ログイン24 砂漠ごえ
貧乏高校生 当溜。格安ボロアパートに住みバイトをして生活費を稼ぐのが彼の毎日だった。明日から学校が夏休みに入る事で浮かれていた時に偶然おもちゃ屋で最新のVRヘッドギアを見つけ購入した。さっそくVRゲームを始めたまでは良かったのだが、本来なら無いはずのVRヘッドギアのホームにログインを果たした。彼は大嘘をつくAIの言う事を真に受け全てにYESと応えてしまった。身体構造スキャンを許し、問題箇所のリペアとしてハルモニア光なる謎の光を実際の身体に照射された。問題は解決したのだとAIに唆されてゲーム世界に送り出されてしまう。しかしこの事が当溜の生活をガラリと変えてしまう重要な出来事だった。ログインしたゲーム内でも問題が発生した。選択出来る性別が女性のみで男性の選択は不可能だった。なんとか女性アバターを男性的な姿に作る事に成功したが、間違えてランダム作成を押してしまい完成したアバターは幼女だった。
♤守ってください幼女な僕を♡
縮めて『守幼』をよろしくお願いします
【オンパウ砂漠】
とても広くて大きな砂の海[サンドオーシャン]と呼ばれている
そして僕等がいるここは砂漠のど真ん中で、ガンガンに凶悪な太陽の陽射しが降り注いでいた
マップで見ると真北にあって位置的にはちょうどドーナツ状の大陸の上の部分で、そしておそらく上空から見るとドーナツにきな粉がいい感じにふりかけたように見えるかもしれない………たぶん
周りを見渡す限りどこも砂の海でところどころに岩場などがあるが、どれも小さめで日陰なども無いし水源も無ければ食べられそうな食料になりそうな物なども無かった
しかし幸運な事に僕達はオアシスを見つけ現在休憩中だ
ステラ「あぢゅいよ〜!」
イディ「そんなにあぢゅいのか?」
黒鎧「あぢゅいでは無く、暑いだと思うが?」
イディ「あ〜暑いか、ステ坊はなんでそんなに暑がっているんだ?」
素体の身体は機械とはいえほとんど生身と変わらないので、暑さや寒さ痛み等の刺激を感じるからよけいに辛く感じていたのだ
ステラ「イディはあぢゅくないの〜?」
イディ「そもそも身体が無いからな」
黒鎧「だが、見るからに熱しているな………そのコアボディは」
黒鎧の言う通りでイディのボディは真っ赤になりそうなほど太陽光で熱していた
ステラ「黒鎧はあぢゅくないの〜?」
黒鎧「この鎧のお陰でな」
黒鎧の鎧は熱変化無効の効果がかかっていて、砂漠だろうが南極だろうが平気で活動できるのだと言う
ここのオアシスは椰子の木が日陰作っていて休憩するには充分だが、水中には生き物等はいないようだ
それと残念な事に椰子の木には実は無かったしその他の植物も生えてはいない、つまりこのオアシスでは休憩と水の確保はできるが食料は期待できないと言う事だった
黒鎧「この先もオアシスがあるとは限らないからな充分に休んでおけよ」
ステラ「それはいいけど………電気も無いし食料も確保できないなら急いだ方がいいんじゃないの?『椰子の木発電とかできないのかな?』」
黒鎧「だが焦って行動して失敗しましたってわけにはいかない」
イディ「ステ坊、その場合はみんな野垂れ死にだぞ!」
ステラ「そうだった!ログアウトもできないし、砂漠のど真ん中で動け無くなったらアウトだよね」
イディ「「黒鎧とステラとイディここに眠る」なんて墓標を立てないとならなくなるのは嫌だぞ!」
ステラ「それ誰が立てるの?」
イディ「たぶんエルディアあたりかもな」
黒鎧はともかくステラとイディは永遠に砂漠に放置される事になり発見したエルディアの手によって墓標が立てられるかもしれない
それでも黒鎧は一応プレイヤーとして死に戻りが可能だが、この砂漠に来るまでには少なくとも数日が経過するのでやはり間に合わずにステラとイディは活動を停止していると思われるので墓標を立てるのは黒鎧の場合もあり得る
と言ってもステラとイディは電気で動くので、充電してあげれば再び活動が可能となる事は言うまでもない
黒鎧「そう言う事だ、だからしっかり休んでちゃんと動ける状態を保つ事がもっとも重要だ」
砂漠の危険性は熱砂で体力を奪われて喉の渇きと脱水症状などや、夜間になれば急激に冷え込み氷点下までさがるので場所によっては吹雪いて凍傷もしくは凍死もあり得るのだ
ゲーム世界の設定でそこまで過酷な状況になるとは思えないが、黒鎧はあらゆる事態を想定して行動しなければならなかった
さらに懸念があるとすればモンスターの存在だ
黒鎧「この先は少々危険なモンスターがいるが………」
イディ「いるがって、どうした?」
黒鎧「もうしばらくは休憩した方が良さそうだな」
ステラ「そうだね、今はあぢゅくてムリ〜!」
黒鎧はこの先のモンスターがとても危険で、今の状態のステラを連れながらでは無理があると判断してまだ休憩を延長する事にした
ステラ「この服を脱いじゃえば、オアシスの水の中に入れるのになぁ〜」
黒鎧「ここのオアシスは貴重な飲み水となるはずだからやめておけ!」
イディ「ステ坊………発想がガキだぞ!」
ステラ「イディが僕と同じ立場だったらやらないの?」
イディ「まぁ、気にせずやるな」
ステラ「じゃあイディもガキだよ」
黒鎧「どちらにしろ、推奨できない事はするなよ」
