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「バトロワ」無視してサバイバルライフ ~デスゲームに巻き込まれた俺は「攻略」しなかったら最強になってた件  作者: 藤明
3章 安全な場所を求めたはずなんだけど?

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第57話 洞窟組の護衛

 洞窟組がご飯を終えると、拠点にあった道具を全部しまってもらう。

 なんだかんだで色々と拾っていたみたいだな……食器やちょっとした武器等を持っていた。どれも拾い物らしく随分粗末な感じだった。

 探索に出ないとやっぱり良いものはゲットできない感じだな。

【本当に落ちていたモノを拾っただけのようですね……道具の劣化具合が凄いです】

 ……なるほどね……使えるものとかは巡回している妖魔が拾うから、本当に要らないものって感じか。


 まだ日が明るいうちに出発する。午前中なので時間は多分大丈夫だろう。夕方前に到着できるはずだ。

 隊列の先頭は索敵能力があるナオエさん、最後尾が俺。その間を洞窟で救出した五人とショウコさんが集まって移動してもらう。ウィンディードさんは周囲を警戒しながらグルグルと回って自由に動いてもらう予定だ。

 全員に妖魔の槍を持ってもらい、最低限敵が来たときは相手に向けて振り回さないように構えるだけにするようにお願いする。少しでも時間を稼いでくれればナオエさん達が何とかしてくれるだろうからなぁ……


 万が一の時はショウコさんが逃げ遅れた人間を『飛行』で連れ出してくれる算段になっている。

 おそらくヤバい魔獣でも来ない限り大丈夫だろう。来るときには見かけなかったから……多分大丈夫……大丈夫だよな??

【それはわかりませんよ。ウィンディードとナオエにしっかりと索敵をしてもらうしかありませんね】

 ……そこも人頼みかぁ……俺にも索敵能力あればなぁ……


 それにしても、彼らはとんでもない所に拠点を構えてたんだな……崖……踏み外したら落ちて死ぬな……『固定』でなにかを『固定』しながら歩きたい気分だ。登山用のループとザイルとかほしい……


 拠点への道中は安全とは言えず、狼の集団に出くわしたり、妖魔の巡回に発見されたりしていた。

 隠れてやり過ごすほどの機動力もスキルも無かったので、ナオエさんが見つけ次第、彼女のハンドサインに従ってウィンディードさんと俺が遠距離攻撃で妖魔や狼などを駆除していく。

 洞窟組は頑張って声を出さすにいてくれるが、あまりの一方的な強さにびっくりしているようだ。

 人によっては妖魔や狼が死ぬところを直視できない様で目を背けていた。そりゃ戦えないよね……


 しばらく歩き続けるが、思ったよりも洞窟組の体力が無いようで頻繁に休憩を入れていく。

 やっぱり俺達のステータスがかなり上がっていたようだ。今は全く疲れないし……

 洞窟組はほぼ全員が見るからにもの凄くへばっている……あれが昔の俺なんだろうなぁ……最初はかなりしんどかったもんなぁ……


 それから大した被害も無く谷を越える。問題は洞窟組の疲労度になったな……

 先行しているナオエさんが緊急のハンドサインを送ってくる。メンバーに緊迫する空気が漂い、手筈通りに洞窟組が身近の木陰や岩の影に隠れる。


 俺はナオエさんの方に気配をなるべく消して近づく。彼女の視線の先には見た事も無い恐竜がいた。

 どう見ても二足歩行の肉食恐竜に見えるな。トラみたいに体に模様がついてる。迷彩柄なのか? 体の高さが2メートル以上ある……ヤバいか?

 ウィンディードさんも気配を殺して近づいてきた様で、いつの間にか隣にいた。彼女も、あれはダメ、危険だとサインを送って来る。二匹? 見える範囲以外にもいるのか?

 彼女でもダメだとすると……迂回するしか無さそうだな。


 バキッ!!!


 ん?

