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雑兵勇者は魔族屋敷に行く

初投稿です。拙著で申し訳ないのですが、少しでも楽しんでいただければ幸いです。 1話ではないのですが、2話以降になると腐向けとなる可能性もございますので、ご了承ください。






「疲れた・・・」

僕は、重たいダンボール箱を持って、赤いカーペットが敷かれた階段を歩いていた。

この場所は、良く言ってアンティークな洋館、悪く言って古びた洋式お化け屋敷。


・・・まぁ、実際お化け屋敷なんだが。



で、僕はそのお化け屋敷で働く、由緒正しい家柄の勇者なのだ。







経緯を説明しよう。


まず、その前に簡単な自己紹介をしよう。

僕の名前は、ヴィクティディアル=シセルス。通称シセル。

ある街を侵略していた魔族の一派に壊滅的な被害を与え、街を救った英雄とされる、

ヴィクティディアル=カルメリーという男を祖父に持ち、

僕の兄と弟は現役で魔族と戦っている勇者という、

英雄という英雄を生み出すために生まれたような一族に生まれた男だ。


実際今日も、僕の兄と弟はそれぞれ別件で魔族退治に出かけている。

・・・僕は、とある事情で家にいるのだが。


そして、元凶とも言えるメイドがやってくるのだ。

「シセルス様、お手紙が届いております。」と言って。

僕は、その後の展開を知る訳もなく、「ありがとうね。」と言い、手紙を受け取る。


そして、メイドが去ったあと、手紙を観察する。

・・・?疑問に思うことがあった。この手紙には宛名がない。いや、ただ・・・

「ヴィクティディアル家の方へ」とだけ書かれていた。

まぁ、メイドとしても兄さんに渡したかったところだろうが、出かけていて、

その次に弟もおらず、父も出張、仕方なく僕に回ってきたのであろう。

まぁ、何もことがあるわけではないだろう。軽い気持ちで封を切る。


・・・・・・・・・・その瞬間、僕の姿は部屋になくなった。





「ん・・・・・・んん・・・・」

僕は目を覚ます。いつの間にか寝てしまっていたようだ。

確か僕は・・・さっき手紙を開いて・・・・・

と、僕はあることに気づいた。

僕は見たこともない館の一室にいたのだ。

「どこだよ・・・ここ・・・・?」

後々、僕の部屋になるとも知らないこの時の僕はかなり焦っていた。

そして、ドアがコンコン・・・と音を立てた。

「失礼します。よろしいでしょうか。」礼儀正しい女性の声が聞こえた。

僕は、開くドアを眺め、その声の主を見た。

目を疑った。僕は彼女の顔を見ることができなかった。

なぜなら、彼女に顔というものがなかったからだ。

そう。首から上がすっぽりないのだ。デュラハンってやつだろうか?

そのデュラハンの女性はメイド服に身を包み、いかにも秀麗な動きをしている。

彼女は何事もないように話を続ける。

「・・・・・ヴィクティディアル家の方・・・・で、よろしいのですか?」

彼女は顔を認識することはできないのだが、口調からして困惑、疑惑、焦りが感じられた。

僕は静かに頷くと、彼女はまた言葉を紡いだ。

「すみませんが、お名前を聞いてもよろしいですか?」

僕はヴィクティディアル家の者だが、正直全く知られていない。仕方がないことなのだ。

「僕はヴィクティディアル=シセルス。通称シセル。正真正銘、ヴィクティディアル家の人間だよ。」

と、軽く自己紹介をすると、彼女は考えるような仕草をして、

「しせるす・・・しせる・・・シセルス・・・・?・・・・本当にヴィクティディアル・・・・・の者、ですか?」

「・・・はい。」なんか敬語になってしまった。

「その割には力もほぼなく・・・名も知られていない・・・・・偽物?

