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次の日、公園に行くと女性の姿はなかった。
ベンチの上には、あのぬいぐるみがあった。
その横に手紙が置いてあった。
(ごめんなさい。ちょっといたずらして、ぬいぐるみを隠したの。きみと遊んでるととても楽しくて・・・でも、いつまでも遊んでるとまた、きみから離れられなくなってしまいそうだった。きみのおかげで笑顔になれたし、もうひとりでも大丈夫。これはわたしとわたしの娘からのプレゼントだよ)
ぬいぐるみを抱きしめると、女性の香りがした。
ぼくはぬいぐるみを抱きかかえて家に戻った。
家に帰るとまだ誰も帰っていない。
ぽつんと家に、ひとり。
いつものことか・・・
また前のぼくに戻っただけ。
ぼくは、椅子の上にぬいぐるみを置いた。
あの女性と娘さんが抱きしめていたぬいぐるみ。
女性の笑顔を思い出す。
知らないはずの娘さんの顔がまた浮かんできた。
公園で見たときと同じ。
いや・・・
今度は違う。
椅子の上に、ちゃんと女の子がいた。
パジャマを着たままの女の子。
彼女がこっちを、振り向く。
「こんにちわ」
女の子が話す。
「は、はじめまして」
うわずった声で応える。
「ずっと、窓から見てたんだよー」
窓から?
そういえば、公園のすぐ横に病院があったはず。
「もしかして、病院から見てたの?」
「うん、いつもひとりだったでしょー? わたしとおんなじだって見てたの」
そうだったんだ。
病気で、ひとりきりで遊べなかったんだ。
彼女はぼくなんかより、ずっと寂しかったはず。
自分が恥ずかしくなって、うつむいてしまった。
「ありがとうねっ」
彼女は笑顔でいった。
「お母さんに、いつも言ってたの。あの公園で遊びたいなーって。あの子と遊びたいなって。その夢がかなったんだもん」
やっぱり、この子も一緒に遊んでた。
あれは、見間違えじゃなかったんだ。
「お母さんと一緒なだけでも、楽しかったけど・・・でも、あなたと一緒に三人で遊べて、もっと楽しかった。だって・・・」
「ん?」
「だって、わたし、あなたのこと好きになってたんだもん」
照れながら話す彼女がとても可愛く見えた。
「ぼ・・・ぼくも」
反射的に言葉がでた。
心臓がドキドキしてる。
「ほんと?」
ぼくは目を少しそらして、こくりとうなずく。
「こんな気持ち、初めてだった。いつも時間が終わるのがさみしくて」
「うん、ずっと続けばいいなぁって、わたしも思ってた」
「ずっと、続くよ!」
ぼくは大きな声でいった。
だけど、彼女は下を向いて黙ったままだった。




