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ログイン23 居場所

貧乏高校生 当溜。格安ボロアパートに住みバイトをして生活費を稼ぐのが彼の毎日だった。明日から学校が夏休みに入る事で浮かれていた時に偶然おもちゃ屋で最新のVRヘッドギアを見つけ購入した。さっそくVRゲームを始めたまでは良かったのだが、本来なら無いはずのVRヘッドギアのホームにログインを果たした。彼は大嘘をつくAIの言う事を真に受け全てにYESと応えてしまった。身体構造スキャンを許し、問題箇所のリペアとしてハルモニア光なる謎の光を実際の身体に照射された。問題は解決したのだとAIに唆されてゲーム世界に送り出されてしまう。しかしこの事が当溜の生活をガラリと変えてしまう重要な出来事だった。ログインしたゲーム内でも問題が発生した。選択出来る性別が女性のみで男性の選択は不可能だった。なんとか女性アバターを男性的な姿に作る事に成功したが、間違えてランダム作成を押してしまい完成したアバターは幼女だった。


♤守ってください幼女な僕を♡ 

縮めて『守幼』をよろしくお願いします


 

 僕が案内されたのはエルディアの自室で、簡易ベッドや机と椅子それからちょっとだけ本棚があってそこにはさまざまな本が並んでいた


エルディア「とりあえず、今はここにいてね」


ステラ「ここから出ちゃ駄目なの?」


エルディア「私専用の部屋だから滅多に人は訪ねて来ないし、ここならまだ安全よ」


ステラ「他は危ないって事だよね?」


エルディア「ここ以外は特にね………なるべく早くにここから出れるように手配しておくから大人しく待っててね」


ステラ「うん、わかったよ」


 エルディアは用事があるという事でこの部屋から出て行った


ステラ「う〜〜ん…………暇だな〜」


 とりあえず本棚の本でも読もうとしたがとても難しい本ばかりですぐに飽きてしまい、持て余した時間を何に使おうかと思っていたが特に何もする事が無かった


ステラ「ひ、暇過ぎる……」


 ログアウトして現実にも帰れないし、この部屋からも出られないとなるとまったくやる事がないのだ


ステラ「1人でできる事はないかな?………じゃんけんとか?」


 とても虚しくなるじゃんけんをやり始めたが、だいたい右手が勝ってしまう


ステラ「左手がんばれ!じゃんけん、ぽん!」


 やはり右手の圧勝になり、つまらなさが増したのでやめた


ステラ「じゃんけんもつまらないし、他は何をやればいいの?」


???「誰かと思えば素体さんか」


 どこからか声が聞こえ、辺りを見ても誰もいなかった


ステラ「‼、誰?誰かいるの?」


???「すまない、姿は無いんだ」


ステラ「姿が無い?もしかしてAIとか?」


???「AI?なんだそのAIというのは?」


ステラ「え〜とね、人工頭脳とかいうんだよ」


???「悪いがそのAIというモノでは無いが?」


ステラ「姿が無くてAIでも無いの?まさか幽霊!」


???「幽霊はわかるぞ!しかし、そのような存在では無い」


ステラ「じゃあ、なんなの?」


???「イディアの民だ」


ステラ「イディアの民?」


イディアの民「だいぶ前に身体はなくしたが、意識だけは残った」


ステラ「意識だけが?………『もしかしてどこかに何かあるのかな?』」


    僕は近くを見渡してみた


ステラ「これは?エルディアが持っていたコアと同じ………」


イディアの民「ほう、まさかここにいる事に気づくとは………驚いたぞ」


ステラ「やっぱりここにいるんだね」


イディアの民「惑星を巻き込むほどの大規模な消失があったが、なんとか意識だけをコピーして貰って生き延び今に至る」


ステラ「惑星は消失したの?」


