第102話 港町防衛戦
俺はショウコさんに空中に持ち上げられながら移動をする。いつでも降ろしてもらえるように手で抱えてもらってるんだけど……全然疲れた感じに見えないんだよね。ステータスが相当上がってるんだろうな……
【先日の飛竜討伐のおかげで拠点のメンバーはかなりのステータスアップをしている様ですね。それに妖魔などの戦いにも巻き込まれていますので、標準的なプレイヤーよりかなり強いはずです】
やっぱりそうなのね……見た目はそこまで……あ、いや、結構筋肉ついてるか……
上空からみても港部分、沖に浮いている船から煙が大量に上がってる。殆どの船は燃え上がり機能不全になっている様に見えるが、小舟などが大量に海上にあり町に向かっている様に見えた。
まぁ、何艘かはあらぬ方向に逃げてるけどね……
そりゃ逃げるか。
「カタシさん、相手のボスがいそうな船だけ……なんというか……無傷に見えるんですけど」
「そうですね……魔法の盾の様なものがたまに見えますね」
「……なんか……あの丸太みたいな槍を……跳ね飛ばしてる人いますね……」
「……すごいな、あの速度で飛んでくる丸太を……ああ、でも同時発射したものは捌けない……って、なるほど……あのままだと接岸されますね……」
拠点砲撃組も工夫して弾を射出しているようだけど、ボス船に乗っている風の魔法使いと、化け物みたいに巨大な戦斧で弾をはじく戦士らしき人間のせいで被害を与え切れていない様だった。
すると海岸の一部が氷り、氷の壁が船を守るように発生する。氷の壁の魔法だろうか?
さすがの丸太サイズのバリスタ弾も貫けない様で、手前ではじかれて止まってしまっているな。砲撃拠点は……土の壁がかなり崩れて見えるけど、バリスタ弾の発射され具合を見る限りはジンパチさん達は無事みたいだな。残弾数は……そろそろ無くなるくらいか?
「あ、あの……海が凍っちゃってますけど……大丈夫なんですか??」
「近づきたくないですね……遠距離からチクチクやりましょうか」
「は、はい。近づかないのには同意です!! 逃げたいですねっ! 賞金が貰えなくなりますからね! あ! SPがそろそろ厳しいかも!」
「それじゃ……あそこに降ろして下さい。ショウコさんは遠くで休んでて下さい」
「わかりましたっ! なれませんね……この怖さには……」
「……そうですね……」
ショウコさんよりはかなり冷静な自分に驚きつつも、とりあえずリョウコから聞いていた「魔法」の事を考えると、射程が思ったより短いものが多いので遠距離から何とかした方が良い……とのアドバイスをもらっていたので港町の倉庫の屋上へと降ろしてもらう。ここなら相手なら魔法の射程外のはずだ。
屋根の上には先に陣取っている長弓を持った美しい種族が大勢……ファンタジー定番のエルフみたいだな……ちょっと背が高いかな? 一瞬俺たちを警戒するが、しばらくすると驚きの表情に包まれる。リーダーらしき人間がハンドサインを送ると戦士たちは港の方へと向き直ってくれた。
『あなたの活躍を見ていました。私たちの……この街を守っていただき……大変感謝しております。なんとお礼を申し上げればいいか……』
「……あーごめんなさい……俺言葉分からないかも……」
『なんと……言葉が通じないか……ツウジと違って喋れませんか……残念です……』
何やら挨拶してくれたが……分からないって嫌なもんだなぁ……ウィンディードさんが使ってた言葉とイントネーションもなんか違うし、言語が違うのか? もしかして種族ごとに言葉が違う系?? って今はそれじゃないな。
頑張ってハンドサイン、身振り手振りを使ってコミュニケーションを取ろうとするけど……お互いがっかりするだけだった。片言英語の方がまだなんとかなるな。
屋根の上には固定型の木の盾などが並べられ……って、中に鉄板入ってそうだな……ほんと銃対策が万全みたいだ。
港の方を見ると騒ぎが大きくなっていた。氷の壁の魔法に守られて船から続々と銃を持った兵士が下りてくる。相手も体格が物凄くよい前衛が盾を持って進軍してきてる感じだ。弓と魔法対策をしてきてるんだろうな。盾のすぐ後方に魔法使いみたいな人がいつでも魔法を撃てます! って感じでついているし。
桟橋らしきものの上に海賊……じゃなかった、王国軍二百人くらいが陣取る。だが、この街にいる戦士達は誰も攻撃をしていなかった。何かの作戦か?
相手も拍子抜けしている感じでキョロキョロと周囲を見回し、屋根の上に陣取った俺たちを指さして騒ぎ始めてる。
……あれ? 屋根の上が最前線か?? ここは目立つような?
