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「バトロワ」無視してサバイバルライフ ~デスゲームに巻き込まれた俺は「攻略」しなかったら最強になってた件  作者: 藤明
6章 王都と決心

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第119話 アスティナと初恋

 俺は仲間の探知能力をフルに生かして、アスティナさんを発見した場所へと一人で向かう。

 砦の物見台……の上……そりゃ見つからないよな。街中からは死角になるし。

 よじ登るのも面倒だったので「座標転移」で一気に移動をする。

 ……ちょっと頭がふらつくな。でもだいぶ慣れた。一人だと消費SPが感じられないくらいだな。


 アスティナさんが俺の気配に気が付き、一瞬びくっとするが三角座りを止めずに遠くを見ている。話しかけようとしたが……言葉は通じないんだよね……

 仕方がないので彼女の隣に座る。

 しばらく何を言うか、どう説得すればいいのか考えて座っていると、アスティナさんがこちらをチラチラ見たあと、こちらを見ずにゆっくりと手を伸ばしてくる。

 ……そうだよね……やっぱり「感覚共有」しろってことだよなぁ……観念するか……


(……どこまで見えたの?)

(……過去に起きた……色々と……嫌な事が見えたかな……)

(そう……あなたとは同じ言葉で会話したかったけど……これは伝わりすぎだわ……)

(俺もそう思う……)

(?? 知らなかったの???)

(……ゴメン……)


(何回……やり直してるんだ?)

(5回目……今回は)

(……そんなに……)

(あの子はもっとやり直してるかも……生き残らないと記憶を残せないみたいだから)

(あの子……神子……君の弟だよね?)

(そう……やり直しを知らないふりしているの……3回目から隠すようになったわ……)


 俺の頭の中には最初はアスティナさんに相談をしていたが、しばらくすると別行動が多くなる……すれ違いが多くなる……といったイメージが流れてくる。あからさまに避けてる感じだな。


(弟君も……やり直さないように動いているんじゃないのかな……)

(だと思う。いい子だからね……私に何かを伝えると……失敗したんだろうな……とは思う)

(……突っ走るから?)

(……そうとも言うわね……もう少し優しい言い回し……この状態じゃできないか……)


 アスティナさんは何とも言えない表情をする。諦めたような……悲しいような……嬉しいような……


(どうすれば「やり直し」をとめられるんだ?)

(……今のところ分かってるのは……瘴気の魔獣が大量に出現する時、瘴気の黒龍が出る事……黒い巨人が大量発生……王国人が攻めてくる……それとリョウコ達……てすとぷれいやーが襲ってきてピンチになったこと……なのかしらね……「やり直し」の原因は……止め方はわからないわ……)


 さっきよりも具体的な最後の映像が頭の中に流れてくる。

 なんか……もう滅茶苦茶だ……災害が迫ってくるような感じだ……仲間は……ほとんどいない状態……手詰まり状態になると巻き戻るのか? テストプレイヤーも、新規プレイヤーも追加要素……なのかこれ? 毎回敵側が変わってる様な……

(……毎回「やり直し」のパターンが違うって事か……要素が足されてる……)

(ええ、一つ成功させると違う事が起きるの……私が元気でもやり直しになるし……この島の住人が……同族がたくさん死んでしまうと巻き戻るのかしらね……)


(今回は……テストプレイヤーは数人敵に回ってる感じだけど、あとは味方、日和見になったから危険性は減ったし……王国人もほぼ無力化……まぁ……どちらにしろ「瘴気」とやらが悪さしているのだけはわかったな……)

(やっぱりそうよね……)

(ヨウカさんとか……『浄化』系スキル持ち集めてひたすら浄化……するとかかな……)

(リンカの「時間移動」はエーテルの力なのよね?)

(だと思うけど、厳密には「スキルパワー」ってやつを使ってる感じだね)

(なるほど……本当に神様たちに与えられた力なのね……この変な人が神様なの?)