イディアの民「いや、聞いた話しではまだ存在はしているらしいが………ゲームの世界にされてしまったとか言ってたな」


ステラ「身体が無くて平気なの?」


イディアの民「長年この状態だからな、平気では無いが快適でも無いな」


ステラ「僕の身体を貸してあげたいけど、そしたら僕が動け無くなちゃうし………」


イディアの民「その気持ちだけ貰っておくよ」


ステラ「ごめんね」


イディアの民「それよりも、どうしてここにいるんだ?ここはエルディアの部屋だぞ?」


ステラ「そのエルディアがここにいて欲しいって言って、僕を案内してくれたんだよ」


イディアの民「エルディアが?あの気難しい娘がねぇ………」


ステラ「けどちょっと助かったかも」


イディアの民「助かった?何が助かったんだ?」


ステラ「ここは暇で退屈だったし、話し相手が見つかって良かったよ」


イディアの民「その点で言えば、こちらとしても助かったと言えるな」


 暇を持て余していた僕に、なんとも奇妙な友人ができお互いに信頼しあえる関係となった


     それから数日が経った


 僕がここに来て既に軽く2週間くらい経っていて、エルディアがイディアの民に簡易的な手脚を付けてくれてイディアの民はある程度ぎこちないが動けるようになっていた


 僕はイディアの民をイディと呼び、そしてイディは僕の事をステ坊と呼びあう仲となっていた


イディ「次はステ坊の番だぞ!」


ステラ「えっもうなの?」


 イディと僕は2人で協力してある物を製作し、それを使って日々遊んでいた


 イディと僕が製作した物は[カードゲーム]だった


 24枚のカードを2人で分けて【12枚のカードVS12枚のカード】で戦うカードゲームで、カードには数字が書いてありその数字が攻撃力として使われる


 ルールは簡単で1〜12のカードを順番にだしあって、そのカードの数字で戦うゲームだ


 1番弱いカードから順に数えると【2・3・4・5・6・7・8・9・10・11・12・1】の順で【1】が最強のカードで最弱のカードは【2】となる


 このカードゲームは駆け引きが大事ではじめから【1】を出すと詰むし、最後まで取っておいてもやはり詰む事になる


 そしてイディが出したカードは【6】で、手札にはまだ【1】があると思われる状態だった


ステラ「ここは【5】だ『僕の手札には【1】があるけど、今【1】を出すわけにはいかない』」


イディ「ステ坊、それでいいのか?」


ステラ「もちろん、今は負けでいい!」


 この勝負はイディが勝ち、イディは続けてカードを出すが数字は【3】だ


ステラ『【3】か、やっぱり大きな数のカードはイディの手札にはもうないんだ!』


 ちなみに勝った方が先ほど使用したカードを持ってストックボックスに置く、そして最終的にこのストックボックスにあるカードの数で勝敗が決まるというルールだ


ステラ「それなら、僕のカードはこれだ!【6】」


イディ「なに〜!まだ【6】を持っていたのか!」


ステラ「ヘヘっ、最後まで油断したら駄目だよ」


  今回は僕が勝って、イディが負けた


 お互いのカードの数はもうあと何枚かしかないが、ステラの手札は数が大きい数字が残っていてイディのカードは数字が少ないのが大半だった


 決着はすぐについて、イディのストックボックスには10枚でステラのストックボックスには14枚とかなり接戦であった


 複数の人数でやっても楽しそうなゲームで、その場合は人数分のカードを増やせばいけそうだけどあんまり増えるとごちゃごちゃになりそうだと以前イディは言っていた


 何ならトランプでもできそうなカードゲームでジョーカーを1枚入れて、そのジョーカー持ちの人を倒す為にみんなで協力するとかもできそうだとイディと僕は作った時に話していた


