第52話 日本人テストプレイヤーとの邂逅
得体の知れない人。
それが最初の印象だった。
思考が完全にゲームよりの人間だな。
二人とも同じ様なSWATとか近代的な特殊部隊が着てそうな服の上に近代的なプロテクターに身を包んでいた。
一人は現代的にデザインされた剣と大型の盾を、もう一人は宝石を先端に着けた明らかに魔法の杖のようなものを持っている。
全員が探検家のベストを着てるわけじゃ無かったんだね……ずいぶん硬そうで快適そうで、しかもかっこいい装備に見えるな……装備格差がかなりある気がするよアーゼさん。
【……】
だんまりですか……そうですか……
「おい! 無視すんなよ!」
「なぁ、なんか様子が変だぞ? こいつら鬼人族の服着てるぞ?」
「ああ、本当だな、装備効果とかあるんかな?」
「あるように見えないけどなぁ……鬼人族と仲良くなるともらえる感じじやね?」
「ハッ! 敵と仲良くなるってどうよ?」
ナオエさんが両手に槍を構え、若干混乱気味だった。
「カタシ君、この人たちなんか変よ! なにを言ってるの?」
「……流石にわかんない……」
言葉の分かる俺も理解できない……鬼人族達も状況を理解しかねている感じだった。
ただ一つだけ分かることは、この二人にとっては、鬼人族やウィンディードさんが獲物くらいにしか見られていない事だ。
「うーん。悪に寝返る系のプレイしてんじゃね?」
「あ、そうかもな。まぁ、弱っちそうだし」
「やっちゃおうぜ!」
杖持ちがなにやら唱え始めると嫌な感じが集まり出す。
それと同時に危機を察知した鬼人族から矢と火炎の魔術の雨が降る。
盾持ちが杖持ちの前に立つと、何か目に見えない力が働き空中で矢がはたき落とされる。まるでリンカさんの『プレッシャー』の様だ。火炎の魔術も彼の持つ盾に阻まれて霧散してしまう。
ヤバい。何か来る!?
杖持ちが使おうとしているのはさっきの爆発の魔法かスキル??
俺は咄嗟に杖持ちの心臓目掛けて『固定』を発動させてみる。すると杖持ちが信じられない速度で後ろへと飛び退く。
それと同時に杖持ちの杖の先が小さく爆発する。
ドン!!
「! なんかしやがったな? どっちだ!?」
「おい! どうした! なにがあった? ファンブルかよ?」
「おそらく状態異常の魔法……嫌な感じがした……」
「ちっ、厄介なやつか、誰か隠れてやがるのか?」
盾持ちが剣を持つ腕を後ろにして嫌な感じの力を集め始める。
迷わずに盾持ちの肩部分を『固定』してみる。すると盾持ちもすごい動きでサイドステップを踏んで回避する。
「なるほど、確かに何か使う予兆があったな」
「だろ? あっちの日本人は二人とも詠唱してないから……出どころがわからないな……」
「もう一人隠れてやがるか……それか鬼人族……獣人の力か……」
コイツらはなにを言っているんだろう?
まるで俺たちと違うルールで遊んでいるみたいだ。
一つだけ分かったのは、『固定』をしようとすると、野兎の様な俊敏さで躱わされるってことだけだな。
アーゼさんの説明に会った、『エーテル』の反応に気がつくってやつか?
様子を見ていた鬼人族が近接系の武器を取り出す。
弓矢や遠距離攻撃が効かないと踏んだようだ。
数十人はいる鬼人族が武器を手にしても、たった二人だけなのに全く怯んで無いな……
「カタシ君、逃げよう、なんかヤバい感じがする」
「そうだな……」
乱戦になると、俺は役立たずになりそうだな。切り込む瞬間に『固定』と『自動追尾』で邪魔するか……
あのプロテクターの隙間……服部分はそれなりに柔らかくは見えるが……貫けるか?
本気でどうするか悩んでいると、突然、周囲にひんやりとした空気が漂う。
二人の日本人プレイヤーの周りに氷の柱が爆発するかの様に出現する。
バキバキバキバキバキバキッ!