ステラ&イディ「「は〜い!」」
僕とイディは素直に黒鎧の助言に従った
しばらくしてから再び砂漠を歩き始めた僕達は、モンスターと遭遇していた
黒鎧「すばしっこいヤツだな!」
砂の中を泳ぐモンスターで攻撃はねちっこいくて素早い動きで、こちらの攻撃を回避するとても戦いにくいモンスターだった
基本的に黒鎧しか戦闘はできず、僕やイディはただ逃げ回る事しかできなかった
現れたモンスターは3匹で魚のような鱗を持つ手脚のある生き物で、体つきがワニのようだが顔が鳥の形でくちばしがあった
モンスター名は不明だし攻撃方法がくちばしと手脚に生えた爪で攻撃して来るのだけど、くちばしで噛まれてもさほど痛みを感じないし爪も尖ってないのでほぼ殺傷能力が無かった
しかしなんともねちっこい攻撃で噛んだら離さないし、爪で引っ掻いて来るけどくすぐったいく感じてだいぶ嫌な気分にさせられていた
ステラ「噛むな〜!引っ掻くな〜!この変態ワニモドキめ!」
イディ「こいつ等ワニか?」
ステラ「やめてよ!くすぐったいよ!引っ掻かないで!」
黒鎧「ステラ、動くなよ!」
黒鎧は2本の愛刀のトーガとラ・ムーアでモンスターを縦に切り上げ、さらに4〜5回ほど真横に振ってざく切りにした
残りのモンスターも1匹は3枚下ろしにしてやり、もう1匹は頭から串刺しにして倒していた
黒鎧がなんとかワニモドキ(ステラ命名)を倒してくれたのでやっと開放されたが、気分はただ下がりの僕だった
黒鎧「攻撃力は無いが、今後会いたく無いモンスターだな」
イディ「アレが黒鎧が言っていた危険なモンスターか?」
黒鎧「まったくの別モンスターだが、別の意味で危険と言えなくも無いかもな」
黒鎧は僕の方を見てそんな事を言った
ステラ「あのワニモドキは変態だよ!僕の服に入り込もうとしてたし………まだくちばしで噛まれてる感覚が消えないよ」
僕がステラになってしまった事でシャーロットの時に持っていた称号やスキルなども使えなくなっていた為に、鑑定眼も使えないし氷帝眼ももちろん使えなかった
今の僕がピンチを脱する方法が何1つ無いので、されるがままとなってしまっていたのだ
それからしばらく砂漠を歩き続けていた時だった
「ゴゴゴゴゴッ!」
ゴゴゴゴゴッと大きな音が聞こえて、前方や後方を見るが何もなく辺りを見渡したがそれでも何かが来るような音だけが響いていた
黒鎧「何だ?何もないな」
ステラ「前も後ろも左右も何も無いよ?」
イディ「黒鎧!ステラ!下だ!」
イディの声を聞いた瞬間だった、突然砂が盛り上がって巨大な何かがそこから出て来た
黒鎧「くっ、まさかここで出会う事になるとはな!」
ステラ「デカい!なにこれ超デカいよ!ミミズ?」
イディ「コイツが砂の中を移動していたのか………」
僕達が見たのは巨大なモンスターで、砂から出ているだけでだいたい25〜30メートルくらいあるだろうかという巨体のワーム系モンスターだった
黒鎧「流石に今はコイツに会いたくは無かったな………」
ステラ「こんなの倒せるの?」
黒鎧「倒すしかあるまい、この感じだと逃がしてはくれないだろうな」
黒鎧は双剣を構えて迎え討つ準備をしていた
イディ「ヤバいって!こんなデカいのは!」
黒鎧「来るぞ!ステラ、イディ!上手く避けろよ」
このワーム系モンスターは砂漠にいる超有名なモンスターで名を【サンドワーム】と言う
コイツを嫌いな人が見ると卒倒しそうなモンスターで、単に巨大なミミズの化け物ではなく知能があり音で獲物を捉えて攻撃してくる
サンドワームはその巨体を使って、身体を時計回りにグルンと一回転して攻撃して来た
ステラ「うわ〜!」
イディ「ステ坊!コケるなよ!次が来るぞ!」
ステラ「そんな事言ったって………」
黒鎧「やはり意地でも逃さないつもりか!」
なんとか一回目の攻撃はかわせたが、足場が砂で動きにくいし瞬時に移動するのは困難だった
さらにサンドワームの別の攻撃パターンでは砂に潜って下から攻撃して来る厄介なモンスターなので、丸呑みにされたプレイヤーは星の数よりも多いと噂されている
しかし、ステラはゲーム経験はほぼ皆無でそんな知識も持ち合わせてはいない
ステラ「砂に潜った?」
黒鎧「下から来るぞ!」
イディ「ステ坊!お前の下だ!」
ステラ「え?」
イディが危険を知らせてくれたが足がもつれて尻もちをついてしまいそこへサンドワームが真下から出てガバっと大きな口を開きながら出て来て、そして僕は丸呑みにされてしまった
イディ「ステ坊〜!なんてこった丸呑みだぞ!」
サンドワームがかま首を立てている状態だった為、丸呑みにされた僕は転がるように真上から落とされた
ステラ「痛たたたっ!………ここは?もしかして、さっきの巨大ミミズの中なの?」
サンドワームの体内は沢山のうねうねが動いていて気持ち悪く、謎の粘液を出していたし何か異臭も放っていた
ステラ「臭いなって服が溶け出した!………これって、粘っこいけど胃酸?僕溶かされちゃうよ!」
付着した粘っこい粘液が徐々に、僕の服を溶かし始めていた
なんとかここから出ようとしたが、入口はやはり口だけで残りの出口はアッチしか無い
ステラ「やだよ!アッチの出口から出るなんて!モザイクものだよ!放送できないよ!………ってどこで放送するの?」
