第53話 プレイヤーの敵はプレイヤー
残敵を掃討するためにアスティナさんと援軍の戦士たちが森の方へと入っていった。
俺も出来るだけ妖魔から槍を回収する。一体何本投げたかわからないくらいだからな……
ウィンディードさんが気を使ってくれたみたいで、残った人手で、まだ折れていない使えそうな妖魔の槍を回収してくれた。
物凄い量になりそうだな……使うときのことを考えて一本一本四次元収納ポーチに入れるのがめんどうだけど……やるしかないな。
槍を頑張って収納していると、ナオエさんが日本人プレイヤーが持っていた剣と盾とブーツを持ってくる。
ブーツは化学繊維っぽいな……武器と盾に関しては合金、機械で作られたような製品に見える。
「なんか文明が違う感じね。支給品なのかな?」
「そうなのアーゼさん?」
【……これは魔獣撃退ポイントの特典ですね】
「そんなのあったんだ……」
マニュアルに書いてあったのか? 読み込んでるから見落とすわけないと思うけど……
【……あ……これは以前の仕様でした。すみません】
以前? 今は違うのか……
ナオエさんが四次元収納ポーチに剣をしまう。
「ねぇ、この剣の表示おかしいわ、斬撃の剣+8とか何だけど……」
「……まるでゲームみたいだな……」
俺も四次元収納ポーチに盾を入れてみる。理力の盾+15って出てるな。
【……どうやらテストプレイヤーらしいです……】
「テストプレイヤー?」
「なにそれ? 詳しく!」
【……え? そうなの? すみません……説明はしてはいけないようです。申し訳ありません……】
「説明出来ないって」
「……そう言えば、カミは正式運営前にテストしてたって言ってたからそれかも」
「……なるほど、俺たちとスキルとかの恩恵が違うのかもな」
考えながらも俺たちは黙々と妖魔の槍を回収していた。
ふと、妖魔の死体の山の近くに不思議な光の溜まりが見える。なんだろ?
「あれ……なんだ?」
「カタシ君にも見えるんだ」
鬼人族は誰も光の溜まりに気が付かずに素通りをして行く。
2人で近づいて行くと光のかたまりが広がって俺たちに降り注ぐ。
【HP+2.21 MP+3.48 STR +2.00 DEX +2.01 AGI +4.11 INT +2.36 MND +5.11 SP+10.09 ……】
「これって……」
【先ほど倒した妖魔のエーテルの行き場がなくて溜まっていたようですね。なるほど、こうなるのですね……】
「討伐した時に遠すぎるとエーテルが吸収されないみたいだな」
「……遠距離攻撃で倒し過ぎるとエーテルが入らないって事ね……気を付けないと……」
本当にこの辺はゲームみたいだ。上手くやれば、パワーレベリングみたいなことも出来そうだな。俺が遠くから魔獣や妖魔倒して、ステータス上げたい人間を前に置けば……ってこの世界でそんなことやる意味あるか? 自分を守るのも怪しいのに。
【倒したものが得る様にすると、大変な事になるそうです……争いがおきるとか?】
……ラストアタックボーナスみたいなもんか……
妖魔の槍を回収しながらたまに浮かんでいるエーテルの光溜まりも回収していく。全部自分がやったやつなんだろうか? そう考えると……すごい数を……
殺した……んだもんなぁ……人形のように見えた妖魔が生物の死体に見えてきた。
むせかえる血の匂いがする中、吐き気がもよおして来る。
今頃、精神的に来たのか……そう考える自分もかなり冷静だな……
この辺もステータスのおかげなのか?
