第37話 鬼人族との同盟開始?
警戒する俺たちの方に向かってきていたのは、鬼人族のアスティナさんと、同じく鬼人族の女性の狩人と屈強な男性の戦士だった。
アスティナさんに至っては武士みたいな鎧姿だった。戦争でもしてたのだろうか?
ナオエさんも怪訝な顔をしながら彼女達の事を見ていた。
「ナオエ!! カタシ!!」
さすがに魔法を使えるアスティナさんには気配でバレているな……って、何か様子がおかしい。焦っている?
よく見るとアスティナさん達は戦いをしてきた直後のように見える。鎧が破損していたり、ケガを負っており、三人ともかなり傷つき、疲れ果てている様だ。
敵意は感じられなかったので、俺は木の幹から姿を現す。
「アスティナさん!? どうした?」
アスティナさんが俺の姿を見ると一瞬安堵した表情を浮かべる。
鬼人族の二人はアスティナさんの合図で距離が離れたところで立ち止まる。アスティナさんだけがこちらの方に歩み寄ってくる。
どうやら戦士の人が背負っているのは……布にくるまれた荷物ではなく怪我人だな……なんだか『駄目な感じ』な印象を受ける。
ナオエさんが少し考えたあと状況を察したみたいで、隠れていた枝の上から降りてきて俺の方に走り寄ってくる。
「カタシ君……どうする?」
「どうするって……あの背中にいる人……治せって事だろ?」
「……カタシ君とアスティナさんだけだったら良いんだけど……他の人には見せたくない」
「え? ……支給された薬を使うだけだろ?」
「……はぁ……本当にお人好しだよね……カタシ君だけこっち来て」
「え、わかった? あれ、あ、おけ」
俺は後ろでこっちを見ている仲間に待っててのハンドサインを送る。
お人好しって……薬使う事に対してか? まぁ、2個しか支給されてないからなぁ……
俺とナオエさん二人でアスティナさんの方へと進む。
『ナオエ!! ###!###”! ######! #############!』
((ナオエ!! お願い!この子を! この子を治して!! 私たちだけじゃ治せないの!!))
「アスティナさん……ごめん、全然かわからない……」
「カタシ君、とりあえず見てみましょう」
「お、おう」
ナオエさんに腕を厳重に組まれてしまって、強制的にアスティナさんの方へと引っ張られていく。
鬼人族の後ろに控えている二人が武器をしまい、「荷物」を丁寧に降ろして距離を取ってくれる。敵意が無いって事を見せたいんだろう。
アスティナさんが「荷物」に近づき、厳重に巻かれた布を展開していく。呪符の様なものが張られているが、血まみれになっていた。呪符に不思議な力を感じる。エーテルなんだろうか?
布の中にはまだ少年のあどけなさが残った瀕死の鬼人族だった……肩から腹にかけて袈裟切りされた感じだな……今にも死にそうな……と言うより良く生きている……布に巻き付いている呪符のおかげか?
「ひどいな……」
「カタシ君……私と運命共同体になってくれる?」
「……え? もちろん……って、もう運命共同体だろ?」
「うーん。私と最後まで一緒にいてくれる?」
「そりゃ……ナオエさんが嫌じゃなければ……」
「……え?」
ナオエさんは少し驚いた後、なんだか諦めたような表情をする。
「……はぁ……あ、見られないように隠してくれる?」
「ああ、おっけ」
俺は四次元収納ポーチから木箱と食器棚を出して、怪我人の周りに配置していく。もちろん『固定』付きで動かない様にしていた。
アスティナさんの表情がおかしかったが、地面に目と矢印と×印を描くと納得をしてくれたようだ。
ナオエさんがアスティナさんが抱きかかえた瀕死の鬼人族の少年に手をふれる。何やら念を送ってる?
支給された薬使う訳じゃ……え?
なんか傷がモリモリと……繋がって……ひっついてく??
すごいな……肉体を『伸ばす』で治してるのか……なんでくっついてるんだ? ?
【たまにカタシは勘が悪いですね……】
え? なんで?
「あ、が、ガ……ぐあっ……ぐ……」
鬼人族の少年が痛みのせいか、もだえ苦しむ。
周りの鬼人族の気配が殺気立ち、武器に手をやっていつでもこちらに向かってきそうだった。
正直今の俺たちではこの人たちには勝てない……一瞬にして諦めを感じた……
するとアスティナさんから強い何かが発せられる。
彼女の威圧だけでお供の鬼人族にけん制をしたようだ。二人が一歩後ろに引く気配を感じた。
「これで大丈夫かな……」
『##!! ####。##########!! #####!ナオエ!!#########!!!』
((ああ!! 良かった。やっぱり治してくれた!! ありがとう!ナオエ!!本当にありがとう!!!))
『###……###……##、########……』
((姉さん……見える……ああ、この人が治して……))
鬼人族の少年が一瞬微笑んで何かをアスティナさんに語り掛けたあと眠るように意識を手放していた。
アスティナさんが目に涙を浮かべながらナオエさんにお礼を言っている様に見える。
『#######、#######!!!』
「さて、なんて伝えればいいんだ……仲間達に……」
「任せるわ……」
まぁ、あれだよな……回復とか治療とか聖魔法とかそんな感じなんだろうけど……あれ、ナオエさんいくつスキル持ってるんだ??