ステラ「僕の勝ち〜!」


イディ「ま、負けた………」


 なんとも楽しそうに遊んでいる2人だった






 そんな事になっているとは知らない萃香達はというと、遡る事2週間前の事


萃香「ここがあたしの自宅がある場所よ!」


あゆむ「僕も住んでいるよ」


羽琉「ここってマンションですよね?」


紅優「まぁ、普通に驚くよな………」


 あれから祖父母と話し合って羽琉は萃香の家(高級マンション)に住む事になり、引っ越しの準備の為にやって来ていた


萃香「とにかくあがって」


 マンション前では他の住民にも迷惑になるので、さっそく自宅がある最上階へと羽琉を案内する萃香


羽琉「ここが萃香さんの自宅?」


紅優「萃香の名誉の為に言うけど、萃香本人がここに住みたいと言ったわけじゃないって事だけは覚えてやっといてくれよな」


羽琉「それにしても、広すぎませんか?」


萃香「確かに広すぎて不便なのよね」


羽琉『広すぎて不便???』


 萃香の感覚はお金持ちの感覚なので一般人の羽琉には理解できなかった


紅優「それと宇城!それからコレを渡しておくよ、VRヘッドギアだ!」


 紅優は背負っていたリュックからまだ箱に入っている新品のVRヘッドギアを羽琉に渡した


羽琉「コレがVRヘッドギア………これで私も何かの役に立てますよね?」


紅優「もちろん、役に立つさ!」


 嬉しそうな羽琉と紅優の間に何かを感じ取った萃香は、2人の間に割り込むように羽琉を空いている部屋へと強引に案内しはじめた


萃香「はい、ここがこれから羽琉が生活する為の部屋だよ」


羽琉「え?もうベッドもあるし机や椅子もあるなんて………揃えてくれたのですか?」


萃香「そんなつもりは無かったんだけどね、昨夜お爺様がやって来て不便な事は無いかとか聞かれたからついルームシェアをするって口がすべちゃってね」


紅優「まさか、そのお爺様が昨夜のうちに買い揃えたのか?」


萃香「よくわかったわね、その通りよ!」


羽琉「そのルームシェアの相手の事については聞かれなかったのですか?」


萃香「既に1人ルームシェアしている幼女がいたし、そのルームシェアの相手は女の子だからって言ったけど詳しくは聞かれ無かったわね」


紅優「女の子同士なら何も問題が起きないと思っているんだろうよ、萃香のお爺様はな!」


萃香「まぁ、買っちゃったものは仕方ないし、良かったらそのまま使ってよね」


羽琉「はぁ………『スケールが違い過ぎてなんだか頭が追いつかない』」


あゆむ「お姉ちゃんは今日からここに住むの?」


羽琉「今日からではないけど、これから住むつもりなんだよ」


あゆむ「そうなの?」


羽琉「あゆむちゃん、これからよろしくね」


あゆむ「うん、よろしく〜!」


 あゆむはとてつもなく可愛らしい笑顔で羽琉を歓迎しているようすだった


萃香「ここならWi-Fiもあるし、VRゲームは問題無く動くはずよ」


紅優「それにしても萃香の自宅が賑やかになるな」


 ここに住んでいたのは萃香とあゆむだけだったがこれからは羽琉も住むし、3人も女の子が住むとなると賑やかになるだろうと紅優は思ってそう言った


羽琉「そうですか?私は静かな方ですけど?」


萃香「紅優は人が増えたから賑やかになるって言ったのよ」


 羽琉が本格的に住むのは3日後となり、ここから今まで通っていた中学校にも通う事になる


 羽琉が通っている中学校はここからそんなに遠くでは無く、案外近くになったともいえる


 祖父母宅から中学校までは2.7キロほど離れていたが、ここからなら1.2キロで約1.5キロほど距離が短くなった事になるから羽琉にもメリットはあった


羽琉「毎日早起きして学校まで遠かったけどここからならだいぶ近くなったと思う………萃香さん、ありがとうございます」


萃香「そうは言っても今はまだ夏休み中でしょう?」


羽琉「確かに夏休み中ですけど、実は早起きって苦手なんです」


紅優「それって誰でも苦手じゃないのか?」


羽琉「その点では、父が厳しかったので………」


萃香「羽琉の父親って事は当溜の父親でもあるのよね?」


紅優「萃香!その話しはNGだぞ!」


 紅優と萃香は源太郎から羽琉の父親の事を少しだけ聞かされていた


