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「バトロワ」無視してサバイバルライフ ~デスゲームに巻き込まれた俺は「攻略」しなかったら最強になってた件  作者: 藤明
3章 安全な場所を求めたはずなんだけど?

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第59話 拠点作成のはずが順調に城塞化?

 23日目


 遠くで木の倒れる音がする。


 メキメキメキ……ズドーーン!!!


 タチキさんとカイトさんがスキルを活用して拠点周辺の木を切り倒していく……気がついたら、随分と開けた空間になってるなぁ……切りすぎ……とは思うけど、現代日本に比べたら木だらけだものなぁ……木の上から飛んでこられても守り切れないし……うーん。自然破壊、土砂崩れ……こんだけ下流なら別に洪水にはならないか……


 周囲を改めて見ると、とんでもない勢いで区画整理の土台が出来上がっていた。隣で監督をしていたジンパチさんが絶句していた。

「恐ろしいレベルですね……」

「本人はまだまだ元気そうですね」


 ケイさんの『地形操作』によって、当初の全予定エリアがほぼすべて綺麗に整地されて行った。

 地面の柔らかそうな場所はリンカさんのプレスで圧縮した後に『地形操作』をして、しっかりと形を整えてかなりの強固な地盤になっていた。

 ケイさんはかなりの面積を整地していたのに全く疲れを見せないので思わず状態を聞く。

「SP大丈夫? 頭痛くない?」

「え? 痛くないっスよ? まだ行けるっスね。いつも岩を動かしてたから消費が激しかったみたいで、土が多いと楽みたいっす」

 ……ああ、そうか、この人最初からひたすら地面を動かしてたんだ……スキルレベルかなり高い状態なのかもなぁ……


 ジンパチさんはカイさんのスキルと、SPの消費具合をみてテンションが高くなっていた。

「どうしましょう? 堀の掘削と整地の全部の予定が終わってしまっていますので、先に堀の土手を石で覆います? 安全度がかなりあがりますよ!」

「そうしましょうか。嬉しい想定外ですね……こんなの現実でやったら……トラック何台必要なんだろう……」

「確実に数日がかりですね。あ、そうなると石のブロックが足りないので……」

「あ、そうでした。石切に行って来ます」


「あ、自分も行くっス」

「僕は次の外堀の「第二の堀」などの外周の設計を考えておきますね。嬉しすぎる誤算だ……こんなことは人生経験でありませんでした……」

「納期の前倒しなんて……社会じゃ聞きませんもんねぇ……」

「ほんとですね」


 予定だった土台の整地が全部終わっていたので、ケイさんも石切場についてくる事になった。

 ケイさんが現場にたどり着くと『地形操作』で、石を切り易い形に補完してくれる。その上、作業がし易いように足場の土を隆起させてくれた。

 素晴らしいアシストだ。ってか、なんて便利なスキル……

 俺はひたすら薄く細くした『削る』を適用してひたすら石のブロックを積み易いように気を付けながら、綺麗な四角にして作成していた。

 作成したブロックを片っ端からアヤノさんが四次元収納ポーチに入れて運搬する。

 軽々と岩のブロックをポーチに入れるアヤノさんを見て、真似しようとしたケイさんが、本気を出してもぴくりともしない岩のブロックを抱えようとしたままの姿勢で呆然としていた。

「……え? これ……持てないんすけど?? あれ? あれ??」

「重量操作のスキルだよ。普通に岩なんて持てないよ。ステータス上がっても」

「……そうっすか……そんな細腕なのに……理不尽だ……ん? 無理やり入れられないかな?」

 ケイさんがスキル『地形操作』で隆起させた後に四次元収納ポーチにブロックの角を入れるが、それだと入ってくれない様だった。やはり手で持てる重量って制限があるみたいだな。

 そう考えると、ますます「重量操作」のスキルがチートがかってるな。


「そろそろSPが半分切ったから戻ろうか」

「『削る』ってコスパが良いスキルなんすか? すんごい切れてますけど……」

「どうなんだろ? なるべく範囲を狭くして使ってるからかも」

「範囲を狭く……なるほど……地形操作もやりようによってはも少し省エネできるかもな……でも明らかに最大SPが多い気がするんですよね」


 コスパ……最大値が分からないから数字をいくつ使っているかはわからないんだよね……SPの最大値が見れると良いのに……どうなんですかアーゼさん?