しかし無情にも入口は上の方で登ろうとしてもうねうねが邪魔をして登れないし、胃酸粘液の粘つきで結構登りづらかった
そしてさらにサンドワームが動くと登ってるそばから落とされて、また振り出しに戻されてしまう
外側では黒鎧が攻撃をしていたがまるで大きなタイヤでも斬りかかっているように弾かれてしまい、なかなか斬る事ができずにいた
黒鎧「くっ、切れないな………固いわけではなく弾力性があって弾かれるのか!」
イディ「ステ坊………よもや丸呑みにされるなんて………黒鎧、なんとかならないのか!」
黒鎧「今やるさ、まだ間に合う!緊急事態だ起きろお前達!」
トーガ「いい感じで寝てたのにな………」
ラ・ムーア「そうは言っても、アレは簡単そうではないけど?」
トーガ「ならさっさと終わらせるか!」
ラ・ムーア「そうそう、葬送にね!」
軽口を叩く愛刀のインテリジェンス・ソード達を黒鎧は無言で振り、サンドワームに切っ先を向けて突っ込んで行った
イディ「さっきまで切れなかったのにマジか!あの巨体を切るつもりか?」
イディは離れた所から様子を伺っていた
黒鎧「待ってろよ!ステラ、今助ける!」
【共鳴・蒼】双剣覚醒状態
【共鳴・蒼】と言うデュアルブレーダー専用の技で互いの双剣を共鳴させて波動状の刀身を伸ばして6回ほど横薙ぎに斬り刻んだ
その斬られた状態はまるで切ってある太巻きのようにサンドワームを輪切りにしていた
「ズズーーーーーン」
ズズーンっと音がしてまず胴体の下の方が倒れ、残った輪切り状態の胴体と頭部も重力にしたがってボトボトと崩れ落ちた
サンドワームは六ヶ所で輪切りにされてその場に沈みこんだ、そして肝心のステラはと言うと………最初に倒れた胴体の方から出て来た
僕は輪切りの真下にいた為なんとか無事だったのだが………
ステラ「もっとましな助け方無かったの?」
黒鎧「緊急事態で仕方なかったからな、それでもましな方だろ?」
もういいぞと声をかけて労ってから愛刀を鞘に収めていた
イディ「すげぇ~!切っちゃったよ!」
ステラ「それでも、助け方は100点満点中で言えばマイナス100点だよ!」
イディ「100点満点なのになんでマイナス100点なんだ?」
ステラ「切らずに口から助けてくれていれば、こんなにべしょべしょにならなかったんだよ!だからマイナス100点なの!」
サンドワームの胃酸粘液と体液でべしょべしょになってしまった僕は、軽く黒鎧に抗議しておいた
ちなみに体液と言うのは血液等に値する物で、けして卑猥な物では無い
黒鎧「文句が言えるのも無事な証拠だ!」
ステラ「ふ〜んだ!」
イディ「ステ坊………助けて貰ったんだから、とりあえずお礼くらいは言ってもいいんじゃないか?」
砂漠を進み続けて2つ目のオアシスを見つけた僕達は、サンドワームの胃酸粘液と体液を落とす為に休憩をする事になった
僕は黒鎧から渡された桶のような物を使ってオアシスの水を汲んではかけて、サンドワームの胃酸粘液と体液を落としていた
オアシスの水には混ざらないように離れた所で水かけを続けて粘っこい胃酸粘液と体液がやっと取れた
イディ「砂漠でステ坊が素っ裸とかな………」
ステラ「僕だって裸になんかなりたくないよ!けど粘液とかを取らないといけないし!」
黒鎧「幼女の裸なんてどこにでもある風景の1つだ気にするな」
この場にいる男性と言えば黒鎧だが幼女が素っ裸になっているというのに、僕の裸にはまったく見向きもしなかった
ちなみにイディは性別不明で本人も語ってはくれないのでわからないが、ステラの裸にはやはり興味がないようだった
イディ「ステ坊、ここには他に誰もいなくて良かったな!」
ステラ「う〜!『黒鎧がもっと違う方法で助けてくれればこんな事にはならなかったのに………はぁ、文句を言っても仕方ないか助けて貰ったのは事実だしね』」
ステラは素体の身体とはいえ肌をさらすだけでなく裸にならなければならないのは恥ずかしさがあり、黒鎧への文句はその恥ずかしさを隠す為のカモフラージュだった
そして内心では感謝はしているが言葉として言う事はしなかった
黒鎧「とりあえずコレを着ておけ!」
黒鎧はストレージから別のフード付きの丈が長い服と外套、それと靴を渡してくれた
それにしても黒鎧はいろいろなアイテムを持っているなぁと僕は思った
ステラ「あ、ありがとう………『これは服に対してのありがとうだからね!さっきの事とは別だから!』」
黒鎧「少ししたら出発だからな」
ステラ「うん『なんか誰かを思い出しそうだな………誰だろ?』」
イディ「こっちの服とかはどうするんだ?」
黒鎧「そのままにしておけ!いずれ耐久値がなくなって消えるさ」
粘液まみれの服は放置する事になった
ステラ『ゲームの世界だと消えちゃうのか………なんかもったいないな、洗えばまだ使えそうなのに』
休憩を終えて砂漠歩きを再開したが、その後モンスターとの遭遇も無くしばらく砂漠を進み続けていた
そして何も無いはずなのに何かが見えた気がして、僕はみんなに伝えた
ステラ「ん?何か見えたよ」
黒鎧「なんだ?何も見えないが………」
ステラ「あっ、僕の額の目にだけ見えてるみたい」
第3の瞳があるステラは、額にある目で何かを捉えていた
イディ「小動物か何かか?」
ステラ「違うみたい………人だよ!」
