第38話 カルチャーショック?
俺たちはアスティナさん達と別れたあと、拠点の設計図づくりに取り掛かる。
リンカさんは「大人たちで考えてよ……」と相談の輪から外れ、ウィンディードさんと異文化コミュニケーションをはじめていた。アーゼさんが鬼人族に興味を持ったのかそちらの方に引っ付いている感じだな。なんか風の魔法使って葉っぱで竜巻作ってるし……なんか『変な感覚』を感じるが、あれが魔力か?
「カタシ君、集中~」
「あ、ごめ……」
「確かに気になることをしておられますね……」
「魔法みたいのもあるのねぇ。不思議な世界ね」
木の枝で土の地面にこのあたりの簡単な見取り図を描いていく。とりあえずは30人くらいは受け入れられそうな設計にし、魔獣と妖魔に対応できるくらいの壁と堀を築く事に決定した。
ジンパチさんが本職の建築士という幸運にも恵まれていたが……あの石のドームの出来もなんかすごかったものな。素人っぽくないと思ったら実際そうだったみたいだ。
「さすがに使えるものが原始的で違いすぎますので……そこまで役に立ちませんよ……ソフトはおろかPCもありませんしね……紙も製図道具もないですしね……」
「でもほら、崩れない様に強度を考えていただければ……」
「がんばります……学生時代に戻った気分ですよ。まぁ、石を自由に曲げれるなんてめちゃくちゃな事出来るから、なんでも出来そうなんですけどね。殆どコンクリート状態ですから……無筋ですが……」
とりあえずSPを半分くらい消費するくらいまでは整地作業をしてみよう……と、各々のスキルを駆使してテストを兼ねて作業を開始した。
「この邪魔な岩はどこへ運べばいいんですか?」
「あの隅にちょっと置いておいてください。そのうち壁にするらしいです」
「わかりました」
アヤノさんが『重量操作』で軽々と持ち上げポイっと投げる。
え? ポイっと投げた??!
ドスン!! ドスン!! ドスン!!
音がするたびに地面が揺れる気がする……って揺れてるな。
リンカさん以外は驚いて見入ってるよ? ウィンディードさんに関しては顎が外れそうだよ? 何この不条理なスキルは? すごいチートじゃない??
って、そんなに重いもの投げてSP消費は??
「アヤノさん! SP大丈夫ですか?」
「え? 先ほどのイノシシほどの体積は無いので、そこまでの消費はないですよ。 えいっ!」
ドスン!!
「な、なるほど……固定と同じで体積勝負なスキルなのかな?」
「重量操作というより、無視……ですよね、この勢いですと」
「丸太を武器にできそうね……」
すごいな『重量操作』って……空飛ぶスキルがあれば岩の爆撃ができそうだな……
漫画みたいに木を引っこ抜いてぶん回せそうな勢いだ。
ジンパチさんが『柔化』させた岩をリンカさんが『プレッシャー』で平らにしていく。
リンカさんの『プレッシャー』は自由に圧力の形を変えられるようだった。
今のところ形状の変化はテスト中らしい。
今まで物を壊すだけだったので考えた事も無かったみたいだ。頑張れば金型レベルになるのか?
何か地面がめちゃくちゃ平らだな……この世界に来てから平らな地面を見たのは久々な気がする。
ところどころ岩が潰された感じで混じっている。岩の模様みたいだな。溶けたものがそのまま固まった感じでとても奇妙だ。
「カタシ君~木を抜くテストするよー」
「あーい、わかった」
次はスキルを組みわせた木の伐採? 倒木テストだった。
俺が丸太を複数地面の岩盤に『固定』し、ナオエさんが『伸びる』で丸太を伸ばして大木と『固定』する。ジンパチさんが大木の生えている地面の土を『柔化』させ、同時にナオエさんが『伸びる』を解除して縮ませる。それなりの大きさの木だったが面白いように倒れ……って、ちょっと勢いが!!?
メキメキメキ! ズドーーーーン!!!!
土煙を上げながら木が倒れる。枝がそこら中に引っかかって大変な事になってるな……でかい枝を切ってからにしないと駄目っぽいな。
「予想以上ですね……さて……一応ノコギリ的なものは作りましたが……ちょっと小さいですな」
「それだと厳しいですかね? 問題は倒した木の処理ですね……木工系のスキルとかある人がいればよかったんですが……」
「うーん、やっぱり四次元収納ポーチには入らないねぇ……」
ナオエさんが木の一部をポーチに入れてみるが入ってくれない様だった。やっぱり持ち上げるのが最低条件の様だな。
後ろで見ていたリンカさんが不思議そうな顔をしていた。
「ねぇ! 『柔化』で木を柔らかくして切っちゃだめなの?」
「「あ!」」
俺たちはリンカさんのヒントをもとに、ジンパチさんの『柔化』を利用して『固定』で砂の定規を作成し両端を力を込めて押して扱いやすいサイズに分断していく。これ、木工じゃないな……巨大な粘土細工だ。木がケーキのように切れていく……奇妙な光景だ……
分かるよウィンディードさん。さっきから顎が外れそうだな……俺も同じ気分だ。道理がおかしいし見た目がかなりおかしい。やはりこの世界には『スキル』に相当するものは……無いみたいだな……
「これは……新たな工具が必要ですね。ピアノ線みたいなやつで良いかもしれません」
「なるほど……粘土を切るようなものですものね、ここまでくると」
「そうですね……ちょっと作成してきます」
「あ、残りSP大丈夫ですか?」
「え? ああっ!! 40%切ってました……面白すぎて使いすぎたようです……」
「今日はおしまいにしましょうか、大分進みましたし。スキルの使い方の配分も考えた方が良さそうだ」
俺は振り返り整地した場所を眺める。
森だった場所にバスケットコートくらいの広さの平面の高台が出現した感じだ。さすがスキル。
殆どジンパチさんとリンカさんとアヤノさんの活躍のおかげだけど……俺は少ししか役に立たなかったなぁ……木を倒す補助だけか……固定だと動かせないから……こういう作業には向いてないんだよね……
ふと、ウィンディードさんが呆けているのに気が付く。目が遠いな……どうしたんだろ?
