第41話 武闘派の襲撃と覚悟
俺たちは拠点の高台の下で木箱を周辺に取り出して周りから見えないようにし、隠れる様に集まって相談をしていた。
「リンカさんとアヤノさんは「鷹の団」に入ってたんだね?」
「うん、半ば強制的だったけどね」
「最初はみんなで生き延びよう、妖魔たちを倒そう、黒結晶を壊してみんなでボーナス貰おう……という雰囲気だったのですが、スキルの格差が出始めてからは差別がはじまりまして……」
「最初はアヤノさんの料理スキルの恩恵があって、みんなすごくちやほやしてたんですよ。狩りしてきた肉もすごい美味しくなって。だけど妖魔や魔獣と戦えないからってだんだん高圧的な人が出てきて……」
「最後の方は身の危険を感じて、リーダー的な「委員長」さんに相談をしたんですが、彼女もチームが割れ始めるのを止めきれずにいたので……」
アヤノさんの目が伏せ始めてしまう……嫌な経験をしたんだな……
「……私が襲われそうになった時にリンカちゃんが助けてくれて、そのまま逃げだしたんです」
「まぁ……貰ったスキルのおかげで何とか逃げれた感じかなぁ……」
「そうね。リンカちゃんには悪い思いをさせちゃったわね……」
「いいって。なんか現実感なかったし……」
アヤノさんが申し訳なさそうな表情でリンカさんを見る。
リンカさんのスキルなら……対人戦だと猛威を振るいそうだもんな……
狭い場所だったら逃げ場が無いし。
「それからは追跡を振り切りながら、妖魔の集落に忍び込んで乗り物奪って逃げて……」
「ここまで来たってことか……」
「そうそう。そんな感じ」
大分端折った感じだったが、大枠は信じられるな……まぁ、強力なスキルがあって妖魔を殺すのが簡単だったら……小妖魔に対しての躊躇は無くなったから……そのうち人間も簡単に殺してしまうんだろうな……
しばらくその場を沈黙が支配する。
ナオエさんが誰も発言をしないのを見て先を促す。
「過去の事は大変だったと思うんだけど、今の事を考えよ。ねぇ、さっきの二人、見覚えが無い?」
「あります。小さくて柄が悪いのが……カズナリさん……武器とか防具を破壊するスキルでしたね、身長の高い方がイサミさん……スキルはわかりませんが、そこら中に偵察に行ってる方かと……」
「どっちも妖魔討伐の時にあまり活躍できないからぼやいてる感じだったかなぁ……」
ぼやき仲間で組まされて偵察に来た……って感じかな?
スキルを増やして成り上りたいって言ってたのはそのせいか、どんだけ駄目なスキルなんだろうか?
「スキルの内容まではさすがにわかりませんか……」
「サバイバルだからなぁ……大枠は教えるけど、詳細までは言わないだろうね」
ジンパチさんが一人だけオロオロし始める。
「僕、手の内全部明かしてるんですが……」
「……大丈夫です。俺が守りますよ」
「え? あ、え?? それは心強い……」
手の内が分かっててもジンパチさんはやりようによっては滅茶苦茶戦えるはずなんだけどなぁ……初期状態で巨大イノシシ狩ってたし……
……あれ? なんか女性陣の目が少し怖いな……なんでだ?
「カタシ、チズ、カク」
「ん? わかった」
ウィンディードさんが何やら真面目な顔をしていたので、Mapに表示された地図を地面に描いていく。
彼女が一つの場所を指さす。
「プレイヤー、ココ、ココ。トマル」
結構近い位置にいるみたいだな。俺はナオエさんを見て確認をする。
「さっきので分かったけど、探知する距離はウィンディードさんの方が上よ。私の探知ではわからないもの」
「わかった……あまり望まないけど……戦うしかなさそうだな」
さっきの相談が丸聞こえだったのが致命的……なんだよね。恐らく分かり合えない。俺たちの事を獲物と認識しているのならやっている事は妖魔たちとかわらない……
「カタシ君……戦える?」
「大丈夫。さすがにこっちを殺そうとする……会話をした後でも殺せると考える人には容赦はしないよ」
「「鷹の団」のギルドには殺されたのが分かるかとは思いますが……」
「うーん、厄介者の部類の人間だったら喜ばれちゃうかもね……」
「あまり良い印象を抱かない人でしたね……私に言い寄ってた人間をひがんでましたし……」
「まぁ、チームが割れてるって事は……大丈夫な可能性が高いだろうなぁ……安全に狩りますか……」
「あ、僕、囮やりますよ」
「私もやります。私でしたらスキルが「家事」だけだと思われている可能性があるので……いいエサに……」
アヤノさんの顔が引きつっている様な、怒っているような変な感じだな。勇気を振り絞ってやり返したい……ってところだろうか?