【議論を呼んでいますが、やはりステータスは見えない方が……面白いのでそのままにするそうです……】

 そうですか……ほんとカミとやらは愉快犯だな……

【ほんとですよね……目的達成よりも面白さを取る時が多いのが問題です】

 大変ですねぇ……なんか中間管理職だよなぁ、アーゼさんって。

【……ハハ】

 ……目的達成……目的かぁ……


 俺は答えが分からずに違う事を考えていると、岩のブロックを収納していたアヤノさんが、俺がこの世界でやってきたことを解説してくれる。

「カタシさんは相当数の妖魔を倒しているから、そのせいかもしれませんね。あと、自動スキル上げの発案者ですよ。初日からやってるんですって」

「マジっスか、初日から……追いつくなら自分も妖魔やるしか無いンスかね?」

「どうなんだろ……戦闘に使えるか?」


 とりあえずケイさんの『地形操作』はすごいスキルでかなり使えると思うんだけど、速度がゆっくりなのが難点なんだよなぁ……20秒待てば1メートルくらいまとめて動くのは凄いんだけど……

 やるとしたら城攻めの土木作業とかになるのかな? 山崩れとか、塹壕もすぐに出来るよな……よくある上流の川をせき止めて水攻め! なんかも簡単にできそうだな。

 直接の戦闘だと、地形を凸凹にして転ばすしかアイデアが浮かばないなぁ……落とし穴とかは作り放題なんだろうけど……

 妖魔の砦の周りを全部落とし穴にしてもらって一気に殲滅するとか……できちゃいそうだな……後で相談かな?


「アイディアあったらほしいっす……」

「トラップとか地形を使った罠と作るとかじゃないと無理かもねぇ……」

「そんなぁ……」

「みんなと相談かな」


 そんなスキルの有効活用を考えながら拠点に戻ると、城壁の下の堀にも岩ブロックが敷き詰められ、城壁はかなり登りにくくなっていて、すごくきれいになっていた。……ジンパチさんの『柔化』で岩ブロックの隙間も凹凸も無いからとっかかりがないな……8メートルはジャンプ出来ないと一発で登れないな、これ。

『固定』を使わないと滑って登れないな……なんか、どっかでみたオーパーツの石積みみたいだな。


 砦の入り口に回ると、即席の木の橋が掛かっていた。

 これを落とせば妖魔や魔獣は本当に登って来れないだろうな。

 最終的には跳ね橋にするとか言ってたっけか? どんどん城塞化していく……


 城壁の内部には城壁に登る階段がいつの間にか出来ていた。思わず駆け上がり、城壁に登って街ができる予定の場所を眺めてみる。

 見える周囲が綺麗に整地され、木が切られて、突然森の中に空き地ができた感じだ。

 なんか、一気に開拓が進んだ感じだな。やはりマンパワーと『スキル』があると違うねぇ……

【すごいものです。簡単に街が作れてしまいますね】

 ほんとに……あと2週間もあれば村じゃなくて町が出来そうだな……

【この世界だともう町の規模ですけどね……】

 ……そうなの?

【あなたの記憶を見ると……人が多すぎの世界なのですよね……】

 ……まぁ、この世界も発展していけばそうなるよ。

【だといいのですが……】


 砦の中を見ると、鉄の山と皮の破片の山が出来ていた……なんだこれ? バラバラになったパーツか?

 俺は不思議だったので熱心に作業をしている人……カイさんに近づいてみる。カイさんはたしか『解体』のスキルだったっけか?

『解体』のテストっていってたけど……その結果か?


「この山は?」

「ああ、なんだか俺のスキル、どうやら……制作したことの逆をやれるらしい」

「逆?」

「まぁ、見てろ。面白いぞ」


 カイさんが妖魔の破損した皮鎧を持つと、シュルシュルと縫っていた糸や留め金が外れバラバラになっていく。リングも溶接しただろう場所が割れて外れていく……なんだかおもしろ動画を見てる気分になるな……


「逆再生……だよなぁ、これじゃ……解体っていうと……ぶっ壊すイメージだったけど」

「……あ、試しにこれもやってみてもらえます?『解体』の定義がどこまでかわからないので」


 俺は帰る時に獲ってきた血抜き済みの野兎をカイさんに渡す。カイさんは一瞬きょとんとしてこちらを見る。

「解体って……それも解体か??? 日本語はあってるな、確かに。待ってろ……イメージできないと駄目だから……すまねぇ、解体のイメージがわかねぇ……経験無いんだ」

「あ、ちょっと待ってくださいね。サバイバル本に解体の画像が……」

 カイさんはサバイバル本の画像と手順を見るとイメージが出来た様で、野兎に触れてエーテルを流す。すると野兎が割れていき……綺麗に皮と肉とに別れ……腹がさかれて内臓が綺麗に別れていく。見てて面白いが……グロイな……


