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「バトロワ」無視してサバイバルライフ ~デスゲームに巻き込まれた俺は「攻略」しなかったら最強になってた件  作者: 藤明
3章 安全な場所を求めたはずなんだけど?

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第65話 新たなスキル『弾力』の練習

 25日目


 空が白む前にナオエさんとウィンディードさんとショウコさんの高速移動可能の3人が妖魔の砦の偵察に向かった。

 注意事項などを色々伝えていたら途中から見送りに集まっていた周りの視線を気にしたナオエさんが恥ずかしがりながら行ってしまった。


 リンカさんが俺の方を見ながらぼそっと呟く。

「カタシさんて、お母さんみたいですよね……」

「……え?」

「心配しすぎですよぉ」

「……そうかな?」


 ……俺の行動はオカン的なやつだったのだろうか? ナオエさん直ぐ無理するから心配なんだよね……ウィンディードさんが無理したらすぐに回収してくれる手はずになってるんだけど……


 まだ空が完全に明るくなかったので、俺は新たなスキル『弾力』の練習をしてみる。

 昨日は色々ありすぎて検証できなかったんだよね。


 まずは物質。いろんなものがゴムのようになる……石も……地面も自分も。

 ナオエさんの『伸びる』みたいに、自動で伸ばすことはできない。本当にその物質やエリア内を「ゴム」にするスキルみたいだ。

 試しに石に『弾力』をかけて木の幹に投げてみる。ボールのように石がバウンドする。

 ただ、当たった気の幹には石が当たったような削れた跡がついていた。固いんだけどゴム……という不思議な物になる感じだ。

 場合によっては広いエリアに『弾力』をかけて衝撃を吸収させる……なんてのもできそうだな。スキルレベルが相当必要そうだけど。

 ……ナオエさんが取得しておけば、本当にどこかのマンガの主人公みたいなことが出来そうだったのに……残念だ……


 ナオエさんからは移動速度を指摘されていたので、自分の体の『弾力』をアップさせる練習をする。

 昨日の移動で大分慣れたつもりだったが、拠点にいるギャラリーからは「上に飛びすぎ!」「横にだよ!横!」とヤジが飛んでいた。

 びょんびょんと勝手になるから、とっても難しいんだけど……


 俺の駄目っぷりを見た人たちで議論が始まっていた。

 陸上部出身というカンコさんが俺の元に来てフォームを教えてくれる。

 解説を理解していくと、恐らく、短距離走のスタートダッシュの姿勢をひたすら取らないと駄目……みたいだった。ひたすら前傾姿勢か……

 ……それって疲れない? あ……なんかギャラリーの目がどんどん熱くなっていく……

 仕方がないのでみんなの言うとおりにやってみる……


 ……出来た。


 めっちゃ速い。背景がとろけていく様だ。


 ギャラリーから歓声が上がる。どうやらはたから見てもうまく行っているようだ。

 なにこれ、すごい……そうか、普通に走っちゃだめなのか……ひたすら前傾姿勢で前にジャンプするイメージなのね。これなら壁を駆け上がれる??

 試しに木を駆け上ってみる……行ける??


「あ……」


 やばい……調子乗りすぎた……20メートルは駆け上がったが、ジャンプする方向を少しミスっただけで木から体が離れて行く。

 ……あ『固定』できてない……

 俺の周りがまた走馬灯のようにゆっくりと時が流れていく……

 やばいねこれ……

 ……あ、こんな時は、全身に『弾力』をかけてゴムになればいいのか?

『弾力』っと……


「キャーッ!!」

「うわあああ!!」

「まじかよ!!!」


 悲鳴が起きる中、俺は地面へと叩きつけられる……がバウンドして地面から再び浮き上がる……まるでトランポリンみたいだ……面白すぎる!?

