第67話 妖魔の砦攻略戦
27日目
俺たちは夜が明けるかなり前に行軍を開始する。
先にナオエさんとウィンディードさんが偵察に行ってくれたので、総勢18人での移動になった。夜でもひょいひょい飛んでいく姿は何か……忍者みたいだった。
活躍できる場が少ないと言っていた女性陣達も砦に残る方が不安……との事だったので、防具を身にまとい、槍を一つ持って移動をしていた。洞窟からの脱出と違い、この数日かなり体力が戻ってきた様でかなりの移動速度になっていた。
……まぁ、ナオエさんが裏でこっそりと色々と治してたりしてたんだろうけど……
攻城兵器などはバラして向こうですぐに組み立てられる設計にしてくれたようで、四次元収納ポーチに入れて移動をしていたので大分楽な移動になった。重量の関係でほとんどアヤノさんが収納をしてくれたんだけど……
リキさんとサチさんが仲間を気遣って先導をしてくれたため、現実的な速度での移動となった。
彼等の強そうな気配を察知してか、なぜか魔獣、狼などの襲撃はほとんどなかった。
たまに黒い靄のような人間の形をしたナニカが出るが、フラフラと漂っているだけだった。
たまにこちらに気が付いて近づいてきたものに対してはヨウカさんのスキル『浄化』が効果があるようで、スキルを発動させると一瞬にして消え去っていた。
『浄化』ってやっぱり……悪霊的な何かも『浄化』させるんだなぁ……
ヨウカさんに質問をしてみる。
「やっぱり……幽霊なんでしょうかね?」
「私にもわかりません……ただ、ものすごく『嫌な感じ』がします。『浄化』をしても汚れじゃなくて、何か違う感じですね。汚れみたいに集まらずに消えてしまいますし」
……アーゼさん、幽霊だよね? あれ?
【物理的なものではないのは確かですね……】
こりゃ……夜の移動をやめた方が良いっていうわけだね……ヨウカさんいないとアウトじゃないか……同行してくれてよかった……木の上で休んでたのは正解だったんだなぁ……地面をユラユラしている感じだし。
【一応火をたくと近寄ってこない様ですよ】
……なるほどね……火をたくと……妖魔と魔獣に襲われそうだけど……どっちがいいのかわからないな……
§ § § §
俺たちは誰一人かける事も無く、空が明るくなるころに妖魔の砦に到着する。
ナオエさんが達が到着に気が付き接近してくる。二本の槍の伸縮を利用しているのでかなりの速さだ。移動速度がさらに上がった感じだな……まるでスパイダーマンみたいだ……
ってか早い。あっという間に俺の隣にぴったりと止まる。
「見張りは倒しておいたからしばらく時間は稼げると思う」
「……ナオエ、ガンバリスギダネ……」
遅れてこちらに到着したウィンディードさんがちょっと呆れた感じになっていた。
気合を入れて全部倒してくれた勢いだな……砦の見張り台の方を見ると、人影が見えない……彼女の事だから全部砦の外に『伸びる』で吹き飛ばしたのだろうか……
俺たちは早速陣地の設営を始める。ケイさんに軽く『地形操作』をしてもらって最低限の矢避けをできる土の壁を作ってもらう。そこに巨大バリスタを3機組み立てて配置していく。カイトさんはよくわからない射出する発射台みたいなものを抱えていた。見る限りは……回転レールガンか? おそらく回転するローラーを複数通して妖魔の槍を射出するのか?