黒鎧「何!人だと、どこだ?」
しかし黒鎧にはその姿は見えていなかった
???「驚いた!まさか看破されるなんてね」
光学迷彩のアイテムだったようで、解除音が聞こえたと同時に姿を現した人物がいた
黒鎧「女?」
???「女で悪い?」
黒鎧「なぜ姿を隠してオレ達に近づいた?」
???「だって、変な奴らだったし金目の物でもあるかな〜って思って」
僕達は確かに言われてみれば変な集団だった
1人は鎧姿でもう1人は三つ目でツノが生えた奇妙な幼女で、もう1人?(1体)は手脚の生えたヘンテコ物体だからそう見えてもおかしくはない
イディ「金目の物?何に使うんだそんな物!大根でもすりおろすのか?」
ステラ「なんで大根?」
イディ「金目の物ってすりおろす為のアレだろ?」
ステラ「違うよ!金目の物ってお金とかの事だよ!それはおろし金って言って別物だよ!」
イディ「このキャッシュレス時代に金かよ!」
ステラ「よくそんな事知ってるね?」
僕とイディの会話をスルーして、黒鎧は女が何者なのかをつきとめようとしていた
黒鎧「盗賊か?」
???「盗賊?」
黒鎧「盗賊では無いのか、お前は何者だ?」
???「こっちも生活がかかっているのよ!出すもの出せ!」
女は腰に差していたナイフを取り出すと、そのナイフの先端を黒鎧に向けていた
黒鎧「何のつもりだ?」
???「金目の物、それが無ければ食料と水を出して!」
黒鎧「断ると言ったら?」
???「そっちのおチビちゃんを殺す!」
おチビちゃんとは僕の事のようだった
黒鎧「………簡単に殺せるとは思えんが?」
???「なら、その変な物体を壊す!」
変な物体とはイディの事みたいだ
黒鎧「それも無理だな」
???「アレも駄目コレも駄目って、ならアンタを殺す!そして奪う」
黒鎧「………はぁ〜」
???「なっ、消え……嘘!後ろ?このっ……離せ!」
黒鎧はため息の後に一瞬で女の真後ろに移動して、女を後ろから羽交い締めにした
黒鎧「姿を現した時点で、お前には全て無理だったという事だ諦めろ!」
さらに言えばステラに発見された時点でアウトだったのに、わざわざ姿を現してしまったのが運の尽きだった
???「くっそー!失敗した!」
この後の展開は黒鎧が女を殺すか、縛りあげて放置のどちらかでしかない
しかしそんな事など何も考えていないステラが黒鎧に言う
ステラ「黒鎧………離してあげてよ」
イディ「ステ坊、正気か?殺されかけたんだぞ?」
ステラ「何か事情があるんだよきっと!お願いだよ、黒鎧………」
黒鎧「………ステラ、この女の武器を取れ!そしたら開放する」
ステラ「………うん、わかった」
僕は黒鎧が羽交い締めにしている女性の武器を取り除いた………と言ってもナイフだけでその他には武器と思われる物は何も無かった
もしかしたらどこかに他にも隠し持っているかもしれないけど、見える範囲の武器は没収した
???「もう離せよ!」
黒鎧「離してやるが、次に何かしようとしたらオレは躊躇無くお前を殺す!」
???「わかったよ、アンタの実力ならソレができそうだし………」
一瞬で後ろに回りこんで羽交い締めにされた事もあり黒鎧の実力を目の当たりにした女は素直に従った
妙な動きが無いかを確認しながら黒鎧は女を開放した
黒鎧「で?お前は何だ!」
???「何だって………何?」
黒鎧「お前には生活臭があるな、ここで生きているのか?」
生活臭とは生き物ならあたり前にあるニオイで、本来ここは仮想のゲーム世界なのでそんなニオイがするはずも無いが女から漂うニオイは生活によるものだと黒鎧は判断したのだ
???「そんなのあたり前だろ!ここで生きてるんだから!」
黒鎧「お前の名は?」
???「ロリスだよ」
黒鎧「ロリス、お前はここから出た事が無いな」
ロリス「ここから出る?何を言っている」
黒鎧「お前は惑星イディアの生き残りか?」
ロリス「惑星イディア………その言葉は族長に何度も聞かされたよ、この先も語り継がなければならないとか言ってたけどね」
黒鎧「と言う事は………お前は生き残りの子孫か!」
ロリス「子孫?アタシが聞いたのは大昔に神々が大地も空も何もかもを壊して作り変えたと言う伝承を聞いた事があるけど………」
惑星イディアは作り変えられてしまったはずで、そこでどうにかして生き延びた者達の子孫の1人がロリスようだ
イディ「そいつ等は神々なんかじゃ無い!GMと呼ばれているただの人間だ!」
ロリス「ただの人間?神々の伝承で語られているのに人間のはずは無いよ!」
黒鎧「残念だが本当の事だ、どう言う理屈か知らないが遠く離れた惑星をイジって作り変えたのは同じ人間だったと当時を知る者が語っていたからな」
その事を語っていたのはマキシリオンで、そしてそのただの人間ことGM達は、既にマキシリオンの手によって葬られている
事実だとしてもとんでもない事であるのは間違い無かった、現実問題として言えば遠く離れた惑星を仮想のゲームの世界としてアクセスするという事がとても不可解な現象でありその惑星を壊して作り変えたと言うのだから謎が深まるばかりだった
せめてGM達の内の誰かが生き残っていれば真相に近づけたかもしれないが、今となっては後の祭りだ
ロリス「でも、そしたらアンタ達はどこから来たの?」
