第100話 港町を大爆発から守れ
俺たちは海賊船……じゃなかった、王国軍旗艦への爆撃をあきらめて港町の方へと向かう。
拠点砲撃組は俺たちの行動を逐一チェックしているから異常事態が起きた時のプランに移行してくれてるから大丈夫だろう。それよりも港町だ。何であそこで大爆発が起きるんだ??? 情報だけだとリョウコの核爆発魔法が一番近い気がするんだけど……他にも撃てる人間がいるってことか?? 5人生き残ったとか言ってたから……その中の一人か??
パァン!!!
港町の一角に照明弾の様なものが上がる。
よく見ると手を振っているリンカさんが見知らぬ数人の日本人……テストプレイヤー達と一緒にいる。こっち来いって事か??
「ショウコさん、あっちへ」
「わかったわ……かなり人が多いのね……」
「そうですね……」
港町には防衛のためにかなりの多種多様な人種が集まっていた。ウィンディードさんに教えてもらってはいたけど、武装した特殊メイクをした人間が大量にいる感じだ。中には弓矢を構えてポカーンとしている人もいる。仲間と認識してくれているようで弓矢に一瞬手がかかる人間も多かったが素通りさせてくれる。
リョウコがやり直し前に核爆発魔法を街に放ったって言ってたけど……これだけの人命を……って今はそこじゃない。
ってかさっきの光景はやっぱりリョウコが撃ったのか?? どうなってるんだ? テストプレイヤーを止めてるんじゃなかったのか??
「カタシさん! こっちです!!」
「リンカさん。あの爆発のイメージは……」
「これから起きる事です! 説明は後! 付いてきて!!」
「リョウコ達は!?」
「門の前でテストプレイヤーを説得しています!! 彼女ではないです!」
「……わかった」
リンカさんが振り返り、新規プレイヤーと思われる日本人数人に声をかける。
「あなた達もついてきて! 生き残りたいでしょう?」
「わかりましたよっ!」
「行かないと死ぬのはわかってます!」
「ああっ! 変なスキルだと思ったらこんなことにっ!!」
既に港町防衛組の何人かを巻き込んでるな。有用なスキルを持っているのをわかっている?? 鑑定とかあるのか??
どうやらリンカさんがすべてを把握しているようだな……ほんと中一の頭なのだろうか? すごい地頭いいよなぁ……未来をみえる力ってやつか。それか『死に戻り』系のスキルか……
【死に戻り……ですか? なるほど……興味深い発想ですね……】
……死に戻りじゃないのか……
遠くで砲撃や魔法の爆発音が鳴り響く中、町の中央付近、時計台のある方向へと急いで移動をする。すれ違う人間が色々な種族で面白かったが……今はそこじゃない。
「ここです!! このあたりで……このあたりなんですけど……」
「さっきの爆発の中心か……くそっ……目印があればいんだけど……」
「ごめん、なんとなくしかわからないかも!」
「スキル使いなおします!!」
いざ爆発の中心にきても……どこから爆発が起きるかわからなかったら、さすがに間に合わなさそうだな……焦る……エーテルを感知して大量に集まったところを『固定』の壁で覆えばいいのか?? 爆発のイメージを思い出しても……地中じゃないのだけはわかる。
俺がキョロキョロとし過ぎたのか、ショウコさんがオロオロとしだす。
「わ、私もついてきたけど大丈夫だったのかしら??? あ、あ、安全じゃないような???」
「最悪俺たちだけ『固定』のバリアで守ります!」
「カタシさん、それじゃだめです! 上方向に爆発を逃がす感じで!! レベルアップして追い打ちが来ます!」
「……なるほど……生き残ったテストプレイヤーの誰か……ってことなのね……」
やっぱりそうか。リョウコが言っていた、経験値を稼いでのレベルアップの回復を利用した襲撃……なんだな。実際やられると本当に非人道的な戦法だ……理不尽だよなぁ……
すると、新規プレイヤーの一人、港町防衛組の一人が時計台を指さす。
「あそこです! あそこに強い力の気配が!」
「見えました!! 時計台の時計の前、2メートルあたりのところです!」
彼らが未来が見える「スキル」持ちか? リンカさんではないのか?? 彼女を見ると強い意志を持った視線と目が合う。
「ショウコさん、カタシさんを上まで持って行ってください!」
「わ、わかりました!!」
ショウコさんに抱きつかれて爆発地点付近へと空中を移動をする。腕が若干震えているみたいだ……そりゃ怖いよね……
エーテルの流れが目に見えてわかるようになってくる。そろそろ爆発するって事かこれは??
