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「バトロワ」無視してサバイバルライフ ~デスゲームに巻き込まれた俺は「攻略」しなかったら最強になってた件  作者: 藤明
3章 安全な場所を求めたはずなんだけど?

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第58話 洞窟組合流

 俺たちは拠点にたどり着く。


 砦に至る道の全部の地面をプレスしたのか、大分歩きやすい道になっていた。区画整理っぽい事もしている感じだな。

 拠点を整備していたリンカさんがこちらに気が付く。そのわきではタキチさんが何かをしていた様だが作業をやめてこちらの方を見る。


「おかえりなさい!! みんなー救助組が戻ったよー!!」

「良かった! みんな無事で……って、え? カンコさんが……歩いてる……」


「タチキさん、ご心配をおかけしました。治していただきました」

「そ、そうなのか……凄いな……」


 いち早く出迎えてくれたタチキさんが驚いていた。

 彼はあの重症の状態を何とかするために洞窟の隠れ家から討って出てたはずだから……まぁ、不思議だろうなぁ……


「ショウコさん、お疲れさまでした……一体……これは……」

「詳しくは後で話すわ、それよりも……」


 アヤノさんがボロボロで小汚い状態の洞窟組を見てどうしたものかと考えていた。

「あなた達……遠路はるばる……のところ申し訳ないのだけれども、ちょっと綺麗にしてから砦に入りましょうか……」

「私の『浄化』でやっちゃってもいいけど、今日はかなりSP使ったから……ちょっと人数多いかも……出来るだけ汚れを落としてから来て。ごめんなさいね」


『浄化』使いのヨウカさんも、普段はしない険しい顔をしていた……いつもニコニコはきはきなのに……

 もしかして……相当臭いのか??? もしかして俺の鼻おかしくなってる?

 何か……泥遊びで帰って怒られる子供の気分になってきた。


 夕暮れの中、川の水を汲んだり、直接川に入って衣服を洗ってもらう。気がついたら川の中に女子用、男子用のついたてが出来上がっており、裸になってもお互いがのぞけないようになっていた。

 洞窟組は、全員もれなく初期の探検家のベストをそのまま着ていた。下着やインナーに関してはかなり薄汚れていた。

 川の水で洗ってもらうと、夕日で見えにくいはずなのに汚れがじわっと川に流れるのが分かるくらいだった。20日分の汚れがどれくらいなのかを知った……まぁ洞窟暮らしだもんなぁ……水も飲む奴だけ汲みに出てたっぽいし。

 アヤノさんが気を使ってぼろ布を全員に渡し、石鹸の実でごしごしと服や体を洗っていってもらう。泥ですすけたのがどんどん落ちていく。

 全員かなり体が細い気がする……やっぱり食糧難だとこの若い身体でもああなるんだな……


 俺は水を含ませた布で汗ばんだ身体を拭いた後、拠点の方に入る。

 門をくぐると景色が一変していた……そこら中に木材が置いてあるんだけど……しかも無垢材で新しい?

 カットしたのかこれ? すごいな……木材屋に来た気分だ……木材のいい匂いがする。

 ……おかしい。なんでもう使える状態なんだ?? スキルか? 鬼人族からの融資?


「ジンパチさん……これ、どうなってんですか?」

「ああ、……本当にすごいですよね。タチキさんの『切断』とカイトさんの『回転』ノコギリでゴリゴリ削ったり切ったりしたらこうなってしまって……本当はここから乾かしておかないといけないんですが、ライラさんの『乾燥』でかなり効率よく、使えるレベルまで水を抜いていただいて……もう建築に普通に使える木材になってますよ……ハハハ」


