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「バトロワ」無視してサバイバルライフ ~デスゲームに巻き込まれた俺は「攻略」しなかったら最強になってた件  作者: 藤明
6章 王都と決心

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第115話 狩人を狩る狩人たち

 §  §  §  §


 太陽が地平線の奥に近づき存在が分かるようになると、空が白み始め、草木の色が分かるくらいになっていく。

 リョウコの話だとテストプレイヤーはこのくらいの時間から活動を始めるらしいから、そろそろだな。


「いるわね。こちらに気が付いた様子はないわね」

「協力してくれるみなさんのスキルのおかげね。ちょっと数が合わないけど……現地の人もいるのかも」


 先行して偵察をしていたサチさんとナオエさんが戻ってくる。

 総勢20名がちょうど丘の陰に隠れながら移動し、狙撃ポイントで待機するテストプレイヤー達を確認する。

 遠くの方でも別動隊の20名が左右を挟み込む様に丘や岩や木の陰に隠れて待機している。

 待ち伏せを待ち伏せてる……なんか変な感覚だ。


「あれが祠か、祠を出た瞬間やるんじゃないのか?」

「祠はセーフティポイントになっているので魔術の攻撃が無効化されるんですよね。なので離れた場所……逃げ込めない場所なのでちょうどダンジョンとの中間地点で張ってる感じです。多分あそこで狙撃すると思います」

「なるほどな……」


 納得すると同時に、俺の頭の中に変なイメージが突然湧く。


 ……巨大な瘴気の巨人が祠の周辺をなぎ倒している。

 強い悲しみを感じる……なんだこれ……目の前に血だらけのウィンディが……倒れてるのか?

 なんだ、この絶望感と悲しみに満ち溢れた感じは……瘴気の巨人が増え……

 目の前には信じられないサイズの瘴気の巨人が……


 突然、景色が現実に戻る。


 冷や汗……と言うものをかいているのか……若干手が震える……何が起きた??


 攻略組にも同じ感覚があった様で驚きの表情をこちらに向けてくる。

 アスティナさんも振り返り、周囲を見回していた。ウィンディの姿を見るとホッとしている感じだった。

 ……ある程度エーテルが強い人間が感じ取れる何か……なのか?

 港町の時も、爆発の光景を見たのはエーテル量の高い人間だけだった。


「……先輩? どうしました?」

「……見て無いのか? リョウコは?」

「……なにをですか?」


 リョウコは見て無いのか?? テストプレイヤーには見れない??

 呆然としていると、俺の手を強く握るリンカさんの姿があった。手が震えてる。今のイメージを見せてくれたのは彼女か? 表情から怯え……絶望……悲しみ……全部を感じる……

「作戦の変更を! タイミングが違ったみたいです!!」

「わかった、どうすればいい?」


 ……これは、巻き戻しのスキルを使った……直後か、目が見開いて左右にせわしなく動き落ち着きが無い。と言うより無理やり動いてる感じだ。

 ナオエさんが近づき「治す」スキルをリンカさんにかける。

「落ち着いて」

「ありがとうございます……どうすれば……まずは……遅かったです。狙撃が早くて……相性が悪いみたいなので、左右のチームを入れ替えて、あとはカタシさんが壁を常に使って守ることと、ウィンディはここに残って……死んじゃう……」

「……よくわからないけど、攻撃チームは入れ替えるわね」

「ウィンディ、ここで待機、OK?」

『え? なんで!? 私も戦える!』


 リンカさんが目を若干泳がせながらリョウコと視線を合わせる。

「リヨウコさんは手加減なしの全力で! 威力が足りませんでした!」

「!……わかりました」

「……やらないと……やられるんです……あとは目の前にスキルオーブが出現したら。迷わず取ってください! 考えないですぐに選択をYesにして。相手にとられると厄介なんです!」


 リキさんが若干呆気にとられながらもリンカさんに近づいていく。

「ちょっと待ってくれ、状況の整理を……落ち着けって」

「そうね、ちょっと……どうすれば……曖昧過ぎるわ」


 リンカさんが珍しく激高したような大声を出す。

「そんな暇はありません!! 太陽が出る……すぐ来ます! リョウコさん! 詠唱の開始を!」

「え? まだ祠の反応が無いんですが?」

「来るんです。祠に到着すると同時に撃ってきます!」


 ふと俺は思った事を呟く。魔法無効化のセーフティーゾーンでも移動はできるんだよな?

「なぁ、黒瘴石ってエーテルのバリアとか貫通、移動できるるんじゃないのか?」

「魔術……ではなくて物理攻撃だよな。あれ」

「物理は通るのか?」

「移動できるものね……」


 ん?なんか祠が光り出した。あ、これ、駄目なパターンか? 行けるのか??