黒鎧「オレは特殊な状態でこの世界からは出れないが、ステラはこことは別の世界の人間だ」
ロリス「人間?人間には見えないけど………」
ロリスは僕をまじまじと見てそう言ったがそれもそのはずで見た目は人形のようでありツノと第3の瞳を持つ人間などは本来なら存在しないし、いたとしてもとても奇妙で不気味に見えるのはあたり前だった
黒鎧「今は事情があって仮の身体で活動しているに過ぎないからな」
ロリス「仮の身体?」
ロリスはここがゲームの中である事も知らないようで、黒鎧は今のこの世界を詳しくロリスに語った
ロリス「そんな………遊びの為の世界だなんて………」
黒鎧「誰とも会わなかったのか?」
ロリス「洞窟の中で会ったけど、確かに意味不明な事を言っていたかも」
黒鎧「どんな事を言ってたんだ」
ロリス「確か「待ち伏せでキルとかふざけんな!」って言ってたと思う」
黒鎧「キルと言うのはゲーム用語で殺すと言う意味だが、実際には死なない」
ロリス「ゲーム用語………アンタもここから出られないって言ってたけど詳しいね」
黒鎧「元はオレもこことは違う別の世界の人間だからな」
ステラ「黒鎧はここから出れないの?」
黒鎧「………言っただろ、特殊な状態だとな」
ステラ「僕も今は出れないから、みんな仲間だね」
ロリス「仲間?同じ部族と言いたいのか?」
ステラ「そうそう、そんな感じ」
ロリス「仲間か………悪くないね」
黒鎧「この先に村があるはずだが、ロリスはそこに住んでいるのか?」
ロリス「村?村って何?」
黒鎧「村とは同じ部族の者達が集まる集落の事だ」
ロリス「集落?」
黒鎧「ロリスは普段どこに住んでいる?」
ロリス「普段?洞窟だけど?」
大昔に神々が世界を作り変えていた時にロリスの先祖が洞窟に逃げこみ難を逃れていて、今現在も沢山の人達が暮らしていると言っていた
その後先祖代々洞窟暮らしで洞窟を下に拡張して地下で生活していたが、ある日突然何者かがやって来てさまざまな物資を奪って行ったのだ
そいつ等の事が許せずにロリスは後を追って地上に出たと言うが洞窟から出るとそこは砂漠のど真ん中で戸惑っていた所をステラに発見されて、やむなくこいつ等を襲って金目の物か食料と飲み水を奪ってやろうと決めていたらしい
ロリス「アンタ達は奴らとは違うみたいだね……」
ステラ「ロリス達の物を奪うなんて酷いよ!」
イディ「だがなステ坊、そんな奴らの方が世の中多くいるんだぞ」
黒鎧「確かにな、奪う奴らの方が多い」
ロリス「ステ坊って言ったけ?アンタいい奴じゃん!」
ステラ「ステラだよ」
ロリス「ステラか、いい名前だね」
ロリスはそう言って僕の頭を撫でていた
黒鎧「その洞窟はここから近いのか?」
ロリス「わりとすぐだよ」
黒鎧「そこにオレ達を連れて行く事はできるか?」
ロリス「できなくは無いけど、その場合は獲物としてだよ?」
ロリス以外の働き盛りの若い衆が、洞窟を出て外で獲物を獲って来るがそれはみな生きた状態のまま運ばれると言う
つまり生きた状態のまま洞窟に入るのは獲物として扱われてしまうのだ
黒鎧「それはつまり歓迎はされないと言う事か………」
ロリス「歓迎?言ってる意味はわからないけどたぶん、そうかな」
ステラ「ねぇロリス、電気ってある?」
ロリス「電気?」
ステラ「こうバチバチッとか、ビリビリとかするやつだよ」
イディ「そんな表現だと曖昧過ぎて伝わらないぞ」
ロリス「電気ってのが何なのかはわからないけど、黒鎧は知ってるの?」
黒鎧「そうだな………その事と関係があるが、お前のその服はどんな仕組みなんだ?」
ロリス「服?」
黒鎧「姿を消していただろ?」
黒鎧は光学迷彩と服が関係しているのではとにらみロリスに聞いたのだ
ロリス「これのこと?これは雷鳴様から【プラズナ】と呼ばれるモノを貰っているけど?」
ロリスは服ではなく、手のひらサイズの小さな箱型の物体を見せてくれた
黒鎧「それで姿を消していたのか?」
ロリス「雷鳴様が言うには、見えなくなるのは光の屈折率をどうとか言ってたけど………」
黒鎧「なるほどな、つまりそこにいるのにいない状態になるという事か!」
そこにいるのにいない状態とは、光が当たる角度を上手く調整すると反対側が見えてまるで姿を透かした状態になる
それと同じで透明人間もこの原理でできると言う
ステラ「ひとつもわかんないけど?」
イディ「そこにいる事を見破ったのにわからないなんて………ステ坊、もっと学を学べよ!」
ロリス「そうだよ、なんで看破できたの?」
ステラ「この額の瞳のお陰だよ」
黒鎧「第3の瞳、それが無ければ見破る事ができなかったからな」
僕にはなぜ見えるのかまではわからないが、第3の瞳には光の屈折などを見破る何かがあるようだと黒鎧は言っていた
黒鎧「それで………オレ達でも、その雷鳴様には会えるか?」
ロリス「それは、たぶん大丈夫だと思うよ」
そして僕達はロリスの案内で雷鳴様に会いに行く事になった
雷鳴様がいるのは洞窟の中らしいけど、ロリス達が住む所と繋がっていて洞窟を通って行けるようだった
ロリスの住む洞窟は砂漠のど真ん中にある小さな岩場が入口で、奥に進むと枝分かれしていた
洞窟はアリの巣状になっていて、出入口は全部で3ヶ所ありそのうちの1ヵ所から入った
