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「バトロワ」無視してサバイバルライフ ~デスゲームに巻き込まれた俺は「攻略」しなかったら最強になってた件  作者: 藤明
2章 新たな仲間と拠点づくり

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第29話 皮鎧君ことジンパチさん

 俺たちは「槍投げ君」の拠点の物資や配置してあったトラップを回収して、四次元収納ポーチに入れた後に海岸方面へと向かった。

 昨晩、爆音を上げていた場所からなるべく離れて逃げるように移動を続けた。


 移動の際中、小妖魔が三匹ほどいたので、槍投げ君同様に『自動追尾』で死角から首元や頭を『標的』にして槍を投げてみる。『標的』にした瞬間に何かに気が付く小妖魔だったが、キョロキョロしているうちに接近する槍に気が付かずにあっさりと串刺しに……

 びっくりするくらい簡単に一方的にやれてしまった……


 槍投げ君がこの「楽さ」に慣れ過ぎて俺たちも簡単にやれると思って手を出してきた……そう思えた。


「……随分と楽になったね……」

「想像以上に……これだとゲーム感覚になるな……」

「そう見えるわね……彼からは私たちも「ただの標的」に見えたのね」

「そうだろうなぁ……」

「……リスクを負ってないのにステータス上がってる……」

「最初からこれだったらずるいよなぁ……」

「そうね。だけど近づいてリスクを負うよりいいと思う」

「んだね」


 ゲーム感覚になるとはいえ、リスクを冒して接近戦をするよりは遠くから槍を投げて追尾させた方が怪我の心配も無い。小妖魔の装備をみぐるみ剥いで四次元収納ポーチに入れて移動を再開した。倒すたびに槍が増えていくな……槍が壊れない限りは槍が増えるのか……それであの数か……


 俺は魔獣の腹から出てきた大量の槍の事を思い出していた。


 §   §    §


 獣道を歩いていると、ナオエさんが前方の異変に気が付く。


「……ねぇ……あれ、なに?」

「ん? なんだあれ?」

「え?……たしか、この辺は来たことあるんでしょ?」

「あるけど、あれは無かったな……」


 確か……ここは皮鎧を着た強そうなプレイヤーが巨大イノシシをさばいていた場所……のはずだ。

 知らない間に半径十メートルほどの岩のドームが出来ていた。

 イヌイット(エスキモー)のイグルー(雪のブロックで積んだ家)みたいだ。

 所々に隙間がある……城壁みたいだ。

 作ったばっかり……に見えるな。どうやったんだこれ?


 俺たちは身を隠しながら岩のドームに近づいていく。

「中に一人……ね。相手も動いてないからこっちを警戒してるのかも」

「ありがとう……あれは何のスキルなんだ?」

「村の周りにある壁の岩を運んで……作られたドーム……ドームを作るスキル??」

「うーん。なんか違うような……」


 確かに村の周りに岩の壁があった跡がある。ここから岩を持って行ったのか?

 岩のドームの周りをぐるっと回る。入口らしきものが無い。

 岩の形状も何か不思議な……いびつな気もする。歪めたような……不自然な感じだ。


 暫く二人でこれはなんのスキルかの討論が始まる。

 岩を切り出して積み重ねる……岩を操作できる……重量操作で重ねていった……などなど。

 意図した隙間以外はぴっちりと隙間なく積み重ねていたので、削る要素もあるかもしれない……加工するスキルかも?

 などと話しているとドームの中から叫び声の様なものが聞こえる。


「僕は何もしません!! 立ち去ってください!! 僕からは攻撃しませんから!」


 男の声……この前の皮鎧を着たプレイヤーだろうか?


「ほんとですって! 僕は攻撃スキルが無い! 防御用なんですっ! だからあっちに行ってくださいっ!」


 俺はナオエさんと顔を見合わせて相談する。

 あまり攻撃的な性格の人ではなさそうだが……


「どうする?」

「無視でもいいんじゃないかな?」

「でもさ、俺たちが警戒を解いて、ここを離れた後に後ろから……って場合も」

「あ、そうか……」

「見る限り移動できないから……岩のドームの周りに木を置いて火をつければ蒸し焼きになるかもね。幸い薪も持ってるし……」


 ナオエさんが俺の事をちょっと引いた目で見る。

「……えぐいわね……」

「……まぁ、煙で窒息するのが先かと思うけど……」


「ま、待ってください! 降参です! 本気でやめてください! それやられたら死にますから!!」


 随分と早い降参だな……ん? なんか気配が移動した? あれ……気配ってわかるようになるもんか?