準備している間にもナオエさんがケイさんを連れて最後の堀の作成作業をしに高速移動で消えていく。
カエデさんが何かに気が付き手を振ると、森の向こうで到着していた「黄金の鷲」の援軍の5人がこちらに移動をしてくる。全員、かなりの武装をしているが、なんか……継ぎはぎみたいだな……ジンパチさんがいないとサイズ合わせが出来ないか……強いエーテルみたいな不思議な感じがする。リキさん達ほどではないみたいだが……
「みんなありがとう、来てくれて、ええっと、自己紹介……しておく?」
「時間が無いのでしっかりとした自己紹介は後にしましょう。今回は来ていただいてありがとうございます。では……ジンパチさん、作戦を……」
「はい、手短に説明しますね……申し訳ありません。思ったより時間が無さそうですので……」
ジンパチさんの作戦解説の間に「黄金の鷲」の援軍の五人のメンバーの事を観察する。どのメンバーからも強い何かの力を感じる。だか、彼等は説明よりも、巨大バリスタや陣地、遠目にもわかるケイさんの堀の作成……というより砦の周囲全体を「落とし穴」化させているのを見て驚いて固まっていた。
「……なぁ、あれなんかすごくないか……」
「ええ、戦闘には向かないけど陣地作りに最適なスキルね……」
「あの、このバリスタは……作ったんですよね? 真新しいし……」
「クラフター系のスキル持ちが集まると色々できそうだな……」
カエデさんが集中しきれていない五人に注意をする。
「ちょっと、作戦をちゃんと聞く!」
「あ、すまん……」
「お前たちは見ているから良いだろうけど、俺ら初見だぞ?」
「この人たちのスキル知らないしさぁ……」
「まぁ、ぶっとんだスキル持ってるのだけは理解した……」
まぁ、そうだよな……基本スキルを組み合わせると、ほんと色々できるんだよね……
作戦会議も終わると、メンバーが散り散りになっていく。それぞれのポジションに着いた様だ。
それから妖魔の砦の見張り台に妖魔が立つ度に、ウィンディードさんと、援軍の弓使いが狙撃していく。その間にも地形操作が進み一本道の左側の成形が終わる。断崖絶壁ともいえるくらいに地面が削れるというより下に凹んでいく……もう夢でも見てる気分になるな。地面が動くなんて……
ナオエさんがカイさんを抱えて砦の右側に移ると同時くらいに、砦の中から角笛の音が鳴り響く。
ブォー!! ブオーーー! ブォー!!!
「え? 見張りはいないのに?」
「ほら、砦の中央の城みたいなやつの上、見てみろよ」
「そこにも見張りが?!」
「ああっ、もう、いい感じだったのに!」
あ、中央砦にいる見張りに見つかったみたいだな……見つかったのは俺たちか?
まだカイさんとナオエさんはあそこからだと死角になって見つかってないな。大丈夫……だよな? しばらく……様子見か? あっちも城門を開けて出てくるか迷うはずだしな。
ショウコさんが緊張した面持ちでこちらの方にやってくる。
「ど、ど、どうします? わ、わ、私、空爆行きましょうか?」
「落ち着いて……もう少し待ちましょう。城門が開く音がしたらにしましょう」
「は、はひ」
やはりメンバーも結構緊張をしてきているようだった。人によってはため息の様なものしている。練習とはだいぶ違う雰囲気だものな……妖魔の数が多いせいか、すごい騒ぎになっている。
カイさんの地形操作は間に合った様で、城門からこちらまでの距離100メートル。幅十メートルほどの一本道が完成していた。一本道の両脇にはビルの3階の高さくらい、8メートル以上の堀が掘られている状態だ。堀った土は地面に押し込んでるだけ……との事だから、かなり固い地面になってるんだろうな……
それから妖魔の砦がかなり騒がしくなっていく。何かしらの準備を開始している感じだ。
見張り台に妖魔が立つ度に弓矢で仕留めていたが、重武装の妖魔が登ってきて仕留めきれなくなっていた。盾を構えながら重武装の妖魔が見張り台から周りを観察し、俺たちや堀を見て慌てて砦の中に戻っていく。
どうやら状況を完全に知られたようだな……しばらくすると角笛がけたたましく鳴り響き、大騒ぎが起きたあと巨大な木製の城門が徐々に開いていく。
例の巨大妖魔がゆっくりと城門を開けていく。本当に大きい。百メートルは離れているのに実際の巨人とは何て迫力なんだろう……隣にいる小さい妖魔が小人みたいに見える……
「ショウコさん、爆撃お願いします! みんな! 作戦開始!」
「「「オー!!!!」」」
「わ、わかりました!!!」
「照準合わせ! 一号機、発射ー!!」
ドン!!!!