リンカさんが拳に力を込めて気合を入れていた。
「それじゃ私がギリギリまで隠れてすぐに援護だね。近づいてきたら吹き飛ばしてやるから!」
それからしばらく作戦を話し合った。
ウィンディードさんからは「コロス、ホントウ?」と質問されたが、しっかりとうなずいておいた。
もう引き下がれないな。意を決するしかないな。
「じゃぁ、みんな頑張ろうか」
全員が打合せ通りの場所へと移動を始める。
ジンパチさんがとアヤノさんがなるべく多くの箇所に皮の鎧をつけた状態で拠点の土台の上に登る。
二人で和気あいあいと……しているふりをしているがぎこちないな……なんか鍋とか出したりして……しまったな、演技指導しておけばよかった。普通に座って水飲んで肉でも食べてればいいのに……まぁ、敵を背にして、敵が見えない状態での囮は精神的に来るものがあるか……
俺は拠点から移動を開始する。拠点の高台の位置を『自動追尾』で狙える場所へと移動をする。俺も獲物を探している体でキョロキョロする。こっちが気付いてることには恐らく気が付かれてないな……
しばらく歩き、茂みなどを迂回し狙撃ポイントになりそうな場所に潜伏する。
【大丈夫ですか? 精神状態があまり良くない様です】
「そりゃ緊張……するよ……心臓が飛び出そうだな……」
【ウィンディードに任せてしまえば良いのではないですか?】
「現地人に殺された……ってログが出ると、中立的な鬼人族もターゲットになるだろ? それにこの拠点のプレイヤーがある程度強いってのも示さないと駄目だ」
【なるほど……どうやらカズナリとイサミが移動を開始した様です。こちらからは丸見えですね】
「おっけ……助かるよ……」
俺は狙撃予定地にターゲットがたどり着く前に妖魔の槍を9本取り出す。そのうち三本を持ち空中に投げる。
『標的』ロック・『自動追尾』開始!
自動追尾で飛んでいった妖魔の槍が、目標のカズナリとイサミの首と腹を目掛けて直進する。
イサミの方が何かに気が付きキョロキョロとする。何事かとイサミを見たカズナリの首と腹に妖魔の槍が直撃する。イサミは槍に気が付いた様で、よけながらがっちりとキャッチする。
やっぱりわかればキャッチできる速度か……
『自動追尾』解除。
『標的』ロック・『自動追尾』開始!
妖魔の槍を再び投擲する。今度はイサミの腹、腿、首を狙う。
まだこちらに気が付いてないな……槍を持って何か叫んでる。
「お、おい! 大丈夫か? 誰だ!!! 出てこい!!! 卑怯だぞっ! うわっ!!」
ナオエさんの伸びる槍が倒れたカズナリに突き刺さってるな……イサミが驚いたと同時に『自動追尾』の妖魔の槍が彼の体を貫く。
……次弾の必要はなさそうだな。
【お見事です】
「ありがとう。不意を打てば……物凄く強いスキルだねこれ」
【はい。ですが、あなたの考える『嫌な感じ』は注意深い生物には分かるはずですので過信はしないようにしてください】
「……なるほど、考えてみると俺も「来る」のがわかったもんなぁ……」
【鬼人族の達人にはまず効かないでしょう。アスティナはおそらく油断してしまっただけかと思われます】
なるほどね……強すぎると少し避けて躱す……んだろうけど、自動追尾付きにはいいターゲットになっちゃうもんなぁ……
俺はログを確認する。
……何も出ていないな……倒れて動けなくなっただけ?
俺は仲間の元へと歩いて移動をする。倒したプレイヤーの場所が光り、粉のようになって消えていく。
あれが……この世界のプレイヤーの死、脱落か……ここはゲームみたいな演出なんだな……死ぬまでのタイムラグみたいのがあるんだ……
「ふぅ……」
【Player:Shinsengumi がプレイヤーによって殺された。Pos<01825. 0030. 01698>】
【Player:kazunari がプレイヤーによって殺された。Pos<01824. 0030. 01696>】
しばらくの間があるんだな……
精神の方は……思ったよりは大丈夫……だ。ちょっと手が震えるな。
仲間の元にたどり着くと、全員が俺の到着を待っていた。
ナオエさんがスキルオーブに手を当ててるな……スキル名見てるのか。
「カタシくん、スキルオーブの配分どうしよう?」
「え、欲しい人がとれば良いんじゃないの?」
「そんないい加減な……」
リンカちゃんが嬉しそうな表情をする。
「え? いいの? 私貰っちゃうよ?? 賞金増えるんだもん!」
「リンカちゃん? 私たちが生き残るためには、スキルの内容に適した人に渡さないと大変な事になるのよ?」
「あ、そうか……」
そうか……あんまり考えて無かった。スキルがあればあるほど仕事が増えて忙しくて大変そうだからな……
なるべく全員がしっかりと働けるようにしないと、チームもギスギスしてくるもんなぁ……働きが悪いやつはハブられるだろうし……
あれ? スキルって何が出たんだろ? 武器破壊とかか?
「……それでスキルは何だったの?」
「『削る』と『健脚』ね」
これまた微妙なスキルだな……削る……やすりとか採掘機みたいなことができるか? 健脚……疲れないで歩けるとか早く歩けるとかか?
「あの、『削る』はカタシさんが持った方が良いかと。整地作業がはかどりますし」
「……あー確かに、拠点づくりだと俺はそこまで役になってないな……それを言ったらナオエさんも……」
「! 私は見張りしながら『伸びる』でかなり役に立ってるわ?」
あ、あれ? なんか怒らせた?? 話をそらさないと……
「察知しながら『削る』のは無理っぽいな……分かった『削る』は俺で……『健脚』って……これは探索用かな。移動が多い人だけど……」
「一番はウィンディードさんだけど……なんか見えてないっぽいんだよね……オーブ」
……こんなに光ってるのに見えないって……別の次元に存在しているのだろうか?
「だとすると……スキル一つのジンパチさんかな?」
「え、そんないい加減で……確かにあと一千万あればローンも完済できますし……」
「まぁ、これをもらったからには……偵察することも多くなるかと……」
「くっ!! 頑張ります!! 偵察してみます! 逃げるときに『柔化』と組み合わせれば逃げれる気がします!」
慎重な性格のジンパチさんもいい方向に振り切れてくれたみたいだ。ありがたい。