 安堵の声と、「もうそれやらないで!!」と言う声があがっていた。

 やっぱり人が落ちてくるのを見るのは……いやだよね……

 これで高所から落ちるときは……死なない様になったのか??? あまりテストはしたくないけど……


 とりあえず走るのは何とかなりそうだったので、次は『弾力』を使用した投擲だ……

 試しに普通に妖魔の槍を50メートル先の木に向かって投げてみる。

 ……何か普通に刺さったな……いつの間にこんなにステータス上がってたんだ??

 槍投げの選手でも放物線をもっと描くと思うけど……野球の投手のボールみたいな軌道になってるな……

 ギャラリーからも、今のはスキルを使ったのか? など議論が上がっていた。


 次は投げの「ため」の時に『弾力』を使ってみる……身体の制御がとても難しい……狙いはうまく行かないが、かなりの速度アップになっていた。速度は2倍以上な気がするな……リリースポイントのタイミングが全然違うし、速度が上がるとさらに直線的になるから練習が必要だ……


 それで、次はアイディアにあった『固定』とのハイブリッド投げを……

『固定』で妖魔の槍を木の幹に固定、腕に『弾力』をかけて移動……結構腕が伸びるな……ちょと気持ち悪い……3メートルあたりでアラートが表示される……それじゃ、ここから……パチンコのようにして……投げる!!

『固定』解除!!

 あれ……なぜか感覚が研ぎ澄まされて周りがゆっくりだ……とりあえずこの辺でリリースしないと駄目だ……槍から手を放すと、ゆっくりだった感覚が一気に普通に戻る。


 ブォォオオオオン!!!! バァアアアン!!!!! メキメキメキメキ!!


 とんでもない速度と爆音を出しながら妖魔の槍が吹き飛んでいく。

 ただ、狙いとは全く別の若い木に当たり、妖魔の槍も木の幹も大砲に当たったかのように爆散していた。


「……なんだこれ……」

【……すごいものですね。スキルをたくさん取るとインフレすると、管理者が言っていた意味がわかりますね】

「ほんとに……」


 何となくだけど、「動作」的なスキルを組み合わせると……とんでもない事が出来る気がしていた。


 振り返ると、砦の城壁に人垣が出来ていた。何事かと思って、寝ていた人間も皆起きてしまったようだ……朝早くからすんません……



 とりあえず、『弾力』の投擲の練習はなるべく拠点から離れた位置で行う事になった。


 §  §  §  §


 朝食も終え、今日の拠点制作作業に移ろうかとしていると、偵察していた3人が帰ってきた。

 なんかすごい……早いよな……


「ただいま。あれ?? なんか雰囲気が……」

「おかえり……なんかすごい議論になっててねぇ……」


 ジンパチさんがフルフルと首を振りながらも目を輝かせていた。

「仕方がありません……あの威力を見てしまうと、作ってしまいたくなるのです……」


 男性たちを中心に『弾力』を利用した攻城兵器のアイディアの議論が巻き起こっていた。

 確かに、『固定』を使わないでも巨大パチンコを作って『弾力』を使えばかなりの威力で物が吹き飛んでいくもんなぁ……スキルありきの攻城兵器だね。

 最終的には巻き取り機とか使ってスキル無しでもできる様にする……みたいだけど。

 今は俺の『弾力』ありきの仕様かぁ……俺、大変になりそうだな……


 §  §  §  §


 朝食がまだだったナオエさん達がご飯を食べながら偵察の様子を話してくれる。

「大体500人規模ね、ウィンディから聞いてた通り、メスとか、小さな子供はいないみたい」


 サチさんがしょっぱなから不思議そうな表情を浮かべていた。

「? ごめんなさい、意味が分からないわ? 妖魔にも家族とかいるものでしょう?」

「鬼人族の話だと、家族とか、妖魔が生活している場所は地下深くの別の場所……って言われてるんだって。要するに彼等は、この島を攻めに来ているみたい」


 攻略組のコウタさんがムッと唸る。

「なるほど……人間を敵視して、侵略する相手……だからいきなりどこでも襲ってくるんだな」

「……たま~に妖魔に温情をかける仲間がいるんだけど……この話はした方が良いわね」

 カエデさんも納得した感じだった。

 攻略組でも同じように考える人いるんだなぁ……てっきりゲーム感覚かと……


 まぁ、俺も最初に妖魔をやった時は人間を殺した気分になったからなぁ……

 殺すときには敵意むき出しの目を向けられたこともあるし、苦しむ表情をするし、恐れの表情を浮かべる時もある……完全に知的生命体なんだけどなぁ……何で歩み寄れないんだろ?


