表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「バトロワ」無視してサバイバルライフ ~デスゲームに巻き込まれた俺は「攻略」しなかったら最強になってた件  作者: 藤明
6章 王都と決心

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

110/122

第110話 王都へ出立

 38日目




 日が昇る前に起きて軽い食事を終えた後、出発の準備をする。


 昨日は本格的な雨が降ったのでこの街で久々の休息をとった気がする。


 そういえばこの世界に来てからあまり雨に遭遇したことが無い気がする。乾季なんだろうか? それにしてはじめじめしている気がするんだよね。




 昨日は新しいスキルテストなどを行ったけどほぼ休憩、復興作業をしつつ小規模ながら祝勝会が行われ、各種族、新規プレイヤー達との交流が行われた。色々な話が聞けて有意義だった気もするが、残念ながら黒い瘴気の巨人の謎や、クリア目的が分かることは無かった。


 ちなみに新規プレイヤーが隠れている場所から吊り出すために、鬼人族達はお握りと、醬油ダレをつけた焼き鳥を焼いて「匂い」でおびき出したらしい。ひと月くらい日本食を食べていない状態でそれをやられたら……俺もおびき出される側だっただろうな……





「新規プレイヤー」とアスティナさん達の相談で、俺、ナオエさん、リンカさん、サチさん、リキさん、ヨウカさん、ウィンディ、アスティナさん、護衛の魔術師で、銀青の特徴的な髪の色をしたミズハさんの9人で王都へ向かう事になった。


 てっきりアッシュさんが来てくれるかと思ったけど、港町の復興などの陣頭指揮を行うらしく、ここに残ることになったみたいだ。


 ヨウカさんは『浄化』で黒いやつらの対抗手段……で必須だろうと言う事で、護衛の魔術師のミズハさんが必ず守るという感じになり、同行してもらう事になった。




 ジンパチさん達、拠点組は港町保護組と共に数日をかけて海岸の拠点まで戻る事になっていた。


 人数が多すぎて「支給カード」ではカバーができないので、陸を歩いていく……と……やっぱり時間かかるんだなぁ……支給品を運んでくれた鬼人族は、ここから拠点まで物資を運んでくれてたらしいから、本当に感謝しきれない。


 港町保護組はそのまま鬼人族の港町で厄介になるという案もあったが、今回の「黒い巨人」騒動で、お互いの争いごとに巻き込まれたくない……的な考え方を持つ人も両陣営に少なからずいて、それならばと言う事で全員で戻ることになったようだ。


 拠点メンバーから、この島に来てからの快適な暮らしを聞いたと言うのも理由の一つかもしれない。


 まぁ、料理は絶品だし、拠点を作る楽しさ、スキルを使った兵器開発……などなどクラフト魂があれば楽しい環境だもんな。


 物資も色々と融通してもらったみたいだし、今度拠点に帰る時が楽しみだ。


 あ……クリアしちゃったら味わえないのか……現実の連絡先を聞いておいた方が良いんだろうか……


【気が早いですね……ご飯のためだけにアヤノに合いに行く予定なのですか???】


 え? あ、そうか……現実だとなんか偉い人っぽいから……問題あるか。


 そういえばリョウコが知り合いらしいからすぐに出会えるかもな。




「では、あとはよろしくお願いします」


「はい、気を付けて。ここからは重要な事は「交信石」で伝えますので。何もなければよいのですが」


「……このまま運よくクリアまで行きたいですが……」


「そう簡単にはいかないでしょうね。とりあえず避難した人間のスキルを精査して、この間出てきた巨人くらいは倒せる兵器を作っておきますよ。ざっと聞いた限りではできそうなので」