地下では無数に穴が開けられていて、たまに迷ってしまうのだとか
そして入口から枝分かれしている一本は住んでいる所に繋がっていて、他にもいくつかあるけど変わってる模様の壁の一本があった
その変わってる模様の壁を奥に進むと、不思議な光景に目が釘付けになった
ステラ「何ここ?壁に光が走っているみたいだ………」
ロリス「ここの壁は触らない方がいいよ」
黒鎧「まさか、コレは電気だな?」
イディ「電気だって!良し触ろう!」
ロリス「あっ、こらやめときなよ!」
イディ「うはぁ〜!生き返る気分だ!」
ステラ「なら僕も!」
僕は壁を直接触って電気を取り込んでみた
ステラ「あ〜、なんか増えてる感じがする!」
ロリス「えっ、なんで大丈夫なの?」
黒鎧「ステラとイディは電気が食料と同じだからな」
ロリス「電気が食料?やっぱりこれが電気ってヤツなの?」
ロリスはようやく電気が何なのかがわかったみたいだけど、何度も首を傾げていた
黒鎧「雷鳴様がいるのは、この先か?」
ロリス「奥にいるはずだよ」
洞窟はほぼ一本道で迷う事なく辿りついき、ロリスは雷鳴様を呼んでみた
ロリス「雷鳴様〜!いますか?」
そのロリスの問いかけで奥の岩陰から現れたのは巨大な銀狐の姿で、体毛全体が電気を纏って帯電していた
雷鳴様「ほう、面白いヤツを連れて来たな」
ロリス「面白いヤツかは知らないけど、用があるって」
雷鳴様「何の用だ?」
黒鎧「オレ達をしばらくここに滞在させてはくれないか」
雷鳴様「断る!」
ステラ「え〜!即答なの!」
雷鳴様「トラブルの匂いしかしないからな、だから断る!」
黒鎧「ロリス、この雷鳴様とやらはここの守り神か何かか?」
ロリス「別にそんな存在じゃないよ、たまたま同じ所にいたお隣さん?みたいな感じだよ」
黒鎧「なら倒しても問題無いか?」
ロリス「倒す?雷鳴様は強いよ?」
雷鳴様「おい待て、なんでそんな話しになった!」
黒鎧「素直に滞在許可を出してくれれば、こんな事はしなくて済むんだがな………」
そう言うと黒鎧は武器を構えて、やる気まんまんだった
雷鳴様「待て!(焦り)滞在は許可してやる!もちろんいつまでもいていいぞ!(冷や汗)」
雷鳴様は図体の大きさだけはデカいが、肝っ玉は小さかった
黒鎧「………そこまで言うなら仕方ないな」
黒鎧は武器を収め雷鳴様の提案を受け入れる事にした
ステラ「雷鳴様って、何の生き物なの?」
雷鳴様「銀狐だ成長すれば雷の大精霊になるんだぞ!【プラズナー】とも呼ばれるんだ!凄いだろ〜えっへん!」
ステラ「へぇ~!凄いな………」
僕には雷の大精霊や【プラズナー】と呼ばれる名前も知らないけど、凄い存在だと言う事はかろうじてわかった
イディ「だけど、ただのデカい狐みたいだな!」
雷鳴様「デカい狐って言うな〜!この身体のせいで洞窟から出られなくなったんだぞ!」
雷の大精霊はさらにもっと大きく成長するらしく本来ならば森で暮らしているのにこのような洞窟で暮らしているのは不自然で、雷鳴様が大きくなり過ぎて出られなくなったんだとか
大精霊が成長しきった完全体は人型の姿で大きさもだいたい人間と変わらないサイズらしく、まるで妖弧のような姿となるのだと誇らしげに雷鳴様は語っていた
外の世界には沢山の仲間がいたが、世界の終焉を迎えたあの日を堺に仲間はみんな姿を消したらしい
おそらくは全て殺されてしまったのではないかと、雷鳴様は深く悲しんでいた
黒鎧「と言う事は、長い年月を生きているのか?」
雷鳴様「そうだぞ!だから敬え!」
イディ「なんで上から目線なんだ?」
ロリス「雷鳴様だからね、いつもこうだよ」
黒鎧「ならば知っているな、大昔に何があったのかを………」
雷鳴様「思い出すだけで胸糞悪いが、しっかりと覚えているさ」
黒鎧「何があった」
雷鳴様「あの日、全員同じ姿の人間が空中にいたんだ!4〜5人くらいだったと思う」
黒鎧「全員同じ姿の人間?たぶんGM達か、それで?」
雷鳴様「奴らは世界を壊し始めて、その光景を見て笑っていたんだよ!あいつ等さえいなければ………」
ステラ「笑っているなんて………酷い!」
黒鎧「それでその後はどうした?」
雷鳴様「近くにあった洞窟に逃げ込んで破壊音は止まないし、洞窟の入口から覗いていたら森の生き物の断末魔が聞こえたからここも危ないと思ってそれでもしばらく様子を見てから奥まで逃げてその後はわからない」
ロリス「そんな事があったなんて………」
黒鎧「洞窟の奥に逃げ込んだ事で助かったのか………」
雷鳴様「ここは本来はただの岩場と森が広がっていたんだ、だけど奴らが森を焼き払って大量の砂を辺りに撒き散らしてこの一帯を砂漠に変えたんだ」
とても豊かな森があり、そこの近くには岩場があって沢山の動植物が棲息していたと雷鳴様は語ってくれた
そしてここがその岩場地帯だったと言う
黒鎧「ここは元から砂漠では無かったのか!」
ロリス「そんな………」
ステラ「でも普通なら木はまた生えてくるよね?」
黒鎧「おそらくだが、GMの権限を使ってこの辺一帯の気候をも変えて木が生えないようにしたのだろうな」
気候調整のプログラムを使い、砂漠化を促進させて植物などがいっさい育たない環境に変えてしまったのではないかと黒鎧は言っていた
イディ「なんて酷い奴らなんだ!」