【カタシの格好は覚えやすいですからね。空爆をしていた人間だと気が付かれているのでしょう】
げ……俺がターゲットか……そうだよな。ダンジョンやら妖魔の鎧をつぎはぎしたハイブリッド装備……なんて誰もしていないもんな。ワイルド過ぎるよなぁ。
どうしよう……こちらの戦士らしき姿は……あれ? かなり後方の塹壕に待機している感じだな……作戦が分からずに突然来たから……訳が分からない……どうすりゃりいの??
言葉が通じないのがかなり痛い。
ウィンディードさんがいてくれればなぁ……
プォーーーン!! プォーン!!
突然遠くでほら貝の様な、独特の音のする笛が鳴り響く。
それと共に、桟橋にいた王国軍数十人が突然空にに弾き飛ばされたり、不自然に置いてあった縄が動いて巻き付いたり、スライドするように人間が海の方向に押しやられて海に落ちて行ったり、雷が発生したと思ったら相手の銃が暴発し始めたり……あ、あれ? 何もしないでも相手が壊滅して行ってる??
どこから攻撃してるんだこれ???
【素晴らしい! エーテルの流れを見てみてください。面白い作戦ですね】
ん? エーテルの流れ?? なんかエーテルを目にっと……あ、桟橋の中からエーテルが……
あっ! もしかして桟橋の『中』にプレイヤーが沢山いるのか???
【そのようですね。壁越しに『スキル』を適当に打っているのでしょう。あの距離でしたら減衰知らずなのでやりたい放題ですね】
……なるほどなぁ……ワールド座標だったら視認しなくても発動するから……ほうほう……これは良いことを知った。
ポッポポーン! ポッポポーン!! ジャーン! ジャジャン!
聞いた事も無いような笛や楽器の音がすると、塹壕の中や盾の後ろから矢が一斉に桟橋付近に向かって放たれていく。なるほど、弓矢は弧を描いて飛んでいくけど、銃は直線……よく考えられてるな……雨の様に降る矢によってかなりの人数が傷つき倒れたり、逃げだしている。って、かわいそうなくらい一方的だな。被害ゼロレベルじゃない?
殆どの人間が戦意を失って船の方に逃げていくけど……ってか、銃の火薬の暴発で怪我人がすごいことになってるな……この時代の銃に雷のスキルは反則だな……
雷発生スキルだけで何とかなったような気もするね。
ブォーーーッ!! ドンドン! ドンドンドン!!!
笛の音と太鼓の音が鳴り響くと、塹壕から大きな盾を構えた街を防衛する戦士達が出てきてじりじりと港町の方へと近づいていく。銃対策もばっちり……と言っても、相手も銃を使えないくらいになってるんだけど……船の火薬庫付近に雷のスキルをワールド座標で発生させれば……この戦争はすぐに終わるな。さすがに桟橋の中からだと見えて無いから出来ないだろうけど。
それにしてはうまく行き過ぎているような?
ん? もしかして透視スキルがあるとか??
【それに類ずるものはあるようですね】
なるほど……
相手の船の甲板で怒鳴り声や悲鳴が起きている。魔法使いらしい格好をした人間や、いかにも中世の貴族っぽい格好をした人間がパニックになってる感じだ。
氷の魔法によって、船が身動きできなくなってる。火の魔法みたいなのを使っているが溶けないみたいだな……自業自得的な……近づいたら勝利くらいに思っていたのだろうか? それとも全員が銃を持った慢心だろうか?
甲板の上では船内から羽交い絞めにされた人間が数人出てきて縄で縛られ始めてる。よく見ると豪華な貴族に交じってテストプレイヤーっぽい格好をした人間もいる。
……何が起きてるのコレ??
【クーデターでも起きたのでしょう。テストプレイヤーがいるのは……何故でしょうね】
アーゼさんが分からなかったら分かるわけないっしょ……
戦闘終了……なんだろうな。気が付いたらアスティナさんも前線に立って大声で何やらやり取りしてるし。
俺の周りにいたエルフっぽい格好をした人間も手を取り合って健闘をたたえ合い始めてるし。なんか感極まった感じで話しかけながら俺も抱きつかれて……あれか、お気に入りのチームが勝ったとかそんな感じか?
まぁ、なんというか……手助けしてよかったって思えるな。
リョウコやナオエさんもアスティナさんの方に向かってるから……俺も行くとするか。
気が付くと後ろに退避していたショウコさんが近くに来ていた。
「勝ったんですね。よかったです」
「ええ、俺たちも行きましょう」
「はい。すごく長く感じました……」
「ほんとお疲れ様です」
思わずショウコさんとハイタッチをした。すると周りにいたエルフっぽい人たちも我先にとハイタッチ合戦になってしまった。ショウコさんも抱き上げられグルグル回されている。
すごいテンションだ。戦争に勝つってこういう事なんだな。
しかし……これのどこが人工AIなんだろうか?
テストプレイヤーは本当に現地住民に接触して無かったんだな。
これがAIとか電脳世界だとしたら、どれだけ優秀なプログラム、パソコンなんだろうか?