練習通りに巨大バリスタから巨大槍が射出される。
巨大妖魔に照準された巨大槍は巨大妖魔の胴体を貫き吹き飛ばす。どうやら威力は十分すぎる様だ。当たった瞬間、周りにいた妖魔たちは何が起きたか理解できずに立ち止まってしまっていた。
「黄金の鷲」の援軍の5人もその様子をみて呆然としていた。
「……なにそれ……」
「すげぇ……」
「巨大妖魔が一発って……」
「あいつ固いのに……」
やっぱりすごい事やってたんだな……これは生物に向ける武器じゃなかった様だ。
ジンパチさんが俺の肩をたたく。ちょっと焦っている?
「カタシさん! 次の弾の装填準備と、出てくる小妖魔に攻撃を!! 妖魔が来ちゃいます!!」
「ごめん!! ちょっと見入ってた。みんな引っ張って!!」
しまった、どんどんと妖魔が隙間から湧き出てきていた……装填のために『弾力』をかける。同時に『自動追尾』で突撃してくる妖魔に妖魔の槍を投げまくる。なんか……俺、やることが多すぎじゃないですか ? ジンパチさん?
飛んでくる弓矢も散発的だったが、当たりそうな矢はサチさんとリンカさんが片っ端から叩き落としてくれている。砦の上に出てくる弓兵達もウィンディードさんがどこからともなく現れて、弓矢を放ち仕留めてくれる。まだまだ安全な状態だな……一方的に相手に攻撃を与えられている。
ってか死体が山になってきて邪魔になって来たな……現実だとこうなるのか……
弓矢使いとウィンディードさん、カイトさんの回転レールガンの連射、俺の『自動追尾』で妖魔たちの足止めがうまく行っているようだった。重装備の妖魔が前面に出てこないおかげで面白いように傷ついては倒れ、堀の方に落ちていく。
盾持ちの重装備の妖魔が出現するたびに3門の巨大バリスタの発射を行い手前の妖魔を吹き飛ばしながらまとめて吹き飛ばしていく。
運悪く射線上付近に入った小妖魔は傷がつかなくても風圧、ほかの妖魔の身体で吹き飛ばされて堀の外へと落ちていく。
巨大バリスタの攻撃を目の当たりにした妖魔たちはパニックになり砦に戻り始める。
だが、門の中から出てくる妖魔たちに押し返されて押しくらまんじゅうみたいになってる。
そりゃバリスタの巨大槍や弓矢の攻撃を受けながら避ける障害物も無い道百メートルを頑張って向かって走る気には……ならないよね……普通逃げるわ。
「今のところ順調ですね!」
「はい! 後は追い出してもらわねば!」
「”#”#”!”#!”$QE!!」
「#””!!!!!!!」
しばらくすると妖魔の砦から叫び声が聞こえ始める。
上空を見るとショウコさんがうまい事トウガラシもどき爆弾を上手に放っているようだった。四次元収納ポーチのおかげでかなりの量を投擲している様に見える。
辛さがつらいのか、見張り台に駆け上る妖魔もいたが、あまりの高さに躊躇して飛び降りれない感じだったが後ろの妖魔に押されて落ちていく……さすがに10メートルを落ちたらただでは済まないだろうな……
城門に逃げ帰る妖魔と、辛さから逃げようと出てくる妖魔も殺到し、通勤ラッシュの満員電車の入り口、おしくらまんじゅうのようになっていた。
仲間達は容赦なく巨大槍を打ち込んでいく。巨大槍は大き目の妖魔だろうが吹き飛ばし貫通していく。死んだ妖魔を見て戻ろうとする妖魔達だったが後ろから押されるので……
うわ……なんか見ているとかわいそうになってくるな……圧死してくれそうだ……と思いつつもひたすら撃ち漏らしを『自動追尾』っと、カイトさんの回転レールガンも活躍してるみたいだな。威力と連射力はあるけど命中精度は悪いみたいだ。
その間にも見張り台から妖魔がポロポロと落ちていく……やばいな、落ちすぎだ……あれだと全員死なないな……降り積もった妖魔がクッションになり始めている。
巨大妖魔が目を守りながら、小妖魔を投げ飛ばしながら城門から出ようとするが、こちらを視認できていない様で無防備だった。そこに巨大バリスタを撃ち、巨大槍が巨大妖魔を吹き飛ばしていく。なんかもう一方的すぎやしないか??
