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「バトロワ」無視してサバイバルライフ ~デスゲームに巻き込まれた俺は「攻略」しなかったら最強になってた件  作者: 藤明
6章 王都と決心

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第118話 宿場町『思念共有』

 41日目


 俺たちは一日の移動をはさみ、王都の手前の街の宿屋に来ていた。

 ここは……堅牢な城壁はあるが、宿場町ってやつになるんだろうか? 人の行き来が凄く栄えている様に見える。

 話し合いの結果、俺、ナオエさん、リンカさん、サチさん、リキさん、ヨウカさん、ウィンディ、アスティナさん、護衛の鬼人族の戦士3人の11人の隊になっていた。

 王都への移動の道中も黒い巨人や、黒い魔獣が発生していたので狩りながらの移動になっていた。


 宿屋の店員たちがアスティナが宿屋に入る時にひと悶着あったが、ここの領主に挨拶している時間が惜しいのと、移動がばれると相手プレイヤーに対策されるかも……と素泊まりくらいな感覚での滞在となった。

 プレイヤー達は窓を開けて外を眺めていた。鬼人族は慣れた感じで思い思いにくつろいでいた。

「異世界情緒を楽しめればよかったのにね」

「まぁ、そうだよなぁ……見回すだけで映画の中に来た気分になれるのにな」

「宿場町……江戸って感じね」

「教科書みたいな町ですね」

「イケメンだらけですよねぇ……すごいなぁ……」

「服も割と近代っぽい感じなのもあるんですね」


 確かにこの街は、城壁が高いこと以外はすごい綺麗な江戸時代と近代のハイブリットの街だった。王都に近い……って話だからかなり都会なんだろうな。

 港町は日本っぽさが薄かったけど、なんかこっちは本当に日本って感じだし。まぁ、石造り部分が多いから変な感覚も受けるけど……

 一部変な感想があったけど……まぁ、確かに美男美女が多いな。美しい見た目の森人が混ざっているからなおさらだけど。


「たまーに、日本人っぽいのが歩いていますけど……新規プレイヤーですかね?」

『そうね。この街への「ぷれいやー」黒髪の人間の出入りは禁止していないわ。王都だけね』

「なるほど……」

『黒髪の人間の近くには監視が付いてると思うわ』

「……たしかに……屋根の上に忍者みたいな人がいますね……」


 何となくまったりした会話が続くけど、オトナシさんの『翻訳』スキルが無いから『鬼人族』の会話がわからないんだよね。とりあえず新しいスキル『思念共有』を試してみるか。

 隣に座って髪をくりくりとまわしながら考え事をしているアスティナさんの手を握ってみる。

『……へ?』

(あ、どうもー、言葉分かります?)

(え? ええ?? わかる、わかるけど、て、手が??)

(どうやら肌を接触させると伝わりやすいみたいなんだよね。どう?)

(わかるんだけど、わかるんだけど……手、手なの!? 握って?!……)


 あれ? なんでパニックになってるんだ? 手を握ったくらいで?


『カタシ……なにやってるの?』

 ウィンディのドスが利いた声で俺の肩に手をかける。あれ? なんかやってしまってる? とりあえずウィンディの手を触って……

(ウィンディはどうだ? これでわかる感じか?)

『なっ? これはどういった?? カタシの声が聞こえる?? 口が動いてないのに???』


 うん、消費SP……分からないくらいだな。これなら全員で通話できそうだな。直列繋ぎとかやれば行けるか? スキルの解説には離れていても『思念共有』できるらしいけど、肌を直接触る面積が多い方が良いってかいてあったからな。ウィンディの手を取ってしっかりと握ってみる。

(カタシ!!?)

(どうしたんだ? 俺の声分かる?)

(え、え??)

(ちょ、カタシ、待って、心の準備が……)

(なにこれ……手をつないで円になるの? 儀式かしら? 早く言ってよ……驚いたじゃない)


「あーそれじゃ、みんな円になって手をつないでみて。スキルのテストと作戦会議を」


 リョウコがジトっとした目でこちらを見ながらウィンディの反対の手を持つ。

「……あの、先輩。日本人だったら……手を握るくらい大丈夫ですが……」

「もう少し相手の反応見なさいよ」


 ナオエさんもなんか呆れてるんだけど……

 ん? あ……そんな小学生レベルの……って、そうか文化が違うか。何となく保育園児が手をつないでたのに、小学生になったら恥ずかしくなったよな……ってのを思い浮かべてしまう。

(私は子供じゃないっ!)

(そうです! れっきとした大人ですからっ!)


 なんかぷんぷんとした雰囲気のまま手を強く握り返してくる。

 あれ? これ、どこまで意識が伝わるんだこれ?

(……さっきから伝わってるわよ?)

