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「バトロワ」無視してサバイバルライフ ~デスゲームに巻き込まれた俺は「攻略」しなかったら最強になってた件  作者: 藤明
3章 安全な場所を求めたはずなんだけど?

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第55話 拠点防衛戦

 俺は砦全体が見える位置に到着して目を凝らす。白い煙がそこら中から立ち上っていた。

 どうやら妖魔が放った火とかじゃなくて……何か作ってるときに出た煙っぽいな……

 焼き畑とは違うか? もしかして釜戸を作った??


「よかった……砦は落ちてない……と言うより全然大丈夫そうだな」

「そうね、そこら中に岩にぶつされた妖魔がいるし……」

「不自然なところで倒れている妖魔もいるから……リンカさんが吹き飛ばしたのか?」

「なんか、血だまりもできてるね……」

「何をどうやったらああなるんだろ……妖魔が千切れてるね……」

「随分と……グロいわね……」


【だいぶカタシもこの世界に慣れてきましたね】

 ほんとに……妖魔の死体を見ても何とも思わなくなってきたよ……


 砦が無傷な状態なのはわかったが、砦を取り囲む妖魔が多かった。まだ百人近くはいるんじゃなかろうか?

 集団の後ろにいる体の大きめの妖魔が指揮を執ってるみたいだな……なんかさっきの軍隊と比べると妖魔のモチベーションが低いように見える。

 妖魔が砦に登ろうとすると崩れる様に落ちていく……油をぬっていた? 油は無いもんな……もしかしてサツナさんの『滑る』か? 見事に落ちていくなぁ……ん? なんか十字にした槍みたいのを妖魔の集団に投げ……グルグル『回転』して……うわ……妖魔もなんか可哀想に見える……あれがスプラッタの原因か……カイトさんの『回転』だよな? あれ。


「カタシ君、見てないでやろう」

「あ、ごめん、ちょっと興味深くて見入っちゃった……」

「気持ちはわかるわ……ほんと凄い工夫しているのね」


 俺も妖魔の槍を投げ『自動追尾』を行って標的を串刺しにしていく。本当に最初の不意打ちは恐ろしいほど当たる。後ろから順にやってるから殆どの妖魔に気が付かれないし……

 砦の壁の上にいたジンパチさんも援護に気が付いたのか、盾を打ち鳴らして気を引いてくれている。他の仲間も彼の行動のおかげでこちらの行動に気が付いたみたいだな。

 はぐれた妖魔はナオエさんが音も無く近づき、後ろから『伸びる槍』で串刺しにしていく。

 弓持ちや遠距離攻撃持ちはウィンディードさんが容赦なく風の弓矢で貫いていく。俺は倒れた後弓を持ってるのに気が付くんだけど、どうやって見分けてるんだろ?

【エーテル反応を見ているようですね、なるほど……】

 ……ごめん全然わからん……フォースを感じろ的なやつ?? 訓練必要じゃない?


 それにしても、あれだけの大量の妖魔の軍団を相手にした俺たちからしたら、このくらいの数なら楽勝だな……杖持ちもいないし。100匹って少なくないはずなんだけどなぁ……


 って、集中してやってたら物の数分で決着がついてしまった……

 ステータスも少しだけ上がってるな、頭割りっていってたからこんなもんか。


 妖魔の生き残りや残党がいないか気を配りながら、ゆっくりと拠点の方へと近づいていくとジンパチさんとリンカさんが手を振って出迎えてくれる。

「おかえりなさい!! 待ってましたよ!」

「助かったよ!! 戻ってきてくれないかと思った!」

「終わった!!」

「やった!!」

「終わったみたいだぞ!!!!」


 砦の外に顔を出した人間が戦闘の終了に気が付いて中の人間に知らせたみたいだな。

 砦の中で歓声が上がっている。


「ごめん! おそらく俺たちが討ち漏らした奴だ。こんなに行ってると思わなかった」

「あ、そっちじゃないみたいです。どうやら海岸方面から来たみたいで……」

「……あ、銃の音の調査隊……みたいな感じか……」

「ええ、僕たちが調子に乗って炭を大量に作ったために……煙で気がついちゃったんでしょうね……もう止められない感じですが……」


 確かに白い煙がモクモクと上がり続けてるな。

 これ全部……炭の作成なのか? すごい量作ってるんだな……って、炭の作成……焼却炉がたくさんある感じか?

