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ログイン25 族長

貧乏高校生 当溜。格安ボロアパートに住みバイトをして生活費を稼ぐのが彼の毎日だった。明日から学校が夏休みに入る事で浮かれていた時に偶然おもちゃ屋で最新のVRヘッドギアを見つけ購入した。さっそくVRゲームを始めたまでは良かったのだが、本来なら無いはずのVRヘッドギアのホームにログインを果たした。彼は大嘘をつくAIの言う事を真に受け全てにYESと応えてしまった。身体構造スキャンを許し、問題箇所のリペアとしてハルモニア光なる謎の光を実際の身体に照射された。問題は解決したのだとAIに唆されてゲーム世界に送り出されてしまう。しかしこの事が当溜の生活をガラリと変えてしまう重要な出来事だった。ログインしたゲーム内でも問題が発生した。選択出来る性別が女性のみで男性の選択は不可能だった。なんとか女性アバターを男性的な姿に作る事に成功したが、間違えてランダム作成を押してしまい完成したアバターは幼女だった。


♤守ってください幼女な僕を♡ 

縮めて『守幼』をよろしくお願いします



黒鎧とロリスはステラとイディを雷鳴様の元に残して、部族が住んでいる洞窟へと進んで行く


 細長い洞窟をひたすら歩いていたら、突然開けた場所に出てその圧巻の光景を目の当たりにした黒鎧は………


黒鎧「これは!凄いな………」


 黒鎧が見た光景はアリの巣穴というよりは、巨大な地下空洞でそこに各種建物が建ち並んでいた


 建物の造りは岩肌をくり抜いて造ったようで、洞窟の壁と一体になっている建物がほとんどで壁から離れた中央付近の建物は岩そのものの形をそのまま中だけくり抜いていた


 そしてその中央付近の岩は岩そのものが柱状になっていて洞窟の天井と一体化している、この形状的に近いのは現実にある水害時に川の水を貯める首都圏外郭放水路(がいかくほすいろ)に若干似ていた