 羽琉と当溜の父親が既に亡くなってしまった事や羽琉がその話しをしたがらない事などを聞かされていたのだ


萃香「ごめん、そうだったわね」


羽琉「聞きたくないのですか?父の事を………」


紅優「強引に聞き出すつもりはないよ」


羽琉「いえ、できれば聞いてください」


 羽琉が語った事は、紅優や萃香には理解ができなかった


 羽琉の父親はとても厳しくて、幼少期から躾と言っては虐待に近い事をしていたと羽琉の口から語られた


紅優「子供だからできない事なんて沢山あるのに………」


萃香「ものさしを使って叩くなんて虐待じゃない!」


 羽琉が言われた事ができないでいると、父親はものさしを使って服で隠れて見えない所を重点的に叩いていたのだ


 アザだらけの身体を隠す為に体育はほぼ休む事が多くなり、教室での着替えなどもできなかったと羽琉はそう語っていた


紅優「その………親父さんはなんで亡くなったのか聞いてもいいか?」


羽琉「私が最後に見た父は、まるで抜け殻のようでした」


萃香「抜け殻?」


羽琉「仕事に疲れてそうなっているのだと思っていたのですが、私にも目を合わせなくなっていて何かに取り憑かれたようでした」


紅優「何かに取り憑かれていた?親父さんは何の仕事をしていたんだ?」


羽琉「確かIT関連の何かとか言ってましたが、そこまで詳しくは教えてくれませんでした」


紅優「IT関連の仕事?………まさかな」


 紅優は思いあたる節があったが、そこに結びつくとは思ってもいなかった


萃香「それって過労死って事なの?」


羽琉「父が勤めていた会社からはそんな通知が来てましたし、過労死認定もされて慰謝料の賠償金2500万ほど祖父の口座に入金されましたから間違い無いと思います」


萃香「その賠償金はどうなっているの?」


羽琉「賠償金の4分の2は祖父母が受け取り、残りの4分の1ずつは別にして取ってあると祖母が言ってました」


紅優「おそらくは宇城と当溜にそれぞれ渡すつもりなんだろうと思うよ」


萃香「それってなんの為に?」


紅優「もちろん、今後の生活や将来的に必要になるお金としてだろうよ」


羽琉「将来的に必要なお金?」


萃香「それはあたしでもわかるわ、ズバリ結婚資金ね」


紅優「それだけじゃないって例えば車の免許を取得する為とか、土地を買ったり家を建てたりとかいろいろあるぞ!」


羽琉「結婚……車の免許、それに土地を買ったり家を建てたりですか」


萃香「けど2500万円の4分の1って事は625万円よ?車の免許ほわかるとしても土地とか家は無理でしょう?」


紅優「頭金くらいにはなるだろ、それにそこから増やせばいいだけだしな」


萃香「そんな簡単に増やせるわけないでしょう!」


紅優「俺なら増やせるさ、625万円だったら約1ヶ月もあれば100倍の62500万円くらいにはできるぞ」


羽琉「1ヶ月で100倍?」


萃香「62500万円って、そんな短期間じゃ無理でしょう!」


紅優「売り買いすればいけるさ、多少のリスクはあるが何なら1年預けてくれれば750000以上にもできるぞ!」


萃香「それって、どうせリスクがあるとかなんとか言うんでしょ?まるで詐欺師みたいね」


羽琉「なるほど、こうして騙されてお金を取られてしまうのですね」


紅優「いや!詐欺じゃねぇから!」


 上手い話しには裏があるとはこの事だと萃香は思っていて、それに賛同したのが羽琉だった


 確かに詐欺師ならそんな(うた)い文句で、アレやコレやと手を回してがんじがらめに絡め取り騙し取ってはさいならといなくなるのがオチだった


 しかし、紅優は本当に100倍にするのはできると本人はそう思っていた


 そして3日後に改めて羽琉は萃香の自宅に住みはじめ、共同生活もだいぶ上手くいっていた


羽琉「あゆむちゃん、お風呂に入ろうか?」


あゆむ「うん」


 羽琉はここに住むようになってからは兄と妹では無く、妹(兄)と姉(妹)でお風呂に入っていた


萃香「本当、助かるわ〜」


 萃香はその間に料理をしたり、あゆむの新しい服などをネットで見たりしてだいぶ気持ち的にも余裕がうまれていた


 しかし当然の事だが、1人であゆむの相手をしていると疲れが溜まったりするので一週間ごとに交代する決まりを萃香と羽琉は決めていた


