第68話 妖魔の将軍
カイトさんの回転レールガンから妖魔の槍の連射をする。
かなりの威力と速度だったが、妖魔の将軍は持っていた巨大な半月刀で打ち払っていく。巨大な体なのにかなり俊敏だ。
盾を持った巨大な妖魔の後ろには、杖を持った魔術師が展開していた。30人はいるだろうか……その前には重装備をした体格の良い妖魔が立ちはだかっていた。魔術師達を守る感じだな……
ジンパチさんも相手の装備や振る舞いを見て若干焦りを感じているようだった。
「もうすこし丸太槍を作っておけばよかったですね……決め手が……」
「どっちにしろSP切れですから、弾が込められないですよ……」
振り返るとカンコさんが頭を押さえながらフラフラとしている。相当頑張ってくれたからな……
「カタシさんのSPはどうです?」
「あと15%ですね……若干頭が痛いです」
「厳しいですね……ボーラとか投げても切られちゃいそうですものね……」
妖魔の軍団もこちらの弾切れを見抜いたのか、じりじりと一本道をこちらに近づいて距離を詰めてくる。魔法が届くという三十メートルくらいまで近づいてきてからの戦闘が開始されるのだろうか?
こういう合戦は初めてだから……どうなるか読めないな……
妖魔たちが一本道の真ん中までくると、ショウコさんが空中からトウガラシもどき爆弾を投下する。だが、妖魔の魔術師が何やら唱えたあと、薄い何かの力……おそらくエーテルの膜が張られて、煙が膜の内側に侵入をしてかない……弾かれてるのか?
「ああ!! そんなぁ……」
「バリア? 魔法のシールド???」
「ずるいなぁ……」
仲間から落胆の声が上がる。
ただ、エーテルのシールドに入れない巨大妖魔だけが激しきせき込み、大変そうだった。
でかすぎて頭がぽっかりと出ている……そこは狙えるんだな……
俺は巨大妖魔に『自動追尾』で色々なところを『標的』にして妖魔の槍を投げると同時に、『弾力』と『固定』のハイブリッド投擲の準備をする。頭が爆発しそうに痛い……だがやるしかない!
巨大妖魔が『自動追尾』する妖魔の槍を盾で防ぎ、槌で振り払った瞬間を狙う。
「そい……やっと!!」
また感覚が研ぎ澄まされて周りがゆっくりとなる……リリースする場所はここ…………槍から手を放すと、ゆっくりだった感覚が一気に普通に戻る。
ブォォオオオオン!!!! バァアアアン!!!!!
とんでもない速度と爆音を出しながら妖魔の槍が轟音輪立てながら空を引き裂き、大妖魔の胸元を貫通していく。
巨大妖魔はゆっくりと自分の胸を見たあと、膝から崩れ落ちていく。
滅茶苦茶頭が痛い……残りSP……3%???
しまったな……意識が……
妖魔全員が呆然として俺の方を見る中、俺を見ていた妖魔の魔術師が端から順にバタバタと倒れていく。いつの間にかナオエさんが後ろに移動して『伸びる』槍で突き刺していた様だ。
唖然とする重装備の妖魔にも岩石の塊が降り注ぐ。アヤノさんがかなり近いところから投擲を開始した様だった。スキルレベルがあがったのか、投げる精度が高いな……リンカさんもいつの間にか彼女の隣にいて攻撃を弾き飛ばす準備をしていた。
妖魔の将軍は剣を振りかざし号令をかけようとしていたが、振り返ると、ほとんどの仲間が打ち倒されるのを見て状況を把握し、剣と盾を構えてじりじりと後退を始める。
「よっし!! いくぞ!!」
「おう!!!」
「黄金の鷲」の前衛5人とリキさんが一本道を駆け抜ける。妖魔の将軍を守るように重装備の妖魔が間に入るが、リキさんの強烈な一撃で簡単に吹き飛ばして叩き潰していく。
カエデさんもかなりの速度で敵を翻弄し、槍の一突きで鎧ごと突き刺し簡単に絶命させる。何かのスキルっぽいな……
「!#O"#"#"!!!!」
妖魔の将軍が何やら絶叫をすると、彼の周りに赤黒いオーラの様なものが集中し始める。
凄く『嫌な感じ』がする。
「なんだこれは!?」
「パワーアップじゃないのか!?」
「それ止めろ!! 強くなる!!」
「今がチャンス!!」
……どっちなんだ??