 何か今、後ろで盛大な……枝の折れる音が……

 後ろを恐る恐る見てみると、草田ハツコさんが涙目になりながらこちらを見ていた。運動音痴っていってたから……周りが見えないタイプなんだろうなとは思ってたけど……思いっきり踏んじゃったのね……足元で大木の枝が割れていた。


 ナオエさんと俺は肉食恐竜の方を見る……まぁ、こっち見てるわな……気が付くよね……ふんふんと匂いを嗅いでたし……洞窟組からはかなりの匂いがしているわけだし……


「やるよ!!」


 俺は四次元収納ポーチから妖魔の槍を次々に取り出して、肉食恐竜に投げつける。『自動追尾』で目や腹、足の膝などを……くそっ、不意打ちじゃないとこんなもんか? 相手が早すぎて頭が『目標』にできない……全部『腹』が『目標』!! 不意打ちじゃないと駄目か……動く標的をロックする練習をするべきだった!


 俺の投擲を見たあと、ウィンディードさんが風の弓矢を放つ。肉食恐竜は何かを感じ取ったのか、激しくバックステップを踏んで横に走り出す。

 エーテルってやつを感知したのか? 自動追尾した妖魔の槍も尻尾ではたき落とし、腹にあたるはずだった3本の槍は、トカゲらしい丈夫な背中の鱗にはじかれてしまう。それでもウィンディードさんが隙をみて二回目に放った風の矢は突き刺さった様で一瞬体勢を崩す。


「ギエェエエエ!!! グェェエエエエ!!」


 あ、やば怒ったか??

 とりあえず足止め……あ、足止め用の武器貰ってたんだった……

 俺は四次元収納ポーチから、狩猟用のボーラを二つ取り出し、『自動追尾』で突っ込んでくる肉食恐竜の足目掛けて投げつける。

 またもや何かを感じ取った肉食恐竜が高くジャンプするが、『自動追尾』のかかったボーラが肉食恐竜の足に誘導されて当たり、ロープが重りで振り回されて綺麗に絡まり、着地というより落ちる感じで盛大にこけて地面に突っ込む。


 チャンス!!


 そう思った瞬間に、ナオエさんの『伸びる槍』が柔らかそうな胴体に突き刺さり、風の魔法を纏ったウィンディードさんがすさまじい速度で接近して剣を振るって首を半分切断する。


「グェェェ……」


 首から物凄い血が吹き出る。あそこは……一撃で致命傷なんだろうな……自分の首がひやりとした気分になった。ウィンディードさんの剣術を初めて見たかも……ってか早い……恐ろしく早い……剣の軌跡がほとんどぶれて見えなかった……

 肉食恐竜はしばらくのたうっていたが、すぐに力尽きてぐったりとする。


【魔獣タイガー・ヴェロキラプトルを討伐 HP+0.21 MP+0.12  STR +0.11 DEX +0.15 AGI +0.21 INT +0.13 MND +0.14  SP+0.19 ……】


 ログを見る限りはかなり……あれ? 強い気がするんだけど……あんまり上がらないのね。

【討伐時にその周辺にいたプレイヤーでエーテルは割られますので、一人でしたら八倍ですね】

 なるほど……一人ではやりたくないな……槍がはじかれるし、動きが早いと『目標』のロックが間に合わなかったし……俺一人じゃ勝てないな……うん。


「ふぅ、よかった……その投げロープみたいの……いつの間に?」

「ああ、ジンパチさん達が開発してくれたやつ。魔獣には有効っぽいね」

「『自動追尾』じゃなかったらよけられてたわよね……」

「……確かに、反射神経がめちゃくちゃいい……『自動追尾』で目とか頭とかロックできなかったよ……」

「なるほど、あなたのスキルも動きが早くて小さいのはやりにくいのね……」


 確かに、ジャンプして躱されていた……槍もはたかれていたし……どこかのモンスターを狩るゲームって、ゆったりした動きだったんだな……現実のトカゲは早すぎる……こっちの動きを見てリアクションで反応してくるし。反射神経が良すぎなんだよなぁ……


「す、すみません……私のせいで……」

「あ、気にしなくていいです。なんかもう気づかれていたので、時間の問題だったでしょう」

「……まぁ、そんな感じだったかもね……随分と優しいのね……カタシ君?」


 ナオエさんの目がジトっとしてきた……最近すぐに怒るんだよなぁ……女性には厳しいタイプなのか?