「……」


 ナオエさんが指で地面を指さす……指は移動しているから……ああ、地面を移動してるのか。気配の移動は間違いでなかった様だ。

 もしや、地中移動のスキル? 


 二人で音を立てない様に追跡する。

 気配はこの廃村の一番大きい家の方へと移動をしていた。

 隣の廃屋からしばらく様子を観察をしていると、大きな家の部屋の床の中央にあった床板から人が出てくる。

 ドームからあそこまで地下でつながってたのか……すごいな。掘ったのか??

 気配の主は見られているとは気が付かずに裏の扉からこっそりと出ていく。

 扉の中から全身皮鎧で身に包んだ男性が出てくる。周りを警戒して岩のドームの方向を見ながら出口の方へと進む。


 ドンッ!!


 ナオエさんが屋根の上から『伸ばす』で細い丸太を皮鎧君に当てる。すかさず俺が『固定』を使って壁と皮鎧の両方を棒に接着した後、例のごとく『伸ばす』を解除する。

 皮鎧君はあっけにとられた後、廃屋の壁に丸太で昆虫の標本のように『固定』される。


「え、えっ?? ちょっと、なんですかこれ?? 動けない……」


 ナオエさんが前に回って追加で丸太を『伸ばし』皮鎧君は綺麗に丸太に挟まれて完全に板挟み状態になっていた。


「は、はさまれてしまった……ああ、もうおわりか……敢闘賞とかあるんだろうか……」


 何故かがっくりと皮鎧君はうなだれていた。

 割と筋肉も鍛えられてがっしりした感じの男性だ。高校野球とかやってそうだな……

 言動からみるとやたら丁寧だから社会人だろうか?


「……えっと、俺たちには戦う意思は無いんだけど……」

「えっ? そんな、さっき蒸し焼きにするとか言ってたじゃないですか?」

「ああ、それは襲ってくる可能性があれば……なんだけど……」


 皮鎧君は俺とナオエさんをみる。

「そうですよね、共闘した方が楽ですよね……引きこもってる場合じゃなかったか。なるべく痛くない方法でお願いします……ああ、一千万円が……」


 なんだかイジメてる気分になってきた……

 ナオエさんがやれやれといった表情で皮鎧君に話しかける。


「ねぇ、あなたの目的は黒結晶が破壊されるまでの生存……だったの?」

「……そりゃそうですよ。次男の学費が払えますからね、親としては頑張って稼いであげたかったんですが……」

「あー、そうね、一千万あれば……大学行けるわね……」


 見た目は高校球児だが……セリフの内容がお父さん……なんか違和感バリバリだな……

 ってあれ? 俺が読んだことのある情報とちょっと違う気が……


「え? 二千万かかるとかじゃなかったっけ?」

「それは養育費じゃないですか? 学費込みの?」

「なるほど……すみません、子供いない年代なんで……」

「いえいえ、あちらの世界に戻ってもお互い頑張りましょう……」


 って、この人の見た目も高校生くらいだから感覚が狂うけど、中身はアラフィフくらいか?

 言動がなんか、ベテラン社員みたいなんだよなぁ……


「あ、カタシ君、なんか気配が近づいてくる。複数」


 ナオエさんの向いている方向を見ると、小妖魔が4匹ほどこちらを見て騒いでいた。

 見晴らしが割といいから遠くから気付かれてたみたいだな。

「#$#$#””! #$#”#”!!!」

「$##$#”#”!!!!」


 俺はとりあえず四次元収納ポーチから妖魔の槍を出し、小妖魔に向けて次々と『自動追尾』を使って投げ込む。

 何本かは気が付かれて盾で防がれたけど、盾を構えたままの足や、盾から外れてた脇腹を貫いていた。盾で視界を塞ぐのは悪手だな……覚えておこう。

 十本ほど投げ終わった時点で四匹の小妖魔の動きは無くなっていた。

 さて、話し合いを続けるか……

 ん? 皮鎧君が呆然としてこちらを見ている。なんでだ?