 俺は思わずこの世界に来た時に会ったカミもどき、「案内人」の事をイメージしてスキルをもらった事を思い出していた。

(あ、そうだな……それが神様……なのかもしれないけど)

(……この神様は崇めたくないわね……)

(ほんとに……)


 一瞬、アスティナさんが笑顔になる。良かった。ちょっとは気がまぎれたか……それにしても滅茶苦茶可愛いな……現実世界ではほぼ見ないレベル……芸能人とかモデルみたいだな……

(……か、カタシ……お世辞……はいいのよ……)

(あ~……そうだった。まぁ、本当にそう思ってるわけなので……)

(……そう……アリガトウ……)


 照れてる姿もかわいいな……

 この人たちを守るには……どうすればいいんだろ……恐らく時間を戻してる根源があるはずだ。それを取っ払うのが俺たちのクリア条件……なんだろうな……スキルを駆使すれば……クリアできるように設定されているのかも……

(ほ、本当?? なんとかなるの??)

(……あ、確証はないけど……黒結晶とやらを破壊すれば…)

(……やっぱり違うわね……私の見た「母なる結晶」とは……)


 アスティナの頭の中には綺麗なエーテルの色をした巨大な結晶のイメージが伝わってくる。

 確かに違うな……カミモドキが見せた黒結晶とは大分違う……神聖な……神々しさを感じる。


 あとは……それだけ先回りされてうまく行かないのなら……鬼人族、仲間にかなりの人数の『地底人』が紛れてるんだろうな。それか、監視する魔法とか機械とか……あるのかな……その辺の調査もしないとな。

 よくあるパターンだと偉い人間に紛れて国中を混乱に陥れているとかだけど……

(……その考え方は無かったわ……てっきり斥候が潜んでいるのかと……誰かに変わってなりすましているって事よね……そうなると……)


 アスティナさんが思考に耽る……と言うよりも、色々な鬼人族、各種族の代表っぽい人のやり取りを高速で洗い出している感じだ。鬼人族って言っても色々な人がいるんだな。普段見ているのは勇ましい鬼人族だけだったようだ。

 ……この感じだと……神官……神殿の人が怪しいのか?

(……そうね……ツクヨミの取り巻き……言動が毎回おかしい……意図がありそうね)


 なるほど……とりあえず疑わしい人には問答無用で『浄化』だな。

(それは難しいかも……公式の場では……王都では父が病床だから発言権が……うまく制御できないのよね……)

 ……潜り込んでこっそり『浄化』してけばいいんじゃないの?

(……え? 潜入??? あ、そうか……あなた達がいれば……できるわね……え? なに? カタシはこんな……盗賊の様な事をしたことがあるの??)


 あ、ごめん……ゲームの世界の潜入ミッションとか……あ、絵物語とかだよ。

 俺の中には「潜入殺人ゲーム」や、スパイの映画、スパイ系のアニメを思い出してしまう。


(こんな鮮明な……すごいのね。え? 絵が動いてるわね……不思議な……)

 ……ほんとごめん。脱線した……他所事が全部伝わるってのもすごいスキルだな……『思念伝達』って……

 助ける手段も……算段着きそうだな。みんなのスキルを組み合わせれば……エーテル活動阻害の手錠を組み合わせれば無力化が出来るかな?

 うん、いけそうだ。


 あれ? なんか俺が見える……あ、アスティナさんがこっち見てるのか。

 なんかキラキラとした良い目になったな。……あれ? なんか俺がキラキラして見える? あれ??

(あなたは……私の救世主様ね……)

(そんなすごいモノじゃないと思うんだけれども……)

(私にとってはそうよ。それに、この『思念共有』は嘘をつけない……あなたはこれからも私を助けてくれる……ずっと一人ぼっちだったから……)


 ちょっと待ってくれ……そんなに見つめられると勘違いを……あ、勘違いじゃないなこれ ……胸の高鳴りが……胸が締め付けられる? これは……中学時代に体験した……なんか泣きそうだ……いや、これは彼女の気持ちか??


(ねぇ、あなた達「新規プレイヤー」と子供ってつくれるのかしら?)


 !? !? ?! 


