第40話 島の中央は戦国時代なの?
俺たちは穏健派の攻略組のギルドの男女二名と情報交換をする。
女性はカエデ、男性はコウタと名乗った。こちらも自己紹介はするが、引き続き女性陣は隠れてもらい、ジンパチさんと俺の二人だけだった。
相手も他に人がいるのには気が付いている様で……何となく周囲を伺っている感じだな。
「私たちのギルド、「黄金の鷲」は割と大きめなんです、はぐれプレイヤーを仲間にしながら、効率的に魔獣と妖魔を狩ってステータスを上げて中央目指して陣地を広げて行ってる感じです」
「さっきのギルドがお隣の……残念ながら敵対している「鷹の団」ですね。あっちは割と……その暴力的ですね。魔獣を狩っている横から入って来て肉の取り分を主張したりして……」
「リーダーはまともなんですけど、ギルドメンバーが暴走している感じですね」
「リーダー陣だけは欲しいんですよねぇ……」
どこでも同じような事が起きるんだな……結局のところ人間関係になるんだな。
まだ2週間で携帯食料も残ってるから問題になってないけど……1週間もすると食糧問題起きそうな気配がするな。水問題が先か?
「食料は大丈夫なんですか? 敵が多すぎると狩りが厳しくないですか?」
「厳しいですね。サバイバルマニュアルにあった自生している芋と獣の肉ばっかりです……」
「米や小麦探しているんですが……自生はしていませんからね、やはり鬼人族と交流したほうが良さそうですね」
「あなた達を見る限りはこちらの方は食料が豊富そうですね……羨ましい」
確かに俺もジンパチもやせ細った感じは無いよな。むしろ若い時より筋肉が……って若いんだった。ってか腕がぶっとくなったんだよなぁ……腹筋もバッキバキだし。ステータスがあがってるからか?
やっぱり食糧問題はこれから出て来そうだな。拠点の完成を早めないとヤバそうだな。
「ここは海が近いですからね……塩も作れるし……」
「え!! 塩、塩があるんですか!!?」
「物凄くほしいです!!! 我々のいるエリアで岩塩を探したけどなかったんです!」
「動物が岩を舐めてるんですけど、塩気を少ししか感じなくて……」
あ、なんか交易が始まりそうな予感がしてきた。
塩を作って肉や資源と交換出来そうだな
ジンパチさんの方を見ると、俺と同じことを考えていた様でうっすらと口元に笑みが見える。
彼らからもらった情報をまとめると、俺たちがいる島は大体200km四方に近い島、北海道くらいのサイズで、島の中央の方はプレイヤーが色々な攻略組の派閥、好戦的なプレイヤー、穏健派に別れてにらみ合っている状態らしい。
かなりの数の派閥が出来上がっているようで、隣の隣の派閥……までは把握できてないみたい。
これは……戦国時代みたいな感じか? この人たちも偵察に来たって言ってたもんな。
妖魔とは完全に敵対し、魔獣を狩ったり、妖魔を倒したりして、鬼人族とはお互いに手を出していない感じらしい。
こちら側で提供した情報は、魚の獲れる場所……野草が豊富な場所……妖魔のテリトリーと鬼人族のテリトリーなどの情報。
どうやら野草などは結構調べて食べている様で、海が近く、魚が入れ食いレベルで獲れるという情報が喜ばれた。まぁ、確かに島の中央では獲れないもんな……一応、巨大イカで危険って話しもしておかないとか。知らずに漁なんかしたら襲われるもんな……
それから主食はどうしているという話になり、米なども鬼人族と仲良くすると分けてもらえる……という話をしたら大層驚かれた。
超危険な敵性知的生命体……だと思っていたらしい。いつの間にか姿を消したり、何も言わずに魔獣を蹴散らしてくれたり……にらみ合ったり……何とも言えない距離間だったらしい。
俺も何となく生物の強さ……『変な感覚』はこの世界に来たら分かるようになったから、みんなそうなんだろうなぁ……
