考えられないわ
『君たちは特別な存在になった。特別な人間には特別な運命を・・・』
どこからか声が聞こえる。
以前にも聞いたことがある声だ。声の正体や言っている事の意味は何一つ分からない。
「これは夢なのか?」
その頭に響く声で目覚めた太陽は頭を押さえて呟いた。
「考えられないわ・・・」
学校に着いたら突然、立花に怒りにも呆れにも聞こえる言葉を浴びせられた。
「何だ・・・突然」
「これよこれ!」
立花は携帯の画面を見せてきた。
そこには『ドッペルゲンガーに遭遇した』という太陽からのメッセージがあった。
「・・・ああ、それか」
「それか・・・じゃないわ!昨日注意した矢先に・・」
ハァとため息をついた立花は相当呆れてるみたいだ。
「いや・・・すまないとは思ってる・・・だが、あれは回避できないぞ」
「どういうこと?」
太陽はドッペルゲンガーに遭遇した経緯を話した。
「なるほど・・・玄関開けたら居たと」
「そういう事だ」
「確かにそのパターンは考えてなかった・・・私も甘かったかもしれない」
悔しそうに立花は爪を噛んでいる。チッという舌打ちも聞こえた。
「ああ、俺もやられてから気付いたが、家の中でも妹がリビングに籠っていれば、電気のついていない廊下は絶好の場所なわけだ」
「月ちゃんは何て言ってる?」
「ああ、月もドッペルゲンガーと俺を見分けられてなかった。リビングに来た俺を見て、『お兄ちゃんさっき家にいたよね?どっか行ってたの?』って言われたよ」
苦笑いを浮かべて太陽は言った。
「まぁ、それならしょうがないわね・・・」
悔しそうに唇を噛みながら立花は言った。
「ああ、だからと言って悔しがってる場合じゃない。また新しい対策をしないと」
対策と言うのはもちろん、太陽が大けがする未来を変えるためのものだ。
「そうね・・・ところで日向君の能力は何なの?」
「ああ、それは・・・」
立花の質問に太陽が答えようとしたとき。
「楓ちゃ~ん」
教室の奥から立花を呼ぶ声が聞こえた。
そこにはいつも立花と仲良く遊んでいる女生徒三人がいた。手を振っている元気いっぱいのショートカットの女子が田淵恵。その横にいる大人しそうな垂れ目の女子が甲斐京子。そして、大きな髪飾りをして高校生にしては幼い容姿の女子が清水珠枝である。
「ごめんなさい、あっちに行かないと」
「ああ、俺の能力のことは後で長谷川も交えて話そう」
「ええ、じゃあまた」
そう言って、立花は行った。