「……最近、小妖魔が大量に死んでいたのはあなたが原因だったんですね……」

「……え? そうなんですか?」

「……え? 違うんですか?」


 ナオエさんが少し考え込む。

「……確かに槍投げ君の拠点の方に行くときに妖魔の死体を結構見かけたわね……」


 あ、そうか、このスキルを持っていたのは槍投げ君……彼が頑張って狩ってたのね……


「あー、俺じゃないですね。このスキルを使ってた人が巨大ワニ恐竜に食べられたので、その時に拾った感じで……」

「……あ、あの恐ろしい恐竜ですか……それはなんとも……それで昨夜凄い騒ぎに……」


 この辺をテリトリーにしている人間にとってはあれが一番の天敵だったもんな……

 結構離れてるけど、昨日の爆発音などはここまで聞こえてたんだな。


「ねぇ、ええっと……お名前は?」

「軟家ジンパチです……」

「あ、私は伸上ナオエ、こちらが不動カタシです」

「これはご丁寧に……ってこの状態で自己紹介ですか? 殺す相手にするものでは……」


 ああ、なるほど、もう完全に諦めてたのか。常識人っぽいし、仲間にしたいな……


「ジンパチさんは最後まで生き残るのが目的だったら……協力していきませんか?」

「……え?」

「私たちは最後まで生き残る。それが目的だから」

「それは……是非にでもですが……いいんですか? 戦闘に向かないスキルですよ?」


 俺は皮鎧君こと、ジンパチさんが体にぴったりとした皮鎧を着ているのに違和感を感じていた。

 その鎧は妖魔のもの……に見えるんだよなぁ。そうなるとどうやって奪ったんだろ……


「どんなスキルなの?」

「えっと、こんな感じの……」


 俺の足元が突然「ぐにゃ」っとまるでゼリーのように変化する。

 慌てて俺は地面から移動する。


「柔らかくするんです。対象の物質を」

「なるほど……」

「それで、岩が不自然な形状に積まれてたのか……」

「そうです。手で触ると簡単に柔らかくできるので……最初は魔獣の立ってる地面を柔らかくして転ばし戦ってみたのですが、複数になると大変で……こりゃあかんと思いまして……」


 その割には装備がしっかりして見える……妖魔とかも軽く倒せてたんじゃないのかな?


「その皮鎧は?」

「ああ、これは妖魔が着ていたやつを柔らかくして伸ばして着てみたものですね。スキルを解除しても形はそのままですので、ぴったりとした皮鎧に。割と重ねています。死なない様に」

「……縮まないのね」


 ナオエさんが不思議そうにジンパチさんの皮鎧などを見ていた。支給品じゃないのに色々なものがフィットしている様に見える。


「え? 縮む?」

「……あ、いや、スキルによるみたいね」


 これは……物凄い有効活用できるスキルなんじゃなかろうか……正直なところ、妖魔が装備している防具、皮鎧系はサイズがあまりに合わなさすぎたり、調整することもできなさそうだったので接収せずに廃棄の方だったが……今度良さそうな品質のものがあったら保管した方が良さそうだな。


「あ、あの……そろそろ……おろしていただけませんか?」

「あ」

「ご、ごめんなさい……忘れてた」


 ナオエさんがスキルを解除するとジンパチさんはピタっと地面に着地する。

 運動神経は良い方っぽいな。


「いやー若いからだっていいですよね~子供を追いかけるだけで精いっぱいだったのに……」

「それは……大変ですね……」


 どうもこの人と話すとペースが狂うな。割とゆったりとしておおらかなんだな。


「俺たちこれから海の方に行って塩水とってこようと思うんですが、行きます?」

「え? 塩? 身体の調子が悪くなって来てたんですよね、そうか塩分か……忘れていました……行きます、あ、ちょっと準備いいですか? 色々と収納してきちゃいます」


 ジンパチさんが出てきた穴の中に入っていく。

 何か普通そうな感じの人だな……


「勝手に進めちゃったけど、大丈夫よね?」

「もちろん。良い人そうだね」

「……そうだといいね」


 ナオエさんがなんか遠い目をしていた……

 さすがにアラサーまで生きていると、人生で色々経験するものな……まぁ、経験上結婚して子煩悩タイプに悪い人間は少ないないから……まぁ、いい方向に転がると良いな……

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