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「バトロワ」無視してサバイバルライフ ~デスゲームに巻き込まれた俺は「攻略」しなかったら最強になってた件  作者: 藤明
6章 王都と決心

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第113話 リョウコの覚悟

 §  §  §  §


「まじですか?」

「マジです」


 鬼人族達の会議に出ていたリョウコに「狙撃」ポイントにテストプレイヤーとプレイヤーの集団がいそうだと伝えると、光るUIを空中に開き何か調べ始める。


「今日付けでミッションが出てますね……麦畑ダンジョンにてレアドロップ率上昇、獲得エーテルにボーナス……」

「それってミッションが出たらすぐにいくものか?」

「……さすがにもう夕暮れなので、期限が3日なので……朝イチで移動しますね。眠くなるのは現実の世界と変わらないので」

「ミッションを出すことを……今はしていないってアーゼさんが言ってたけど……」

「このミッション……違うところから出てるんですかね? 同じに見えるんですが……」

「運営にも派閥……部署があるって言ってたけど」

「……随分俗物的なカミサマたちですねぇ……カミでも組織とか派閥を作るのか……」


 カミかぁ……魂を操って色々できるんだから……カミだよなぁ……

 ……係長と話してる気分になるんだよな。たまに。

 あれ? 反応ない……あ、そうか、どっか行くって言ってたか。

 アーゼさん!! おーい、アーゼーさん?? 

 呼びかけてもだめだな……反応が無い。俺の隣に浮いているアーゼさんの側だけか……中身がどっか行っちゃった感じで漂って俺を追尾しているだけだな。


 リョウコの言葉がわかるアスティナさんが何やら問いかけてくる。

『カタシ、テストプレイヤーと新規プレイヤーが組んでいるのは確実なの?』

「先輩……どうなんでしょう?」

「言葉が通じるからな……」

「どうする? 近くに行って確かめてこようか?」

「……ちょっと待って、相手にも索敵スキルや探知スキルがあると……」

「そうね……不用意な事はできないか」

「残念ながら私たちテストプレイヤーはそんな便利な探知無いんですが……」

「新規プレイヤーと組んでるとしたらありそうね」


 サチさんがUIで表示された地図の方向に目掛けてなにやらやっている。エーテルを発しているからスキルを使っているんだろうけど……険しい表情だな。

「私のスキルにも引っかかる感じね……日本人……で15人、プレイヤーだとすると10人ね……テストプレイヤーだと……反応が無いわね……私の「グループ分け」の考え方がおかしいのかも」

「私は探知できるんですよね?」

「リョウコさんをイメージすればわかるわ。おそらくテストプレイヤーと言うイメージがうまくいってないのかも。日本人には反応するから」

「確定だな……リョウコみたいに協力者がいる状態か。ゲーム開始からひと月以上経ってるんだから、それくらいの勢力は何個も出来るか。場所の情報共有しよう」


 リキさんが違うテーブルに置いてあったチェスの駒みたいなものを持ってくる。

 サチさんが近隣を表した地図にチェスの駒の様なものを配置していってくれる。

 この地図……大分精度が高いな。新規プレイヤーも絡んでるのか?


『すごいのね……サチの『神の恩恵』も……偵察に行かなくても良いなんて……』

『行動を共にしていても本当に驚かされますからね』

『その地図も「プレイヤー」が描いてくれたものですぞ。協力してくれて大変ありがたい』

『地図の場所……高さが記載されてる……崖や地面のくぼみ……ね』

『人が通りにくい所に見えますな』

『「狙撃」するには良いポジションで待ちかまえるそうですよ。狩りのように』

『なるほど……」


「いつもみたいに夜襲をかけるか?」

「察知されやすいかもね。見張りに探知系スキルもちがいたら失敗するわね」

「後は特殊な感知、悪意を感知する相手だったら厳しいかもね」


 あー、そうか。相手も同じようなスキル……持ってるよね。自分たちを相手に戦うようなもんか。そうすると何か違う事をしている隙を狙うしかないよね……

「あー、そうだとすると、テストプレイヤーが来た瞬間狙うしかないんじゃないの?」

「テストプレイヤーが来る時間なんてわかるのか?」

「さすがに予知のスキルは無いみたいだけど……」


 リョウコがちょっと考えるそぶりをする。頭いいから一瞬なんだよね。

「そうですね……大体、日の出前から準備して行動しますね。夜は魔物が強くなるからあまり動かないんですよ」

「……ってことは……明日の早朝か……夜明け前に現地で張る感じね」


「今日は殆ど寝られなさそうね」

「それでも仮眠くらいはとっておいた方がいいかもね」


 それから俺たちは早めの夕食を取りながら作戦会議を行った。恐らく「はまれ」ば一方的に攻撃……と言うより殲滅できる。スキルって恐ろしいよね……発案するリョウコの発想も恐ろしいけど。


 それから俺たちは早めにあてがわれた部屋で休息をしていた。

 さすがに……朝起きてすぐ戦闘が始まる……と思うと緊張して眠れなかった。


 §  §  §  §


 思ったより緊張しているのか、翌日プレイヤー同士の戦闘になる……と思うと興奮してなのか、中々寝付けなかったので砦の見張り台の階段を登っていた。考えてみると、いつも戦闘が突然始まったりする場合が多いから……あまり緊張する暇無かったんだよな。

 日中かなり移動を重ねていたから……かなり疲れてるはずなんだけどね……なんか海岸沿いにいた時よりも空気にあるエーテル……力が濃い気がするんだよなぁ……

 ん? 見張り台に人の気配? この感じはリョウコか?