妖魔の将軍に向かって「黄金の鷲」の弓使いが矢を連射する。だが、妖魔の将軍は少し体をずらしただけで矢を弾き飛ばしてしまう。赤黒いオーラみたいなのがシールドの役目を果たしている感じだな……
「何アレ……」
「シールド??」
「スーパーサイヤ人か?!」
「やぁああああ!!!」
カエデさんがかなりの速度で突進し槍を突き刺すが半月刀で綺麗にはじかれてしまう。
「うぉおりゃぁ!!!」
リキさんが凄い速度で妖魔の将軍に鉄のこん棒で殴り掛かる。だが妖魔の将軍は安々と盾で受け止め、そのままの姿勢で後ろへとずり下がる。あの一撃って、飛竜の頭を吹き飛ばしたんだけど……軽く吹き飛ぶだけっすか?
「か、固ぇ!!」
「カエデ! リキ! 下がりなさい!!!」
サチさんがかなりの速度で前衛に飛び出し両手に小剣を持って立ちふさがる。
「サチ! こいつやばい!」
「わかっているわ。一旦引きなさい!」
「わかった!」
リキさんはサチさんの言う事を聞いて素直に引き下がる。
妖魔の将軍は一気に踏み込みサチさんを袈裟切りにしようと剛腕を振るうが、なぜか空間が歪みサチさんに剣が当たらずに地面を激しく打ち抜く。返す刀で狙うがまた不自然に剣の軌道がずれる。
サチさんが手をかざす。
妖魔の将軍は何かを感じ取ったのか、かなり大げさにバックステップを二回くらい踏んで後ろに飛びのく。
……あの感じ、サチさんが何かやったな……だが躱された感じか……
「……やはり察知するか……」
【妖魔もエーテルを使いますので察知されますね】
なるほどね……その辺は平等なのね。
しばらく妖魔の将軍は何かを考えていたが、ニヤリと不敵に笑いサチさんの方に凄い勢いで突っ込み剛腕を振るい、剣をめちゃくちゃに振り回す。
サチさんも躱しながら後退していくが、何十手目かで半月刀の剛剣を両手にもった剣で防ぎ、激しく吹き飛ばされてしまう。
「しまっ……」
「姉さん!!!」
リキさんが凄い速度で前衛に立ち、盾と鉄のこん棒で妖魔の将軍の迫撃を受け止め始める。
受けて攻撃をいなすたびに武器が凹み、変形をしていく。明らかに相手の武器の方が硬く強い……どうなってんだあれは?
【エーテルを纏っている様です。すごいものです……あれでは通常の金属は粘土みたいになるでしょう……】
……まじか……どうすればいいんだこれ……
どうするか迷っていると、サチさんが後ろの方に戻ってくる。
「……みんな、協力を! あと10メートル後退したら一斉に「動的」なスキルを『ワールド座標』で放って!!! 『ワールド座標』よ! リキ!! 頑張って耐えなさい!!」
「……わ……かった! って無茶言うな!」
仲間内にも動揺が広がる、みんな顔を見合わせて混乱している様だ。
「ど、動的なスキルって?」
「固定とか、回転とか、滑るとか解体とかだよ!」
「浄化も?」
「切断もだよな?」
混乱する仲間にサチさんが少し苛立ちを見せながら解説する。
「良いから持ってるスキルが『ワールド座標」で使えるならやって! 剣を投げるから、それに合わせてやって! 頼むわ!」
「わかった! やってみる!」
「おう!!」
「わからないけどやってみます!!」
リキさんも余裕が無いようで、じりじりと妖魔の将軍に押され始める。鉄のこん棒がひしゃげて現代アートみたいになってる……どんだけの威力なんだ。そしてあの攻撃を持ちこたえるリキさんはどんだけ強いんだ?