 当然だが交代した場合は料理やその他雑用などもお互いにチェンジとなる


 順番でお風呂に入ったあとは、晩ごはんを食べてほんのちょっとゲームをする事がここしばらくの日課になっていて羽琉もVRゲームにだいぶ慣れて来たようだった


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スカイ「ネル、今日はここまでにしようか」


ネル「まだもう少しだけ………」


 このネルというキャラは羽琉で、ここ数日ほどでLVも5に上がったばかりだ


 現在はLV上げをする為にヤノンレの森まで来て、雑魚敵をを相手に経験値稼ぎにいそいんでいた


 ネルの成長速度はかなり早く、サクサクとLVアップを果たしていた


 ネルの職業は【魔装戦士】で魔物をテイミングしてその魔物を魔装化する事ができ、装備した魔物の魔装によっては自動で迎撃をしてくれる魔物もいるのだとか


 職業の分類的には基本的にはテイマー系で、そこに戦士の職業がちょこっとくっついた感じだった


 今現在のネルのテイミング状況はまだスライム一匹だけだった


 そしてネルのネーミングセンスも独特で、テイミングしたスライムの名前は【粘太郎(ねんたろう)】と名付けていた

 

ネル「粘太郎!まだいける?」


粘太郎「(まだいけるよ!)」


 テイミング状態の魔物とは意思の疎通が可能で、テレパシーのように会話ができる


 それと魔装戦士に鎧として(まと)われている状態の魔物は自身が傷つくと主であるネルも傷ついてしまい一緒にダメージを負う事になる


 最終的には魔物と主であるネルのLVが高くなればなるほど、たとえ最弱のスライムでも雑魚敵の攻撃などビクともしない頑丈な鎧となるらしい


スカイ「ネル!シャーロットちゃんがもうおネムの時間になるわ」


シャーロット「う〜ん、眠くなってきた」


ぬいぐるみ剣士「この辺のモンスターなら問題はないが、早めに切り上げた方が良さそうだぞ」


 ぬいぐるみ剣士はネルのセコンド的なポジションとなって、指導をしてくれていた


 ネルは自身のLV上げに夢中になっていたが、確かにシャーロットを見ると既に眠たそうにしていた


 もうそろそろで午後8時45分で、あと15分もすればゲーム内ではシャーロットは強制的に眠りについてしまうから早めに切り上げなければなかった


 シャーロットの称号のせいもあって事実的に夜にゲームができる時間は割りと短く、2時間弱ほどしかできなかった


 現在のパーティーはスカイがリーダーでネルとシャーロットがパーティーメンバーの3人パーティーとぬいぐるみ達だ


 ちなみにイリスティナには故意に連絡してなくて、その理由はあの人のやかましさに原因があり萃香が連絡を拒んだ事で3人だけでゲームをしているという事だった


ネル「粘太郎ごめん!………ここで切り上げないと後が大変かも」


粘太郎「(え?もう終わりなの!)」


スカイ「また明日に続きをしましょう、そろそろLVも6になるはずよ」


ぬいぐるみ弓使い「この短期間でそこまでLV上げができたのは、素晴らしいと思う」


ぬいぐるみ魔法使い「魔装戦士か、ずいぶんと変わった職業だよな?我よりも目立つなよ!」


ネル「それにしても………このゲームでも現実でも動き回るぬいぐるみがいたなんて、信じられません」


スカイ「でも実際に見てるでしょ?」


ネル「どうしてこんな事ができるのか………解体して中身を見てもいい?」


ぬいぐるみ剣士「待て待て待て!マジで怖いからやめろ!」


スカイ『時々だけど、とんでも無い発言するわねこの娘は………』


ぬいぐるみ弓使い「剣士だけなら問題無し!」


ぬいぐるみ魔法使い「同じく剣士だけなら問題無しだ!」


ぬいぐるみ剣士「お前ら!後で覚えてろよ!」


 仲が悪いわけではないが、たま〜に悪ふざけで弓使いと魔法使いは剣士をイジっていた


スカイ「はいはい、それじゃ街まで帰るよ!」


 一応クエストなども受けていたし、ギルドで報告してからログアウトをした



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 羽琉がログアウトするとそこはリビングで、いつも3人一緒にここでログインをしていたので当然だが萃香もあゆむも近くにいた


