第103話 一件落着のはずが
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桟橋に近づくと、何やら怒鳴り声で喧嘩腰なやり取りが行われていた。
この街の住人の言葉はわからないけど、海賊船……何王国だっけ? イタリアっぽかったような?
【ヴェネトア王国の貴族と……探索者でしょうか? 魔術師の様な人間もいますね】
そうなのか……まぁ、王国の言葉はわかるんだよね。ほんと変な感覚だ。
……おおっ? 魔術師?? 魔法使いってやつか?? おお!! 本当だ! ローブみたいの着てる!! ハリーポッターじゃん!
港町の多種族連合の戦士達は武器を構えて警戒していた。王国側の人間は武装解除……武器は地面に置いたり鞘にしまったままって感じに見えるな。戦う意思がないのは全国共通、異世界共通なのか手を上げてる。さすがに白旗までは一緒じゃないようだ。
船内から縄に縛られた貴族様数人とテストプレイヤーらしき人間が二人ほど連れられてくる。手錠?鎖? よくわからない妙なエーテルを感じられる鎖みたいなのもかけられてるな……なんだろ? 逃げ出さない工夫? 力を込めれば壊せそうな気がするけど……
【この世界での罪人にかけられる「エーテル」運動を阻害する鉱石の鎖ですね】
……あの鎖をかけられたらスキルが使えないって事か?
【どちらかと言うと魔法、魔術の方ですね。スキルは使いにくいですが、使えるかと思われます】
……スキルでの実験はしてないのか……
【そうなりますね。試してみたらどうです?】
……平和な状態だったらやります……
アスティナさん達首脳部と文官らしき人、それと王国側の貴族では無い偉そうな人が交渉を始めている。
かなり緊張した場面の様だ。周りを囲む戦士たちの緊張感が伝わってくる。
交渉を失敗したら……殺し合い、この状態だと一方的な殺戮になるんだから当たり前か。
その様子を見守っていた捕縛された二人のテストプレイヤーがリョウコの姿に気が付くと、大声で話しかけてくる。
「お、おい! リョウコ! 何で敵側に寝返ってるんだ!!」
「そうよ!! 鬼人族は敵なんでしょ!?? ニンジンちゃん裏切ったの!?」
交渉していた者たちも余りの大声に振り返り、捕縛されたテストプレイヤーを見たあと、視線の先にいるリョウコに注目をする。
そうだった。彼等にはテストプレイヤー達の言葉はわかるんだもんな。
リョウコは今こっちに話しかけてくんなよ……と言う表情をしていた。気持ちはわかる。
「裏切っていません! そもそもケンジには「鬼人族」達を攻撃するな、仮想世界、電脳世界ではないとメッセージを送ったじゃないですか!!」
「見たけど信じられるかっ! こいつらを早く倒さないと黒いやつらでこの島が埋め尽くされるだろう!! お前も見て来ただろっ!!」
「タイムアタックってやつなんでしょ!? やられる前に早く「黒い魔人」を倒さないと!! こんなことをしてたらゲームオーバーになっちゃう! 賞金もらえなくなっちゃうのよ!」
「……なにを……ああ、なるほど……そういう事ですか……」
……あ、そうか。未来を見てきた……リョウコの見てきた絶望的な最後をすっ飛ばして、すべてを早めて先にクリアしちゃおう作戦……ってやつか。ケンジは見てきた内の一人なんだね。5人って言ってたか。
……確かに黒いやつがうじゃうじゃいる世界……妖魔の砦で見たあの黒いのがうじゃうじゃ……嫌だな。生きていける気がしない。『浄化』スキルを標準装備してないと厳しそうだ。
そう考えると魔界みたいな世界になる前に何とかしちゃった方が良さそうだな。
アスティナさん達も困った表情になってる……いや、首脳陣だとアスティナさんだけが困惑している様に見えるな。他の人たちは何を言っているかわからない感じに見える。
ふと気になったので見回してみると、エーテルを沢山纏った強い人間が困惑し、少ない人間はただ呆気に取られているだけに見える。どういうことだ??