・・・すみません、シセルスさん。一つ、よろしいですか?」

彼女は静かに言った。

「試させて、もらいます。」



そう言ったかと思うと、彼女はいきなり腰から剣を引き抜き、僕に飛びかかってきた。

どうやら、本当に殺す気は薄そうだが、当たったら大怪我になるであろう速さで切りつけてくる。

「・・・ッ」

僕もギリギリで剣を交わす。ギリギリすぎる。避けるので精一杯だ。

彼女の攻撃はとても的確かつ鋭く、僕が倒れるのもそう遠くないだろうな、と思った。

その時、彼女が声を出した。

「本当にあなた、ヴィクティディアルですか?40年前・・・私たちの一族を壊滅させた・・・・。」

その言葉で気付いた。彼女は魔族だ。昔祖父が攻撃した・・・・あの魔族だ・・・・・!

これはまずい。復讐だろうか。

復讐のため、家に魔法をかけた手紙を送ったのであろう。

でも、下手に刺激したらさらにまずい。

「・・・ああ。僕はヴィクティディアルだ。」

本当に僕はヴィクティディアルだ・・・・でも、僕にはこの事実があるんだ。

「でも、僕は影の勇者なんだよ。」

彼女の動きがぴたりと止まり、僕の話を聞いた。

「影・・・・の・・勇者・・・?」

彼女も少し興味を持ったようだ。

そこに僕は、説明を重ねていく。

「ヴィクティディアル家はね、光、影、光、影って、交互に生まれてくんだよ。」

「・・・」彼女も、静かに僕の話に耳を傾けていた。

「光の勇者はね、僕の祖父・・・ヴィクティディアル=カルメリーとか・・・

生まれつき、圧倒的な力を持つ、英雄という運命が決まったような英雄だよ。」

「だけど、僕は違うんだ。」

僕は、幼い時この重い事実を知った。

「僕や、僕の父のような、影の勇者は光に埋もれるだけ。ヴィクティディアル家特有のスペシャルは

持っているけど、力は平凡な人間に毛が生えたようなもの。英雄にはなれない。」

そう、ヴィクティディアル家の凡人。僕や、僕の父は全く世間に知られていない。

彼女はなぜかそれを聞いても食い下がらなかった。

「・・・スペシャルは持っているのですよね?」

「・・・うん。」

ここで、もう一つ説明しておこうと思う。スペシャル、とは一部の者が持つ特殊能力のことだ。

一人一人が個々の能力を持つ。ちなみに、魔族は大抵の者がスペシャルを持つ。

そして、人間では、ヴィクティディアル家と、他のエリート一族ら、

または一般のなかに生まれた天才児が持つ。

まぁ、一応ヴィクティディアルである僕も持ってはいるらしいのだが・・・・・・。

「どのようなスペシャルなんですか・・・・?」

ここで濁したら彼女に殺されそうだ。少し考えて、こう言った。

・・・・・あんまり言いたくないんだけど。

「実は、まだわかってないんだ。」

「・・・・は?」

彼女の真面目で張り詰めた感じが一瞬で吹き飛んだ。

「検査で、僕にスペシャルがあることはわかってるんだけど・・・これといってわかってないんだ。」

「・・・それはまた・・。」彼女はとても困った顔をしていた。

そして、少し殺気が収まったところで、ここに来た時からの疑問をぶつけてみることにした。

「・・・で、僕をここに呼んだ目的は?」

「ああ、はい。そりゃ気になりま・・・」と、彼女が喋りかけた時、横から声が聞こえた。

「いいよ、ヴァニア。そこからは私が話すよ。」

そこには、天使のような羽が生えた男がいた。




「さて、どこから話そうか。」

男は、ふふっ、と笑った。

「まず、名前から・・・聞かせてもらえないですか?」

「えっと、ヴィクティディアル君、それは聞いた人から話すものじゃないかな?」

男はまた笑う。

「・・・そうですね。僕はヴィクティディアル=シセルス。通称シセル。え・・・っと、僕は影の・・・」

「いや、名前だけで構わないよ。」

男は静かに止めた。

「そうですか。」

「まぁ、ヴァニスとの話も聞いていたことだしね。」