雷鳴様「そのGMって奴らは、何者なんだ?」
黒鎧「もうその存在の意味を失くしてしまっているが、ただの人間だ」
雷鳴様「た、ただの人間!そんな馬鹿な!奴らは空中にいたり森を焼き払ったりここを砂漠に変えたんだぞ!そんな事をただの人間ができるわけ無いだろ!」
黒鎧「仮想世界のゲームのGMと言う権限は絶対で、どんな物でも作り変える事ができるんだ!たとえただの人間でもな………」
ロリス「この世界がゲームになってしまったというのは本当なんだね」
黒鎧「あぁ、これで話しがだいぶ繋がった………ここはもう雷鳴様が知っていた惑星イディアでは無く仮想ゲームの世界であるという事がな」
ステラ「でもなんでゲームと現実がごっちゃになっているの?」
黒鎧「ソレには何かがあるのは間違い無いが、今の時点では真相に辿りつくのは不可能だ」
情報が少な過ぎる事や現実世界の遠く離れた惑星と、仮想のゲーム世界が繋がるという不可思議な現象の解明には今の段階では遠く及ばなかった
だが少しだけ真相に近づいているし、もっと調べれば完全解明も可能性が出て来ていた
イディ「もっと情報が欲しい所だな」
黒鎧「この世界を記録している何かがあればわかるかもしれないが………」
雷鳴様「この世界を記録している物ならあるよ」
ロリス「えっ、あるのそんなのが………」
ステラ「それは、雷鳴様じゃないの?」
雷鳴様「記録するのは生き物なんかじゃ無くて、世界を記録するだけの物があるんだ」
しかしゲームでも無い世界にそんな物があるとは思えなかったが、それでも黒鎧はその場所を聞いてみた
黒鎧「それはどこにある?」
雷鳴様「浮遊大陸の天空城の近くにある天空の塔に、世界を記録する物があると聞いた事があるよ」
ずっと昔の大昔に雷鳴様が聞いた浮遊大陸と天空城とその近辺に天空の塔があり、そこには世界を記録する何かがあると幼い頃の雷鳴様が聞いたらしい
黒鎧「期待はできそうも無いな………」
ロリス「なんでそうなるの?」
黒鎧「そんな所をGM達が見逃すはずが無いからな、弄りまくっているに違いないさ」
ステラ「でも、もしその浮遊大陸を見逃していたら?」
黒鎧「それなら探す価値はあるが………」
イディ「浮遊大陸は隠された大陸だ、だから見つかって無いと思うぞ」
黒鎧「隠された大陸………それは本当か?」
イディ「本当だとも!ただ、今どこににあるかまでは知らないけどな」
浮遊大陸は世界中を漂っていて世界の全てを記録しているのだと雷鳴様は言っていたし、イディもまたそんな事を何かの書物で読んだと言う
つまり浮遊大陸は現在はどこにあるのかはわからなくなってしまっているという事だった
黒鎧「イディはイディアの民だったな」
イディ「そうだが?」
黒鎧「お前の記憶は確かか?」
イディ「これでも記憶力はいい方だぞ」
黒鎧「なら信じよう、そして今後の目的は浮遊大陸を探す事だ!」
雷鳴様とイディの記憶が情報を与えてくれたので今後の行き先は浮遊大陸を目指すという事に決まった
だが結局は砂漠をこえて行かなければならないのは変わらず、過酷な旅となりそうだった
ステラ「浮遊大陸はどんな風に隠されているの?」
イディ「特殊なフィールドを張って、発見されないようになっていると書物で読んだ事があるな」
黒鎧「特殊なフィールドか………ならステラが役に立つな」
ステラ「僕?なんで僕なの?」
黒鎧「特殊なフィールドとはおそらくは光学迷彩だ、それなら既に見破ったステラがいるという事だ」
ロリスの光学迷彩を看破した第3の瞳が役にたつと黒鎧は言っていた
イディ「ステ坊の活躍の場か………だいぶ出世したなステ坊!」
ステラ「コレって、出世っていうの?」
ロリス「何かの役にたつならいいじゃん」
雷鳴様「世の中でなんの役にたたない者なんかいないんだよ!何かしら誰かの役にたっているんだ!例えば洞窟から出られなくなった大精霊とかね」
イディ「ソレ、自滅発言だな!」
雷鳴様「う、うるさいな!これでも役にたっただろ!」
黒鎧「そうだ、この世の中で役にたたない者なんかいないさ!誰一人としてな!」
ステラ「僕は本当に役にたっているのかな?」
黒鎧「ステラ、お前がいなければオレはイディにもロリスにも出会う事は無かっただろう」
ステラ「僕がいなければ出会わなかった……」
黒鎧「お前がオレ達を繋ぎとめた存在なんだ!だからお前はこの出会いの役にたったといえるんだ!」
ステラ「出会いの役にたった………僕が?」
黒鎧「その事を考えればわかるだろ?役にたたない者はいない事がな!」
役にたつと言ってもさまざまな場面があるし、[人は人自分は自分]と考えている人物でもどこかで何かの或いは誰かの役にたっていると言う事なのだ
人との繋がりというのは決して消えないし、たった1人で生きている人物でもどこかで繋がっている(本人は繋がっているつもりは無いと思うけど)
黒鎧「もっと自信を持て、ステラ!」
ステラ「自信?」
黒鎧「お前には沢山の繋がりがあるだろ?ベニやスカイそれとぬいぐるみ達と、その他の連中とも全部お前で繋がっているんだ!」
ステラ「僕で繋がっている………」
黒鎧「もちろんオレともな!」
イディ「ここにもいるぞ!」
ロリス「こっちもだよ!」
雷鳴様「やんないと駄目か?」