 話しているうちに拠点の扉が開いていく。木の分厚い扉もかなりの攻撃を受けた様で表面が傷だらけになっていた。

 中からは拠点のメンバーが出てきて出迎えてくれた。全員が体形に合った皮鎧を着ている。

 なんだか……たった一日だったけど懐かしい気がする。


「ありがとう!!」

「おかえりなさい!」

「よかった、無事みたいで!」

「大変だったんですから!」


「ただいま! みんな無事みたいで良かった」

「怪我している人はいないわね? 本当に無傷なのね……」

「けが人ゼロですよ!」

「石は結構当たったけど、皮鎧で大丈夫だったわね」


 ナオエさんは感心しているようだな。

 確かに……これだけの数に来られたら矢とかに当たりそうだけど……相当上手くやったのかな? リンカさんが全部『プレッシャー』で吹き飛ばしたんだろうか?


 砦の中に入ると、行く時には見なかったカマドが並び、白い煙を大量に排出していた。まぁ、これなら数キロ先からだろうと発見されるな……よく見ると違う形の炉も作ってるみたいだし……すごいな、たった一日でここまで……さすがジンパチさん。


 俺たちはジンパチさん達に防衛戦の話を聞く。というより、みんな興奮して口々に話し出す。収拾がつかないな……

 話をまとめると、どうやら俺たちが出発した後、炭を作るのかまどと、鍛冶用のかまどを作成し、残った時間を防衛用に『回転』に対応した巨大卍手裏剣や十字槍を作成していたらしい。

 本当は砦の壁のいろいろなところに隠して回転させて防御する……などを考えていたらしいが……


 昨日の夜にフクロウ便で、俺たちからの注意喚起のメッセージで警戒態勢になり、見張りを交代していたら、朝方になぜか海方向から大量の妖魔が来て戦闘が開始、矢や火矢が飛んできたが、今の拠点には木のパーツが少ないのでほとんど被害が出ないので引きこもり、近づいてきたところをアヤノさんの『重量無視』の岩石投げアタック、カイトさんの『回転』スキルを利用した巨大卍手裏剣の『回転』惨殺アタック、あとはトラップ用のパーツを投げて『回転』させて被害を与えていたらしい。巨大な扇風機の刃のついたファンが高速回転しながら飛んで来たら……どう躱せばいいかわからなくなるよな……

 サツナさんがよじ登ろうとした妖魔を『滑る』で滑らせ落とし、それでも登ってきたらリンカさんの『プレッシャー』で吹き飛ばす……などを繰り返していたらしい。

 近接戦闘経験のかなりあったカンジさんが槍と盾を持って登ってくる妖魔を蹴散らしてくれた……とのことだった。

 概要だけ話すとこんな感じだけど、みんな興奮して色々喋ってくれる。飲み会の最後みたいだ。


 守り切った安心感と、妖魔を倒した達成感が入り混じってる感じだなぁ……

 まぁ、全員生き残って大きな怪我もなくて良かった……


「いやぁ、堀を先に作らないと駄目ですね、この高さではひやひやしました」

「まさか妖魔たちが肩に乗って重なってくるなんて思ってなかったし!」

「城壁からはたき落とす装置が必要ですよね!」

「敵が来る方向を絞れるようにしないときついよなぁ……」

「クロスボウ……でかいバリスタ作らないと!」

「連射できるクロスボウとかほしいですよねぇ……」

「大砲も作ろうと思えばつくれそうですよね!」


 戦いを思い出しながらも改善点を出してくれる。海賊から貰った銃は……こんな大群じゃ単発式じゃ意味ないか……


「あ、あの……俺たちはどうすれば……」


 振り返ると、先ほど別れたタチキさんが気を失った女性プレイヤーを背負って拠点の入り口に立っていた。


 ……完全に忘れてた。



 §  §  §  §


 拠点チームは妖魔の死体の処理を始めていた。

 使えそうなものを剥いだら一旦、四次元収納ポーチに入れていた。皆手慣れてきてるな……躊躇なく入れている。拠点周りに死体を置きたくない……って気分もすごい分かる気がするけど。