 建物には扉など無く地上で獲って来た獲物の革で出入口を覆っていて、プライバシーの配慮などもあるようだった


 そしてここは【アム部族】という部族の集まりの居住区で、他の部族は別の洞窟の先に居住区を構えているのだとロリスは語っていた


 部族の大半は服と呼ぶには心ともない服装で、その服の素材は主に生け捕りにした獲物の皮を加工して服にしているようだ


 その加工した服の面積はだいぶ小さいサイズで、幼い子供は女の子も男の子も皆裸だった


 たまに捕れる獲物で毛皮が得られるが、部族の決まりでその毛皮は病気を患った者の為に使われる


ロリス「中央の大岩に行かないと族長には会えないよ」


 ちなみにこのロリスも普段はほとんどの肌を露出していて、砂漠に出た時はボロになったシーツのような物を身体中に巻いて砂漠に出ていた


黒鎧「族長は、そこにいるのか?」


ロリス「そこが族長の家だからね、いつも寝たきりだけど会ってくれるかな?調子が良いときは起きているみたいだけど………」


黒鎧「とにかく行くとしよう」


ロリス「本当に族長を助けられるの?」


黒鎧「絶対とは言えないが、きっと助かるはずだ!」


 そして黒鎧とロリスは族長の家の前にやって来た


ロリス「族長〜!入っても大丈夫ですか?」


 すると寝たきりと聞いていたはずの族長がロリスを出迎えに出て来た


 どうやら今日は調子がいいみたいだった


??「もちろん構わんが………なっ、何者だロリス!離れろ!敵だ!敵がおるぞ!」


ロリス「待ってください!族長!この人は敵じゃないよ!」


族長「何っい〜?敵じゃないとな………」


 寝たきりだと聞かされていたが俊敏な動きと咄嗟にロリスの盾になるように前に出た族長の動きは部族を束ねるだけあって、たとえ年を取っていても歴戦の猛者のようであった


黒鎧「驚かせてすまない、オレは黒鎧と言う者だ」


族長「………まぁ、ここでは目立つから中に入るがいい」


 族長は黒鎧の事を警戒しながらも、自身の家の中に招き入れた


 それはなぜかと言うと、族長からすると得体の知れない黒鎧が部族の誰かを襲うかもしれないと思っての行動だった


族長「それで何か用かな?黒いの!」


黒鎧「怪我をなされたと、こちらのロリスから聞きましたが身体の方は?」


族長「ロリス………余計な事を言ったな」


ロリス「だって!怪我をしたのは本当でしょう?」


族長「このロリスが言った事は忘れてここから出て行ってはくれまいか?黒いの!」


黒鎧「なぜそこまで拒む?」


族長「拒む?そもそもそのような仮面を付けた者を信用しろと言うのが間違いだ!奴等も始めは友好的な態度を取っていたが、ここには何も無いとわかると突然襲いかかって来た!だからこそ外の連中は信用できない!」


 族長を襲った奴等は、おそらく黒鎧が被っているような兜で顔を覆っていて素顔を見せないようにしていたに違いなかった


 そして始めは友好的な態度を取っていたという連中は最初からアイテム等の物品目当てこの洞窟の中の集落に入ったと思われる


 結局何も無かった事に腹を立てて八つ当たり気味に族長を襲ったのだろう


 そのせいもあって族長が外の連中は信用できないと言うのはあたり前の事である


黒鎧「これは失礼した」


 そう言うと黒鎧は兜を脱いでみせた


 今まで1度も兜と取る事をしなかった黒鎧が、素顔をはじめて見せたのだ


ロリス「お〜!渋い顔!」


 黒鎧はナイスミドルな中年男性で、年相応のシワがありイケメンが年を取ったらこんな感じの顔になるのではないかと思われる()()()()()だった


黒鎧『ここにステラがいなくてよかった………』


族長「ほう?素顔を(さら)すか、してその真意は?」


黒鎧「オレを信用しなくてもいい、ただ1つ試してみたい事があるから協力をしてくれないか?」


族長「協力とな?それは何だ」


黒鎧「族長、あなたの傷口を見せてもらえないか?」


族長「傷口を?何の為にそのような事を………まぁ、減るものではないし構わんが?」


 警戒は解かずに族長は着ていた服を脱ぎ、黒鎧に背中を向ける


 族長の背中には刃物で切りつけられた真新しい傷があった、それほど深い傷ではないが背中を右上から斜めに斬られたようで細長い傷口だった


黒鎧「これは………少し化膿しているな、だがこれくらいならまだ大丈夫そうだな」


 黒鎧はストレージからあるアイテムを取り出した


黒鎧「今から傷口に薬をかけるがいいか?」


族長「薬?塗り薬ならいつも使っているものがあるが、別の薬か?」


黒鎧「これをかければ、おそらく傷口が完全に塞がる」


族長「にわかには信じられないが…………わかったやってくれ」


 黒鎧はストレージから取り出したアイテムのボトルのキャップを外し、ゲームではおなじみの()()()()()()を族長の傷口にかけてみた


 すると傷口はみるみるうちにに塞がり、化膿していた部分も綺麗に治っていた


 飲む以外でもかけても効果がある回復薬は限られているが、どうやら効果はあったようだ


ロリス「凄い!傷口がなくなった!」


 うしろで見ていたロリスも驚いている


族長「なんと!痛みも消えたぞ!何をした、黒いの!」


黒鎧「コレはエリクサーと言って、すり傷だろうが切り傷だろうがたちまち治してしまう霊薬だ!さらに言えば死人さえも蘇らせる事ができる『以前ベニがレアアイテムと言っていた物だが、こんな所で役にたつとはな………まだ沢山あるからな1本くらいは問題無い』」