「すげぇな……こんなインチキスキルだったんだ……」

「まぁ、ここまでやってくれると……ズルい系のスキルだよなぁこれじゃ……」

「現実でほしいスキルだなぁ……電化製品なんてバラバラにできそうだ」

「確かに……ゴミの山から資源抽出できそうですよね」

「ははっ! 違いないな! まぁ、このスキルだけじゃなくてコネも必要そうだな」


 俺たちのやり取りを見ていた仲間達は、自分たちがこの世界に降り立ってから回収したジャンク品をあれもこれもやってみてと取り出して渡していく。カイさんが突然の大人気だなこれは……

『解体』は場合によっては戦闘でも使えそうだな……相手の鎧を『解体』しちゃえばいいんだもんなぁ……木の砦とかも『解体』したらバラバラになりそうだし。船とかも簡単にバラバラにして沈められそうだ。

 問題はカイさんをどうやって安全に『解体』出来る場所に連れて行くかだけど。なんかいい手ないかなぁ……


 しばらくすると、ハツコさんとライトさんが若干の「匂い」を発しながら砦に戻ってくる。

「すみません、ヨウカさん……『浄化』お願いできます?」

「頼んます……かなりかかっちゃって……」

「は、はい……わかりました……がんばります……」


 ヨウカさんも顔をひそめながら『浄化』を二人にかける。なにやってたんだろ……この辺で姿が見えなかったな。

「ジンパチさん、一応成功……したと思います」

「やはり、『腐る』だけでなく、発酵もOKな感じでしたね。やってみたら発酵についてのガイドがスキル解説に追加されました、カタシさんの言う通りで、やらないと解説が追加されない仕様みたいですね」

「それはよかった……これなら色々とできそうですね」


 二人に話を聞くと、トイレの肥溜めと落ち葉などを混ぜて『腐る』を発動したら熱を発した後……堆肥になった……これはしっかりと発酵したと判断して戻って来たみたいだった。ちょっと臭いのは運ぶときにかかっちゃったらしい……まぁ、外にある簡易トイレは汲み取りを前提とした作りにしてなかったからなぁ……

 ジンパチさんを中心にトイレの堆肥利用を考えた設計に変えることになった。

 今のままだと砦の見張り台から下に落として、下の石のプールに入れるだけだったからなぁ……


 ハツコさんが興奮した感じで語り出す。

「これだと食料……大豆を発酵させて納豆とか、醤油とか……味噌とか……酒とか……色々つくれますね」

「それはうれしいわねぇ……『家事』スキルでレシピが表示されるかしら……あら、出るわね……」


 アヤノさんが空中を眺めて何やら考えている……おそらくUI表示で色々出てるんだろうなぁ……発酵食品だらけになるのか? 今後は?



「ただいまもどりました!」

「もどりました……」


 ショウコさんに連れられてスキルのテストに行っていたカンコさんが戻ってくる。何やらヘロヘロだな……SP使い切りそうな感じか?

「大丈夫ですか?」

「大丈夫です……調子に乗りすぎました……ショウコさんいなかったら死んでたかも……」

「面白がって止めなかった私も悪いんですけどね……」

「いやーすいません、上に投げた石と『位置交換』し続ければかなり上の方の枝まで行けると思ったんですが、頭がぐワングワンし始めたら落ちちゃって……」

「びっくりしたわよ……突然落ちるんですもの……」


 どうやら、『位置交換』は想定していたスキルそのままだったようだ。

 本人は自分の位置と止まっている何かを交換できるだけと思って勘違いをしていたようで、投げた石と自分の位置を交換したり。

 人と人同士を交換、物と物同士を交換……出来るとは思っていなかったようだった。

 それにしても……かなりズルい系のスキルだな……瞬間移動だよね。

 話を聞いていると、瞬間移動すると、想像していた通りに三半規管が狂うらしい。慣れが必要の様だな……訓練で克服できるもんなのか?

 試しに俺も『位置交換』をしてもらったが、確かに移動した瞬間に眩暈がする。これは相当な訓練が必要そうだ……


「あ、あと面白い発見も出来たの……まだいける?」

「まだ大丈夫ですね……見ててくださいね。この妖魔の槍と地面の土を『位置交換』をワールド座標でします……えいっ!」


 カンコさんが『位置交換』を発動すると、突然妖魔の槍の形の土が出現した。

 それと同時に土の槍が崩れていく……

 ……もしかして、槍の形状がそのまま位置交換されたのか?? 