 臭くなる前に何とかしないと大変な悪臭になるからなぁ……


 タチキさんが背負っていた女性プレイヤーを安全な場所で寝かして一息つく。

「……すごいですね、こんな空いてる砦があったんですね。俺たちも探せば良かったのかな……」

「あ、これはみんなで、スキルでゼロから作ったんですよ」

「……え? スキルで? ……ゼロから??」

「ええ、皆さんのスキルを合わせて組み合わせてやっとここまでって感じです」


 ジンパチさんの説明を聞きながら俺もうんうんと頷く。

 スキルと四次元収納ポーチがあっても結構大変な重労働だもんなぁ……『削る』『重量操作』『柔化』がないとどうしようもないものなぁ……


 考えに耽っていると、ジンパチさんが話しかけてくる。

「あ、カタシさん、この方たちは移住希望者でしょうか?」

「……あ、聞いてませんでした……この近くで妖魔に襲われてたのを助けたら、こちらの砦も大変な事になっていたので」

「なるほど……」


 タチキさんは一瞬の間の後、驚きの表情を浮かべる。

「……移住……できるんですか? ここに!?」

「はい。ここでは管理者の企画したバトルロワイヤルに参加したくない、ドロップアウト組を集めて、クリアまで生き延びるをモットーにした……チームなんですかね? うちら」

「うーん、チーム……運命共同体ですかねぇ……」


 気絶していた女性プレイヤーが目を覚ましていた様で、そのままの姿勢で話始める。

「あの……人を……増やしても大丈夫でしょうか……」

「あ、ショウコさん……よかった……」

「タチキ君、ありがとうね……安全な場所に連れてきてくれたのね……」

「この人たちが助けてくれたんだよ」

「本当にありがとうございます」


 ショウコさんと呼ばれた女性はゆっくりと上体を起こす。まだふらついている様に見えるな。

 SPを使い切った系の症状だな……

「私たちは、このゲームが……怖くて逃げていたのです……同じように逃げ回っている人を集めてゲームが終わるのを待っていたのですが……全然終わる気配が無くて……」

「怪我人も出て動けない人間もいるし、食料が尽きそうになって、仕方がなくショウコさんと食料を探しに外に出たら、妖魔の軍団に追われて……気が付いたらあそこまで逃げて……」


 なるほど、それであそこにいたのか。

「洞窟で仲間が待っているんです……ここに合流しても良いでしょうか?」

「あの洞窟の周りに最近妖魔が増えて、身動きが取れなくなったんだ……重傷者もいるしで……」

 タチキさんが手を握りしめながらじっと地面を見つめる。


 なるほど……例の妖魔大移動の余波を食らっちゃった人達なんだな……

 どうするか考えているとナオエさんが真面目な顔をして質問をする。

「洞窟に残された人の人数は? 私はそこまで多くの人間はこの拠点で受け入れられないと思う」

「五人です、私達を含めて七人です」


 ギリギリのラインかなぁ……恐らく食糧だけだったら受け入れてもあと2か月は余裕で持つ。

 その間にこの辺の海の幸などでしのぎたいから、あの巨大イカをなんとかしないとなぁ……獣は無限に沸くわけじゃないだろうしな……長期戦になるんだったら、そろそろ食べれるものを育てないとダメだろうし……

 それよりも妖魔が来ても大丈夫な砦の完成を目指した方が良いか……すると人足が必要だな……

『植物の成長加速』とか、そういうスキルがあるとうれしいんだけど……そこまでのチートは無いだろうしなぁ……割と全員のスキル……異世界チート並みの人はいないんだよね……想像魔法とかもないし……

【無から生み出すものに関しては制限をかけています。エーテルの消費量が激しいので】

 なるほど……エーテル消費が少ないモノじゃないとスキルにならないのか……

【そうなりますね。あるモノを有効活用することをお勧めします】

 わかった……ありものを組み合わせ……かぁ……等価交換ってやつか?