いち早く盾持ちが反応し、杖持ちを庇う様に氷の柱を防ぎながら吹き飛んでいく。
盾持ちの目の前で、先ほどの理解不能の『何か』が発せられて不自然に氷の力を防いだように見えた。
「なんだっ!」
「おい! 氷姫だよ! なんでこんな辺境に!」
「中央にいるやつじゃなかったのか!?」
二人の注意は完全に違うところに向いてるな……
俺は試しに固定をランダムに二人に出し、地面と足を『固定』してみると同時に、『自動追尾』で落ちていた妖魔の槍の穂先を二人の脇腹と膝裏の関節に目掛けて放ってみる。
「えっ? なんだっ! いきなり色々な……」
「ちょっと待っ! 多すぎ……グハッ!」
盾持ちは『固定』で地面と固められた盾を取り落としたが、片手で妖魔の槍をキャッチして、残りを剣で振り払っていた。杖待ちは反応しきれなかったようで、転んだ上にプロテクターの弱い脇腹とひざ裏を妖魔の槍が貫通して突き刺さっていた。
チャンスだ! 逃がさないっ!
足の装備ごと地面と『固定』!
これで動けないだろ!! 追加で『自動追尾』の槍もお見舞いだ!
「げほっ……グゾッ! 油断したっ! ヒットポイントがやばい!」
「畜生!! こんな雑魚に!! 動けん! テレポート、ホームポイント!!!」
盾持ちが懐から光り輝く石をとり出すと、彼らの周りに青白い光が包み込み空に向かって消えていった。
行き場のなくなった槍が彼がいた場所に突き刺さる。
彼らが消えた後には二人分の『固定』されたブーツと『固定』された剣が残っていた。
撃退……したのかな?
俺は思わすナオエさんを見る。
ナオエさんも何が起きているか理解しきれていない様子だった。
テレポートとか……『瞬間移動』あったんだ……ずるいなぁ……あれはスキル複数持ちってやつだろうか?
【……」
……反応なしですか……
あの青白く光る石はなんだったんだろ? 俺たちの支給品には無いから魔法の道具とかか?
俺は強い気配が近くに降り立つのを感じる。後ろを振り返ると、アスティナさんが微笑んで立っていた。彼女の周りには薄っすらと氷の結晶が包み込んでいて光の反射で幻想的に見えた。
『###!###?!』
(みんな! 大丈夫?!)
『#####! ナオエ###カタシ##################!』
(大丈夫です! ナオエ様とカタシ殿が援護してくれたおかげで被害無しです!)
『####! ################……)
(良かった! これで少しは未来が良くなるかも……)
『ナオエ、カタシ、#####! #######! #########……##############』
(ナオエ、カタシ、ありがとう。本当に助かった! また助けられちゃったね……なんでお礼を言えばいいんだろ)
『##、アリガトウ。##)
(姫様、アリガトウ。です。)
『######、ウィンディード、……ナオエ、カタシ、アリガトウ』
(ありがとう、ウィンディード……ナオエ、カタシ、アリガトウ)
アスティナさんがなんか目に涙を浮かべながらお礼を言ってくれてるな……文化交流のおかげで意思疎通してくれるのもありがたいなぁ……
……ちょっと照れるな……
『##、##############、##################、############』
(姫様、まだ戦いはおわっておりません、妖魔どもが拠点を築き上げておりまして、に日に日に増えております)
『###、###############……#####################……##########?』
(うーん、あそこにいられると困るんだよね……私がやるとここにいるのがバレちゃうからなぁ……誰かつぶしてくれない?)
『#######……』
(それはさすがに……)
『###############? #########「探索者のベスト」###プレイヤー#########)
(この者達に依頼をしてはどうです? いろいろなところに「探索者のベスト」を着た「プレイヤー」がいるようですし)
『###……##################……####################……################……』
(そうね……何人かは不思議な力で強いみたいだけど……あの奇抜な服を着た人間と仲間じゃないから……信頼してもいいのかもしれないわね……)
ウィンディードさんが近づいてきて状況を伝えてくれる。
正直全然聞き取れないし、「プレイヤー」くらいしかわからなかった。
「カタシ、ナオエ、ヨウマ、タオス、デキル? アナタノ、ナカマ」
「うーん、どうだろ……」
「攻略組に依頼すればいいんじゃないの?」
「報酬はどうするの?」
「味噌と醤油と出汁?」
「それだ!」
とりあえず攻略組への連絡を約束する。報酬内容を言うと、ほんとそれでやってくれるの? と言った感じだったが、絶対にやるだろうな……何か気が付くと俺の後ろに人垣ができている……俺の描く絵が珍しいみたいだな……
「こっちの世界だとイラストレーターね」
「……ただの企画マンなのに……」




