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「バトロワ」無視してサバイバルライフ ~デスゲームに巻き込まれた俺は「攻略」しなかったら最強になってた件  作者: 藤明
3章 安全な場所を求めたはずなんだけど?

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第60話 今後の方針

 夕ご飯を終えてまったりとしていると、ナオエさんが近づいてくる。ちょっと悩んでいる感じか?


「カタシ君、提案があるんだけど……」

「どうしたの? 改まって」

「鍛冶を本格的にやるんだったら、周囲ニ、三キロくらいは探索……妖魔と魔獣の討伐を終えた方が良いかも。もっと遠くまで聞こえてるとは思うけど……」

「うーん、やっぱり妖魔の砦を落とすか、破壊して追っ払った方が良い?」

「そうねぇ……あそこは普通にうるさいからなぁ……夜に鍛冶をしない限りは音は聞こえないかも」

「……やっぱりあそこまで通ってたか……」

「……」


 最近カマをかけると視線で嘘か本当かわかるようになってきた。一瞬視線が斜め上行くんだよなぁ……ん? 話題を変えようとしてるな……


「……まぁ、あとはたまにプレイヤーらしき痕跡をちょこちょこ見つけてる感じ」

「……マジで?」

「うん。恐らく海を目指す人が結構いたのかも。ほら、カミからのメッセージで、「海に行け」みたいなこといってたでしょ?」

「ああ……確かに……塩足りないとヤバいからなぁ……痕跡たどってみるか……あ、でも複数とかだったら襲われたりするかもしれないから……用心しないと……」

「明日機動力あるメンバーでいってみない?」

「……え……俺無いけど?」

「武力も必要でしょ。ジンパチさん~カタシ君、明日だけ連れて行って良いですか?」


「ええ、大丈夫かとは思います。やることが山のように増えて……明日は切り倒した木の処理で手がいっぱいですよ」

「あ、それですが、音が大きすぎる場合はまだ自重した方がいいみたいです」

「え? やっぱりヤバいですか?」

「見張りを置いて、いつでも砦に逃げ込める位置での作業をするしかないかもしれませんね」

「わかりました。仲間達に伝えておきます」


 ジンパチさんが席を立ち、木の切断グループを集めてミーティングを始めていた。行動が早いよなぁ、さすが社会人……

「んじゃ、探索組で打ち合わせするか」

「そうね」


 バサッバサッバサッ!


 羽音と共に鬼人族の伝令フクロウがウィンディードさんの元に舞い降りてくる。

 初めて見る者もいた様で、ちょっとした歓声があがっていた。異世界のフクロウは姿が変わってるもんな。目がクリクリして可愛い所はあちらの世界と一緒だけど。

 丁度、鬼人族語の辞典を使った言葉のやりとりをしている最中に来たので彼女の周りには人が集まっていた。

 ウィンディードさんがフクロウに括り付けられた紙を広げ中を確認しているようだった。

「……凄い!! 瓦版じゃん!!」

「え? ほんとだ……これ……版画?」

「新聞の一ページくらいに見えるね……」

「新聞よりも小さいんじゃない?」


 ん? いつもの手紙だけじゃないのか?

 俺も気になったので近づいて見てみる。たしかに新聞に見える……明らかに印刷を使った手法の何かに見えるな。文明は結構進んでるんだなぁ……版画だけじゃないのか?

 瓦版を手に取ってインクのにおいをかいでみる……インクっぽい匂いがするな……ウィンディードさんが使ってる墨汁とは違う匂いだ。

 目を輝かせてみていたライラさんが俺の方を見る。すごいわくわくした表情だ。

「あのっ! 印刷技術があるのでしたらそれを使って、戦わないプレイヤーを集めるのはどうでしょう?」

「……へ? どういう事?」

「この瓦版……というより活版印刷と版画のハイブリッドにみえますね。この技術力を見る限りは、おそらく紙の印刷が大量にできる環境があるってことです。私が宣伝用の版画を作りますので、それをもとに印刷していただいて、鬼人族ネットワークを利用してそこら中に張り付けてもらうんです。そうすれば困った日本人がここにやってきて街が作れます! 日本語で作成すれば日本人だけに連絡が行って妖魔には行きませんから!」


「……うーん」


 困ったな……ここにいる人の目全部がこちらに向いている……想定外だ……こういう時は……大人の対応で……俺だけじゃ判断できない問題だぞこれ?

