第32話 新たな拠点の場所探し
13日目
俺たちは新たな拠点の候補地探しのため探索に出る事にした。
それにしても……なんというか……ジンパチさんの装備が凄くなってた。
皮鎧をつぎはぎした……一見アルマジロのようになっていた。
槍を投げても……当たるところは目くらいだな……
ナオエさんは一瞬呆然とした後に心配そうにしていた。
「あの……それ、熱くないですか? 動くと体温がこもるような」
「大丈夫ですよ、実は隙間があって動けるんですよ……あ、ごめんなさい、体温の事あまり考えていませんでした、熱くなってきた……外します」
ジンパチさんがフルアーマー皮鎧を外し、通気性を良くしていく……それでもかなり頑丈そうに見えるな。
『柔化』スキルいいな……『柔化』した後は戻る事も無く、そのままの形状らしい。
要するにいろいろな物質を粘土のように加工できる……岩も曲げられるなんてちょっとズルいけどね。
……俺も丁度良い皮鎧とか見つけたら調整してもらおう。
「お二方は……そんな薄着で良いんですか? 」
「私は遠くからグサッとやるし……逃げ専門だから軽い方がいいかな」
「俺も逃げ専門で不意打ち系だからなぁ……」
ジンパチさんが何かに気が付いた様で怯えた感じの表情になる。
「あ、もしかして僕が囮、盾役?? ですか??」
「大丈夫ですよ。そんな事には……」
「ならないようにしますよ!」
「……ほんとですか? あ、目をそらしましたね……」
俺はふと、ナオエさんの『伸びる』でジンパチさんがうまく飛んでいけるのかが心配になった。
「……ナオエさん、試してみようか。ジンパチさんが『伸びる』棒を掴んでも大丈夫かテストしよう」
「え? そんなの簡単じゃないの?」
ナオエさんとジンパチさんが『伸びる』槍に捕まって木の枝へと移動をする……が、ジンパチさんは怖がって木の枝にしがみついてしまう。
……そうだよなぁ……俺は『固定』があるから落ちないって思ってるから……立てるけど……
「あの……これ、ものすごく怖いんですが……」
「……カタシ君は大丈夫だったんだけど……」
ナオエさんは本気で困った顔をしている。予想外だったんだなぁ……
「ジンパチさん! 『柔化』で着地する瞬間に柔らかくしてもだめですか?」
「え、ええー、なんか無茶ぶりですよそれ。ここからやるんですか??」
「……低い位置からやってみましょうか……」
一応、地面の『柔化』テストとしてはうまく行った。
『柔化』で柔らかくした地面にめり込んでショックはやわらいだ様だったが、柔らかい部分をすぐに貫通し、固い地面についてしまったようだった。
あと少しスキルレベルが足りない様で、数日は使わない方が良さそうだった。
それにしても土の地面がまるで水のようになるのを見ると、とても不思議な気分になった。
ソロでの戦闘の時も足元を『柔化』させて相手を転ばせたり、バランスを崩させてはめたりして槍で止めを刺していたらしい。
かなり戦闘向きなスキルな気がするんだけど……
「教えていただいた方法でスキルを上げていますが……現状ですと体積が若干足りないですね……」
「『柔化』の調整もむずかしそうですしね……」
「割とアバウトなスキルなんですよ……柔らかさ調整はいい加減だし、手や足で直接触れると操作しやすいんですが、触ってない遠い場所だと、SP消費と精度が極端に悪くなるので」
「だとすると……落ちた瞬間、地面に当たった瞬間にスキルを発動させれば……」
「無茶言わないでください! 毎回ホームラン撃ちに行くくらいのシビアなタイミングですって。死にますよ!」
とりあえず準備不足感は否めなかったので、近隣の探索のみを行うことにした。
長距離遠征はまた今度だな。未知の領域……と言うよりお宝(生活必需品)のある廃村巡りをしたかったんだけど……もう少し鍋とかほしいよなぁ……
§ § § §
『自動追尾』のスキルのおかげで探索……というより妖魔狩りがはかどりすぎた。
小妖魔と出くわしまくり、一方的に惨殺。物品回収のルーチンワークに入っていた。
妖魔の槍の大量入荷状態だ。何か妖魔の装備が貧相な気もするが……なんでだろ?