 俺が弁明しようとすると、ウィンディードさんが周囲を気にした感じで俺たちに近づいてくる。


「ナオエ、カタシ、キケン。ココ、ハヤク。イク」

「え、あれは? 回収無理?」

「……恐竜って群れたりしないのかな……」

「群れるだろうね……」

「ツガイとかいるんじゃないかな……」


 俺たちの緊迫感のないやりとりに、ウィンディードさんの表情が焦りを感じている様に見える。

「ヴェロキラ、ナカマ。タクサン、イル……オオイ」


 どうやらそうだったみたいだ……今の状況だとちょっとつらいよな……

 洞窟組でも雑談が始まっていたので皆に静かにというジェスチャーを送る。

 興奮していた目の色が一気に冷静になり、全員が静かに身をひそめる。


「行こう」


 ナオエさんの先導で移動が再開される。なんだか全員の足が速い気がする。遠くの方でトカゲっぽい鳴き声が上がり始める。

 ちょっとヤバいかもな……血の匂いを嗅ぎつけたとかか?? サメじゃあるまいし……


 しばらく小走りで走り続けると、ウィンディードさんが俺の方に寄ってくる。

「カタシ、チカク、ヴェロキラ、クル。ワタシ、トメル」

 やっぱり来たか……彼女だけでも行けそうだけど……足止めすれば、さっきみたいに楽にスパッとやってくれるよな?

「……俺もやる」


 ウィンディードさんに意図は通じた様で、二人でゆっくりと隊列から外れ、後ろで離れた位置で移動をし続ける。

 ナオエさんも気が付いたようだが、俺のハンドサインを見て彼女は洞窟組を率いてそのまま突き進んでくれる。ほんと判断が早くて助かる。


「キタ! ヴェロキラ、オトコ!」

「ん? オスか??」


 視認できる位置に出てきた『魔獣タイガー・ヴェロキラプトル』は先ほどの肉食恐竜よりも一回り以上は大きく見えた。

 ……一回り大きいだけでヤバい雰囲気を感じる……生物的な恐怖だろうか?


 グェェエエエエ!!!!!


 なんか俺たちを見つけた瞬間に怒りの視線をぶつけてくる。さっきのはツガイのメスだったのか?

 でかいと迫力ありすぎるな……強大な足の一歩ごとに地面がどすどす揺れる気がする……


 俺はジンパチさんにもらった「重りつき鋼鉄ワイヤー」を木の間に三つほど投げて『固定』して誘う様にしてその前に立つ、突っ込んでくる間にも妖魔の槍を地面の岩や木の幹に『固定』して即席の槍衾を作成する。あとはジンパチさんの『柔化』があると嬉しかったんだけどなぁ……


 ウィンディードさんも意図を組んでくれたようで、トラップの前で待ち構えてくれる。

 凄い風の魔力を纏って両方の手に集中させてるな……風の弓矢ではないようだ。


 俺は緊張しながらもこれからの行動のイメージを膨らませる。

 丁度足場は岩がむき出しになっている。困ったら恐竜の足と岩の岩盤を『固定』して逃げる……SPにはまだかなり余裕がある。足りなかったら余分に消費すれば行ける……行けるはずだ!

『魔獣タイガー・ヴェロキラプトル』がこちらに向かって突進してくる。目が俺をロックしている気がする……俺が獲物認定なのか??


 ドスン!ドスン!ドスン!ドスン!!

 

 ……わかっていても巨大な恐竜の突進は怖いな……怖い……地面が本気で揺れている気がする……

『魔獣タイガー・ヴェロキラプトル』はトラップの位置に来ると、槍衾に気が付いた様でジャンプする姿勢を取ろうとする……が、手前の「鋼鉄ワイヤー」に全力で突撃する結果になる。彼の目にはワイヤーは全く見えていなかったようだ。


 バチン! バチン!! バチン!!


 張っていた「鋼鉄ワイヤー」 3本が全部切れた音がする。

 だが、『魔獣タイガー・ヴェロキラプトル』の至る所で血が飛び散る。

 相手の皮は切り裂いたのか? 血が飛び散りすぎて良く見えない!?


 ドスーン!!! グサッ! グサッグサッ!! ブチッ!! バキッ!!! バギバギキッ!!