「ちょっと考えさせてくれる?」

「え? ……はい……」


 なんだかライラさんがしょぼんとしている……確かに画期的なアイディアなんだけど……

 俺はナオエさんの方を見ると、彼女もどうしたもんかと考えている状態だった。


【まさかの展開ですね、カタシもこれは想定していなかったようですね】

 アーゼさんはなんか……楽しんでいる感じだな。

【ええ、本当にあなた達、プレイヤーの行動はこちらの意図とはずれる事が多くて非常に興味深いです】


 騒ぎを聞きつけたジンパチさんがこちらにやってきて事情を聴いていた。

 同じように悩み始めてるな……

 ライラさんがさらにしょぼんと……うーん。どうしたものか……


 ナオエさんが俺の服のすそを引っ張る。

「ねぇ、どうするの? 大きな転機に思えるけど……」

「そうなんだよね……島全体……くらいに仲間を集えるから、うまく行けば第一生存勢力になれるかもしれないし、色々なスキルの人を集められるから拠点がさらに発展するとは思うんだよね。……だけど、受け入れのキャパシティ、食料の問題と、位置を知られると強いプレイヤー達に狙われちゃうリスクが発生するんだよねぇ……」

「……難しい事を考えるのね……そうか、リスクも発生するのね……」


「あ……そっか……敵意のあるプレイヤーにも知られちゃうのか……」


 提案者のライラさんはがっかりしていた。

 ジンパチさんも困り顔でこちらに近づいてくる。

「困りましたね……まさか、こんなサバイバル状態で広告が打てるとは思っていませんでしたので……」

「確かに広告ですねぇ……」


「私は反対かな……日本語で広告を打つとなると、あの危険なテストプレイヤーも来ちゃうんじゃないかなぁ……」

「うーん。恐らく、鬼人族に一旦預かってもらって移送してもらう、もしくは集まり次第俺たちが迎えに行く……でもいいんだけど……」

「ああ、それなら大丈夫ね……この場所が割れなければ……」

「……鬼人族はいいのか……」

「あの人たち強いから大丈夫でしょ? 集合場所を軍事系の場所にしてもらえればいいんだし」

「……あ、そうか、アッシュさんがたくさんいる感じか……それでも迷惑かかるよなぁ……」

「……まぁ、そうなんだけど……」


 普段は自己主張をあまりしないカンコさんが俺の方に寄って来る。

「あ、あのっ……多分、助けを待ってる人、沢山います。私みたいに動けなくなって……だからっ……その……」

「自分からもおねがいします! 自分もがんばって整地しまくりますから!」

「俺も協力したい……ほんと食料のない生活は……ひもじくて……きつかった……」

「私も! 出来る事は全て協力しますから!」


 洞窟組からの圧が凄い。本気で飢えを体験した人間の言葉だな……

 迷っていると、アヤノさんが普段とは違う表情と口調で俺に話しかけてくる。

「カタシさん、まずはウィンディードさんと話をしなければなりません。私たち都合で考えても鬼人族の力を借りなければいけませんし、彼女達の都合もあるでしょう?」

「……あ、そうでした。とりあえず聞いてみないとですね。ありがとうございます」


 確かに、俺たちだけでやる話ではなかった。

 なんか主任と話してる気分になったな……そういえばアヤノさんはOLっていってたっけ?

 年齢誤魔化してたけど、キャリアウーマンってやつだったんだろうか?