「あの、僕は全く役に立ってないのですが……ログを見る限りにはなんかステータスが上がってるみたいなんですが……」
「魔獣とか妖魔を討伐した時に、近くにいると上がるらしいですよ?」
「倒さないと上がらないもんだと思ってました。あ……いいんですか? 近くにいて?」
「もちろんです。回収の手伝いを……また皮鎧は無しか……」
俺とジンパチさんが回収している最中にナオエさんは周囲を警戒していた。
「皮鎧を着てたのは結構大きめの妖魔だったと思うけど……」
「そうですね。なんだか一回り大きいやつを仕留めた時ですね。その時に奪いましたね。あとはたまに戦士っぽい小妖魔が歩いてますのでそれを狙うと良いですよ?」
「戦士っぽい小妖魔……」
「この辺だと見たこと無いわね……」
そういえばナオエさんは中央から来たんだったけ……妖魔の事は詳しくあまり聞いてなかったな。
「中央の山の方には妖魔が沢山いる感じだったの?」
「うん。大きな砦があって、皮鎧以外にも、鉄っぽい鎧を着てる妖魔もいたかな……騎士みたいな恰好してたりするやつもいるし、ほら、映画のなんたらリングみたいな感じ」
「……」
「……」
俺はジンパチさんと思わず目を合わせてしまう。原始的な種族じゃなかったんだ……
要するに、ここにいる妖魔って末端の雑兵ってことなんだな……僻地なんだな。
「鉄製の防具も欲しいですね。金属も曲げられますので調整は出来ると思いますよ」
「それはありがたいですね。鉄製の防具か……」
「鉄製の盾も欲しいですね、皮も結構硬いですが……」
困ったな……今の投げ槍追尾の戦術メインだと……鉄の盾や鎧を貫通できなくなって敵を倒せなくなりそうだな。
重量のある岩や物質を高速で飛ばせるようにスキル上げしないと厳しそうだ。
鎧の隙間狙うしかないか……目とか脇腹とか関節部分だよな。
確か、正面からは矢を防ぐために飛び道具に対する強度が上がってるだろうから……後ろから撃てばいいのか?
悩む俺たちを見てナオエさんが不思議そうな顔をする。
「とりあえず、鉄製の装備を着てるやつが来たら逃げればいいんじゃないかな? だって、鉄装備って重いよね?」
「……あ」
「確かに! 正面から戦う事を考えていました」
完全に頭がゲーム脳になっていた。ジンパチさんも同じような思考だったみたいだな。
まぁ、考えてみればフルアーマーの鋼鉄鎧の人間が俺たちに追いつけるわけないじゃないか。
持久走になったら絶対に息切れするし。
あ、……馬に乗ってたらどうしよう?
§ § § §
俺たちは当初の目的だった、中央の山方面に向かって移動をする。
移動するたびに小妖魔を撃退していく。小妖魔の数がものすごく多い。
なにか異常事態が起きているように思えた。さすがにおかしさを感じたので大木の枝の上に避難して臨時会議を行う。
「妖魔たちが多すぎだよね?」
「この前ここを通った時はこんなにいなかったと思う……この辺は一応通った扱いになってる……記憶が薄いけど」
ナオエさんがボロボロになりながら通過した地点か……そりゃ記憶もないだろうな……意識が朦朧としてたし。
「中央の山辺りはこんな感じだったんですか?」
「……うーん。砦の周りはこんな感じだったけど……」
「……砦があるんだ……」
俺はUIの地図を開き現在の場所を確認する。
ジンパチさんが地面を眺めて何かに気が付く。
「あの、上から見たら気が付いたのですが、獣道の様なものが至る所にありますね」
「……あ、ほんとだ。下からはわかりにくかったけど……」
「方向性がありますので……あっちですね。あのへんに砦や街があるのかもしれません」
ジンパチさんが獣道の線をたどった先の方を指さす。
「……妖魔の街……あるよね? やっぱり」
「確認はしたいけど……」
「……その必要ないかも……あれ、どう見ても旗ね……」
「へ?」
ナオエさんの見ている方向を見ると、木々の隙間から何やら見た事も無い文字が書かれた独特のデザインの旗が数本たなびいていた。木でできた城壁か、見張り台の様なものが見える。
「私が島の央近辺で見た妖魔たちの砦にもあったから……多分そう」
ナオエさんがしばらく旗と砦を見つめていた。
「これ以上はもう少しスキルを上げてから……かな。偵察だけだったら私一人で来た方がいいかもしれないな……」
「……すみません、僕が足を引っ張りすぎて……」
「俺も単独だと厳しいかな……集団に襲われたらやられちゃうよ」
遠くの方で妖魔の集団が行き来をしているのを見てあれを全部相手にする……のは現実的ではないと思えた。
「……このエリアより先を拠点……は無いな」
「無いわね」
「無いですね」
俺は地図のUIに印をつけて、「妖魔の砦・テリトリー?」と記入をしておいた。
鬼人族のいそうなエリアとかなり離れているみたいだな……ってことは中間地点が良いのだろうか?