「……あ、先輩」

「そっちも寝られないのか?」

「そうですね……」

「他の皆は?」

「ぐっすりですね。かなり移動しましたし、スキルもあれだけ使ってましたから疲労すごいでしょ?」

「……それはよかった」


 3つの月に照らされ、かなり明るい感じの森を見る。ほんとファンタジーだよなぁ……夜でも木の形が分かるなんて。日本の街灯のない夜の公園なんて、植物は黒だもんな。


「先輩はここの、この世界の人たち好きですよね?」

「ん? ああ、なんか生きてるって感じするよな」

「そうですね……やっと異世界の街に来たって感じしますよね」

「前回は無かったのか?」

「そりゃ……攻め込むミッションばっかりですからね……交流も無かったですし」

「……まぁ、あれだ。カミサマ達の派閥争いに巻き込まれた……からしょうがない感じだな」

「……ですよねぇ……どう見ても派閥争い。それで現地の人には恐れられて……なんかスゴイ貧乏くじ引かされてる気分ですよ」

「違いないな」


 ……まぁ、あの勇猛そうな雷将軍が腰を抜かさせるくらい……恐れられてるもんな……鬼人族だけでなく、街中で出会ったエーテルが強い人間からはもれなく畏怖の目で見られてたから……彼らも生き残って「やり直す」前のリョウコと戦ったりしてたんだろうな……


「慰めてくださいよ」

「? おーよしよし」


 とりあえずリョウコに近づいて頭をなでておいた。酔っぱらって抱きついてきたときに頭をなでると喜んでたから、頭を撫でられるの好きなはず……あ、今は素面か。

「……子供じゃないんですから……」

「……明日はやいからな。簡略で」

「……はぁ……」


 なんかため息つかれた……間違った対応だったか? それでも顔がにやけている様な変な感じだな。

「先輩は、本当に報酬が支払われると思います?」

「……そこは疑問に思ってなった……そう言われると……別にカミサマ側からしたら記憶消せば問題ないんだもんなぁ……魂借りてるだけって言ってたし」

「ですよねぇ……こっちで報酬貰ってもら覚えて無ければ、ソシャゲのガチャで良いやつ当たって終わりですもんね」

「……うわ、それが報酬じゃ割に合わないね……」

「先輩たちは良いですよね、なんか運営まともそうだし」


 運営……まとも? なんか考えてみるといかがわしい「カミ」だった気がするんだよな……愉快犯的な、楽しんでかき回しているだけの様な……

「……んー まともなのはアーゼさんだけって感じだぞ? 他はなんかAIみたいなやつっていってたし。最初に説明してやつも愉快犯……道化っぽいカミだったし」

「……そうなんですか? でもスキルを持って帰れるとか、コンプすれば異世界行き来自由……とか、なんか私たちより報酬豪華ですよね?」

「……そうだっけ……一スキルにつき一千万……って思ってやってるけど」

「金額が確定している方がいいですよ……」


「私は……不確定の報酬よりも……悩みどころですよね、この世界の人殺して……よくわからない報酬を得るのをがんばっちゃうのって……先輩達と合わなかったら私もケンジと同じようなことしてただろうし」

「……ん~それだとモチベーション湧かなそうだな」

「ですね……ナオエ先輩みたいに「スキル」を持って帰るのが目的だったら頑張れるんですけどね」

「やっぱりそうなの?」


 リョウコが明らかに物凄く驚いた、意外そうな表情をしてこちらをまじまじと見る。

「……聞いてないんですか?」

「聞きにくくてね……」

「……初恋の相手って……ナオエさんですよね?」

「何で知って……」

「酔っぱらった時に話していた情報と、信頼できる情報筋から判断しただけです」


「……何やってんだ俺は……」

「ってことは……その後の事は知らないんですか?」

「……知らない……現実だと仕事でいっぱいいっぱいでね。高校行っても女子に人気の王子様みたいな扱いって聞いてたけど……」

「……なるほど……それで微妙な距離感をお互いとって……微妙な感じなんですね。とっても」


「ま、ナオエさんの距離感だと……現実世界だと結婚してそうだもんな」

「……ほんと知らないんですね」

「なにを?」


「ナオエ先輩、現実世界だと……大学入ってすぐに事故にあって車椅子生活ですよ? 家族も寝たきりだとかいう噂です……」

「……え?」


 なん…だって??

 あの快活なナオエさんが……マジか。

 そういえば……成人式に来てなかったとか言ってたっけ……


「……あ、そうか、先輩に話すと心配して……すいません、聞かなかったことに……」

「もう聞いた。そうか……だから『治す』を持って帰るために……死に物狂いな感じだったのはそれか……」

「……」

「だから……話したがらなかったのか……今とこれからのこと、未来の事しか話さなかった……思い出話は……しなかった……そうか……そう言う事か……」


 俺が過去を振り返っていると、リョウコが突然俺の頭を両手ではさんで向きを強引に変えてくる。

 呆気に取られていると、リョウコが唇を重ねてくる。

 ……え? 何が起きて? アレ? そういう流れじゃないような? あれ?

 なんか……泣きそうな瞳をしている……何が?


「……あ……」

「先輩は、ナオエ先輩がスキルを持って帰れることを……助けるだけにしてくださいね」

「あ、え? えっと??」

「あちらの世界に戻ったら、身近であなたの事を心配している……一番仲の良い女性に目を向けるべきです」


 リョウコは怒ったような照れたような表情をしながら再び唇を重ねてきた。

 ……なんかとても……ぎこちないような……リョウコでも緊張するんだな……

 俺もか……


「それじゃ。おやすみなさい」


 振り返らずに、悠然とゆっくりと歩いてリョウコが立ち去る。


 俺はしばらく、その場を動けなかった。



 §  §  §  §


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