族長「………霊薬そのような貴重な物を使ってくれたのか」


 族長は背中の傷が消えた感覚だけではなく痛みもなくなったので驚いていた、それに思いのほか血色も良くなったように見える


ロリス「死人も蘇らせるって言ってたけど、どんな死人でも蘇らせられるの?たとえば昔死んだ人でも?」


黒鎧「どんな死人でもというわけにはいかない、あくまでも遺体がある者に限られるし何十年も放置された遺体では蘇らせる事はできない」


族長「黒いの………いや黒鎧殿、助かりました!この御恩をどのように返せばよいのやら………」


黒鎧「礼にはおよばない、こちらもわかった事があるからな」


 黒鎧がわかった事それは目の前にいる人物達が、ここではNPCと同様の扱いとなっている事だった


 その証拠に族長にエリクサーを使用したら、その効果がシステム的に認められたからにほかならない


 生きている人間をゲームのNPCと同じと認識するシステムがおかしいのか、それともここにはもう生きている人間がいないのかと何かと疑問は尽きない


 それでも族長を助けられたのはそのシステムのお陰とも言えなくも無いと黒鎧は思っていた


族長「わかった事とは?」


黒鎧「族長、この世界の事は知っているか?」


族長「この世界とは………やはり黒鎧殿は真実を知っておられるのか!」


黒鎧「ここは元は惑星イディア………そして今はゲームの世界だ!」


族長「その事を知っているのは、ワシ以外では別の部族の残り2人の族長達だけだが………」


黒鎧「別の部族の族長も知っているのか!」


族長「それぞれの族長には代々語り継がれた事があり、繋げると1つの物語になって意味を成す」


黒鎧「物語?」


族長「その物語はかつて実際に起きた事で、忘れない為に部族の族長だけに小さな物語として語り継がれたもの」



 1.惑星イディアと言う緑豊かな大地と自然に囲まれた所があった、そこにこの地を壊す者が現れて全てを破壊し世界は火の海になった



 2.イディアに住む者達と壊す者との激しい戦いがありさらに破壊が進んでしまうが、生き残った者達は地下に隠れて難を逃れていて完全な絶滅は免れたが失った物は果てしなく大きかった



 3.そして惑星イディアは以前の緑豊かな土地ではなくなった、それからこの世は壊す者の手により遊戯の世界へと変えられた



族長「我がアム部族に語り継がれたは、最後の3番目の物語でした」


 族長は3部族に伝わる物語を全て暗記していて、それを黒鎧に教えた


黒鎧「その内容は理解しているのか?」


族長「遊戯の世界とは、ゲームと呼ばれる世界で遊び場の為の世界だと族長を務める者だけに代々語り継がれてきました」


黒鎧「代々語り継がれた………それはつまり、ずっと昔からゲームの世界だと知っていた事になるな………それを知っていた人物が大昔にいたのか?」


族長「大昔には族長を束ねる大族長と呼ばれていた人物がいたと記録にはありましたが………」


黒鎧「大族長?」


族長「それぞれの部族の族長を部下としていた、とても偉い方であるという事しか記録には残されていないのでなんとも………」


ロリス「大族長の墓ならあるよ」


黒鎧「墓か………」


 大族長が生きていたら何か聞けたかもしれないが、大昔となると確かに生きてはいないだろうと黒鎧は思った


ロリス「さっきのエリクサーだっけ?死人さえも蘇らせるっていうアレでも無理なの?大族長を蘇らせるとかできそうだけど?」


黒鎧「話しを聞く限りでは相当大昔に亡くなっているなら骨しかないはずだ………それでは復活はできない『復活できたとしても、骨ならスケルトン系か………それではモンスターと変わらんな』」