「……それは頼もしいですね。もしもの時は拠点に逃げ込めますね」


「あ、それと、先々で避難希望の人がいましたら、港町経由でお願いします。直接来られると敵を、「狙撃手たち」を誘導しかねませんので」


「わかりました」




 アヤノさんがリンカさんを軽く抱きしめた後、目を潤ませていた。


「リンカちゃん気をつけてね。無理しちゃだめよ?」


「大丈夫ですって。クリアしてきますから!」


「そうだと良いのだけれども……駄目そうだったら早めに戻ってくるのよ?」


「はーい。それじゃ、またご飯食べにいくから!」


「いつでも待っているわ。いってらっしゃい……」




 まるで母と子の別れようだ……って、現実日本では実際親子くらい年が離れてるのかもな……アヤノさんアラサー以上とか言ってたし。


 ヨウカさんも仲間との別れのあいさつをしていた。


 中には「これで綺麗な生活とおさらばか……と嘆く人間もいた」彼女の浄化はどちらかと言うと掃除とか、飲み物食べ物の洗浄に使われてたからな。まぁ、そう思うよね。




 俺も輪に混ざり、拠点組としばしの別れ……か、これがこのゲーム最後の別れになるのかはわからないけど挨拶をしておいた。なんだかんだで濃い生活をしてきたから仲間意識が半端なく強くなってるんだよね。みんな最後まで生き残れると良いな……




 見送りにこれからのお互いの健闘を祈り合うと、俺たちは騎竜と言う乗り物を使わずに、地味に足で移動を開始した。面白そうだから乗りたかったんだけどね……


【あなたが提案したことではないのですか?】


 仕方ないじゃん。街道を乗り物で移動してたら、ものすごく狙撃されやすそうだから……スナイパーを倒したら乗れると良いな……


【なるほど……馬に乗った状態だと……頭を打ち抜きやすいと……これはゲームですね?】


 そうそう、弓矢じゃなくて直線的なライフル的なモノだったら……もう当て放題だよ。





 §  §  §  §





 俺たちは鬼人族の護衛ミズハさんの先導で、2時間ほど道なき道を飛ぶように駆け抜け、小休止を取っていた。


 アスティナさんも楽々ついてきて、やや汗ばむくらいだった。エーテルで身体を強化してなかったら……ってか、現実日本の状態だったら、完全についてこれないよな……どんだけこの世界の人は生物的に強いんだろ?


【彼女達は別格ですね。それでも鬼人族やこの島の獣人たちは、あなた達人間よりは遥かに身体能力が高いですが】


 なるほど……




 遅れて到着したリンカさんがヘロヘロになりながら到着して地面に突っ伏す。


 彼女は俺たちの生命線でもあるので、リキさんが護衛しつつウィンディの風の魔法のサポートで……って、それでもきついよね。エーテル量はどう見ても俺たちより少ないし。




「……こんなに……早い……なんて……聞いて……ない……です……」


「ウィンディの風の加護が付いているから楽なはずなんだけど……」


「ステータス稼ぎしてなかったらこんな感じなのね……しょうがないわね……」




「ごめんなさい、私だけ楽をしてしまって……このスピードじゃ……とてもじゃないけど代われませんが……」




 ナオエさんにおんぶ……と言うより背負子の椅子に座っていたヨウカさんが地面に降りる。彼女は殆どステータスアップをしていない状態に等しいので運搬……じゃなかった護衛対象って感じだ。ナオエさんが運んで移動、ミズハさんが護衛……と言った感じだ。暫くは彼女が戦術の肝になるんだろうな。


 まさか黒いやつとの戦いが本格的になるとは思ってなかった……知ってれば彼女を鍛える事も出来たのに……


【はじめから攻略しようとしていればよかったのですが……】


 引きこもってれば終わると思ってたからね……逃げ回って賞金ゲットが目的だったような?


 何で今こんなに頑張ってんだろ?