 それからはウィンディードさんとの絵と片言鬼人族語を使ったコミュニケーションが始まる。

 今回は俺だけでなく、ライラさんも絵の伝達を協力してくれる。ってか上手い。凄いマンガタッチだが、非常に上手い。ってか漫画を絶対描いてた人だ、この人。

 なんか途中から木の机の上に紙と鉛筆を出して書き始めてるし……支給品には無かったよなぁ……

「あ、これ、例の記念品です……」

「なるほど……描きたかったのね……」

「はい……この世界に来てから全然描いてなかったので……」

「白い紙が凄い綺麗に見えるもんだね……」

「ほんとですね」


 ウィンディードさんと鬼人族の事情を聴きながら、話し合いが進んでいく。

 恐らく募集をかけるのは大丈夫。瓦版に印刷も多分大丈夫。一旦鬼人族のところに集まるのは色々と準備が必要なので、むこうのリーダーと話さないと話さないと多分駄目……と言う事だった。仲間内でも議論をし、数十人は受け入れられる体制をこの一週間で頑張って作っていくことになった。


「食料問題か……」

「追加で二十人くらいまでは大丈夫でしょうが、五十人となるとやはり難しいかもしれません……」


 今は大小様々な魔獣などがウロウロとしてくれるおかげでかなり潤っているが、狩りつくした後に問題が生まれそうだった。

 やはり……あいつをヤるしかないか……あの巨大イカを……


「やっぱり海の確保は必須ですかね……ナオエさんの感知がないと漁が出来ないのは厳しいですし」

「そうね。海があれば魚、塩、海草……色々と豊かになるわね」

「拠点の設営が終わったら、次は巨大イカ退治ですね……」


 俺が悩んでいると、カンジさんを中心とした男性陣から声がかかる。

「それだったら俺たちに任せてくれ!」

「組み立て式の大型兵器作って狩りましょう!」

「おそらくジンパチさんのスキルと組み合わせれば……連射式のバリスタとか行けますよ!」


「……それは……頼もしいですね」


 ジンパチさんの方を見ると、無理そうな表情はしていなかったのでそちらも計算に入れるか……

 あとは穀物問題だけど、当たり前だけど栽培は間に合わない……鬼人族の支援を受けるために……妖魔の砦を落とせば……こちらは攻略組に声をかけてみるか……

 隣にいたナオエさんが落ちついた感じで質問をしてくる。

「どうするの? やるの?」

「……やろうか。どちらにしろこの周囲に敵性生物が大量にいる状態じゃ……厳しいからね」

「そうね、私も協力するから」

「ありがとう」


 いつの間にか集まった仲間達全員に伝わるように大きな声で今後の方針を確認する。

「それじゃぁ……みんな、リスクは少しあるとは思うけど……新たなプレイヤーを助ける。人を増やす方向で……それでいいかい?」

「はい」

「少しでも助けになるなら」

「ありがとうございます! みなさん!」


「じゃぁ、明日からがんばろー!」

「「「おー!!」」」


 解散後も洞窟組がお礼を言ってくれるが……うーん、今後の俺たちの利益にもつながるからなぁ……

 良心を利用した感があってちょっとした罪悪感を感じるな……

 仲間内での話し合いがまとまってきたので、ウィンディードさんに概要を伝える。


「ワカッタ。ワタシタチ、リーダー。シラセル。ヘンジ。マツ」

 ウィンディードさんが和紙らしき紙に墨汁で綺麗な文字を書いていく。ついでに先ほどライラさんが描いたラフの瓦版の原板も小さくたたんでフクロウの足につけさせてもらう。伝令のフクロウが月明りに照らされた夜空を飛んでいった。

 ライラさんは意気込んでもっとわかりやすいやつをかくと、熱意を醸し出していた。


【凄い事になってきましたね】

 うん。思ったより……みんなが協力的で……仕事だとこうはいかなかったなぁ……

【大変な世界だったのですね】

 ……大変……だったのか? うーん、サラリーマンなんてどこも同じ……よくわからないや……


 なんだか、あちらの世界ではしがらみでうまく行かなかった分、こちらでうまく行ってる……そう思えたりした。


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