族長「では墓を見てはどうですかかな」


黒鎧「オレは部外者だがいいのか?」


族長「墓参りに部外者も何も無いのでは?」


ロリス「墓に彫ってある読めない文字があるし、もしかしたら黒鎧なら読めるかも」


 黒鎧は再び兜を被り直して、ロリスと族長と共にその大族長の墓がある場所に向かう


族長「ここが大族長の墓です」


 墓というよりはただのデカい岩で、やはり中をくり抜いて空洞にしてあった


 中に入ると中央に墓標らしき物があり、そこには岩を削って文字が書かれていた


黒鎧「これは!日本語だ!」


 さらに驚くべき事で、墓標は日本の墓石のような形をしていた


族長「日本語?」


ロリス「なんて書いてあるの?」



  墓標に書いてある内容はこうだった



 私はこの惑星の人間ではない ただのプログラマーに過ぎなかった


 ここで この人達を束ねているが とても罪悪感がある その理由は自らの手で滅ぼしたのに彼らを導いているからにほかならない


 そしていずれ私はここからいなくなる しかし彼らはここで生き続けなければならない もし真実を知ったら彼らは私を許してはくれないだろう


 密かに作っていたプログラムは既は完成した 私の遺体を残すプログラムだ 私がログアウトした後には遺体が残るはずだ


 自らのの墓に文字を彫るのは変な感じだなと思う だがコレは絶対に残さなければならない


 墓には名を刻むのが普通だが 彼らは読む事はできないだろう ここに私の名と罪を刻む事にした


 それにしてもバチが当たったのかもしれないな 仕事のストレスで幼い娘を虐待していたわけだし それに妻と離婚したがその妻に引き取られた息子には何もしてやれなかった だから当然かもしれないな


 私はまだ死んでないが享年51歳 宇城(うしろ)護留(まもる)ここに眠る



黒鎧「日本人だったのか………」


族長「いかがなされた、黒鎧殿」


黒鎧「すまないがここに書いてある内容は話せない」


ロリス「どうして話せないの?読めたんでしょ?」


黒鎧「内容がとても難し過ぎてな、オレでは理解ができなかったんだ」


 読んだ内容は完全に把握できたが、内容が内容なだけに黒鎧はなんとか誤魔化そうとしていた


 さらにこの時、宇城護留という人物が当溜とその妹の羽琉の父親である事を黒鎧は知らなかった


 なぜ黒鎧が知らなかったのかというと、黒鎧がいた所では宇城護留と宇城羽琉には1度も出会って無かったからだ


 そしてさらにマキシリオンに当溜が記憶を奪われたまさにその時に直前にいて倒れたGM、彼こそが宇城護留だったという事実にも知る由もなかった


族長「いやはやなんとも人がよすぎるお方だな………黒鎧殿、そこに書いてある内容は各族長なら皆知っておりますとも」


黒鎧「知っているだと?ではなぜこれを公表しない?」


族長「それは既に過去の事であり、今を生きる我々にとっては知恵を与えてくれたともとれる」


黒鎧「だが………」


族長「大族長もそれは望んではおりますまい」


黒鎧「そうか………」


 族長は大族長を憎んではなく、むしろ生きていく為の知恵を授けてくれたという風に感謝しているようだった


黒鎧『しかし、ただのプログラマーが大族長などと言う立場になぜ立てたのかはわからんな………』


ロリス「えっ、何?ちっともわかんないけど?」


族長「わからんでもいい事もあるのだ、ロリス」


黒鎧『わからない事を不安に思う現代人の生き方とは違うな………わからない事があってもいいとそれが普通なのだからといった感じか、達観してなければたどりつけない心境だな』