「大妖魔の数は六。あとは鉄の鎧系のリーダー的なのが10人以上ね。纏っている服をみると5部族ぐらいが集まってる感じだった」

「魔法使い的な人数は?」

「それに関しては建物の中にいるみたいで……あまり確認が出来なかったの」

「……あちらも魔術師系は支配階級なのかもな」


 魔法使い……この間の鬼人族との戦いで見たけど……遠距離から一方的にやったからよく理解してないんだよなぁ……たしかに鬼人族でもお偉いさんに魔術師が多かったような?

「……魔法使いって、何やってくるんだ?」

「……ああ、戦った事無いのか……火、雷、土の礫、後は眠りの煙っぽいのを打ってくるんだよな……嫌な感じがするからすぐにわかる」

「大体30メートルくらいは魔法が飛んでくるから気を付けないと駄目な感じ。弓矢の方が射程は長いかな」

「弓矢の方が厄介だから注意だな。そこら中から飛んでくる、ひたすら動き続けないと駄目な感じだ」


 サチさんが俺の事をじっと見る。

「まぁ、あなたなら……遠距離から槍を投げて魔術師を先に仕留めてくれると嬉しいわ」

「そうだな……アレだけやれれば……」

 ……なんか期待の眼差しが強すぎる気がする。攻略組の中でも『自動追尾』攻撃ってレアものだったのだろうか?


 ショウコさんが地面に砦の俯瞰図を書いてくれる。

 ……飛べるって便利なんだろうけど……ちょっと間取りが怪しいな……

「……こんな感じだったんだけど……ごめんなさいね、絵はあまり上手じゃないの……ライラちゃんかカタシさん連れていければよかったわね……テントらしきものも多くて……」

「……そうね……私より上手だから気にしなくていいわ……」

「スマホのカメラがあるとよかったんだけどねぇ……」


 コウタさんが図を見ながらしばらく考える。

「そうですね……どこが登れない壁なのか、扉があったのかを記載していただけますか?」

「あ、はい、それなら大丈夫です……ここと、ここに……」


 ジンパチさんが脇から出てきて図と話をもとに『柔化』で木のミニチュアを作っていく。

 物凄く分かりやすい……ギャラリーからも感嘆の声が上がる。

 さすが建築関係者……ってミニチュアも作るのか? 趣味の世界の様な?


 精巧なミニチュアをもとに議論が進んでいく。

 スキルを利用して一気に倒せるか、とか、包囲戦にして殲滅して被害を抑える……地形を操作して的にしやすくする……とか。

 議論が白熱するのは良いんだけど……


「あの、ちょっと待って、戦う前提で話が進んでいる気がするんだけど……」

「え?」

「やるでしょ?」

「大丈夫よ」

「「醤油」と「米」のためならがんばれます!」

「ここを落とせばしばらくこのエリアは安泰ですよ!」

「ここが分水嶺ってやつですよ!」


 ……まじっすか……

 そこまでなのか……500人の相手をするんだよ?? 感覚がマヒしてない?


 俺はヒートアップしていく仲間の議論に若干ついていけなかった。

 あれ? 俺がおかしいのか?

【あなたはまともに思えますが……】

 何でこんなにみんな好戦的なんだろ?

【あなたとナオエが一方的に……かなり簡単に妖魔を倒し続けていたからじゃないでしょうか?】


 ……俺のせいか……

【この場合は自業自得というべきか迷いますね】

 ……まぁ、砦が何とかなれば……あとは楽になりそうだもんな……


 §  §  §  §


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