イディ「雷鳴様、場の空気を考えろよな!」
雷鳴様「もちろん!我ともだ!………これでいいか?」
イディ「台無しだよ!」
そんな風に騒がしくしていた時だった、数名の誰かがここにやって来た
??「お前、ロリスか?その他の連中は何だ!敵か?」
ロリス「ルドマ?どうしてここに?」
ルドマ「聞いているのはこっちの方だ!答えろ!そいつ等は敵か?」
ロリス「敵なんかじゃないよ!」
ルドマ「この前の奴らと同じ感じがするが?本当に敵じゃないと言えるのか?」
ロリス「族長の息子だからって威張るな!」
ルドマの取巻き1「口を慎めよ!ロリス!」
ルドマの取巻き2「族長に可愛がられてたからっていい気になるなよ!」
ルドマ「黙れ!お前達!」
ルドマの取巻き1「はっ、出過ぎた真似をして申し訳ありません」
ルドマの取巻き2「以後気おつけます」
ルドマ「ロリス、もう1度聞くがそいつ等は何だ!」
ロリス「ゆ、友人だよ!」
ルドマ「友人?部族以外で友人を作る事をたった今禁じる!ロリス、そこをどけ!そいつ等を殺す!」
雷鳴様「待て!ここでの死闘を禁ずる!」
ルドマ「雷鳴様!しかしこいつ等は敵で………」
雷鳴様「聞こえなかったのか?死闘を禁ずる!そしてこいつ等は我が下僕とたった今なったばかりだ殺すと言うなら我も殺せるか?」
ルドマ「ちっ、運が良かったな!ロリス、お前は戻って来い!」
ルドマは他数名を連れて去って行った
カースト制度があるわけではないがルドマは部族の族長の息子で一方雷鳴様はお隣りさんとはいえ大昔からいるので、位が高いのは雷鳴様の方だった
その為ルドマは引き下がざるをえなかった
雷鳴様「な、なんだよあいつ!態度悪いな!」
イディ「そう言う雷鳴様は、ビビリ過ぎだろ?っていつから下僕って事になったんだよ!」
雷鳴様「ビ、ビビってなんか無いさ!」
黒鎧「なんにしても助かったな」
ステラ「ロリス………大丈夫?」
ロリス「だ、大丈夫だから心配しないで………」
黒鎧「ルドマとは何者だ?」
ロリス「さっきも言ったけど、族長の息子だよ」
ルドマの年はそれほど若いわけではなく中年男性といった所だとロリスは言っていたが、しかしルドマは見た目的には相当若く見えていた
黒鎧「族長の息子か、ルドマが1番偉いのか?」
ロリス「まさか、そんな事無いよ!1番偉いのは別の部族の長だよ」
黒鎧「それにしては威張り過ぎだな」
ロリス「族長がもう永く無くて他に候補がいないから、それで次期族長として上がっているのがルドマだよ」
ロリスの話しでは族長が年老いてしまい最近は寝たきりの状態が続いていて、それを見たルドマが調子に乗ってやりたい放題しているらしい
黒鎧「族長は何か持病でもあるのか?」
ロリス「違うよ!数週間前に侵入者がいたんだ、そしてその侵入者に族長は攻撃されて………なんとか命は奪われ無かったけどそれ以来寝たきりになって………」
そしてその侵入者が外から来た者であると判明した為、ロリスは外の世界でそいつ等を探して殺してやろうとしていたのだ
この数日の間で待ち伏せをして何人かは殺せたけど、黒鎧の話しを聞いてゲームの世界である事や本当は死んでない事などを知ったロリスは悔しさでいっぱいだった
黒鎧「族長に会えたりはできないか?」
ロリス「会いに行ったら殺されるよ!」
黒鎧「簡単には殺せ無いさ、オレならな」
ステラ「確かに黒鎧なら大丈夫だよ………僕ならすぐに殺されちゃうけどね」
イディ「ステ坊、お前忘れてないか?」
ステラ「なにを?」
イディ「部位欠損時には即時自動再生機能付きだと言う事をな!」
ステラ「それってどんななの?」
イディ「例えば腕を切り取られたとする、そしたらすぐに腕が再生される!簡単に言うと生えて来るって感じだな」
ステラ「痛みとかはあるの?」
イディ「もちろんあるが、痛覚機能をOFFにすれば痛くないはずだ!」
ステラ「そんな機能があったなんて、僕知らなかったよ」
イディ「エルディアも言い忘れただけだろ?」
黒鎧「なんにしてもステラとイディはここにいた方がいいな」
ステラ「連れてってくれないの?」
黒鎧「なるべくなら不測の事態を回避したい、それにオレとロリスだけで行けば2人なら逃げ切れるからな」
ロリス「そこまでして行く意味は?」
黒鎧「族長を助けられるかもしれないからだ」
ロリス「え、族長を助ける?」
黒鎧「ここは少なくともゲームの世界だ、ならゲームのアイテムが役にたつのではないかと思ってな」
ロリス「ゲームか………族長を助けられるなら行こう!黒鎧」
黒鎧「あぁ、ロリス案内を頼む、ステラとイディはここで待ってろすぐに帰って来る」
ステラ「わかったよ」
イディ「ステ坊の事は任せろ!」
雷鳴様「仕方ないな、面倒みてやるか!」
イディ「それはこっちのセリフだ!」
そして黒鎧とロリスは族長がいる洞窟まで向かって行った
本編の中でも言いましたがもう1度言いますね、この世の中で役にたたない者はいないのです!誰一人としてね!そうこれを読んでいる貴方、もしくは貴女も役にたっています!読んでくれてありがとうございます!
次回は族長です
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素人の作品です
福望華雫でした