【等価交換……なるほど、確かにその概念で問題ないかと】

 ……そういう世界かぁ……大分不思議なスキルだけど……


「……また思考に入っちゃったね……」

「待ちましょう。良いアイディアの時が多いですし」

「……あ、すみません……考え事をしてました。助けに行きましょうか。いきなり二十人とかだったら食料が厳しいですが、多分まだ大丈夫なので」


 救出した二人は俺の事を見て驚きの表情をした後本気で顔が緩んでいく。

「! ほんとうですか? よかった……」

「よっしゃ!……あ、すみません……みんなそれなりに役に立つスキルだとは思うんで……戦いには向きませんが……」


 ナオエさんが疲労感の強い二人に瓶入りの水を渡す。

「あ、ありがとうございます!」

「……なんてきれいな水……」

「……水道水みたいだ……」


 彼らは若干涙目になりながら飲み始める。

 水を飲むのを眺めていたナオエさんが俺の方に向かってぼそりとつぶやく。

「最悪、戦える人間で妖魔の砦を落とせば、鬼人族の報酬で食料は手に入ると思うけど」

「えっ?」

「え?」


 ナオエさんの声が聞こえていたジンパチさんの表情が若干固まっていた。多分、俺の表情も固まってるはず。

 ……ナオエさんの考え方がどんどん傭兵、戦士的な思考になっていくなぁ……

「……な、なによ……結構現実的なプランなんだけど?」

「あ、いや、その発想は無かったから……てっきり攻略組に任せるのかと……」

「……ゲリラ戦をすればいけなくはないでしょうが……攻撃の際にはこの砦を捨てないとだめかもしれませんね……」

「なんで?」

「いい的になりますから……」

「確かに……目立ちますね、この拠点……」


 それから拠点メンバーと情報交換を行う。色々なアイディアが出たらしく、昨日は随分と新しい武器などを作ってくれていた様だ。

 ジンパチさんが楽しそうにいろいろな武器を解説してくれる。なんだ? この岩とロープがくっついたようなやつは?


「……ボーラ?」

「はい、この石と蔦で相手の足に絡めて転ばせる道具ですね」

「……これ投げればいいの? 随分原始的な……ああ、でも相手の足からめとるのか……それでこうなって……ああなると……昔、なんかの狩猟番組みたいので見た気もするなぁ……」

「それですね、実際に使われていたかと……恐らくカタシさんの自動追尾で相手の足を狙えば、この前のイノシシくらいの足をからめとって転ばせられるかと……しかも恐らく起き上がれません。引きちぎるほどの怪力が無い限りは」

「なるほど……ありがたくもらっておきます」

「使い勝手を教えてくださいね。改良の余地がかなりある状態ですので、長さとか……」

「わかりました」


「後こちらがテストで、鎧から作った「鋼鉄ワイヤー」です」

「……針金?」

「一応よじってあるので針金よりははるかに強いとは思いますが……カタシさんでしたら『固定』を使って木と木の間に固定をすれば……」

「妨害にはなりそうだな……なるほど、足止めになると……」

「いえ、強度が足りればスッパリと……」

「え? スパッと……え? スッパリ切れるんですか???」

「相手がかなりの速度で移動している場合はおそらく、スパッと行くかと思います。なにしろ『固定』ですので……」

「……たしかに、ワイヤー全体に『固定』かけられれば……漫画みたいなことできますね」

「……できるかと……フフフ」


 それからも話は続いたが、さすがに二人の疲労と、この拠点のメンバーの疲労が強かったので、今日は早めに休むことになった。

 アヤノさんが作った調味料満載の激ウマ料理を食べた二人はボロボロと泣きながらご飯を食べていた。拠点の人間は誰もその様子を冷やかす人間はいなかった。ここの人たちはみんな通った道だもんなぁ……


 やはり食って大事だよなぁ……


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