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ぼくは、驚いて思わず「あっ」
声を出してしまった。
すぐに女性がこちらを振り返る。
母親より少し若いくらいだろうか。
怒られると思ったけど
女性は優しい笑顔でうなづいて言った。
「こんにちは」
「こ、こんにちわっ」
「ここに座る?」
女性は隣を指さす。
ぼくは、素直にその横に座った。
けど、何を話したらいいのかわからない。
「ねえ、ぬいぐるみに驚いたんでしょ?」
ぼくは、顔を真っ赤にして
「うん」と返事をした。
「大人がぬいぐるみを抱いてるなんておかしいね」
ほんとはまた、うん、って言いたかった。
でも、それは言わないでじっと黙っていた。
「これね、子供がいつも抱いて眠ってたの」
・・・ってことは女性の娘さんのもの、なんだ。
じゃ、どうして持ってるんだろ?
女性が話を続けた。
「でも、きみくらいのときに病気で死んだんだよ」
死んだ、って言葉を聞いて
とっても悲しい気持ちになった。
気づくと涙が出ていた。
「あらあら、ごめんないさい。泣かないでね」
ぼくの頭をやさしく撫でながら、女性は言った。
「わたしも、しばらく泣いてばかりだったの。信じれなかった。けど、やっぱりもういないんだ」
ぼくは、うなづくことしかできない。
だって、人が死んでいなくなるって気持ちがまだわからないから。
「あんな悲しい思いはもうしたくない、かな。この人形はわたしから消えたりしないでしょう?」
一生懸命、考えてみる。
女性の言ってることは正しいんだと思う。
だけど、その姿は今も寂しそうなまま。
ぬいぐるみと一緒にいても楽しいわけないよ。
ぼくは言った。
「じゃ、これからは、ぼくとここで遊ぼうよ?」
女性の顔が一瞬、驚いた。
「ぼく、友達もいないし、両親も仕事でいつもひとりだから」
すると、女性は微笑みながら、
「ほんとうにいいの? 嬉しいなぁ」
って、言ってくれたんだ。