三人で話し合い、ここと鬼人族の中間地点辺りを拠点候補として場所を探すことにした。
槍投げ君の拠点近辺になるのかなぁ……? あそこは川も近いし海もそれなりに近かったしな……
ブオーーーー! ブォーーー!
割と近くで角笛の音が聞こえる。これは妖魔の仲間呼びに使われるやつか?
俺たちは妖魔に気付かれたのか?? こんな葉の多い枝の上にいるのに?
「どうしましょう? 気付かれた様子は無いみたいですが……」
「そうね……気配はない……違うわね……あっちの方向に妖魔が移動しているみたいね」
「……うーん。とりあえず迂回して戻ろうか……騒ぎに巻き込まれない様に」
三人で気が付かれない様に来た道を戻っていく。遠くの方で角笛の音が定期的に聞こえる。
戦いがおきている? その割には戦っている音なんかは聞こえないな……何かを追っているのか?
「……妖魔たちがいなくてだいぶ楽な移動ですね」
「そうね。妖魔の気配も感じられないくらいだし、妖魔どころか魔獣も引き付けてくれている感じね」
「とりあえず移動できるうちに距離を稼いでおこうか。もしかしたら戦争とか、小競り合いが起きてるのかもしれないし」
「プレイヤーですかね?」
「おそらく」
ブオーーーー! ブォーーー!
……なんか近づいてきている様な気がするんだよなぁ……
不安になってナオエさんを見るが、ナオエさんの『気配察知』の距離には入ってない様だった。
俺たちではないけど、何かしら高速に移動しているみたいだ。獲物を追い立てている?
大規模な狩りをやっているとか? こんな危険な森で?
ブオーーーー! ブォーーー!
「近いみたい……こっち向かってるかも」
「え、どうしましょう?」
「とりあえず……上かな」
ナオエさんの『伸びる』で一瞬にして一五メートル高さの枝の上まで逃げる。
本当にナオエさんのスキルはありがたい。『固定』だけだと登っている間に鉢合わせをしそうだ。
ドドッドッドッ!ドドッドッドッ!ドドッドッドッ!!!
なんか、牛みたいな、サイみたいに角の生えた生物がまっすぐにこっちに向かって走ってくる。
凄い重量感だ。象が走ってるみたいだ……
ん? 人が乗ってる?? 探検家のベスト……プレイヤーか?? 二人乗ってる?
早いなぁ……この森をあの速度で……あ、ぶつかった、乗ってるプレイヤーが吹き飛ばされそうだな、大丈夫かな?
……その後ろから馬に乗った鎧を着た妖魔が追っている感じ……か?
四騎か……後ろのは馬なんだな。毛深いけど……馬も鎧をつけてるな……妖魔も一回り以上大きくて強そうなんだけど……
なんか網みたいなのも持ってるし? プレイヤーを捕獲したいのか??
……俺、どうすればいいんだろ?
助けるべきなのか?