 ぶっ飛びすぎじゃ!?? アーゼさんは作れるっていってたような? 異種族とは……わからないよ!!

(そう……わからないのね……え? 「げーむくりあ」してしまうと、あなた達はいなくなってしまうの?)

 ……それはわからない……本当に……

(そう……ずっといてくれると……うれしいのに……)


 アスティナさんが気が付くと手を握りながら、腕も抱きかかえてくる。

 なんか……色々な柔らかいところがダイレクトに当たって……色気が……ヤバい、やばいって……

 こっちがエロイ事考えてるのも伝わってるんでしょ? 離れないの???

 って、スゴイ嬉しそうな顔をしてこっちを見てくるし?? すごい高揚感が伝わってくる?? 


 り、理性が……



 ドンッ!!!



 突然俺たちの後ろに音と共に「殺気」の様な、「戸惑い」の様なものの気配が伝わってくる。


「……なに……してるの?」

「あ……」


 ゆっくりと振り返ると、ナオエさんが後ずさりをしたり視線を逸らしたり……してオロオロとしていた。とても不安そうな……

 中学時代の……あの時を思い出す……噂が駆け回って……ぎくしゃくした時の事を……

(へぇ……ナオエが初恋の……あちらの世界では上手くいかなかったのね……なるほど……すごいのね……学校……綺麗な建物ね……)

 え? あれ、こんな一瞬で……伝わるの???


 ちょ、ちょっと待って。

 浮気現場みたいになってる? 今?

(大丈夫よ。この国では強い男は沢山の嫁を娶るのよ。嫁が多いのはいいことなの)

 って、そっち?? そっちなの?? 

 え? 弟さんもたくさんいる妻の子供なのか……

 って、よ、読まないで、俺の心を……

(『思念共有』をやめたらいいんじゃないのかしら? さっきから)

 ……あ。


 俺は慌てて『思念共有』を切る。

 ご、誤解……誤解? とりあえず説明……しないと?


「情報共有してた……今後の事を……」


「……そ、そうなのね……」

「王都……神官が怪しいって感じで……」

「……それは、その……あの、腕を組まないと分からないくらいな……感じ……なの?」

「それは……」


 あの凛とした感じのナオエさんが……視線が空中を泳ぎ、揺らいでる感じだ……どうすれば……あ、いや、俺が優柔不断だから……


 迷っているとアスティナさんがすくっと立ち上がって俺の手を持ち上げて引っ張り上げ、ナオエさんの手を取る。そのまま俺とナオエさんの手をつなげる。

 ……え? なにやってんの?


「カタシ。シネンキョウユウ!」

「え?」

「え??」

『ちゃんと話をすると良いわ、話さないと「また」すれ違うと思うの』


 え? 何だ、言葉が分かった?? すれ違い?……誤解が……誤解? 

 今、アスティナさんに完全に心が持っていかれてた気がする……誤解なのか?? 

 俺はこんな浮気性だったのか???


「だ、駄目。今は! 絶対に!」


 ナオエさんが俺たちの手を振り洗う。

「さ、先に戻ってるわ! 変なことしちゃだめよ……」

「あっ……」


 最後の方は聞き取れないくらいの速度で一瞬で俺たちが止まっていた宿の方に消えて行った。……何か仲間の注目を浴びてるな……戻らないと……


『……あなた達がうまく行かなかった理由が分かるわね……』


 アスティナさんを見送った後、俺の事を呆れた感じで見ていた。

 言葉がわからないけど……色々と知られた状態だと……なんか心に来るな……


 §  §  §  §


 宿に戻ると雰囲気を察知したサチさんに椅子に座らされて「思念共有」の使用は相談をしてから、相手の許可を取ってからにすること。

「思念共有」で会話、雑談をしない事を約束させられた。

 安心する日本人プレイヤーとは裏腹に、鬼人族達はこぞって「思念共有」をしたがっていた。

 なんだろこの温度の差は??

 みんな、なにかしら隠し事をしている??


 それからも『思念共有』がらみでひと悶着あったが、それはまだ別の話……


 §  §  §  §


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