「おい! 覚えてるだろ!! この後この街に黒い巨人が出てきて市街戦になるのを! ……早く止めないといけないんだ。俺を解放してくれ!」
「そうよ! 仲間じゃない! 鬼人族と敵対していないって約束するから、時間制限があるんでしょ? クリア報酬が無くなっちゃうわ!」
「……黒い巨人?? 私は見ていませんね……」
「ああ、そうか! たしか、お前達は港町制圧ミッションが終わったら、農園の砦のミッションに行ったっけ……」
そうか、ミッションが終わったらすぐに帰れるし、また別のミッションに……ってリョウコも全部を俯瞰して見れているわけじゃないんだなぁ……最後まで生き残ってただけって感じか?
「とにかくヤバいんだ。早く解放してくれっ! 間に合わなくなる!」
「そうよっ! 最後まで生き延びてやるんですからっ!」
リョウコが怒鳴り散らす男性プレイヤー「ケンジ」に呆れた感じで問いただす。
「何でそこまで必死なんですか?」
「お前を守りたいからに決まってるだろっ!!」
リョウコが一瞬固まり、本気で驚いている感じだった。周囲の空気も固まった気がする。
「……えっ?」
「えっ? なんですって?」
「……あっ!! しまっ……」
……ははぁん……まぁ、色々あるよな。まぁ、何度かリョウコがモテているのは見た事あるからなぁ……デートのお誘いを無視してゲームの発売日を優先してるのには笑ったな。
リョウコがすごい勢いでこちらに振り向く。
「違いますからねっ!! 彼とは、ケンジとは何もありません! 前回、最後まで生き残った攻略仲間です!」
「え? ちょっと待ってくれ! ギャンブルで借金を作るくらい駄目な男に惚れてるって、俺の事だろ??」
「なっ!! 違います! そこは違う! アホなギャンブル投資して失敗する! 借金は無いはずです! ああっ! もうっ!」
ケンジの脇に引っ付くようにしていた女性プレイヤーが一気に悲しそうな、怒りを含んだ表情になる。
「ちょっと、私はどうなるの?? 俺についてこい! って言ったのに!!」
「え? そりゃ俺についてくればクリアまでって……報酬欲しいだろ??」
「え? そんな……欲しいけど……ひどい!!」
「……あれ? なんか勘違いさせてたのか? 俺?」
「! なによっ!」
「待ってくれ、落ち着いてくれ。俺はお前がいないと……俺は駄目なんだ」
「えっ? そ、そういう思わせぶりなこと言うからよっ!!」
……なんかすごい場違いな痴話げんかが……
アスティナさんも王国側の捕縛された人も呆れた感じで見てるんだけど?
【……人間とは面白いものですね……感情で行動が大きく変わる】
そんなもんじゃないかな……俺も好きな人のために頑張ったりするし。
それからも場違いなやり取りが続くが…何かこっちにも突っかかってくるし…ちょっと収集が付かないなぁ……と思っていたら、アスティナさん達と交渉していた「ただならぬオーラ」を纏った厳つい男性が空気を読まない感じで男性プレイヤーに近づく。なんか強そうな人だな。
「おい! そこの! そこの不思議な人間! さっきの話からあがっている「黒い巨人」とはなんだ?」
「……あ? おれの事か?? 黒い巨人は黒い巨人だ。黒い靄に包まれたデカくてごつい人型の……」
「……その黒い巨人には「ツノ」が生えて無かったか?」
「ツノ……体中に角があった気がするが……固体によってデザインが違うんだよな……」
「そうか、伝承で聞いた通りだな」
「……え? 伝承?」
厳つい男性が無精ひげをジョリジョリと撫でながら射貫くような視線を送る。見るからに別組織のリーダーっぽいな。貴族っぽくない、狩人の様な格好をしている。
「んでその「黒い巨人」はこれから出てくると」
「ああ、そうだ。俺たちはやり直し……未来を見て来たからな」
「……それは聞いていたが……「黒い巨人」の事は聞いてないぞ」
「そりゃこの街を攻略してすぐに移動すれば出会わなくて済むと思ったからな。奴らとやり合うよりは逃げた方が良いからな」