「先輩! 来ます!!」

「作戦開始!! 左右の別動隊に合図を!」


 俺の左手を中心にその場にいる全員で手をつなぎ輪っかのようになる。これでスキルが通しやすいはずだ。あとはリョウコには俺が背中に右手を当てて……準備完了っと。

 さすがにみんなの表情が硬くなる。あれ? ウィンディも入ってるような?? ダメでしょって、そんな時間は無い感じか??


「『気配遮断』拡張展開します!!」


 リョウコが魔法の詠唱を始める。あ、この魔法の詠唱は知らされてないんだけど……『万能なるエーテル』の後すぐだよな?確か?

『『魔法陣、限定機能解放・放出増加魔法陣展開。拡散魔法陣展開。空を舞い踊る風の精霊、命を照らす赤き炎の精霊よ、燃え盛るエーテルの力よ、我が前に立ちはだかる者を灼き尽くす業火となれ……万能なるエーテルよ。我が呼びかけに答え、全て焼き尽くす炎の龍となれ!!』」


 なんかすごい魔法陣がリョウコの前に展開されたから……今だよな。 良いんだよな?

「『協力作用』発動します!」


 今か!!

『座標転移!!』


 一瞬にして景色が切り替わり、狙撃をしようとしていたプレイヤー達の後方に全員で転移をする。大規模なのは初めてだがうまく行った……

 SPもかなり消費した感じだ。転移酔いでふらっとするが気合で乗り切らねば!!


『固定・釜戸型!』


 手はず通りに目の前の集団を囲むようにワールド座標で『固定』の釜戸タイプを発動させる。これで目の前のプレイヤーは『固定』の檻に入ったも同然だ。

 それと同時に、目標の担当を入れ替えた部隊が左右に分かれて高速で移動を開始する。

 何人かは最初よろけてたが、強引に移動をしている感じだ。それにしてもすごい速度だ……どれだけ鍛えてるの皆?


「なっ!」

「えっ!?」

「なんだ!?」


 前にいた7人の日本人プレイヤーが呆気に取られてコッチを見る。

 視線は確実にリョウコが纏うとんでもないエーテルの炎のエネルギーを見ていた。

 相手も離脱しようとするが、透明の『固定』の壁にぶつかり、よろけたり転んだりしている。中にはスキルを使おうとエーテルの収束が見えるが……


『空裂獄炎龍破!!!』

 ゴオオオオオォン!!!!


 既に詠唱を終えていたリョウコの炎の龍の魔法が『固定の釜戸』の中に放たれる。

 天井は煙突になってるから炎が空に逃げ……って、あっちぃ!! この距離で恐ろしい熱が!

「カタシさん! 壁を!!」

「わかった!!」


『固定』の壁を展開すると同時に、左右からも爆音や風を切る音、雷が落ちる音などすごい状態になっていた。丘の向こうであまり見えないのがもどかしいけど……


「釜戸に蓋もしとくか……」

「……発案した人間が言うのも何ですが……エグイですね……」

「大丈夫か? その腕……」

「痛いですけど大丈夫です。治せますんで……港じゃ……こんなんじゃなかったでしょう……」


 リョウコの手が酷いやけどを負っている様に見える。リョウコが釜戸の方を凝視しながら治療を始める。……港町前からちょっと精神が不安定っぽいんだけど、大丈夫なのか?

 前からはエーテルの何かは感じられないな……全員倒せたのか?

 それよりも……

「どう? 左右の状況は!?」


 リンカさんが左右の戦闘を遠目で見て本気で嬉しいようで、テンションがかなり上がっていた。

「大丈夫みたいです! 前回と全然違う!! こんな簡単に……あ、前注意です!!」


 前方の祠周辺では、テストプレイヤーの集団が盾を構えてこちらを警戒して見ているようだった。彼らは今のところ無事……だな。さすがに黒瘴石だから盾は貫けないだろう。


『……あの魔法を食らって生きているのかしら……』

「ウィンディ……待機命令は? なんで来たの?」

『……私も戦えるもん……』

「可愛く言ってもダメですよ……先輩、気配感じれます?」

「俺じゃ無理だな……エーテルが巻き起こってて……わからない」


 俺は振り返り、後ろに待機しているリンカさんとオトナシさんを見る。彼女達も探知系はもってないみたいだな。何やら空中にあるUIを操作をしてるから……そっちで確認か。

「ログを見る限り……5人倒せたみたいです……左右でもかなり倒せてます……」

「なんかエーテルを吸収して……ステータス上がりましたね。テストプレイヤーだとエーテルが報酬なんですよね?」

「おそらく……」


 ログを見返すには……ちょっと隙が多くなるな……やはりテストプレイヤーと新規プレイヤーの混成チームだったか。

 釜戸の中ではまだ炎の龍が暴れている様で……見えない……炎の魔法って言うから空気穴とか作ってるから……それも塞いでおいた方良いか? どうすれば良いんだこれ?