 俺はふと、一番の原因のナオエさんを見る。彼女はこの世界で物凄く頑張ってるからな……それに引っ張られてる気がするんだよね。




 ナオエさんがリンカさんに近づいて「治す」をかける。みるみると表情から苦しさが消えていく。


「生き返ります……ありがとうございます……これがあと2日ですか?」




 若干困り顔の先導役のミズハさんがアスティナさんに話しかける。


『そうですね……3日かけましょう。このペースだと……そうなりますね』


『わかったわ。リンカがいないと「保険」が使えないらしいから。彼女のペースに合わせましょう』


「よかったですね。ペース少し落とすそうです」


「助かります……運動能力には自信あったんですけど……スキルパワー温存するとこんなもんですね」




 大きな盾を担いだリキさんがリンカさんを守るように周囲を警戒しながらポリポリと頭をかく。


「まぁ、この世界だとエーテルでどれだけ鍛えたからだからなぁ……」


「基礎身体能力にエーテルの力をかけたのがその人の力らしいわよ? だからリンカさん、あなたは十分にやっていると思うわ」


「そう言われると……うれしいです。頑張ります!」




 リンカさんは基本前向きで良いよな。さすが中学生って感じだ。社会人になるとネガティブになっていくからなぁ……


【……十分ポジティブな性格かと思いますが……】


 ……え? そうなの?




 ナオエさんとサチさんが周囲を警戒する。


「周囲に敵意は無いわね……」


「新規プレイヤーのスキルを持った人間も私たち以外いないわ」


「……え? そんな感じで探知できるんですか?」




 サチさんが一息ついて冷えたペットボトルの麦茶を飲みながら答える。


「ええ、スキルレベルが上がると色々できるようになるでしょ? 昨日は強いエーテルを放った人間で探知したのだけれども、スキルレベルが上がったらもう少しアバウトにしても探知できるようになったの。大分楽ね」


「……なるほど……物凄く便利ですね」


「時を戻すスキルが得られなければ……こちらのスキルを持って帰りたくなってきたのよね……」


「わかります……温泉とかも掘りあてられそうですね」


「そうねぇ、そっち路線も行けるのね……金脈とかもあてられるのかしら……」




 夢が広がるなぁ……スキルを持ち帰れるのはトップ3に入ればなんだけど……クリア寸前で仲間内で殺し合いにならなければいいんだけど……どうなんだろ? 


 何か怖くなってきたな。目の前の3人を超えないと駄目なんだよな……スキル数では完全に負けてるだろうし、ステータスもだろうなぁ……


 まぁ、俺は賞金だけで良いか。ナオエさんもスキルを持って帰るためにやたら頑張ってるみたいだし。


 ってか、もうすでに……


 生存できれば六千万円だもんな……六千万……家が買えるな。


 都内じゃ厳しいけど郊外なら買えそうだ。これでブラック企業にしがみつくことなく、心おきなく転職できるな。よっし、頑張れる気がしてきた。




 他所事を考えながらアスティナさんとミズハさんに手持ちの「四次元収納ポーチ」から麦茶を取りだして渡す。港町ハコダテーネには「麦茶」が存在したので、大量に作ってもらってペットボトルに冷やして入れておいたんだよね。


 美味いなぁ……ん?