「カタシさん! 私にも何か見えるわ!! これがエーテルなの???」
「大丈夫です! 降ろしてください。床作ります」
「わ、わ、わっ……私っは……にに、逃げた方が??」
「守れないのでそばにいてくださいっ!!」
「す、すごい力にみえるんですけどっ!!! 賞金が!! ここで終わりなの!??」
「静かに!! 集中させてくださいっ!!!」
やばいやばいやばい!! すごいエーテル量だ!!
ワールド座標で『固定』全開!! でかいおわん型……大砲の筒みたいにしておけばいいんだよな??? 信じるよジンパチさん!!!
ってか、爆発の振動で死ねないかこれ??
【カタシ!! あなた達も『固定』で覆いなさい!! 死んでしまいます!!!!】
なっ? まじで!!? 俺とショウコさんも『固定』で覆わないと!!
『固定』展開!! SP……大丈夫だ、ってか『固定』を固くできないのかこれ?? 大丈夫か???
「光が!!」
【直接見ないで!!!】
「顔を覆って!!!」
「ひ、ひっ……」
俺は完全にパニックになっているショウコさんを抱きかかえて『固定』の床に小さくなるように押さえつける。
ゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!
目を閉じて、腕を目の前に置いてもすさまじい光が目に入ってくる。カメラのフラッシュが続いている感じだ。どんな光の強さなんだ!!
って、『固定』のおかげで振動は無いんだけど……光は通すのか……外が見えるって事はそういう事か??
ゴゴゴゴゴゴゴ……
うっすらと目を開ける。目が太陽を見た後のように焼き付いていた。それでもどうなったのかが気になるので周囲を見回す。周りの風景が震えている。『固定』に遮られて音はしないが……衝撃で時計台の上半分が崩れて吹き飛んでいた。町中をすさまじい爆風が吹き荒れている。下にいるリンカさん達も地面に伏せている……一応核爆発魔法の時の対処方法……はしていて大丈夫そうだけど……爆風で街の瓦がかなり吹き飛んでるな……まるで嵐、台風の最中にいるみたいだ。『固定』で守られていて現実感ないけど……
「空が……」
「雲が吹き飛んでますね……」
「爆発を防いでも……こんなになっちゃうなんて……」
「爆発も直撃してたら……この町は終わりでした……」
「そうね……良かった……良かったのね、これでも……」
ショウコさんは周囲の光景に呆然としていた。ぶっちゃげ俺も呆然としている。『固定』で街全体を覆えれば……何とかなったかもしれないけど……脆い家屋は崩れ始めてるし……瓦が落ちちゃってる……強力な台風の後みたいだ。
「『固定』解除するんで……下へ……」
「そうね。お疲れ様……大丈夫、スキルは使えるわ……」
ショウコさんに抱えられて地面にゆっくりと降り立つ。
街の雰囲気は一変していた。綺麗だった街がぐちゃぐちゃだ……石造り部分が多いおかげで屋根と上物だけ被害があるって感じだな……遠くの方は……大丈夫みたいだ。爆心地だけか、ひどいのは。
「い、生き残った……」
「やった!!」
「カタシさん! やりましたねっ! えっ、おっとっと……」
リンカさんがよろけながら埃まみれになった状態で抱きついてくる。避けたくなったけどしっかりと受け止めておく。『固定』が無い状態だとダメージがある感じか?
って、まだ終わってない、終わってないよな??
