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止めたのは金か、動いたのは兵か

ここから、状況は一気に動き出します。


個人の問題だったはずの出来事は、すでに国家規模へ。


少しだけ規模のおかしい“教育”をお楽しみください。

 朝。


 王都は、妙な静けさに包まれていた。


 市場が開かれていない。


 商人たちが、動かない。


「……どういうことだ?」


「西の影響です」


 兵士が低く答える。


「主要取引が、一斉に停止しています」


「は?」


「資金も、物流も止まりました」


 理解が追いつかない。


 そんなことが、本当に可能なのか。


「できとるやん」


 カグラの声だった。


 城壁の上。


 彼女は楽しそうに街を見下ろしている。


「西が本気出したら、こうなるんや」


 王子は言葉を失う。


 その時。


「報告!!」


 兵士が駆け込んでくる。


「王城前に――」


 一瞬、息を呑む。


「西方公爵家の私兵、約三千が展開!」


「……は?」


「整列済み!完全武装!」


 空気が凍る。


「……何を考えている」


「別に?」


 カグラが笑う。


「並んどるだけや」


「威圧か……!」


「ちゃうちゃう」


 手を振る。


「見せとるだけや」


「“どこまでできるか”をな」


 窓の外。


 整然と並ぶ兵の列。


 その異様な光景を、エレノアは静かに見つめていた。


 その隣で。


「なあ、エレノア」


 カグラがくつくつと笑う。


「なんでしょう」


「これ、半分ぐらい“仕返し”やろ?」


 一瞬だけ、沈黙が落ちる。


 エレノアは視線を外さない。


「国家安定のための必要措置です」


「せやな」


 カグラは頷く。


「で、残り半分は?」


 ほんのわずか。


 本当にわずかだけ。


 エレノアの口元が緩んだ。


「……否定はいたしません」


「やろなぁ」


 楽しそうに笑う。


「公の場で恥かかされたんやし」


「これぐらいはなぁ?」


「当然の範囲かと」


 淡々と返す。


 だが、その声音には、わずかな温度があった。


「ええやん」


 カグラは満足げに頷く。


「それぐらいの方がおもろいわ」


 その直後。


「追加報告!!」


「今度は何だ!」


「東方公爵家の兵が、国境付近で展開開始!」


「は……?」


「規模、不明!」


「な、なぜ……」


「そら決まっとるやろ」


 カグラが肩をすくめる。


「いつでも動けるようにや」


 軽い。


 あまりにも軽い。


 だが、その意味は、重すぎた。


 その頃。


 王城内、執務室。


「報告は以上です」


 側近が頭を下げる。


 王は、目を閉じたまま動かない。


「……西は」


「資金、物流ともに完全停止」


「東は」


「軍事的示威行動」


 短い沈黙。


「……揃ったな」


 王が呟く。


「国家が、止まる」


 それは誇張ではなかった。


 すでに、止まり始めている。


「……まだ、宣戦ではない」


「はい」


「だが」


 目を開く。


「時間の問題だ」


 その視線は、鋭かった。


 その時。


 扉が開く。


 エレノアが、静かに入ってくる。


「お呼びでしょうか」


「……これは、そなたの意思か」


「いいえ」


 即答だった。


「“結果”でございます」


 王は息を吐く。


「止められるか」


「可能です」


 あまりにもあっさりと。


「ですが」


 一拍。


「理由が必要でございます」


 視線が交差する。


 その意味は、明白だった。


 責任を取れ。


 そう言っている。


 同時刻。


 王城の一角。


「……すごいですね」


 聖女が呟く。


 窓の外。


 並ぶ兵。


 止まった街。


「ですが」


 微笑む。


「これは、変革の証です」


「……何?」


 王子が振り返る。


「古い力が抵抗しているだけです」


 穏やかに言う。


「正しい未来へ進むためには、乗り越えねばなりません」


 王子は、頷く。


「……そうだ」


 まだ、理解していない。


 自分が何を招いたのか。


 そして。


 それが、どこまで広がるのかを。


ここまでお読みいただきありがとうございます。


ここで、ついに“現実”が動きました。


ただし――これはまだ序章に過ぎません。


次話では、さらに核心へと踏み込んでいきます。


面白いと思っていただけたら、評価やブックマークで応援していただけると嬉しいです。

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