せっかくの美形が口を開けすぎて勿体ない感じだな……ん? リンカさんに引っ張られて意識が戻ったか?
それから綺麗な川で汗を軽く拭いたあと、俺たちは一旦、崖の拠点に戻ることになった。
道中をリンカさんが跳ねる様に歩いていた。凄いご機嫌のようだった。
「リアル「マイクラ」楽しかったですね!! この世界に来てから楽しいと思ったの初めてです!!」
「マイクラ……次男が好きなやつか……」
「確かに整地したりしてるから……」
「ジンパチさんの『柔化』と、リンカさんの『プレッシャー』があれば色々な建物作れそうですね!」
「確かに……」
「しかし、思ったよりSP消費が大きいようです。なるべくなら普通の人力で出来る場所はスキルを使わない方が良いかもしれませんね」
「そうすると、つるはしとか、石切り用の道具がほしいですね……」
「作りますか……鉄の塊が欲しくなってきました」
帰りの道中はスキルの使い方や、これからの何を建てるかなどの話し合いをしながら帰っていた。
話し合ってると騒ぎを聞きつけたのか小妖魔の集団が周辺を探っていたので、相手が攻撃態勢に移る前に攻撃して物品を回収しておいた。
ウインディードさんの様子が終始おかしかった気がするが、言葉の壁が大き過ぎるので意思疎通は帰ってからだな。まぁ、無理もない。こんな馬鹿気た物理法則を無視したスキルをみんなが普通に使ってるんだから。
プレイヤーサイドは慣れてしまって、もう驚かなくなってるし。
俺たちは崖の拠点に戻ると、いつも通りに拠点作りをする。夜ご飯の準備をしながら明日のことを話し合う。
アヤノさんのスキルが発揮され、今日はイノシシの香草焼きになった。マジで美味そうだ。
って何種類ハーブがあるんだろう?? 毎回違う香りな気がする……今日はスパイシーだし……
言葉の壁のせいで壁の花だったウインディードさんが夕ご飯を食べながら感動している感じだった。
こちらの世界でも美味しい部類の料理なのだろうか?
「さて、カタシ君、ウィンディードさんとのコミュニケーションよろしくね」
「え? 俺?」
「私もだいぶ打ち解けたんですけど、細かい話はやっぱり分からないです」
ここからは筆談ならぬ、絵談となる。
地面に描いた絵とボディランゲージで意思疎通を開始する。
ウィンディードさんの質問タイムみたいな感じになってる……頑張って描くしかないか……もっと細かく書きたい……紙と鉛筆が欲しいな。
彼女の質問内容は……恐らくだが、俺たちの使っている『スキル』はいったいなんなんだ? ってことなんだろうな……予想していた通り魔法とはだいぶ違うみたい。
ウィンディードさんが模範演技的に魔法を軽く使ってくれる。風が吹き、軽い竜巻が起き、風の槍が空中を引き裂き、木に穴を開けていた。小さな炎なんかも出してくれたが……どうやら表情を見るに風の魔法が得意らしい。『変な感覚』を受けるから『スキル』と近い気もするんだけどな……どうなってるんだろう?
まぁ、俺たちも『スキル』って良くわからないで使ってるからな……
この世界に来る時に「管理者」にもらったと説明すると、大変驚かれ、どういう反応をすればいいか困っているようだった。
確かに……異世界人が日本に来て変な事をしていて、「カミサマ」みたいな? ものになんか力をもらった……って言われたら……困るな。しかも本当に使ってるし……
「俺たちってなんなんだろ?」
「異世界転移ゲームのテストプレイヤーですかね?」
「黒結晶を破壊する駒かしら?」
「神のおもちゃ?」
「えーっと、賞金のために頑張る人?」
俺の問いに全員がバラバラな反応をする。
まぁ、プレイヤーってよく分からん人だよな。この世界の住人からしたら。
説明に限界を感じたので、それからは片言の鬼人族の言葉を使ったり、日本語の言葉を教え合う。
暗くなってきても、ウィンディードさんの灯の魔法で少し明るく照らされていた。
ウインディードさんは和紙と墨入りの小壺を出して色々と彼方の言葉でメモっていく。平仮名と漢字みたいな文字を使ってる……日本語に近いのか?
それにしても綺麗な字に見えるなぁ……読めないけど。
取り敢えずウィンディードさんはかなり真面目で几帳面ってことだけはわかった。
リンカさんが一番早く言葉を覚えそうだな……肉体年齢は若返ったが脳年齢は違うのだろうか?