カエデさんとコウタさんのテンションが最後の米の話から上がりっぱなしだった。
海、魚、塩、米……やっぱりこの辺は押さえておきたいよね、サバイバル生活だったら。
「どうしよう、海寄ってから帰らない?」
「行きたいね……1時間で行けるんだったら……様子見て帰ろうか」
行く気満々みたいだな。その前に交渉のまとめをしないとな。
「それじゃぁ、話をまとめましょう。とりあえず塩をこの麻袋に2袋を用意しましょう。大体2日もあれば出来るかと思います」
「ありがとうございます。あの、本当に、交換するのは妖魔の持っていたガラクタ……で良いんですか?」
「はい。我々なら金属は再利用できますし、妖魔の槍はあればあるほどうれしいですからね」
「なるほど……わかりました。情報を持ち帰ったら山の幸、山方面でしか手に入らないものを探しておきます」
「あとは拠点づくりの人員ですね。こちらは戦闘に向かない生産系の人間……で本当にいいんですか?」
「はい。話を聞いていてもこの辺は妖魔はあまり強くありませんし、ヌシだった巨大ワニ恐竜もいなくなりましたしね」
「巨大ワニ恐竜……」
「この前この辺で死んだ……SoulReaver42さんが殺された場所にあったでかい死体じゃないか?」
「ああ……あれですか……裏技使って倒したってやつ」
「そうだね」
あ、そうか、プレイヤー名が表示されるから、この辺で何が起きたかバレてるのか。
裏技ってなんだろ……
俺が悩んでいると、基本的に黙って話を聞いていたジンパチさんが彼らに質問をする。
「あの、「黄金の鷲」ではログの確認……と言うよりプレイヤー名は教え合っていたりするのですか?」
「えっと、プレイヤー名はギルド内だけですね」
「死んだ時に場所が分かるので……」
なるほど……認識タグみたいなものか……あれ? ちょっと待って……何か引っかかるな……
その間にもジンパチさんが質問を続ける。
「なるほど……ギルド内の人間が殺されたのは把握されてしまうってことですね」
「……そうなりますね」
「そういう事になると、ギルドに属している人間同士の殺し合いはあまり起きないってことですね」
「……たしかにその側面はありますね」
「ただ、どうしてもPK(プレイヤー殺し)ギルドと違って、プレイヤー殺しには忌避間があるのであまり行われていない感じですね」
「どう見ても現実の人間にステータスとか、スキルを足しただけですからね……」
ってことは、派閥の中のプレイヤーを倒してしまうと、その派閥からターゲットにされる可能性が高くなる……ってことか。 あの「鷹の団」の二人どうしよう? 襲ってくるのは明白だもんな。
「「鷹の団」の人数規模ってわかります?」
「あー、詳しくは、ただ、二十人前後かと……」
「この前女性プレイヤーがかなり逃げた……って聞いてます。うちのギルドに保護を願った人もいましたし……」
「なるほど……情報ありがとうございます」
「いえいえ」
あ~これは確定か。細かい話は後でリンカさんとアヤノさんから聞くしかないな。
「黄金の鷲」の二人は席を外し、しばらく何かを相談していたが話がまとまった様だ。
「私たちはいったん出直します。3日後くらいに、生産系スキルもちで、なるべく性格がまともそうな人間を連れてきますが、面談お願いします!」
「海の情報ありがとうございました。魚持って帰れるといいんですけどね」
「では!」
「黄金の鷲」の二人は海の方向へと小走りで消えていった。
ステータスがあがると小走りで行けちゃうんだな……俺たちゆっくり歩きすぎか?
……そういえば歩くだけじゃ息が上がらなくなったな……
【どれだけ運動してなかったんですか、あちらの世界で?】
あっちの世界だと乗り物が発達しすぎで運動する機会が無いんですよ……本当に……