「もう無理だ!! 早く!!」
「引きなさい!」
目標まであと五メートルといったところで、突然リキさんが信じられない速度でバックステップを踏む。誰かのスキルか? ってそんな場合じゃないか……
サチさんが持っていた小さい剣を相手に投げつける。
「今よっ!!!」
「いけっ!」
「やっ!」
「切れろ!!」
「滑れ!!」
「解体!!」
「消え去れ!」
「回れ!」
俺もワールド座標で『固定』と『削る』を放つ。なるべく最大容量ぎりぎりで。強い何かの力に引っ張られる気がしたが発動した感触がある。
妖魔の将軍は見えない『固定』の壁にぶつかった様に見えたあと、妖魔を包むオーラが霧散し、腕が『回転』しねじ曲がり、装備が『解体』されてバラバラになり、足が『滑り』妖魔が空中に浮く。
武器を持っていた手が瞬時に『乾燥』しミイラのようになり、持っていた盾が『柔化』し水のように溶けていく。片足が『切断』されて吹き飛ぶ。
妖魔の将軍が驚きに目を見開いた瞬間、頭がぐしゃりと『歪み』力なく体をだらんとする……スキルを解除すると、妖魔の将軍は崩れ落ちる様に地面に転がる。
サチさんはしばらく死んだ妖魔を見たあと周囲を警戒をしていたがこちらを見て微笑む。
「いいコンビネーションだったわ……助かりました。……予想以上ね……」
「……なんだこれ……」
「すげぇな……」
「ぐちゃぐちゃな……バグったゲームキャラみたいだった……」
俺は驚き、しばし何が起きたのか分からなかった……
ワールド座標でスキルを放つと威力が上がるのか?
ジンパチさんも驚いている様でキョロキョロとして状況を把握するのに務めている様に見える。
「今のは一体……動く相手に効くとは思ってなくて……」
「俺もなんだか……ワールド座標で放つと効きやすいのかも……」
「ワールド座標で空間に出せたのか……てっきり物じゃないと駄目だと思ってた……」
……俺もそう思ってました。
あれ? 空気も『固定』できるのか? もしかして?
【できますよ? 既にやっているでしょう?】
……え? やってたっけ?
仲間達がしばし呆然としていた。
「やった……んだよな?」
「……つえー、なんだこのゴブリンジェネラルは?」
「キングじゃないの?」
「……妖魔……ジ・ガ族の将軍だって……ジェネラルだね」
ん? あ、そうか、ログを見るか……
【妖魔・怒れる妖魔ジ・ガ族の将軍 を討伐 HP+1.52 MP+1.76 STR +1.03 DEX +1.44 AGI +1.61 INT +0.63 MND +1.54 SP+1.51 ……】
「やったぁ!!」
「勝利だ!!」
ログを確認すると、仲間達がやっと普通の反応になって喜びの声を上げ始める。
【やりましたね、まさか倒せるとは……】
ほんとに……最後の妖魔の将軍だけは……計算外……というより、オーラみたいに纏われると滅茶苦茶強くなるのか? 二十人くらいいるのに凄いステータス上昇っぽいけど……
【そうですね、エーテルの力を利用した身体能力など様々なものを強化する能力だと思ってください】
……なるほど……鉄製の武器が歪むくらい……武器の性能差もでるってことか……
【それに関しては相手の武器を研究することをお勧めします】
俺は妖魔の将軍が持っていた巨大な半月刀を持とうとする……重すぎだな……カンジさんに武器鑑定をお願いするか……盾からは変な感じを受けないから……剣だけが何かの力を持ってるのか?
周囲を影が横切る。それと共に空から何かが降ってくる。
ドーン!!!
突然、妖魔の将軍の死体の後ろに体格の良い完全武装をした四本腕の鬼人族が降り立った。
喜びに沸いていた仲間が一気に静まり返る。
皆の視線の先には戦装束を着たアッシュさんが、先ほどの妖魔の将軍の様なオーラを纏って仁王立ちをしていた。




