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死んでるなんて信じれない。
死んでるなんてわからない。
だって、目の前に彼女はいるんだよ。
ぼくは心のなかで、つぶやく。
《神さま、彼女をもう一回、生き返らせてください。そして、また一緒に公園で遊ばせてください》
彼女のお母さんもきっと、そう思ったはず。
お母さんの願いがかなったから、一緒に遊べたんだよね?
ぼくは、目をぎゅって閉じて、神さまに何度もお願いした。
ぼくのお願いもきいてください、神さま!
彼女が小さく何かを話した。
だけど、小さすぎて聞こえない。
「ちゃんと神さまにお願いしたから、大丈夫。お母さんと一緒に三人で・・・また、ぼくと遊ぼうよ」
今度はちゃんと彼女の声が聞こえた。
「ううん」
「・・・どうしてそんなこと言うの、いやだった?」
「ううん」
彼女の弱々しい声が響く。
「じゃあ、どうして?」
「・・・神さまはもうお願いを聞いてくれたの。わたしのお願いをちゃんとかなえてくれたんだもん。だから、あなたも自分のためのお願いをして」
彼女は、ぼくに笑いかけると・・・
顔をすーっとぬいぐるみの方に向けた。
と同時に彼女の姿はすーっと消えていった。
そこにはぬいぐるみだけが残っていた。
目をこすってみたけど、彼女はもういなかった。
ぬいぐるみに向かって、ぼくはつぶやいた。
「さよならじゃないよね。また会えるよね」
ぼくは、部屋に入ってベッドにうつぶせになった。
涙でベッドがぬれていく。
涙が止まらなかった。
いままでのことを思い出しながら目を閉じた。
ぼくは、今も彼女に見守られている感じがした。
彼女のお母さんも、どこかで見ている感じがした。
親と一緒にいること、
公園で楽しく遊ぶこと。
それは、あの子のできなかったことだった。
彼女のやりたかったことだった。
彼女はぼくにそれを教えてくれた。
ぼくの全然してこなかったこと。
彼女はそれに気づかせてくれた。
ぼくも彼女のような気持ちになろう。
お父さんお母さんのことを大切にして
公園で楽しく遊べるようになろう。
そうしたら、また彼女が遊びにきてくれるはず。
仲間に入って一緒にまた、楽しく過ごせるはず。
人が死ぬって、ぼくにはまだよくわからない。
ちょっと、どこかに行っただけだよね。
また、どこかで会うって約束したよ。
だって、それが神さまへの
ぼくの自分のためのお願いなんだ。
ぼくは、ぬいぐるみにそう話しかけた。
ぬいぐるみの目にキラキラと何かが光った。
まるで、雪の結晶のようだった。
きっと喜んでるんだよね?
彼女の、嬉し涙だよね?
ぼくは彼女の宝物を抱きしめながら
…眠りについた。