「そうでいらっしゃったのですか。シーデル様は悪趣味でいらっしゃいますね。」

ああ、例のデュラハンメイドさんはカタルニシア=ヴァニアというらしい。

「まぁ、シセル君・・・・でいいかい?シセル君の話も聞いたし、僕も自分のことを話すとしよう。」

「僕はデルタシアン=シーデルだ。まぁ、シーデルと呼んでくれたまえよ。」

「あなたは・・・・・・いえ、あなたがたは魔族なんですよね?」

「そうともさ、シセル君。ヴァニアはデュラハン、僕は堕天使だよ。

他にも、この屋敷には魔法使いやサキュバス・・・いろんな魔族が住んでいる。

そして、僕らはノース・シャイニング。北の閃光、と名乗っているんだよ。」

『北の閃光・・・ノース・シャイニング』間違いない。祖父が壊滅させた魔族の一派だ。

きっとこの魔族たちは、『北の閃光』の生き残りだろう。

おそらく、僕をここに呼び寄せた理由は・・・・・復讐、だろう。

ならば、僕は逃げなければならない。僕に力はないのだ。

すぅ・・・と神経を集中させて、どのように逃げればいいのかを考える。

「シセル君。君、勘違いをしてないかい?」

くすくす笑うような声でシーデルさんが声をかけた。

つい驚いてしまい、僕は「は?」と間抜けた声をしてしまった。

「おそらく君は、復讐目的で自分を呼んだのでは?と思っている頃だろうが、それは違う。」

「・・・・じゃあ、なんだっていうんですか・・・?」

それ以外には考えられないじゃないか。

「そうだね。君には話さなければいけないだろう。いいとも。」

「君には、この『北の閃光』を守ってもらいたいんだ。」




「・・・・は?ははははははは・・・・」

僕が?守る?北の閃光を?・・・え?

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ?!」

「え、ちょ、シーデルさんっ?!何言ってるんですか?!

僕は北の閃光をほぼ壊滅に追い込んだヴィクティディアル家の人間ですよ?!そんな僕が・・・」

「そんな君だから守ってもらいたいんだよ、こっちは。」

パニックに陥っている僕に対して、シーデルさんは真剣だった。

「今、北の閃光はピンチなんだ。」

「シセル君、ちょっと聞いてもらえるかな?」

「あ、はい・・・。」

シーデルさんはありがとう。と、微笑むと話し始めた。

「北の閃光は君の祖父、ヴィクティディアル=カルメリーによって壊滅的な被害を受けた。

そして、北の閃光で残ってるのはごくわずかになってしまったんだ。

その為か、北の閃光が持つ、宝物や、財産・・・・それを狙う輩が現れたんだよ。

それは人だったり、他の魔族集団だったり・・・とにかく、ごくわずかな戦力だけで、

相手するのはとても不利だったんだ。だから、僕らは戦力を求めた。

僕らを壊滅させたヴィクティディアルなら・・・・と思ったんだ。

確かに恨みはあったけれど、・・・・・まぁ、あの時はやりすぎたと自分らでも反省してるし。

助けてもらおうと思い、魔法をかけた手紙を送ったんだが・・・・・・」

シーデルさんは苦笑いをした。

「・・・・・・・僕で悪かったですね。」

「いや、よく考えたら君でよかったよ。」

「ヴィクティディアルの勇者が僕らを見たら・・・・・間違いなく滅びるだろうからね。」

確かに。僕は弱いから、冷静におとなしくしているけれども、

兄も弟も間違いなく見たら殲滅させるタイプだ。

そして、殲滅させる力を持つ。

シーデルさんやヴァニアさん、また他の方の力は知らないけれど、

兄弟に勝てるような組織が僕を呼ぶ必要はない。

「・・・・・・・まぁ、弱小組織は大人しく滅びろっていうことか・・・・。」

「・・・・ッ」

なんだろう。とても胸が痛む。僕の一族のせいで困っているのに、僕には何もできないなんて・・・

いや、相手は魔族だ。・・・・魔族だからなんだ?魔族だからといって、僕は見捨てるのか?

