく微笑んで太陽は言った。
「うん、ありがとうね」
そう言って、五十嵐は自分の席へ帰って行った。
今のように、気持ちの切り替えや開き直りが出来るから、五十嵐は今まで継続して頑張ってこられたんだろう。
嵐のように来て、去って行った五十嵐に太陽はそう言う印象を持った。
太陽の中の憧れの人の中に立花に次いで五十嵐が入った瞬間だった。