『……そんなに小さな鞄からこの数を……噂には聞いていた「魔法袋」ですね……』


『あなたは砦から来たばかりだから見てなかったのか。本当に不思議よね。「アリガトウ、カタシ」』


『なんと面妖な入れ物……ガラスの様なガラスでないような……』




 なんかミズハさんが不思議な表情をしている。出会ったばかりのアスティナさんみたいだな。アスティナさんは慣れたもので普通にごくごくと麦茶を飲んで目を輝かせてるし。




『『狙撃』とやらがあると、穀倉地帯を抜ける際に問題があるかもしれませんね。大きく迂回しますか? そちらがお勧めですが』


『どれくらい迂回するの?』


『そうですね……数時間……もっとかもしれませんな』


「あ、地図見ます?」




 リョウコがテストプレイヤーのUIを大きく広げて全員に見えるように表示させる。広い島だよなぁ……北海道くらいって言ってるけど、形状が違うから広く感じるんだけど……


『なんですかこれは! こんな詳細な地図は見た事が無い!』


『すごいわよねぇ……あら、本当ね。穀倉地帯がここ……旧街道って大きく曲がりくねってたのね。まっすぐだと思ってたわ』


『大分私たちの認識はおかしかったようだ……』


「直線距離だと……近いですが、森の中を進むとなると……そうとう大きく迂回ですね……」


『今日はここの砦に移動して……明日は穀倉地帯を抜けるか……』


『テストプレイヤーを狙っているのだとしたら大丈夫じゃないの?』


「ラスボス……最後の敵扱いされているアスティナは真っ先に狙われると思いますが……あと、ラスボス疑惑をもたれていた「神子」さんも」


『なるほど……そういうことか……姫が敵認定されているとは……』


『……ねぇ、姿を変える魔法とか無いのかしら? ねぇ、カタシたちも姿を変える「スキル」はないのかしら?』


「……って言ってますが……」




 リョウコの同時翻訳は本当に助かるな……一応スキルで変化形は見た事ないな……


「無いな……」


「俺たちは持ってないが、おそらくありそうだよな……ゲーム的なスキルはほぼある感じだし」


「そうね。擬態とか仮想変化とか、思考投影とか……色々ありそうね」


「ダンジョンで会ったあの人のスキルがあればいいのよね」




 そういえば姿隠しのスキルはすでにあったんだから……あるよなぁ……ダンジョンを荒らしてないで手伝ってほしいけど。あの人は元気にやってるのかな?


 あるかもしれないとアスティナさんに伝えると、非常に喜んでいた。


 まぁ、狙われる存在ではなくなりたいよね……いつも周囲に警戒していないと駄目なんて……




 それにしてもリョウコの地図は羨ましいくらい詳細に情報が載ってるな。ん?なんだこれ?


「なぁ、この洞穴マーク★ってなんだ?」


「それはお気に入りのダンジョンですね。前回のマークが何故か残ってまして。この辺はダンジョンが沢山あったので地形とか、結構おぼえてますね」


「……なるほど……」




 なんかヤバい気がしてきた……


【何故です?】


 ダンジョンが多いと言う事はテストプレイヤーが多い。


【それが問題なのですか?】


 ってことは、狙撃手が黒い魔物、巨人を量産する良い場所になるってこと……じゃないのかな?


【何とも言えませんね……狙撃手の実態がまだつかめていません。こちらでも調査をしているのですが……】


 ……そんなに新規プレイヤーって数が多いのか? それともそれ以外の人間がいるとかか?


 アーゼさんにわからないんだったら……現状の情報からの予測で動くしかないか。




「リョウコ、一番「おいしいダンジョン」ってどこだ? 近い所にあったりする?」


『おいしいだんじょん?』


「え? この辺りだと、あ、これですね。麦畑ダンジョン。なぜか麦畑の丘の上に祠があってダンジョンがあるんですよ。田舎な感じが良かった記憶がありますね、中は大変だったような……」




「今はミッションって出てるのか?」


「はい……あまりおいしくないものがありますね。あ、麦畑ダンジョンにレアモン増殖中みたいなイベントみたいなミッションはありますが……鉢合わせしそうだなぁ……このままだと」




【やはりおかしいですね……現在「テストプレイヤー」にはミッションを出していないはずなのですが。ほかの何かがミッションを出している……席を外します。生き延びてください。死んでは駄目ですよ?】


 ……え? ちょっと待って?? アーゼさん? そんな不穏な事を……やっぱりあなたは人間的な生物???


 困ったな。おーい、アーゼさん? ……駄目だなコレは。反応が無いし……




「なんか危険っぽいぞ?」




「……なに? 突然?」


「……上の空だったので、例のナビの「あーぜさん」がらみかしら?」


「管理者側が危険って言ってたのなら……」


「……危険なんだろうな……」


「テストプレイヤーにもナビが欲しかったですよ」




 とりあえず俺たちは鬼人族達の砦があるという場所へと警戒をしながら移動を開始した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