「……んで、なんで今「黒い巨人」が、すぐに出てくるって言ってるんだ?」
「え? わかんねぇのか? ほら、黒い「粒子」みたいのが大量に漂ってるだろ?? これが出てくると大体「黒い」やつらが出てくるんだ。んで、俺の記憶だとここに出てきたのが「黒い巨人」ってだけの話だ」
「……まじかよ……わかるのか……」
「え? 見えないの? この人たち?」
「見えるよな……感じすらしないのか、あんたら?」
厳つい男性が周囲を見渡すが……誰もが「黒い気」が見える。といった反応を返していなかった。
アスティナさんがなにやら焦りを表に出しながらリョウコに問いただす。
『リョウコ! あなたには見えているの!?』
「見えますね。この黒い粒……粉みたいなやつですね。確かに空中に漂っていますが……たまに見かけるんですよね」
『なんてことなの……あなた達には瘴気の元が見えるのね』
リョウコが俺の方を振り返る。かなり困惑している様だ。
「先輩たちは見えないんですか?」
「……見えないな。嫌な感じはわかるけど見えない」
俺は嫌な感じがするところを指さしてみる。なんか「嫌」なんだよなぁ。
「……なるほど……仕様の違いが出てるんですね……感じられはすると。やはりテストプレイヤーと新規プレイヤーは違うのか……」
「ああ、それよりも外してくれよ……ってかお前も見えてるだろ? なんか……増えてるよな?」
ケンジは縛られた両手を前に差し出して手錠を外すことを要求していたが、ふとアスティナの顔をまじまじと見ていた。
「……なぁ、リョウコ……この人……もしかして……ラスボスじゃないか?」
「ラスボスって、氷を纏った鬼って言ってたじゃない? 違う様に見えるけど?」
「……変化するんだ。スーパーサイヤ人3みたいに」
「そうなの? 髪の毛が逆立って光るやつよね?」
「ああ、それ? あ、ごつごつするんんだよなぁ……顔は同じに見える……」
アスティナさんがケンジたちの言葉を気にしてか、自分の体を触る。今はごつごつしてないし美しいと思うよ。うん。
「そうですね、前回私たちが最後に戦ってた相手ですが、今は共闘しています。それに彼女達は「現実に生きて」いますので……」
リョウコの話を受け、アスティナさんが何とも言えない表情をテストプレイヤーの二人に向ける。
「なんだよそれ……そうか……早く攻略しなくても……仲間になればいいのか……」
「どういうこと? 高度な「AI」プログラムって話じゃなかったの?」
「方針転換だな。だが、「黒い魔人」は……鬼人族の王じゃなかったのか?」
「それは未確定だったでしょう? 鬼人族の方が良い情報を持っていますから。それに新規プレイヤーの目的も気になりますし、先にそちらの情報を確認しないとですね」
「新規プレイヤーも関係あんのか……」
「難しい話になってきたわね……私はクリアできればなんでも良いんだけど……」
……二人は何となくこちら側についてくれそうな流れになったけど……鬼人族達を見ると、微妙な表情をしているんだけどなぁ……大丈夫なのか? この流れで? 殺しに来た人間を信頼……はできないよなぁ……やっぱり。
【え?】
ん?
パシュッ!
珍しいアーゼさんのつぶやきを頭の中で聞くと同時に、突然ケンジが五メートルくらい横に吹き飛び、桟橋の上に置いてあった障害物にぶつかる。
赤いしぶきが……って、血? 血か??
「えっ?」
「なっ!?」
ゴオォオン!!!
空間に音が遅れ鳴り響く。
あ、これ、やばいやつだ。
ジンパチさん達と事前に想定していた「狙撃」だ!
まだケンジの息はあるか? 大丈夫なのか??
【カタシ!! 『固定』の盾を!!】
そうだった! 今はそっちじゃない! 「狙撃」対策の練習通りに!
『固定』の壁展開! あまり大きくは出来ないな……仲間だけでも覆わないと……ワールド座標展開なら受け止められるはず……ってかSPがやばくなってきたんだけど? 黒い巨人は出てこないでくれよっ!?