困っているのに・・・・・・・・?

「急に呼んでしまって悪かったね。帰ってもいいよ。シセル君。」

シーデルさんはとても辛そうに笑った。

僕は、困っている人を見捨てたくない。僕だって一応勇者なんだ。

たとえそれが、人じゃなくて魔族だったとしても・・・・!

「あの、シーデルさんッ!!僕・・・・」

と言ったところでシーデルさんが笑う。

「まぁ、帰ってもいいんだけど、私、こんな写真を持ってるんだよね?」

シーデルさんはピラっと一枚の写真を取り出した。

それに写ってるのは・・・・・・・・・・僕?

しかも、なんか・・・・・ヴァニアさんが着ているようなメイド服を着ている・・・・・・・僕?

メイド服を着てベッドにごろん、とはしたなく、足も出して寝ている・・・・・・・・僕?

「あれー?なんかこの人シセル君に似てるなー本人だしなー」

は・・・・・・・・・・・?

シーデルさんは僕のことなんか気にせず語る。

「ちゃんとパソコンの方やUSBメモリにも保存してあるんだよなーこの写真ー」

は・・・・・・?は・・・・・?

サーッと顔から血の気が引いていくような感じがする。

そして、まだまだ語りだす。

「僕ってうっかりものだから間違えて全世界にアップロードして広めちゃうかもしれないなー」

極めつけは、シーデルさんがどこから出したのか、何枚もの写真を取り出し、

「あれれー他にも100枚くらいシセル君に似た人がコスプレとか女装してたりする写真があるなー」

「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!」

僕は、心のそこから声を出した。

え?!つかなんでこいつこんな僕の写真持っちゃってるの?!しかもなんでこの僕は全部寝てるの?!

寝てる・・・・?あ、もしかして僕ってこの屋敷来たとき寝てなかったか?まさかその時に・・・・・

「あーでも、ここで戦いつつ働いてくれるって契約してくれるならこれを全部あげちゃおっかなー」

シーデルさんはそんなことをほざきやがった。

「うわぁぁぁ!!!!働くから!戦いますから!!どうかその写真を僕によこせ!!!!」

「よこせ?」

シーデルさんが意地悪く笑う。

「うーーーーあーーーー!!!よこしてください!!!!」

「よこしてください・・・?シーデル様は?」

もう何この悪魔?!

「ああああああああ!!!!!!よこしてくださいシーデル様!働きますからぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「よろしい、シセル君。」

パチン、とシーデルさんが指を鳴らすと、

ぽんっという音が鳴って、煙とともに紙が出てきた。

「ちょっと、ここにサインしてくれないか?」

「ああああああああ!!!!!!もう!!!!!書けばいいんでしょ!!!書けば!!!!!!!」

僕は、受け取った羽ペンでサラサラっとサイン欄に、ヴィクティディアル=シセルスと書いた。

「契約完了だ。」

シーデルさんは満足そうに笑った。いや、僕は不満足なんですけど・・・・・・?

もうやだ・・・・僕は勇者になるつもりだったのに・・・・・・・・・なにこいつ・・・・・・・

「この悪魔ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」

「なんだ、今更。それに私は堕天使だぞ?」

「そうでしたね!!!!!畜生!!!!!」

「シセルスさん。いくらシーデル様がうざくても、敬語は使ってくださいね?」

「ヴァニアさんまで?!」

「ヴァニア、お前、うざいとか思ってたのか・・・・?」

「いえ、たまに思うことはありますが。」








そんなこんなで、僕はむかつく堕天使のお化け屋敷で働くのだ。








ちなみに、あとから聞いた話。

ヴィクティディアル家の人が屋敷に来たら、誰でも構わず、まずは写真を撮って、

脅して北の閃光に入れ込む予定だったらしい。





















ありがとうございました!

え、なにこのへたくそな文、と思う方もいらっしゃるでしょうが、読んでいただいて、とても嬉しいです!2話目も読んでいただけると嬉しいです♪

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