羽琉「ふぅ〜!楽しかった」


萃香「魔装戦士って、面白い戦い方よね?」


羽琉「そうですか?」


萃香「だって戦士なのに素手で殴るとか普通は無いわよ」


 普通の戦士なら剣や斧などの武器を使って攻撃するのが一般的なゲームの戦士の戦闘スタイルだが、ネルの戦闘スタイルはほぼ殴る蹴るといった格闘家のような戦闘方法だ


羽琉「けどLVが上がれば武器の装備も可能と書いてありましたよ」


萃香「武器の装備?どんな武器を装備できるの?」


羽琉「ロックがかかったままなので、まだわかりません」


 そのロックが解除できればなんの武器を装備できるのかがわかるようになると言うが、シルエットすら見せてはくれないのでちょっとだけ意地の悪いシステムだった


萃香「せめてなんの武器を装備できるのかがわかれば、その武器にあった戦闘スタイルにできるのにねぇ」


羽琉「それよりも、テイミングをできる魔物は他にはいないのですか?」


萃香「その点なら詳しく教えてくれる先生がいるでしょ?」


羽琉「先生って、それは紅優さんの事ですね」


萃香「連絡は取り合っているんでしょ?」


羽琉「確かにいろいろ教わっていますけど………」


 羽琉はVRヘッドギアの事や接続方法と、ゲーム内でのやっていい事と悪い事などさまざまな事を紅優先生に教わっていた


萃香「何かあるの?」


羽琉「多忙な紅優さんに聞くのは気が引けてしまって………」


萃香「そんな事気にする必要は無いわよ!ガンガンこき使ってやればいいのよ!」


羽琉「こき使うってそんな………」


萃香「あの男はあっちでデレデレこっちでデレデレしてるんだから、遠慮なんていらないわよ!」


羽琉「もしかして、萃香さんは紅優さんの事が好きなんですか?」


萃香「あたしが好きな人は当溜だけよ!……って言っちゃった、ごめん今の無しで!」


羽琉「萃香さんは、兄の事が好きなんですね」


萃香「聞かなかった事にして、ねっ?お願い!」


 口を滑らせて言ってはいけない事を言ってしまった萃香は、羽琉になんとか口止めをお願いしていた


羽琉「私はこう見えても口は固い方ですし、それにそれって兄にはまだ言って無いんですよね?」


萃香「まだ何も言えてないし、つい最近自分が誰を好きなのかを理解したばかりだから………ね」


羽琉「それなら、兄の記憶を取り戻した後には必ず告白すると今誓ってください」


萃香「え?こ、告白ぅ〜!あたしから告白するの?」


羽琉「たぶんですけど、兄もそういうのは疎いはずですしね」


萃香「あたしは理想の告白のシチュエーションがあるんだよ?」


羽琉「それはどんなシチュエーションですか?」


萃香「こう夜景が綺麗で、スーツ姿の男性が右手に薔薇の花束を持って左手に結婚指輪を持つのよ!そしてこう言うのよ「萃香さん、僕と結婚を前提にお付き合いをしてください」ってね」