MND ってステータスアップするくらいだから……これマインド、精神力だもんな……
沢山転がっている死体の中に、大将らしき妖魔の死体は無いみたいだな……途中見た大柄な妖魔の死体も無かった。
確認のためにログを見ると、かなりのステータスアップになっていた。スキルレベルもかなり上がっているように見える。使っていないハズの『削る』まで少しだけ上がってる。使ったスキル以外も上がるのは少々意外だった。
ふと、気がつくともう夕暮れだった。
鬼人族の砦の方に戻ると、妖魔の死体が重ねられて置いてあった。金目のものなどは剥ぎ取られていた。
集められた金物などは砦の方に集めているみたいだ。あちらでもやはり再利用はするんだろうな。鉄掘るよりも鉄を獲得しやすいだろうし。
鬼人族や獣人達が布で口元を覆いながら死体の処理をしているようだった。
死体から発せられる匂いがもの凄かったので逃げるように砦の中に入る。そうか、死ぬと……体の中から出てくるものがあるからか……
先ほどから精神がかなりやられ気味なので、本気で吐きそうになった。
さすがに……疲れたな……ちょっと色々あり過ぎた……砦の中にある草の上にゴロンと転がる。
ナオエさんが周囲を見回す。
「私は様子見て来るね。カタシ君はゆっくりしてて」
ナオエさんは……ああ、そうか、治療に……結構怪我人は出てるんだ……なんかすごい睡魔が……
§ § § §
目覚めると、隣にアスティナさんが座っていた。夜になっていたが、なにやら騒がしく祝勝会でもやっている感じだった。
『#、カタシ、####。######。#####################』
(あ、カタシ、起きたのね。あなたすごいのね。こんなに騒がしいのに寝られるなんて)
「え? おはよう?」
『###、##################……アリガトウ、カタシ。#############。ウィンディード#######。##########。####アリガトウ』
(うーん、やっぱりなんで言ってるかわからないのね……ありがとう、カタシ。あなたのお陰でこの地方は、ウィンディードとこの砦は守られた。歴史が変わって行ってる。本当にアリガトウ)
なんか、お礼を言われてるっぽい? 目が真剣で凛々しいな。
「ん? どういたしまして?」
「あ! カタシ君! やっと起きた! お疲れ様!」
ナオエさんが走り寄って来る。
ウィンディードさんが彼女を護衛するかのようにピッタリと付き添って来る。
「この砦はもう大丈夫だって。近くの村も損害が出なかったらしくて喜ばれてたよ。あ、米とか小麦とか調味料とかも貰えるって!」
「小麦!! それは有り難いね。みんな喜ぶよ」
俺はふと気になったので、アスティナさんに、日本人のテストプレーヤーの情報を聞いてみる。言葉が通じないので地面に絵を描いて行く……
ニコニコしていた雰囲気が一気に険しい表情になる。
『カタシ……やはり知らないのね、知り合いや仲間の線は消えたわね。良かった』
『知り合いと言う雰囲気では無かったです。どうやら彼らの情報を知りたいみたいですね。私はわからないのですが、本当になにがあったのですか?』
『……あなたは知らなくて良い……この奇妙な服を着ていたら敵だと思ってくれれば良いわ。あなたは絶対に逃げて……』
『……分かりました』
うーん、よくわからない表情をしてるな。なんか厄介な問題児? 敵対勢力? どちらかっぽいな。探検家のベストの時はここまでシリアスな感じじゃ無かった気がする。
「カタシ、コレ。フクキル、ワタシ、テキ」
「それはわかってるんだけど……」
「緊急時に言葉かわからないのはきびしいわね……」
頑張ってそれからも絵とカタコトのコミュニケーションをとってみる。
どうやらテストプレイヤーはかなり多いらしい。
しかもかなり強く、鬼人族を襲って来るみたい。
絵で見る限りは魔法も飛んでくる攻撃もして来るみたいだ。やはり盾持ちは何かしらの飛ぶ攻撃をしようとしてたっぽいな……定番の飛ぶ斬撃とか、剣から発する光のレーザーとかだろうか?
ゲーム好きの「カミ」ならばあり得る話だな……
「テストプレイヤーは鬼人族を狩るのが目的なのかな?」
「なんかそんな感じね」
「……生きた人間……なのに」
「そうね、まるで妖魔を見るような目だったね……あの人たち」
「そうだったな……」
あんなのとやり合わなければいけないんだろうか……見た感じ魔法を使って、盾で魔法をかき消す……ファンタジーRPGの世界観を持ったのがテストプレイヤー? その割には着ていたモノは近代的な……もうわけわからないや……
気がつくと夜も更けて来たので、今日はこの砦に泊まる事にした。
ウィンディードさんのフクロウで、拠点のみんなに手紙を出しておいた。
夜には帰るって言ってたから……心配してるんだろうなぁ……
鬼人族の宴で出された食事は全体的に日本的だった。何となくだけど、肉のある江戸時代に来た感覚だな。
ウィンディードさんには失礼かもしれないが……とても美味しかった。
あの味付けは……やはり好みの問題なんだろうか? 見ている感じ……なんか武将とか騎士とかそっちの扱いを受けてるみたいだし、家庭にあこがれる武人さんだったのかなぁ……
ナオエさんがウィンディードさんとアスティナさんに連れられてどこかに行った。
恐らくまだ治療するべき人間がいるんだろうな……
【正解のようですね。どうやらかなりの重傷者がいるようです】
鬼人族には『治す』スキルを見せても大丈夫なんだよなぁ……
【……? 何故です? 危険では?】
スキルが奪えることを知らないからね……知ったら変わるかもしれないけど……
【……なるほど……プレイヤーの敵はプレイヤーってことですね】
そうだね……
俺は一人与えられた寝床に寝転がる。
今日は濃かった……スキルのおかげであまり実感しないが、大量の妖魔を殺した……
俺のやってることは、あの日本人プレイヤー二人組と大して変わらないことをしているんじゃないかな……
【そんなことはありません。あの二人は面白がって人を殺めているだけですから】
……そうだといいけどな……俺も面白がって妖魔を殺すようになったら……アイツらみたいな価値観になっちゃうのかなぁ……
窓から眺める連なる四つの月を見て、現実感が薄くなっていく気がした。
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二章はここまでになります。
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