『伸びる』『気配察知』『治療』の3つか? すごいな……
うーん、もう少しスキルレベルとステータスが上がってから公表した方が良いか……
これから仲間も増えていくし……
「しばらく黙っておこう」
「え? 意外……話すのかと……」
「ジンパチさん以外はスキルまだ持ってそうだしね……なんかいろいろあったっぽいし」
「……そうね、中央は……ひどかったから……だけど……もうバレていると思う……」
「え? 俺……わかんなかったんだけど……」
「……少しは疑いなさい……」
【……初恋を引きずりすぎてナオエを見る目が曇っているように思えます】
! そうだったのか?
ナオエさんも合流前の事はあまり話したがらないから聞いてないけど……女性だと、法と秩序のないこの異世界だとスキルだけじゃなくて違う意味で狙われるだろうから……大変なんだろうなと思ってたんだけど……
なんか違ったのか?
考え事をしているとナオエさんがアスティナさんにふれて、結構ひどい傷なども治ってるな……彼女も重症と言って良いレベルだったんだ……すごい精神力だ。
俺は地面に絵を描き、ナオエさんの治す力は秘密……と書いておいた。
『#####。ナオエ、#####『スキル』########……』
((ありがとう。ナオエ、あなたのスキルはだまっておくわ……))
一応、アスティナさんも頷いてくれたんだけど……完全には伝わらないだろうなぁ……
若干苦笑いされていた。無理だよ……って感じなんだろうな。
§ § § §
木の箱と食器棚のバリケードを外し、四次元収納ポーチにいれる。すると鬼人族の二人が驚きの顔を浮かべながら少年に抱きつく。
なんかとてもいいことをした気分だ……
だけど、どう考えても鬼人族には『治療系』のスキルを俺たちが持っているのが広まるだろうなぁ……
後ろの三人にどう説明しよう……
鬼人族の三人が何やら話し合っているうちに後ろの三人と合流する。
ジンパチさんは不思議そうな表情を、アヤノさんは困惑、リンカさんはニコニコしていた。
「えっと、どうなったのでしょうか?」
「あ、えっと、支給された薬で……」
「ちょっと待った、カタシくん! 違うそれ……ああ……やっぱりカタシ君には無理ね……」
「……え?」
「支給された薬だと、傷を軽く治すくらいしかできないの……」
そこにいる俺以外の人間が頷く。
あれ? なんでだ? そうか……使ってないの俺だけか……考えてみたら怪我したことなかった……
あ……しまった。ナオエさんがスキルを使えることがばれてしまった……
「もう、このグループから離れられないね! ナオエさんがいれば怪我しても何とかなるし!」
「リンカちゃん! もぅ! 本当にありがとうございます。私も気が付かないうちに治していただいて……色々なところがボロボロだったのですが……」
ジンパチさんも顎に手をやりながら納得している様だった。
「そういえば……ナオエさんと合流してから体の不調なくなりましたからね……」
……あれ? 確かに……一人の時は結構体が重くなったりしたけど……てっきりナオエさんと一緒になってテンションが上がったからかと思ってた…
「……たしかに……俺もそうだ……」
ナオエさんがちょっと照れながらも違う方向を見ている。
どうやら夜寝ている間に、仲間のみんなもナオエさんが治したみたいだな……
アスティナさんが女性狩人と一緒に俺たちの方へと歩いてくる。
『カタシ、ナオエ################。ナオエ#################』
((カタシ、ナオエの護衛としてこの子を置いていくわ。ナオエが死なれてはとても困ると思うから))
『####ウィンディード##。ナオエ################!』
((魔法弓兵部隊長のウィンディードです。ナオエ様を命に代えてもお守りいたします!))
「ん? えっと?」
『ウィンディード#?』
「あ、ウィンディードさんですか、どうぞよろしく?」
「……カタシ君、絵で会話した方が良いかも……なんか変な事になってるかも」
「あ、おけ……」
それから筆談ならぬ、絵による会話が進む。
問題はあちらの絵が独創的すぎるので、俺が全部描いて意思疎通することになるんだけどね……なぜか絵をかくとたまに感嘆の声があがる。これくらいのレベルで上がるとなんか……恥ずかしいな。プロでは通用しなかったレベルなんだけど……
「カタシさんって絵が凄い上手なんですね、さすが大人?」
「あ、まぁ……」
「同人誌書かれてたんですか?」
「え、あー、それは描いてないです……絵の勉強を少々……」
「プロみたいですね……」
「あー、さすがにプロには……なれなかったです……はい……」
話しが脱線しながらも大体の情報はまとまった。
要するに、このウィンディードさんをナオエさんを守るためだけにあなた達に預けたい。
連絡係として置きたい……俺たちの言葉が分かるように勉強を……とのことだった。
ジンパチさんが腕を組みながら考えていた。
「うーん、こうなると目付け役でもあり、スパイでもありますが……どうしましょう?」
「どちらにしろ鬼人族と仲良くしないと、俺たちはやっていけないわけだから……受け入れた方がいいかもな」
ナオエさんが軽く微笑んでいた。
「私はどちらでも、アスティナさんにスキルを使った時点で諦めてたから……」
「うーん、たぶん大丈夫よ。私、運がいいので」
「はぁ、リンカちゃんのそのノリで助けられてきたから反論できないのよね……私の選択は大体間違ってるから……」
色々な思惑があるようだが、狩人のウィンディードさんの受け入れが決まった。
アスティナさんは急いで鬼人族の集落に戻るらしい。何やら争いやら揉め事がたくさん起きている……との事だった。
なんとなくだけど、アスティナさんって何かしらの偉いポジションについてるっぽいからなぁ……他の鬼人族の態度をみればまるわかりだけど。
§ § § §