羽琉「面倒ですね」


   羽琉はジト目で萃香を見つめていた


萃香「面倒って………」


羽琉「萃香さんが兄にこう言えばいいんですよ「あたしがアンタの子を産んであげるから結婚しなさい!」って」


萃香「え?子を産む?それになんで上から目線なのよ!」


羽琉「私の中では萃香さんのイメージはそうですけど、何か?」


萃香「マジで?」


羽琉「ガチですよ!」


ぬいぐるみ執事「やれやれなんの話しをしているのかと思えば、そんなくだらない事か!」


羽琉「くだらない事では無いですよ」


萃香「そうね、あたしに取っては死活問題よ!」


ぬいぐるみメイド「死活問題にするほど結婚適齢期ではないように見えるけど?」


萃香「当溜との結婚ならなおさらよ!」


ぬいぐるみ手品師「結婚なんてそんなに良いものか?我には理解できないぞ!」


羽琉「もし萃香さんと兄が結婚したら、私は萃香さんの義理の妹になりますよ?」


萃香「なんでそこで羽琉が出てくるのよ!」


羽琉「兄と私はワンセットです、兄妹(きょうだい)がお世話になるのは当然の流れでは?」


萃香『や、やっぱりこの娘ズレてる!感覚がおかしいのよ』


 羽琉は離れて暮らしていたせいもあって、兄恋(あにこい)しいが激しかった


 今も兄である当溜に会えてない事もあり、余計に妹が兄と一緒にいるのはあたり前だと思いこんでいた


 萃香は羽琉が父親に虐待まがいの事をされていたのに、父親と同じ男性である兄の当溜に恐怖心を抱かないのは極度のブラコンになっているのではないかとたった今確信した


萃香『ま、まさかのブラコンだったなんて………』


羽琉「萃香さん、どうかしましたか?」


萃香「な、なんでもないわよ!それよりもそろそろ寝る時間ね」


 気がつくと既に午後9時30分は過ぎていて寝るにはまだ早い時間帯であったが、しかしあゆむはもう眠たそうに目をこすっていたので羽琉はあゆむを部屋に連れて行く事にした


羽琉「あゆむちゃん、もうベッドに行こうね」


あゆむ「うん」


 その光景を見送る萃香とぬいぐるみ達


ぬいぐるみ執事「マスターがあんな状態では結婚どころではないだろ?」


萃香「!」


 萃香はぬいぐるみ執事が言いたかった事がようやくわかり、その為には記憶を取り返すしか方法はないとも思った


萃香「確かにそうね、早く記憶を取り戻してあげないとね」


ぬいぐるみメイド「マスター!今頃()()は何をしてますか?」


 ぬいぐるみメイドの問いかけには誰も答える事はできなかったが、囚われの姫のイメージが全員の脳内で想起(そうき)されたのは言うまでも無かった


ぬいぐるみ手品師「敵はどこに隠れているんだ?」


ぬいぐるみ執事「おそらくはゲームの中だろうな」


萃香「だとしたら紅優が頼りね」


 紅優が再々編集をしてSNSで拡散させた映像は瞬く間に全世界に配信され、世界中の情報が紅優の元に集まっていた


 紅優は今その情報を精査している状態で、マキシリオンの居場所の特定を急いでいるという事は萃香も知っているがまだ特定には至って無かった





 時間は現在に戻り、その記憶の本人(あたる)ことステラはというと………


       「ぐぅ〜〜〜〜」


      お腹を鳴らしていた


ステラ「お腹減った〜!」


イディ「素体なのに腹が減るとか、どんな身体してるんだよ」


ステラ「だって電気じゃもの足りないよ!」


 ステラの稼働にはエネルギーが必要でそのエネルギーは食事が電気しか受け付けないし、ここには電気しか無く満足な食事は摂れていなかった


 それに現実を生きていたステラ【前髪当溜】だった時に摂った食事の経験が記憶としてある為、食べ物でエネルギーを得るという事が人として常識としてあった


 つまり今のステラは無性に食事がしたくて仕方が無い状態で、たとえどんなに不味い食べ物でもたいらげる事はできる自信はあった


ステラ「イディはお腹減らないの?」


イディ「ステ坊とはまったく違うしな、そもそも減る腹が無いだろ?」