(子供のようなイメージが来たし……)

(カタシは頭の中は結構おしゃべりなのね。色々なイメージが伝わってくるわ)

(そうなのね……だからあれだけ色々な事を思いつくのね)


 うーん、会議には使いにくいスキルかなこれ。

 とりあえず全員で手をつなぐ。こっちの言葉が分かる人はこっち向いてくれれば……あ、いけるな。SP消費ほぼなし。これはいけそうだ。不思議そうな顔をみんなしてるけど、俺もだ。

(カタシくん、私の言葉はどれくらい伝わってるの?)

 え? 今話している事以外は……伝わってないけど? 話してたのか?

(……なるほど。カタシ君の思考はダイレクトに来るけど、私たちは伝えようと思わないと伝わらないみたいね)

(……それは良かったですね。意識してないのに心読めたら……色々と厳しいですよね)

(そういうスキルもあるんだろうな……)

(テレパスとか、そういうやつね)

(これ、現実に持っていけたらヤバいスキルですね)

(……私たちにとってはこれが現実なんですけど??)

(……腹芸が出来ないわね……こまったわ……考えなければいいのね……無理ね……)


 ……って、俺も他所事を考えられないじゃない……って事は俺がピンチか。王都までの話し合いと、王都着いてからの話し合いをしたかったんだけど。リョウコが通訳をやった方がいいか? 思わず会社でのプレゼンを思い浮かべてしまうな……

(……先輩、私の仕事姿が……)

(すごいのね……これがカタシたちの世界……全然違うのね……服も違うし)

(これが異世界……日本なのね……建物がガラス張りの塔の様ね……)


 ……ちょっと考えるだけで伝わるって……

 それじゃアスティナさんに作戦の説明をしてもらいましょうか。おそらくこれだとかなり伝わると思うし。

(なるほどね……順に説明……イメージしていくわね……)


 アスティナさんのイメージが映像と共に説明が入っていく。まるでどこかの解説動画を見ている感じだった。質問もすぐさま共有できるので……ってか、本当に王都の脱出口……なんてあるんだな。映画みたいな設定だ。

 ……何と言うか物凄い濃い情報交換ができていた。SP消費がほとんどない……のもすごいな。消費しているのかもしれないけどSPの回復量が上回っている。


(それがあなた達が見ていたUIと言うやつなのね)

(ほんと、テストプレイヤーと違う感じですね。すごく簡素)


 あ、ごめん他所事考えた。アスティナさん続けて……

(わかったわ……)


 それからもアスティナさんの解説……おそらく敵側の可能性が高い鬼人族の顔、しぐさ……発言などがリアルタイムで動画付きで解説が入ってくる。物凄く便利だなコレ……

(この子が神子と言われる子……私の弟のツクヨミ……)

(見た事あると思ったら……私が治した子ね……綺麗なのね)

(ええ、とても可愛らしいわ……でもかなり重い……分けられないくらいの業を背負ってる……)

(テストプレイヤーの中では彼がラスボスって考察も出てたんですよね)

(だから襲撃にあったのかしら……)


 アスティナさんから神子の襲撃時の映像が伝わってくる。鬼人族の回復はできずに冷凍保存をして俺たちの方に来ていた……ああ、そうか、前回と場所を変えて逃げるために……港町付近に来てたのか……だから俺たちのところに……

(そうね……賭けになったけど……本当にありがとう……)

 俺じゃなくてナオエさんだからな。治療したのは……

 なんだか暖かい何かを感じる……『思念共有』って言葉だけじゃないのか……

(……あなた達の選択のおかげで……私たちはどれだけ助かっていると思っているの……)

 俺たちと出会ってからの……希望……歓喜……一筋の光……未来の……幸せな光景……感情と映像が俺に流れ込んでくる。


(あなた達と出会えなければ……私は……)


 すると突然、王国軍の銃撃で倒れていく鬼人族と森人族達……倒れた神子を抱きかかえると暴風にまきこまれる場面、街が凄まじい爆発で破壊されて吹き飛ばされる場面、リョウコと本気の殺し合いをしている場面、信じられない大きさの黒い巨人が湧き出ている場面、黒い巨大な龍と戦う場面……ウィンディが黒い魔物に食われる瞬間……鬼人族の王様がアスティナをかばって死ぬ瞬間……アッシュさんが無残に犠牲になる瞬間……など凄惨な場面が走馬灯のように流れてくると同時に激しい感情がこちらに伝わってくる。悲しみ絶望……怒り……そして諦め……思わずアスティナさんの方を見ると、こちらの視線に気がつき、握っていた手を慌てて払う。


『ご、ごめんなさい。頭を冷やしてくるわ』


 アスティナさんが凄い勢いで部屋の外へと出ていく。護衛の一人が彼女を追っていく。

 取り残された俺たちは呆然としていた。リンカさんとヨウカさんは涙をこらえきれずにつられて泣いていた……俺も……なんか物凄く悲しい……心が落ちていく……こんな状態で戦ってたのか……彼女は……凄まじい感情の起伏にあてられて感情がうまく制御できない……