「……え?」

「……現実世界の常識が飛んでいく話ね……」

「ええ、本当に……木材で家や家具が作り放題になりそうです……植林もしておかないとですねぇ……」


 隣で聞いていたナオエさんも呆れた感じになっていた。

 確か……うろ覚えの知識だと、切ったあと1年くらい置くとかじゃなかったけ……曲がるとか何とかで……その辺をガン無視か……スキル恐ろしや……

【本当に偏ったスキルですよね……あの方の気まぐれで決めたのでしょうが……】

 ああ、やっぱりアーゼさんは絡んでないのか、絡んでたらもっとまともなスキルになりそうだもんなぁ……

【いい意味とも悪い意味とも取れますね】

 ……便利だけど不便だもんね、今のスキルって……


 夕飯の準備をし始めると、洞窟組の目が輝きだす。準備している段階から良い匂いがするもんなぁ……

 あれ? アヤノさんのまわりが木造キッチンみたいに……あれ? なんか現代的な包丁やらボールやらがある気が……

「これも作ったんですか?」

「いえ、100人脱落記念でもらったんですよ。キッチン道具欲しいって思ってたらまるっと……これだけのものを」

「……すごい……太っ腹ですね……」

「ええ、私だけこんなに……他の子たちはあんまり言ってくれないですよね……貰ったもの」

「……そうなんですか?」

「リンカちゃんも言いたく無さそうだったし、サツナちゃんは「ここまで来て嫌がらせか!」って絶叫してたわね……」

「……そうなんですね……」

「日本語の本なんて久々に見たのだけれども……受験の参考書に見えたわね……」

「……うは……」


 そういえばナオエさんも教えてくれなかったんだよなぁ……

 あの晩に考えていた内容に対して支給された感じなのか……

 俺も話せれば楽なんだけどなぁ……って思ったから「鬼人族語の辞書」なんだろうけど。


 洞窟組だけではなく、拠点組も含めた全員の目がランランとしていたので、自己紹介をしてからのご飯……にしようとしたが、洞窟組の目のやばさが増したのででやめにする。

 とりあえずご飯を先に食べてもらう事にした。今日はオーソドックスな生姜焼きの様な味付けのイノシシ肉定食だった。気持ち、肉がかなり、いや大幅に増量されている。肉はあまり気味だから早めに消費しないとだめだったっけ……

 それにしても……滅茶苦茶うまい。

 そして例のごとく、洞窟組が泣きながら熱々のご飯を食べる……俺もあまりのおいしさにちょっと涙が出てるかも……


 食は人の心を救う気がした。


 洞窟組のハツコさんがご飯を食べたあと、そろそろ自己紹介というタイミングで中央の机の真ん中に来る。

「ご、ごめんなさい、これ、みんなで食べましょう!!」


 彼女が四次元収納ポーチから、紙の箱に入った何かを取り出す。

 あちらの世界の……ケーキ?

 その場にいたものが興味深そうに見守る中、ハツコさんが箱を開けると、その中からは見事なイチゴのホールケーキが出てきた。

 久々に見るイチゴと生クリームが輝いて見えた。

 あれ……よだれが……あれ? そこまで甘いのは好きではなかったはずなんだけど?


「あ、俺も、自分のも食べてください!!」

 こちらも洞窟組のケイさんが、四次元収納ポーチから皿を取り出す。

 皿の上には……あれ? ドリアと……ぴ、ピザだ……ピザか……あれ? どこかで見たような……お腹がいっぱいなのに腹が減ってきた……


「そ、それは……」

「なんでこんなところに、サイゼリアが……」

「自分、あの晩、食べたいって思ったんっス! ひもじくて……」

「私もです! 死ぬ前にホールケーキをドカ食いしたいって! 思っただけなんです!」


 ……なるほど……100人脱落記念の支給品……だったのね。

 欲望に忠実なものをくれた感じか……自分のものは全部食べていいとは思うけど……

 どうしてもと言う事だったので、アヤノさんが綺麗に全部を18等分して皿に分ける。

 ドリアに関してはスプーン一杯分のとりわけだな……だが、よだれが止まらない……


「分けてくれた二人に感謝しましょう」

「「「いただきます!!」」」


 全員で分けたので本当に少しだけの量だったが……涙が出てくるほどおいしかった……

 ピザの一口がこんなに美味いものか……ドリアのソースがうまい……生クリームってこんなに美味かったのか??

 ウィンディードさんもおいしくてびっくりしているみたいだな……


 ……はは、ほんとに旨いや……懐かしさも出てきて……何とも言えないや……

 あれ、視界が歪んでる? 泣いてるのか俺?


 それから夜も更けてくるころに自己紹介がやっと始まる。

 夜でも、ライトさんの『光る』のおかげで、夜の工事現場のように周囲が照らされていた。発電機の音はしないから不思議な感じだ。

 ちょっと明るすぎて周りで目立つかもしれないな……今日は見張りは交代制だな。


 自己紹介は名前と出来る事、できれば「スキル」の内容を話してもらった。

 そこまで隠そうとする人はおらず、この場で役立とうと思う人間ばかりでちょっと安心した。

 何となく話し方や自己紹介の仕方でその人の年齢が分かる気がするな……

 見た目はみんな18歳だけど、やっぱり中身の年齢に行動や発言は引っ張られるものなんだなぁ。


 それから新規組の『スキル』の活用方法について話し合いが行われる。

 全員がそこまで『スキル』上げを頑張ってやっていなかったようなので『自動スキル上げ』の方法を伝える。

 相変わらず方法を教えると驚くのと同時に後悔する感じだな。まぁ、俺も教えられたら……今まで過ごした時間がもったいない気がするもんなぁ……

 実はマル秘情報レベルなのかもしれないけど、彼らのスキルがどれくらいまでパワーアップするか試さないと、今後の予定が立てられないからなぁ。


 新地ケイさんの『地形操作』は進んでいなかった堀づくりに役立ちそう……というより、拠点全体の土台を彼に作ってもらって、リンカさんの『プレッシャー』でプレスすれば……完璧なんじゃなかろうか? なんて街づくりに最適なスキルなんだろう。最初からいて欲しかった……


 草田ハツコさんの『腐る』も、もしかしたら発酵もいけるんじゃないか? という話になり、明日からの検証がスタート、それ次第でどうするかを確認することになった。発酵食品……もしかしたら酒もつくれるかもかぁ……