 知らぬが天国、知れば地獄とはこの事だろうと内心思わざるをえない黒鎧だった


族長「黒鎧殿、他に望む事はありますかな?」


黒鎧「そうだな……」


 黒鎧が何か言葉を言おうとした時に、ズカズカと墓の中に入って来た者が1人いた


ルドマ「おやじ!なんで出歩いてんだ!何っ、貴様!なぜここにいる!」


 ルドマは腰に差していた刃物を黒鎧に向けた


ナイフとロングソードの中間あたりの刃物で、おそらく侵入した者がドロップアイテムとして装備していた物をルドマが奪ったようだ


 ドロップアイテムは店売りの武器にと比べると途半端なサイズの武器なので、ルドマが所持している武器はモンスタードロップのたぐいであると断定できる


族長「やめんか、この馬鹿息子が!」


ルドマ「だけどコイツは敵だぞ!」


ロリス「敵じゃないって言ってるでしょ!」


ルドマ「ちょうどここは墓だ、それなら死体を処理しやすい!おやじ!コイツを殺そう!」


族長「ルドマ!いい加減にせんか!この方はワシを救ってくださった方だ!殺せるわけがなかろうが!」


ルドマ「………おやじを救った?そうだ、なんで平気な顔して出歩いているんだ?あれだけの傷を負っていたのに………」


黒鎧「霊薬を使ったからな」


ルドマ「霊薬?」


黒鎧「ルドマと言ったな、ここがどのような場所かわかっているのか?」


ルドマ「墓だろ?」


黒鎧「違うそうじゃない、この世界の事だ!」


ルドマ「この世界?言ってる意味がわからないな」


黒鎧「ならば真実を言おう、ここはゲームの世界だ!」


ルドマ「ゲーム?何だソレは!」


黒鎧「この世界が遊び場の世界だと言っているんだ!」


ルドマ「遊び場の世界?………なんだと、それじゃ奴らを殺したのにまた同じ顔の奴が来やがったのはその遊び場の世界だからだって言うのか?」


族長「また?奴らが来たのか?」


ルドマ「あぁ、1人を殺してやったが………また同じ顔の奴らが来やがったんだ………これじゃあきりが無い」


黒鎧「ここはゲームの世界だ、ゲームで死んでもまた蘇るからな」


ルドマ「ここがゲームの世界って言ったな、ならここから出るにはどうすればいいんだ!」


黒鎧「ここから出たいのか?『ここから出たいか………ここから出たいのはオレも同じだからコイツの気持ちはなんとなくわかる』」


 黒鎧はゲームの世界からは決して出られない、なぜ出られないのかは簡単で現実世界に黒鎧の肉体が存在しないからログアウトできないのだ


 いや厳密に言えばあるにはあるがその肉体はもう既に使われている、その肉体を使っているのは年若い黒鎧(中身は過去の黒鎧)だ


 そうつまり黒鎧が肉体に帰れないのは彼が未来からやって来た【さすらいの異邦人】でゲーム世界からは決してログアウトできない存在になってしまっているからだった


 そのせいもあってルドマの言う「ここから出たい」にはなんとなく共感を得ていた


黒鎧『オレだけがデスゲームみたいな物だからな………いや、今はステラも同じか』


 しかしステラの場合は【なんちゃって幼女なんデスゲーム】状態なのでだいぶ違かった


ルドマ「こんな閉鎖された所でいても、いずれ資源が枯渇(こかつ)してどん詰まりだ!外に出ても砂漠ですぐに干からびる………何か無いのか………アンタはどこから来たんだ!」


黒鎧「ここよりはましな所からだが、道のりは遠いぞ?」


族長「ルドマ………お前」


ルドマ「この部族の将来の事も考えてみたが、俺はここから出たいんだ!連れてってくれないか?さっきの事はこの通り謝るから!」


 傲慢(ごうまん)な態度を取る彼にも悩みがあり、ルドマの中では常に葛藤(かっとう)があったのだ


 このままこの暮らしを続けていてもいずれ資源は尽き果てる、さらに悪さをする不届き者が現れては資源も何もかもを奪われたら何も残らないのではないかと思わざるをえなかった