ケンジがよろよろと起き上がろうとするが立ち上がれない。どう見ても重症だ。
「い、い……いてぇ!! ゴフッ!!」
「ちょっと、大丈夫!? 血なの?? 傷?? なんで突然??」
混乱が巻き起こる中、サチさんが一番先に現実に戻ってきて女性プレイヤーの肩をゆする。
「あなた、回復魔法を使えるなら使って!!」
「あ、そう、そうよね! 怪我なのね! わかったわ『万能なるエーテルよ、この者の傷をいやしたまえ……治癒』」
女性プレイヤーが治癒の魔法を使う。光り輝くエーテルが傷を覆って…… え? ……なぜか光が消えていく? どうなってんの?
「え? 何が起きてるの?」
「傷口がエーテルを吸収??」
ガァァン!!!! ……ゴオォオン!!!
突然『固定』の壁に何かが高速で当たった。
黒い石? 砕け散っている??
リョウコが黒い石らしきものが当たった箇所を見つめるが困惑の表情を浮かべる。
「サチさん! 方向わかります!?」
「やっているわ……こっち……こっちだけど……海を挟んであちらね……遠いわ」
「大丈夫です。私も遠距離攻撃魔法がありますので!!」
「例のアレ? そんなに遠くまで届くのね」
ん? 二人は何を言っているんだ? ってか、現地人の方たちは誰一人何が起きているか把握できてないぞ?? アスティナさんまで剣と盾を持ってオロオロしてるし。
誰も敵を補足していない状態だな。
俺たちが今、動けているのは拠点メンバーと事前に情報を共有、対応を相談してたからだな。
「狙撃」スキルの有無についての相談……と言うより雑談中に「狙撃」があればこの世界では無双できるかも。とか言ってた人がいたような……だから遠距離攻撃用『超強化バリスタ』が誕生したんだけど……狙われる、やられる側だと非常に厄介だな。
ガァァン!!! ……ゴオォオン!!!
再び『固定』の壁に黒い石が当たり砕け散る。黒い結晶の弾丸?? なんか変な感じを受ける結晶だ。ケンジを治そうとしている女性プレイヤーを狙っている感じだったな。
「先輩! 私の指さす方向の『固定』を一瞬解除してください!! 次の着弾が合図で!!」
「……わかった!」
サチさんがリョウコの後ろに立ち、彼女の指し示す指を修正する。
「ここね……あのちょっと大きめの木の根元あたり……かなり距離があるけど大丈夫なの?」
「大丈夫です。魔法式変換しますので!! 行きます!!! 『魔法陣、限定機能解放・放出増加魔法五陣・対遠距離用に変換。収束陣展開。集中魔法陣展開。……万能なるエーテルよ。我が呼びかけに答え全てを貫く光の槍となれ!!』」
何やらすごいエーテルの力がリョウコの指の先に集中して光り始める。どう見てもかめはめ波じゃないか??? 指だから魔貫光殺法か?? 魔法陣が沢山出てきて派手だぞ!? なんかカッコイイんだけど!??
【他所事を考えない! あの威力だと、『固定』の壁に当たったらここにいる人間全員死亡しますよ!】
……ま、マジか!?? プレッシャーかけないでくれ!!
「みんな伏せて!!!!」
「お前ら! 死にたくなければ物陰に隠れろ!!!」
流石にすごいエネルギーだから……なんか警戒の叫び声が聞こえるけど……あれ? やっぱりやばい?
ガァァン!!!
今度はリョウコ目掛けて黒い結晶の弾丸が放たれたようだった。そりゃ光るところ狙うよね。
って、今だよな、今で良いんだよな?? 『固定』解除!!
「『極・戦女神の光槍』!!!!」
ゴォォオン!!!
凄まじい光の槍、もといエネルギー弾が対岸に放たれる。凄まじい爆風と熱風が俺たちを襲う。踏ん張っていても体重の軽い人間達は吹き飛ばされていく。
もちろん俺もだ。こんな威力を予想できるか!! 爆発じゃないかっ!!
足を『固定』っと! い、いてぇ!!