 ナオエさんが目に涙を浮かべながら俺の事をにらむ。

「カタシ君……これから……『思念共有』するときは、事前に説明して許可を得る事ね……」

「そうね。ここまで考えている事がわかっちゃうと……お互いの心をのぞき見していることになるわ。絶対にやめてね」


『アスティ……あなた……こんな事を……経験していたのね』


 ウィンディが本格的に泣き出してしまう……俺も泣きそうだ……ってか……おかしい。色々な時系列がぐちゃぐちゃになる。


「……そうだったな……ごめん……ちゃんとテストしてからすればよかったな……」


 しばらく静寂が部屋を支配する。誰も口を開こうとしない。

 俺も今見た記憶の映像を思い返し……何が起きたのかを理解しようとしていた。


「でも……すげぇな……こんなに濃い会話……いや、コミュニケーションなんて取ったこと無いから……王都の事が……過去の事が全部わかった気がしてしまうな」

「ほんとですね……プレゼンにこれがあれば……すごい楽ですね……はぁ……」


「あー、でも、相手の事好きとか、そういう事も伝わっちゃうんですよね? 困りません?」

「そうですよ。伝わりすぎるのものも問題かと思います!」


 そうだよな……今ので……アスティナさんが……絶望の淵であがいて……ここまで来られるた事を喜び……とんでもない事をしていたのを理解できた……ただ……色々とおかしいな……


 サチさんが涙を布で拭った後、リョウコの方に向き直る。

「ねぇ、リョウコさん。あなたが「この世界はやり直している」と言っていたけど、一度なのよね?」

「……そのはずでしたが……あんな黒い龍なんて見たこと無いです……」

「やはり……何度もやり直していると考えて良さそうね……」

「……王国人の話が正しければ……一年くらいやり直してる……この数か月を何度も……って考えるのが良いのかもしれないわね……」


 ……彼女は何回この戦いをやり直してるんだろうか……

 さっきの記憶の断片を見るに、数回以上……もしかして十回くらいやりなおしているんではないだろうか……


「なんか……私の目的が……馬鹿みたいにちっぽけな気がしてきた……」

「……私もです……ただ賞金貰えれば……って感じでしたし……」

「私もですよ……ボランティア気分でした……」

「そうね……現実を少し変えたいから……くらいだもの……」

「ああ、俺は小遣い稼ぎみたいなもんだからな……サチが探してるスキルゲットできればラッキーくらいに考えてたわ……キツイな……」


 ……やばい。なんかすごく重めの方向に……ああ、そうだよな……ああ、俺は……

 リョウコが俺の事を真剣に見つめてくる。

「……先輩は、何を考えてみんなと「思念共有」したんですか?」

「ごめん、そこまで考えて無かった。通訳すると伝わりにくいと思って……あと、いいテストになるかと……スキルの説明にもなんか、同時に大人数での共有の仕方が書いてあって……それで、あの、便利だった……よね? 一部は?」


 一同が俺の事をジトっとした目だったり、マジかよと言った目だったり……本当に……って感じで……ああ、針の筵ってやつかこれ……ほんとごめん、こんなに共有できると思ってなかったんだ。説明文があいまいで理解しきれなかったんだ。


「……はぁ」

「ほんと、ノリで突き進んでますね、先輩って」

「テストでこんな重要な事を……」


「……ちょっとは責任取って欲しいわね」

「ほんとだな。お気楽気分が一気になくなったぞ……」

「……」


 リンカさんがこれはまずいと思ったのか、元気よく発言する。

「私はアスティナさん達、鬼人族がハッピーになる道を選びますよ!」

「私もです! 片っ端から浄化してやります!」

 ヨウカさんもつられて雰囲気をよくしようとしてくれてる。

 そうだよな……いつまでも凹んでても意味ないよな。きつい思いをしたのはアスティナさんなんだから……


「目的を果たすのに彼女達と道が同じ……それだけで良い気がするわ」

「……言ってることは同じなんだけどな。ま、俺も出来るだけ協力するわ」


「私は出来るだけ鬼人族を助けますよ……ほんと悲劇のヒロインじゃないですか、彼女」


「……」


 ん~なんか……みんなまとまってくれたのか??

 もう「母なる大結晶」とやらの調査だけでは……やっぱり終わりそうにないな。

 そんな事を考えていると、扉の開く音が聞こえる。


 護衛の鬼人族が戻って来たけど……アスティナさんはいないな。

『姫が見つかりません……探すのを手伝ってほしいです』

『リョウコ、通訳を』

「アスティナが見つからないので、先輩が見つけに行った方が良いと言っています」

『……そうは言ってないのだけれども……』


 ……なんか、ウィンディの表情を見ると、違う気がするんだけど……あれ? みんなの俺に対する視線が……なんか厳しめな感じなんだが……

 分かりましたよ……行きますよ……俺のせいだし。


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