選択の代償は、すでに支払われている
すべての選択が、出揃いました。
あとは、その結果が示されるだけです。
どうぞ最後まで、見届けていただければと思います。
謁見の間。
沈黙が、重く沈んでいた。
「……殿下」
王の声だけが、静かに響く。
「選べ」
それ以上の言葉はない。
すでにすべては提示されている。
謝罪か。
破滅か。
王子は、拳を握る。
「……私は」
喉が、乾く。
だが。
「謝罪など、するつもりはありません」
言い切った。
その瞬間。
空気が、完全に凍りついた。
「……理由は」
王の声は変わらない。
「私は、間違っていないからです」
視線を上げる。
「古い契約に縛られるのではなく」
「新しい時代を選ぶ」
「それが、正しい」
その言葉に。
「ほーん」
カグラが、軽く息を吐いた。
「よう言うたな」
肩をすくめる。
「ほなもう、終わりや」
あっさりとした一言。
だが、その意味は重い。
「……エレノア嬢」
王が視線を向ける。
「婚約の再検討に入ります」
即答だった。
迷いは一切ない。
「本件をもって、契約関係の維持は不可能と判断いたします」
静かに、確定させる。
「なっ……!」
王子の顔が歪む。
「ま、待て!」
「選択されたのは、殿下でございます」
淡々と返す。
「その結果に責任を持つのは、当然かと」
逃げ道はない。
すでに閉じている。
「……セレスティア!」
王子が振り返る。
「お前も、そう思うのか!?」
縋るような声。
だが。
「……はい」
聖女は、微笑んだ。
「殿下の選択は、正しいものです」
その言葉で。
すべてが、決まった。
「ですが」
一歩、前に出る。
「この国は、まだ古い価値観に囚われています」
「だからこそ」
「ここで退くべきではありません」
静かに言い切る。
「……は?」
カグラが、素で声を漏らした。
「今それ言う?」
「はい」
聖女は真っ直ぐに答える。
「ここで折れてしまえば、何も変わりません」
「……変わるで」
カグラが笑う。
「国が終わる」
即答だった。
「現に、止まりかけとるやろ」
窓の外を指す。
「それでも進むって?」
「はい」
迷いがない。
「必要な変革ですから」
一瞬。
誰も言葉を発せなかった。
そして。
「……なるほど」
エレノアが、静かに頷く。
「状況は、完全に理解いたしました」
視線を王へ向ける。
「王家としての最終判断を、お願い申し上げます」
それは、委ねではない。
確認だった。
王は、ゆっくりと目を閉じる。
(ここで決める)
迷いは、もうない。
「……殿下」
静かに呼ぶ。
「本日をもって」
一拍。
その言葉が、重く落ちる。
「王位継承権を剥奪する」
完全な沈黙。
「あわせて」
「国外追放とする」
その宣告は。
あまりにも、静かだった。
だが。
すべてを終わらせるには、十分だった。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
これにて、大きな決着はつきました。
次話は最終話となります。
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最後までお付き合いいただければ幸いです。