「黄金の鷲」の前衛の5人がバリスタの脇に立ちどまって雑談をしていた。
「なぁ……俺たちなんもやってないぜ?」
「こうも作戦がはまるとは……」
「魔法使いが出てこないのか?」
「死体が壁になって出てこれなくなってないか?」
確かにそうだな……困った、もう少し打って出てくれると思ってた……
巨大槍のパワーは想像以上だった。城門が死体で詰まり始めてる。計算外だなこれ……
4人目の巨大妖魔が大きなこん棒を振るいながら城門に詰まれた妖魔の死体を切り開いていく。
ジンパチさんから大声で指示を出す。
「皆さん、まだ撃たないで! 引きつけましょう!!! 妖魔の死体が邪魔になってます!」
「わかった!!」
「了解!!」
巨大妖魔……遠くではわからなかったが近づいてくるとすごい迫力だ。五メートルの巨人……妖魔と言うより巨人じゃないか!?
「まだ? まだ撃っちゃだめ?」
「まだです! 早く撃ちすぎると後が辛くなります!」
「……発射!!!」
ドーン!
かなり引き付けて巨大槍を撃ち込む。物凄い反射速度でこん棒で打ち払おうとしていたが、威力があり過ぎて腕をへし折り、そのまま綺麗に巨大妖魔を貫通する。巨大妖魔はそのままバランスを崩し、堀へと落ちていく。その間にもわらわらと砦から妖魔が湧き出てくる。
「皆さん一瞬眩しいですよ! 目をそらして!!」
ライトさんの『光る』を一本道に向かって放つ。目をそらしてもかなり眩しい。
だがフラッシュした後は、妖魔がボロボロと一本道から転げ落ちそうになったり本道から転げ落ちそうになったり、目が眩んで立ち止まったり、後続の押して来る妖魔達に踏み潰されたりしていた。
それにしても……ちょっと……想像より数が多いんですけど?
妖魔の重武装部隊が砦の門から鉄製の盾を構えながら死体を踏み越えて前進してくる。
その後ろから巨大妖魔が見た事も無いサイズの盾を構えてどっしりとこちらに近づいてくる。
「バリスタ水平撃ちに変更!! 撃てー!!!」
ジンパチさんの号令と共に巨大バリスタの射角を低くする。一本道を通る妖魔をなぎ倒し吹き飛ばしていく。もうこうなったらトコトンやるしかない!
それからも妖魔の軍団は押し寄せようと頑張って迫ってくるが、バリスタの斉射と、自動追尾、ウィンディードさんの風の魔法、援軍の魔法使いの光の槍の魔法。タチキさんの切断……「黄金の鷲」の貫通する弓矢……などで接近する前に殲滅を続けていく。
「残りSPヤバくなってきました!!」
カンコさんの巨大槍の装填はここまで、バリスタは終わりか……あとは討って出るしかないか。
大分減った……というより殆どいないな……
「やっと出番か……」
「すごいな、こんな一方的な……」
「機関銃が生まれた第一次世界大戦もこんな感じだったんだろ?」
「……妖魔だから良いけど、人間だと思ったら……きついな……」
前衛達の気持ちもわかるな……堀は死体で埋め尽くされているし、一本道も死体を踏んでいかないと進めない状態だ……
城門のあたりで大きな咆哮と共に、巨大な妖魔が大きな槌を振り回して死体を吹き飛ばしていく。その後ろには見た事も無い鎧を着たかなり大柄な妖魔がこちらに盾を構えながら近づいてきていた。
あれがこの砦の将軍……ボスだろうか?