「カタシさん! 『固定』の展開を!!」
「わ、わかった!!」
サチさんすごく冷静だな。……なるほど、カウンターで来られたらやばいもんな……って、対岸の一部が爆発してるんですけど??
リョウコが爆発している先を厳しくにらみつけるように見る。
「サチさん……反応は!? 経験値は入ったけど少しだけ!」
「……そうね……上に……あ……これは飛んでいった感じね……」
「逃げられたか……支給品カードか……スキルか……」
「そうね、何かしらの特別な力を使ったわね……私のスキルの範囲外に飛んで行っちゃったわね……反応が無いわ」
……え? そんな事もわかるのか。あの爆発に巻き込まれたのに生きてるの??
「狙撃」スキルを持った人間が……逃げたのか? それって危険じゃ………
俺はログを追ってみるが……プレイヤーが何人か死んでるな……今の爆発で? どうなってんだ?
いつの間にかサチさん達を守っていたリキさんが盾を構えながら対岸を見ていた。まったく警戒の手を緩めていないな。また来そうだもんな……
「やべぇな……五百メートル以上先から狙撃かよ……」
「そうね。常に警戒する必要が出てしまったわね……」
「顔も覚えられてるんだろうな……くそっ。俺も遠距離攻撃スキルがあれば……」
確かに遠距離狙撃系のスキルを相手が持ってたら……常に遮蔽物の周りにいないと駄目だし、『固定』を周囲に全展開し続けるのもSPが足りなくなるし動けないし……困ったな。
……そういやなんでケンジさんが狙われたんだ?
テストプレイヤーならアスティナさんを狙うだろうし、戦闘をずっと見てたら……俺かショウコさんが先に狙われそうなもんだけど……
その場にいた者のほとんどが展開についてけずにキョロキョロと周りを不安そうに見たり、考え事に耽り始めたりする中、女性プレイヤーの必死な声が聞こえる。
「ちょっと、助けて!! 傷がふさがらないの!! なんか黒い煙みたいのが出始めてるんだけど!! どうすればいいの!!」
「待って。私もやってみる……え? なに……凄い嫌な感じが……」
ナオエさんが治療のためにいざ近づこうとすると、ためらって足を止める。わかる。なんかものすごく嫌な感じが集まってる。
「ナオエ先輩……何かヤバ目な黒い粒子が……ケンジの傷に集まってます……」
「……ええ、なんか私にも見えて来たわ……これは……妖魔の砦で見た……」
『リョウコ! どうなってるの!? 瘴気が集まっている様に見えるんだけど!? 私にも見えるわ!』
『姫! 下がってください!!』
ヤバい気配を感じた人間が、敵味方問わずに蜘蛛の子を散らすように逃げていく。
俺も……SPが殆ど無いから逃げたいんだけど……ってか狙撃はもう大丈夫だよな?
『固定』を……
俺が迷っている最中にもケンジの体に集まった瘴気が……なぜか膨れ上がって……もこもこと……ってか、体が膨れて行ってる……リアルな変形シーンってやつか……気持ち悪い……身体が膨らみ過ぎだよ!
これ……爆発するのか?
『固定』で覆い……あ、だめだこれ……大きすぎるわ……SP切れるわ。SPがほとんどない……困ったぞ。
ケンジから出てくる黒い靄の様な触手が一瞬女性プレイヤーを捉えようとしていた。
「ちょっとケンジ!! いやぁ!!!!」
「逃げるわよ!!」
ナオエさんが近くにいた女性プレイヤーを抱き上げで高速で離脱する。
王国側の縛られた人間が数人巻き込まれて黒い靄に飲み込まれていく。
サチさんがリキさんに守られながら後退しながら珍しく叫ぶ。
「スキルが弾かれるわ!! どうなっているの!?」
「ワールド座標で撃ってるのか?」
「もちろんよ!!」
膨れていく肉塊は段々と人型を模していく。
人……だな。黒い靄をまとった……
身体の節々から角を生やした巨大な人間……皮膚が黒い……
黒い角が生えた巨人……
って、ケンジさん、あんたが「黒い巨人」だったのか??
黒い巨人と戦ったって言ってた人間が黒い巨人に??
どうなってんの?