 試しに地面を掘ってみると、中からは妖魔の槍が……これはすごいな……


 ジンパチさんとカンジさんがその様子をみて目を輝かせていた。

「これはすごいですね……型取りが簡単に行えるかもしれませんね……」

「ほんとですね、いきなり石膏を流し込んで固めて……中身だけを『位置交換』すれば……手間が減りますね」

「鉄を溶かせれば……大量生産も……型も取り放題……って感じですね……これは……色々なものが作れるかもしれません」


 カンコさんが両手をあわせて、こちらも負けないくらい目を輝かせていた。

「……まさか……『位置交換』で拠点づくりに貢献できる? 斥候とか、戦闘しないと駄目かと思ってました……」


 カンコさんが本気で安堵している感じだった。戦闘はやっぱり嫌か……そうだよなぁ……ずっと引きこもってたくらいだもんなぁ……


 夕方には鍛冶炉の稼働を開始する。炭をぜいたくに使って炉の温度を上げる。いつのまにか風を送る「ふいご」なども作られて実用化されていた。

 カンジさんがやっと『鍛冶』のスキルができる! と感動しながら鉄を熱していく……凄いな本当に鍛冶やってる……ん? 溶かすことはできないのか? ああ、いつだか動画で見た事のある刀匠みたいなことをやるのか……叩いて伸ばして……鉄のインゴットができるんだな……ここから剣を作るのか……やばいなこれ、音、かなりでかいな……大丈夫か??


 俺は思わず城壁へと登り周囲の警戒を始める。

 まぁ……近いと大きいが……少し離れればかなりマシに……って、大丈夫かなぁ……音が周りの森にこだましてるぞ……


 警戒する中、カンジさんがどこかで見たような刀の刀身を作成する。表面は綺麗じゃないが、きれいな刀の形をしている。

 すごいなぁ……経験なんてないっていってたけど、スキル補正であそこまでできるようになったのだろうか……

 ん? なんか研いだりして大変みたいだな……そういえば、いつの間に鍛冶の道具を作ったんだろ? すごい本格的な道具に見えるけど……ジンパチさんにしては精巧すぎるな……もしかして百人脱落記念のやつか?


 そんな事を考えながら警戒していると、すごい速度でナオエさんとウィンディードさんがこちらに接近して俺の隣に降り立つ。


「どうしたの? なにかあった?」

「……音が聞こえたから来てみたけど……もしかして……鍛冶でも始まった? ああやっぱり……」

「スゴイ! ブキ! ツクレル!」


 ウィンディードさんがカンジさんのしている事をすぐに理解してくれたようだ。

 やっぱり鬼人族も同じようなことしてる感じだな。

 それよりも、二人が想定よりも早く帰ってきたことが気になった。


「結構遠くまで聞こえてた?」

「……うん。もう少し周りの妖魔とか魔獣を狩ってからにしたい気もするけど……なんで今日一日でこんなに砦が城塞化してるの?」

「ああ、それはいろいろな人のスキルが良い感じの相乗効果を生んで……こうなったのかな?」

「すごいものね……この辺一帯砦化しちゃう?」

「それも手かもね、砦の中で野菜も作って、砦だけで全部完結するリサイクル生活……」

「本気でやる気なのね……」

「もちろん」


 おそらくこの城塞が完成すれば……最後まで生き残れる可能性がかなり高くなる。

 ドロップアウト組を集めてここで頑張って防衛できるようにすれば……

 こんな辺境の地までやってくる敵対的プレイヤーが来なければ……そう願うだけだな。


 §  §  §  §


 夕方になる前に仲間のSP消費が激しかったため早めの休息となった。


 ウィンディードさんが講師になって魔法の基礎訓練をしてみるが……

 殆どの仲間が習得する前に、魔法をうまく感じとれていなかったようだ……

 リンカさんと、カンジさんが『灯の魔法』で指先に火をつけただけだった。


 ウィンディードさんがちょっと悩み、『風の塊』の魔法を新たに教えてくれる。

 ナオエさん、タチキさん、ライラさんの三人が『風の塊』の魔法を使えたようだった。

 どうやら得意な属性がある……そんな感じに思えた。

 俺? 俺は魔力を感じただけだった。頑張って『灯の魔法』だけは使える様になりたいな。火をつけるのが楽になるし。


 夕ご飯までは自由時間になり、各々がスキルをテストしたり、魔法を頑張ってみたり、ウィンディードさんと鬼人族語の語学学習をしてすごしていた。

 ぶっちゃげ、俺たちが鬼人族語を覚えるよりも、ウィンディードさんが鬼人族語辞典を活用して日本語を覚える方が早いようだった。片言の日本語だったが段々と語彙も増えてわかりやすくなっていく……あっちは毎日日本語をヒアリングしている様なもんだから……上達するのは早いよね……


 夜ご飯はナオエさんが海で獲ってきてくれた焼き魚尽くしだった。

 洞窟組は久しぶりの魚に涙を流しながら喜んでくれた。

 なんか……やっぱり米と魚と醤油のコンボは……サバイバル生活をしていると感動レベルなんだなぁ……あちらの世界だと全然感じなかったのに……慣れとは怖いもんだ……


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