 八甲ライトさんの『光る』は、明るすぎて方向性に問題ありなので、一旦、反射板などを用意して光の方向を制限して運用した方が良いかも……とのことになっていた。あとは修練次第でレーザーになるのでは? との話も合ったが、色々試したけど今のところ駄目だったらしい。スキルレベルを上げないとどうなるかわからないな。


 伊地カンコさんの『位置交換』は本当に色々使えそうなので、明日から色々なアイディアを試してもらう事に。漫画の知識によるアイディアが出まくるが、ジェネレーションギャップを感じる事になった。世代で見ているマンガが違うんだなぁ……やっぱり。全員がナルトを見ているわけではなかったようだ。


 伊田カイさんの『解体』も何に対しての解体かよくわからなかったので、ジャンク品で色々と試してもらう事になった。素材分離できるスキルだとうれしいんだけどなぁ……

 妖魔の素材、大量にあるからなぁ……


 §  §  §  §


 夜も更け、拠点中央にある砦の天幕か貼られた部屋に、男女別々に分かれて休息をとる。壁は作ったけど天井は全部作って無いんだよね。外壁優先だったから。

 洞窟組は疲れたのか、藁と麻のシーツに横たわると一瞬にして眠ってしまった。俺は眠るのを見届けると、一旦、見張りのために外に出る。

 ライトさんが自動スキル上げのために出したままにしてある『光』で砦の内側の敷地内は結構な明るさだった。余裕で「鬼人族語辞典」の文字が読めそうだな……明日SP切れになってないと良いけど……


 俺は月明かりで照らされた城壁の上を歩く。視線の先にはナオエさんが月を見上げながら座っていた。

 彼女の察知スキルならもう俺の事は気が付かれてるよな……ナオエさんはこちらを見ずに話しかけて来る。


「……ねぇ、このままこの拠点をしっかりと作ったら……最後まで生き残れると思う?」

「うーん、かなりの可能性で……そうだと信じてる。だけど、前にも言ったかもしれないけど、スキルを何十個も持ってる人間に襲われたり、プレイヤー百人くらいで一斉に襲われたら終わりになるとは思うよ」

「……そうだよね……」


 俺は気になっている事を聞いてみた。今後の事を考えると今聞かないと駄目だと思った。

「ナオエさんは……妖魔の砦、忍び込むだけじゃなくて、妖魔を……積極的に狩ってるよね?」

「……うん。やってる」

「……安全のため……だけじゃないでしょ?」

「ステータスアップのためね。槍も回収したいのもあるけど……」


 ステータスアップ……自分だけが生き残る……仲間も守る……それだけの目的にしては「妖魔の槍」の保持数が尋常じゃなかった。

 武器庫に行っただけじゃ……と、言うより、あれだけ移動してくる妖魔がいるならば武器庫に余分な武器は無いだろう……とは思っていた。


「私ね……スキルを持って帰りたいの。あちらの世界に」

「……」


「こっちの世界は……仮初の世界でしょ?」

「……そうだけど、違う世界の……現実に来たわけだし……バーチャル……ではないと思う」

「そうね……ウィンディはどう見ても生きた人間だものね……」


 ナオエさんが向き直り、俺の方を真剣なまなざしで見てくる。

「ねぇ、拠点が落ち着いたら……私と一緒にこの島を回ってみない? 多分だけど、あと少しすると餓死するプレイヤーが出てくると思う。スキルオーブを回収するチャンスになると思うの」

「……たしかにそうだね……」


 支給された食料が2週間分、緑豊かなこの島だから水は近くの川の水を……蒸留せずに飲めば一応は水源は確保できる。その後は体調不良になるとは思うけど……

 まぁ、そうすると……3週間もすると、食べ物が無いと……そうなるんだろうなぁ……


「スキルオーブを回収して数だけトップ3にしておけば……それで逃げ回るか黒結晶を壊す……そうすればスキルを持って帰れる……戦いに加わらなくてもいけると思うの」

「確かにそうだけど、どこにあるか分からないしなぁ……」

「なるべくアクセスし易い場所に陣取って、ログを見たら急行……ダメか、北海道くらいあるんだものね……やっぱりプレイヤーを探知する何かのスキルが欲しいね」

「魔法とかでは無いのかな?」

「ウィンディに聞かないとダメか」


「あとは鬼人族のネットワーク使ってプレイヤー探してもらうとかかな?」

「それも良いかもね。言葉早めに覚えないとか……」

「そんな時のために、これがあるぞ?」


 俺は四次元収納ポーチから「鬼人族語辞典」を取り出す。


「なにそれ……え? 例の辞典……ほんとに辞典なんだ……」

「そ、特典で貰えたやつ、なんか、簡単な文法も載ってた」

「貸して……うーん。体育会系には辛い内容ね……」

「あちらの言葉でも書いてあるから、意思疎通はしやすくなるはず」

「あ、ウィンディ」


 ナオエさんの視線の先にはフクロウを放つウィンディードさんがいた。

 見張の時間を使って早速「鬼人族語辞典」の使い勝手を試してみるか。


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