 そんな思考のどん詰まりがルドマにはあり、そこで手のひらを返して父親を救ったという黒鎧に頼む事にしたのだ


黒鎧「だが、次期族長なのだろう?」


ルドマ「そんな物に何の意味がある!ここにある墓の主と共に生きて行くなんて無意味だ!」


族長「そんな事を思っていたのか、ルドマ………」


ロリス「ならなんで、今まで威張り散らていたの?」


ルドマ「ロリスや他の部族のみんなはわからないだろ!次期族長の重みも、部族を束ねなければならない俺の気持ちなんかもな!」


ロリス「それと威張り散らすのは別でしょ?」


族長「ルドマ、お前は族長という重みに耐えられないと言うのか?」


ルドマ「おやじの息子でなければ良かったのに、って何度も思ったよ!」


 部族の掟で子供は各家庭に1人までとなっていた、その理由は食料不足であり部族全体に充分な食料が行き渡らない事が原因だった


したがって幼少期から次期族長候補として育てられたルドマは、父親にとことん厳しく躾られた


 そして5年前に母親が亡くなった事で彼は捻くれてしまい、部族の厄介者として有名になっていた


 族長の子供でさえなければこんなに彼を追い詰める事も無かっただろう


 しかし誰も彼に同情はしない、それがさらに彼を追い詰めてしまったのだ


黒鎧「ここを出ても………辛い現実が待ってるが、それでもついて来ると言うのか?」


ルドマ「辛い現実?だけどここよりはましなんだろ?アンタがいた所はさ!」


黒鎧「族長どうする?連れて行って構わないか?」


族長「黒鎧殿………しかし…………」


黒鎧「広い世界を見てみるのも、一興(いっきょう)と思うが?」


族長「それなら息子を、ルドマをよろしくお願いします」


黒鎧「あぁ、わかった!だがすぐに出発はできない」


ルドマ「すぐに出発できないって、どう言う事だ!」


ロリス「黒鎧が、他の仲間と合流してからに決まってるでしょ!」


黒鎧「それもあるが………旅をするならそれなりの準備がいるだろ?まさか手ぶらでこの砂漠をこえようとしているとか言わないよな?」


ルドマ「も、もちろん準備はするさ!」


ロリス「なら私も行く!」


ルドマ「ロリス?」


ロリス「勘違いしないでよ!ステラ達と行きたいからよ!」


黒鎧「ステラ達と?」


ロリス「だってなんか面白いでしょあの娘」


黒鎧「まぁ、確かにな」


 ルドマとロリスの支度が整うまで黒鎧と族長は家に戻る事になった





 その頃なんちゃって幼女なんデスゲーム状態のステラは………



ステラ「すや〜」


イディ「ステ坊………よく寝れるな」


 ガチ寝していた


 それもそのはずで、慣れない身体でいきなりの砂漠ごえと猛烈な暑さでエネルギー消費が激しかったのだ


 しかし寝るという行為は案外体力を使うというが、ここは雷鳴様のお陰で電気が満ちている洞窟なのでおそらくステラは寝ながら体力とエネルギーの回復を同時にしているはずだと思われる


雷鳴様「こんなに無防備に寝るとはな………」


イディ「疲れたなら休ませてやればいいさ」


 その当の本人であるステラは夢を見ていた



        (夢の中)