『魔獣タイガー・ヴェロキラプトル』は強烈にそのまま転んで槍衾にそのまま突っ込む。

 そこら中血だらけで、かなりの数の槍衾の槍も至る所に突き刺さったかのように見える。

 それでも怒りに満ちた恐竜は突き刺さったまま立ち上がる。


 グォオオオオオオ!!


 凄い咆哮だ!! なんて体力と生命力だ! 空気がビリビリする気がする!

 その瞬間ウィンディードさんの魔力が爆発して風の魔法が発動する。


 ドン!!! フォンッ!!!!


 咆哮した姿勢のままの『魔獣タイガー・ヴェロキラプトル』の丸太ほどもある首を文字通り切断して吹き飛ばす。

 ……なにそれ……風の魔法凄いんですけど……ウィンドカッター的な……かまいたち??

 現実のウィンドカッター……エグイな……

 首の切断面から大量に血が噴き出し体が大きくよろめいた後倒れる……


 ズーン!!!


 光の粒子が俺の方に流れ込んでくる……エーテルだな……あれ……なんか俺にだけ流れてくるような?


【魔獣タイガー・ヴェロキラプトルを討伐 HP+1.81 MP+1.32  STR +1.21 DEX +1.35 AGI +1.41 INT +1.23 MND +1.32  SP+2.35 ……】


 頭の隅にログが流れる……凄い強い敵だったんじゃないのこれ? 狼100匹分の強さじゃない?


【頭割りする生物がカタシとウィンディードだけでしたので、プレイヤー一人の総取りになります】


 ……なるほど……ウィンディードさんはもらえないのか……

【この世界の生命体はまた別の仕組みが作用している様です】

 ……俺たちは別枠ってことか、ってスキルがある時点でそうだよなぁ……


 ウィンディードさんが嬉しそうに恐竜の跳ね飛ばした頭と首を指し示す。

「カタシ、コレ、モッテイク」

「お、おう……倒した証……か? でかいけど……持てるな……重い……」


 四次元収納ポーチに頭だけを入れ、振り返るとかなり遠い場所でこちらを心配そうに見ている集団がいた。

 俺は手を振り返し、この場を後にした。


 §  §  §  §


 俺たちは日が暮れそうな夕日の中、拠点への道をゆっくりと歩いていく。

 あれから『魔獣タイガー・ヴェロキラプトル』の襲撃は無かった。だが、たまに襲ってくる狼の集団、妖魔の集団を跳ねのけながら、やっとの思いで拠点が見える位置まで移動できた感じだ。

 集団でゆっくり移動することが、サバイバル生活ではかなり危険で厳しい事を体感してしまったな……獲物が目立つ状態でゆっくりと歩いているのと同じだもんなぁ……今後は対策考えないとな……怪我人を運ぶ様な背負子的な担架を作って、首が折れないようにしてナオエさんが運搬……くらい考えた方が良さそうだ。


 隊列の一番後ろを歩いていたショウコさんが小声で俺に話しかけてくる。

 ……彼女は全然疲れた様子が無いな。たまに移動にSP使ってたりするからだろうか?


「この辺はまだ危険地帯なのでしょうか?」

「安全かと思ってたんですが、やはり気配を察知して集まってきてしまうみたいですね」

「なるほど……これ以上歩みを早めるのは厳しそうですからねぇ……」


 視線の先の洞窟組はもう息も絶え絶えな状態だった。ラプトルの脅威のおかげで無理してでも進もうとしていてはくれるが……

 拠点方向を見ると白い煙が立っていなかった。今日は炭を作ってない感じだな……さすがに自重したか……

 見覚えのある獣道と川の音が聞こえる。お? 我らが拠点が見えてきた……あれ?

 なんか倒れた大木が無くなってる? 木も少なくなってるような……伐採した?


「お、おお、建物!」

「あれが拠点……古城みたいですね……すごい……」

「すげぇ! クッパの城みたいだ!」

「あれなんですか? あれですよね? やっと着いたのかぁ……」

「しんどかった……」

「よかったぁ、夜も歩くかと思ってた……」


 洞窟組が喜び、疲れているはずなのにさらに歩くスピードが上がっていった。

 やっぱり目標があるとモチベーションが上がるか。日が完全に落ちる前に着きそうだな。


 §  §  §  §


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