「固定解除したほうがいいか?」

「見えないので……入口と天井を開けてもらえます?」

「わかった」

「ウィンディ、風の魔法を」

『わかったわ!』


「カタシさん、できるだけ「固定」の壁を!」

「わかってるって、前だけ開けてっと……」


 ウィンディが風の魔法を使おうとすると、『固定釜戸』の中の燃えカスや何やらが入り口から漏れ出してあふれ出していく。なんか量がものすごく多い……って灰だらけだ。焼却炉の燃やしたごみが吹き出てる感じだ。金属の塊みたいのも……なんだこれ?


「あ、そうか……プレイヤーを倒した後、四次元ポーチの中身が出ちゃうから……」

「それも焼いちゃってたんですね。道理で見えないわけだ」

「途中から圧死になっちゃったかもね……」


 とりあえず安全を期して、向こう側の固定を解いてみる。空気が歪み炎の龍が爆散する。バッグドラフト的なやつか?

 炎が消えても、どっちゃりと灰やら溶けた鉄やらが大量に出てくる。

 リョウコの魔法が恐ろしい……生物は……生きている人間はいない様に見えるな……

 灰となった山が崩れていくと、スキルオーブが20個以上浮いてる。すごいな……それぞれがかなりの大きさなんだけど……


「カタシさん!!すぐに回収を!! 瘴気の巨人のエサになっちゃいます!」

「え? そっち? マジか!!」

「そういうことね……それでプレイヤーを襲うのか……」


 とりあえず固定の壁をうまく駆使して攻撃されない様に、仲間とスキルオーブを囲ったりするが……

 熱すぎて近づけない……困ったな。冷やせそうなスキル持ちのアスティナさんとサチさんは別動隊だし。


 すると突然俺たちの近くの地面から人間が飛び出す。それと同時に何かをリョウコに向かって投擲する。ウィンディが凄い速度で射線に入り彼女を守ろうとする。

 が、『固定』の壁に阻まれ投擲された槍の様なものが砕けて地面に落ちる。

 余りの事に反応ができなかった。ウィンディだけが反応できていた……

 リョウコも反撃しようとするが『固定』に阻まれて手出しできない。


 ズン!!!


 突然地面から出てきたプレイヤーが空中から叩き落され、地面に押し付けられるようにしてつぶれだす。リンカさんの『重圧』か?

 押しつぶされたプレイヤーは地面に溶け込むように沈んでいく。


「地面に沈んだ??」

「……しまった、釜戸……地面は『固定』してなかった……」


 しくじった……そうだよな……地面に潜るスキルとかあるとか話には合ったのに、頭から抜けてた……


 ガン!!!

「グアッ!!」


 前方の熱地獄と化した『固定の釜戸』のあった地面から一瞬プレイヤーが出てくるがすぐにまた地面に潜る。

 どうやらスキルをーブを囲っていた『固定』に阻まれたようだ。

 よかった……スキルオーブを覆っておいて……ってかあんなに熱く焼けた地面から出てくるなんて……火傷するだろうに……


「先輩、移動したいのでスキルオーブとっちゃってください」

「わかった……固定で床引けば熱は遮れるか……」

「……ほんと便利なスキルですね……」


『固定』で床を引くと熱も遮ってくれるようで、急いでスキルオーブを取得する。20個近くあったので均等に分けようとしたら、オトナシさんがものすごく遠慮するので、2個ほど持って行ってもらい、あとは俺とリンカさんで分けた。

 すごいエーテルが体に流れ、翻弄されながらも全部を取得する。

 なんか変なスキルもあるけど……今は詳しく確認してる場合じゃないな。


「狙撃系のスキルありました?」

「『弾く』でしょうか……スキル説明には乗っていませんね……」

「まんま『射出』ってのがあるな……射程距離は……400メートル……祠は射程範囲だな」

「港町の時は私の持っている『協力作用』かけて撃ったんでしょうね……2倍近く性能アップしますし」

「あ、あの、ステータスアップが凄いんですけど……本場のPVPするような攻略組ってすごいんですね……」

「ほんとに……」

「ほんとだな……」


 思わずログやステータスを確認する。今までの苦労以上のものをこの一瞬で得た感じだ……すごいインフレだな……

 リョウコが焦った感じで俺の肩を小突く。

「先輩! 回収したら他の助けに行きますよ!! どっち行きます?」


 あ、そうか戦闘……いやこの感覚は……


「その必要は無さそうですね」

「え?」

「戦闘音が無くなっていますね……」

「そうですね……新しいスキル『感情感知』で左右から喜びの感情がおきてますから」


 リンカさんは先ほどの絶望感にとらわれた表情とは打って変わり、自然に笑みがこぼれていた。


 §  §  §  §


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