マキシリオン「ふははははっ、また会ったなシャーロット………ん?お前は誰だ?」


ステラ「僕はステラだよ!」


マキシリオン「そうかそうか、ステラというのだなではステラ!お前の目の前に何があるかわかるか?」


ステラ「???マヨネーズ???しかもこんなに沢山!」


 ステラの目の前にはマヨネーズの海があった


 オール【マヨ】オーシャンと呼べはいいのだろうか文字通りのマヨネーズの海だ、地平線の彼方まで続くマヨネーズの海には船も他に何も無い


砂浜に押し寄せるマヨネーズの波、もし魚が泳いでいるなら相当泳ぎづらいはずの海だ


 おそらく魚がいたとしたら生臭いのでは無く、マヨくさいのだと僕は思った


マキシリオン「良し!ステラ、思う存分に泳いで来い!」


 そう言ったマキシリオンはステラの身体を掴み、マヨネーズの海に投げ込んだのだ


 どぷんっと音がして、かなり体勢が悪かったのかステラはマヨネーズの海で溺れそうになっていた


ステラ「うわっぷっ、マヨが口の中に入った!」


 そしていつの間にかステラは水着を着ていた、ピンクの水着で可愛らしいヒダ付きのセパレートタイプだった


マキシリオン「さぁ泳げ!目指すは向こう岸の衣の砂浜だ!」


ステラ「そ、その先はなんなの?」


マキシリオン「その先は巨大フライパンに大量の油があるからそこで一気にからっと揚げれば1品できあがりだ!」


ステラ「やだよ!そんな事聞いたらマヨネーズの海なんか泳ぎたくないよ!」


マキシリオン「いいから泳げ!」



     現実でステラは………



ステラ「やだよ!マヨネーズの海なんか泳ぎたくない!やめてよマキシリオン!」


   と大きな声で寝言を言っていた


イディ「『マキシリオン?それは………』ステ坊!ステ坊!起きろ!ステ坊!」


 イディはステラを揺さぶって起こした


ステラ「あれ?マヨネーズの海は?」


イディ「そんな物は無いって言うか、マヨネーズって何だ?」


ステラ「マヨネーズ………それは神の調味料だよ!」


イディ「神の調味料?」


ステラ「僕が毎日飢えていた時に、マヨネーズをご飯にかけて食べたらなんとも言えないくらい美味しかったんだよ!」


イディ「そのマヨネーズとやらがか?」


ステラ「マヨネーズは美味しいよ」


イディ「そうなのか?」


イディ「マヨネーズか………どんな物なのかちょっと興味があるな」


ステラ「だけどイディは食べ物とか食べれないよ?」


イディ「そうだ!このボディでは食べられないじゃないか!」


雷鳴様「何の話しをしてるんだよ!」


ステラ「マヨネーズだけど?」


雷鳴様「マヨネーズ………まぁ良く寝たーぞ!って事か?」


ステラ「違うの!マヨネーズは調味料で、僕が寝てたのは疲れたからだよ!」


 ステラは手脚をバタバタとさせながら抗議するが、その姿はまるで幼児そのものだ


イディ『ステ坊はマキシリオンって確かに言ってたな………いるのか奴が?』


 イディは考えこんでいた、ステラが寝言とはいえマキシリオンの名を出していた為だ




      だいたい同じ頃



技術者「マキシリオン様、ご報告に上がりました」


マキシリオン「何だ?」


技術者「例のマシーンが完成いたしました」


マキシリオン「例のマシーン?何だそれは!聞いてないぞ!」


技術者「おや?ご存知ありませんでしたか…………参ったなエルディア様から造るように要請があったのでてっきりマキシリオン様もご存知かと思ったのですが………」


マキシリオン「それは、何のマシーンだ?」


技術者「生体再生のマシーンでございます」


マキシリオン「生体再生?どのような効果だ」


技術者「記憶から生体を再生するマシーンとなります」


 それを聞いたマキシリオンは激怒した


マキシリオン「なんだと!記憶から再生するマシーンだと!ふざけやがって!エルディア!エルディアはいるか!」


 マキシリオンの怒鳴るような声で呼ばれたエルディアは慌ててマキシリオンの元にやって来た


エルディア「いかがなされましたか?マキシリオン様」


マキシリオン「記憶から生体を再生するマシーンとは何だ!」


エルディア「!」


マキシリオン「まさかお前は俺様を裏切るのか?」


エルディア「滅相もございません!」


マキシリオン「では何の為に造らせた!」


エルディア「それは………」


技術者「おやおや、まさか言えないという事ですかなエルディア様」


エルディア「たかが技術者風情が口を慎め!」


マキシリオン「口を慎むのはエルディアお前だ!」


エルディア「くっ、申し訳ありません」


技術者「それでどう致しますか?マキシリオン様」


マキシリオン「誰かおらぬか!」


ごつい騎士「お呼びですか、マキシリオン様」


 マキシリオンの呼びかけにごつい騎士と女騎士がやって来た


マキシリオン「エルディアを牢に放りこめ!コイツは裏切り者だ!」


ごつい騎士「エルディア殿を?牢に………気は確かですか?マキシリオン様」


女騎士「ただでさえ人手が足りないのに、上官であるエルディア殿を牢に放りこめとは納得がいきません」


 女騎士はエルディアに情があるわけでは無く、人手不足の今の状況では愚策に思えたのだ


マキシリオン「ほう?貴様らも牢に入りたいのか?」


 ごつい騎士と女騎士は共に冷や汗をかいていた、マキシリオンの威圧感が2人の騎士を硬直させていたのだ