「それで、次は? 次はどうなる?」
「次は……わかりません。死んでる人が全然いないから……黒いアイツは出てこないと思うし……」
「黒いアイツ?」
「砦で出てきたアレですよ。多分」
「……死体を媒介にして出るとかそういうやつだったのか……やっぱり。知ってたの?」
「……さっき知ったところです……スキルで……」
「そうか」
リンカさんが何とも言えない、困った感じの表情で無理やり微笑む。
爆発の後に黒いあの怪物が出てきたら……そりゃもう……悪夢だな。そこに海賊が来て……ってこの街は全滅じゃないか……
「あ~安心するなぁ……」
リンカさんが抱きついたまま、まるで猫のように俺の体に頭をぐりぐりとこすりつけてくる。子供じゃないんだから……って子供と大人の間だったか? 爆発でテンションがおかしい感じだな。
「あ~なんというか、女子中学生に、そのすりすりされたりするのは……絵面的に……」
「そんなこと言ってくれるのカタシさんとアヤノさんだけですよ。皆大人扱いしてくるんですよねぇ……」
まぁ、見た目がどう見ても女子高校生……しかも大人びてる……からなぁ……中身は女子中学生だけど。成長したら大人びた感じの人間なんだよなぁ……ギャップが凄い。
「あら? ケイさんはいいのかしら?」
「あ! そうでした。カレシに悪いですね」
「……え?……いつの間に……」
リンカさんが慌てて俺から離れる。あれ? いつの間に付き合ってた? って行動をよく一緒にしてるからか? 俺って鈍感キャラだったっけ?
【カタシ、そんな場合ではありません。色々と動きがあるようです】
あ、そうだよな。話が脱線してる……ってか大きい不安を解消できたから麻痺してる感じか……
【こちらも今回の事であわただしくなりすぎて情報が把握しきれていません。スキルの仕様がこんがらがっているようです】
……なるほどね。って、スキルの種類がありすぎてよくわからない状態だな……とりあえずリンカさんを信じれば何とかなるか? ジンパチさんかナオエさんが近くにいれば……
「黒いアイツ……以外は……もうこの町は大丈夫なのか?」
「……あ! ナオエさん達の方どうなったんでしょう? 忘れてましたっ!」
目の前に動く巨大な影が見える。大きな翼の音と共に、俺の横に飛竜が着陸する。アスティナさんとツウジさんだ。ツウジさんは本気で顔面蒼白といった感じだった。本当に死んだような顔だ。すごい天災が起きたようなものだからな……
『カタシ!! 何が起きたの!?? 爆発魔法は?? 今のは?』
「な、何が起きたのかと言ってます!」
「核爆発魔法をスキルで防いだと伝えてくださいっ!」
「……え? 核爆発魔法!!!」
『やはり超極大爆発魔法だったのね? 新型の魔法じゃなくて良かった……』
……あ、今、ここ放射能汚染凄いのか?
【放射能は無いので安心してください。リョウコが核爆発魔法と言っているだけなので、超強力な爆発の魔術になります。この世界の住人には超極大爆発魔法と呼ばれています。ただエーテルが非常に不安定になるので注意をしてください。】
よかった……汚染されないなら大丈夫だな……エーテルが不安定? ってそれ何かヤバいキーワードな気がするんだけど、大丈夫か??
突然視界が揺れる。あ、ショウコさんか。
「カタシさん!?? ナオエさん達の援護にいかなくていいの??」
「あ、すいません、考え事を……」
「本当に考え毎に没頭しちゃう人なのね」
「えっと……」
ドーン!! バン! バン!
全く関係ない、町と反対方向から新たな戦闘音が聞こえる。
ナオエさん達が向かった祠は逆方向だし……あっちにはなんかあったっけ??
そんな事を考えていると、とんでもない勢いでナオエさんが俺の横を高速移動して通過していく。
「カタシ君!付いてきて!!」
「……え?」
後ろからこれまたすごい勢いで、サチさん、リキさん、ウィンディードさんが追従して走っていく。
「カタシさん!! リョウコさんが!!」
「ついて来い!! さっきの魔法うったやつ殺るぞ!!」
『姫!!! 今回の黒幕はあちらみたいです!!』
余りの急展開についていけなかったが……とりあえず何かピンチは続くみたいだな。
アスティナさんが飛竜を駆り、ナオエさんに追従する。
俺は……あれ? 体が浮いて……
「なにをぼさっとしてるんですか! 行きますよ!」
「……は、はい」
俺はショウコさんに抱きかかえられ、ナオエさんの後を強制的に追っていた。何が起きてるのコレ?? 頭が付いていかないんだけど??