 その場の空気を変えたのはエルディアの1言だった


エルディア「………これは命令よ!私を牢に入れなさい!」


ごつい騎士「い、いいんですかい?」


エルディア「それが………正しいのよ」


女騎士「………わかりました」


マキシリオン「物わかりがいいなエルディア!だが裏切りは許せるものでは無い!近日中にお前を処刑する」


 ごつい騎士と女騎士に連れられて、エルディアは牢へと自ら向かった


 途中でごつい騎士が口を開く


ごつい騎士「エルディア殿………何をしたのかはわかりませんが、先ほどは助かりました」


エルディア「あれくらいしか今の私にはできなかった………」


女騎士「もし………もしも、脱獄するなら手伝うよ」


エルディア「その気持ちだけ充分よ………」


 それからエルディアは牢に投獄された、部下である騎士達は納得がいって無く牢屋ごしにごつい騎士がエルディアの真意を確かめてみた


ごつい騎士「本当にいいんですかい?これで………」


エルディア「マキシリオン様の命令は絶対よ!それに私は裏切り者だから」


女騎士「行こう」


ごつい騎士「お、おい………すまねぇエルディア殿!待てっておい!」


 女騎士はスタスタと歩いてそれを追いかけるようにごつい騎士が行き、2人は牢獄を後にした


 牢屋に続く廊下で2人の騎士はそれぞれの疑問を確かめあっていた


ごつい騎士「なんか変だぜ?マキシリオン様はともかく、エルディア殿まで裏切り者とかどうなっているんだ?」


女騎士「おそらくあのドブネズミが何か言ったと思う」


ごつい騎士「ドブネズミって、あの技術者の事か?」


女騎士「アイツは気持ち悪い!生理的に無理!」


ごつい騎士「だが、エルディア殿を(おとし)めるような素振りは無かったが?」


女騎士「たぶんエルディア殿を除外する為に貶めた可能性がある」


 女騎士の感は鋭かった、まさに技術者がエルディアを(そそのか)して生体再生マシーンの製造を助言していたのだ


ごつい騎士「で?どうするんだこれから………」


女騎士「エルディア殿を救出する」


ごつい騎士「それはマキシリオン様への裏切りじゃないのか?」


女騎士「マキシリオン様は間違っている!こんなやり方では惑星の再構築どころか内部崩壊の方が先になる!」


ごつい騎士「だよな………けど裏切り者になってでもエルディア殿を逃がすのか?」


女騎士「沢山の幼女の命を奪っておきながら、今更裏切るのは変かな?」


ごつい騎士「確かに変だが、それを言ったらオレも変だな!お前の意見に賛成だからな」


女騎士「私の目的はマキシリオン様の目を覚まさせる事だよ!それでも同じと言える?」


ごつい騎士「オレはお前とパートナーだ、お前が抜けるならオレも抜けるたとえそれがマキシリオン様への裏切りだったとしてもな!」


女騎士「いいの?」


ごつい騎士「構わないが、やるなら徹底的にだ!」


女騎士「何をやるつもり?」


ごつい騎士「コールドスリープを永久冬眠モードに切り替えて、他の騎士が目覚めないようにする!そうすれば追っては無い」


女騎士「他の騎士に恨まれない?」


ごつい騎士「恨まれるかもな………けど、奴らが出てしまえばもう後はあちらの世界は壊滅するしかなくなるからな!そんな事は見たく無い!これはオレの騎士道だ」


女騎士「そう………なら早いとこやろう」


ごつい騎士「まぁ待て!すぐにやっても意味が無いからな、しばらく様子を見てからだ」


女騎士「どれくらい待つの?」


ごつい騎士「そうだな………2〜3日は様子見てからだ!」


 そしてその3日後にごつい騎士と女騎士はコールドスリープ装置のモードを永久冬眠モードに切り替え、脱獄させたエルディアと共に脱出した


 永久冬眠モードは設定した者でなければ解除できない仕組みだ、設定したのはごつい騎士でそれ以外の人物では解除できないのだ


 けたたましく警報がなり響く、脱獄を知らせる警報だ


マキシリオン「脱獄だと!エルディアめ………逃げたのか!」


上級兵「ご報告に参りました」


マキシリオン「今度は何だ!」


上級兵「そ、それが………騎士のお二方が行方不明となりました」


マキシリオン「騎士が行方不明だと!こんな時に………もういい下がれ!それと警報を止めておけ!」


上級兵「りょ、了解しました」


マキシリオン「エルディアといい騎士といい、どいつもこいつも使えない奴ばかりだ!」


 マキシリオンは怒りにまかせ、座っていた玉座のような椅子を破壊した




 脱獄を果たしたエルディアと2人の騎士は、現在砂漠にいた


エルディア「こんな砂漠だなんて………『ステラ貴女は無事なの………』」


ごつい騎士「まぁ、なんとかなりますよ」


女騎士「暑い………」


 それなりの物資を持って出て来たが、砂漠ごえは相当キツイものでとにかくオアシスか村を探す事になった



族長は助かって、ステラはマヨネーズの海で溺れそうになり敵であるマキシリオン側は3人の裏切り者が出ました

次回はおにぎりの具です

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素人の作品です   


           福望華雫でした

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