ステラ「そうだね、イディはまんまるのボディでそこに手脚が付いているだけだし顔とかも無いもんね………後で顔を書いてあげようか?」


 イディのボディはコアそのもので、長年をかけて意識を表面に出せるようになったが素体のように身体が無いからお腹を空かせるという事は無かった


 ちなみにイディの稼働の為のエネルギーはやはり電気だった


イディ「変な顔とかは無しだぞ!」


ステラ「OK!可愛い顔を書いてあげるよ」


イディ「別に可愛い顔じゃなくても………」


 会話の途中でイディが黙ってしまった


ステラ「どうしたのイディ?」


イディ「しっ、静かに!何かいるぞ!」


 ガタゴトと音がして、その直後にある人物がそこに立っていた


ステラ「あっ!黒鎧だ!」


黒鎧「そう言うお前はシャーロットか?」


ステラ「ち、違うよ!僕はステラだよ!」


黒鎧「奴らに何か吹き込まれたのか?一人称が僕のままだとすぐにバレるぞ?」


ステラ「ぼ、僕……()()()はステラだよ!」


 ステラは強引に一人称を【あたい】と言いかえていた


黒鎧「今更変えても無理があるぞ?」


 そこにエルディアがやって来て、黒鎧と鉢合わせをした


エルディア「な、何者だ!貴様!」


黒鎧「あまり大声を出すと誰か来るぞ?本意ではないだろ?」


エルディア「そうだが、なぜ攻撃をしてこない!」


黒鎧「お前からは敵意が感じられないからな、それに………」


   黒鎧はステラ達を指差していた


エルディア「ステラ………」


ステラ「あたいはステラだよ!」


イディ「まだやるのか、違うと指摘されていただろ?」


黒鎧「ふっ、そんな所も変わらないな」


ステラ「う〜〜〜!そ、そうだよ僕がシャーロットだよ!」


エルディア「ステラどうして………」


 エルディアはステラに【(まこと)の名】を言ってはいけないとあれほど言って聞かせたのに、ステラはシャーロットであると自ら自白していた


黒鎧「おいアンタ、取引をしないか?」


エルディア「取引?」


黒鎧「見た所ここに彼女を隠していたみたいだが、そろそろ限界だろ?」


エルディア「なぜそれを?」


黒鎧「シャーロットのピンチには必ず駆けつけるとそう約束をしていたからな」


 黒鎧はここ数日の間にステラを発見してしばらく様子を見ていたら、一人称が僕である事と喋り方や仕草などでシャーロットであると確信した


 ステラがこの部屋から一歩も外に出なかった事で監禁もしくは出てはいけないと誰かの指示ではないかと疑い、助け出す為に黒鎧は今現在姿を現したのだ


エルディア「その取引とはどんな事だ?」


黒鎧「オレがステラを逃がしておくから何事も無かったようにしろ、と言う事だ!」


エルディア「貴様を信用できないと言ったら?」


黒鎧「オレを信用して無くてもいいが、ステラにはあるのか?」


エルディア「それはある!」


黒鎧「だ、そうだが?」


 黒鎧は僕にそう尋ねて、僕の言葉を待っていた


ステラ「黒鎧は信用できるよ!僕が保証する!」


エルディア「ステラ………本当に逃がしてくれるの、その黒鎧って人は?」


 エルディアは僕の方を見て聞いていた


ステラ「何度も僕は黒鎧に助けられたから大丈夫だよ!」


 以前はシャーロットとして助けられたはずだが、僅かに記憶の欠片が残っていたのか黒鎧には絶対的な信頼を寄せているステラだった


エルディア「わかったわ………それならステラを無事に逃がしてあげて、私では遠くには逃がしてあげられないから………」


黒鎧「わかった、それと1つ聞きたいがステラはオリジナルの記憶か?」


エルディア「さっきの会話で確信を持てたわ、確かに今のステラはオリジナルの記憶よ」


 コピーの記憶なら数日経ってしまったら徐々に劣化していき、記憶の欠片さえも残らない事がしばしば起きる事もあった


 記憶のコピーは劣化が進むのは既に確認済みだったし地球人の記憶の劣化具合は未知数だった為、エルディアはしばらく様子を見守っていた


 そしてエルディアはステラと黒鎧との今の会話で、欠片とはいえ記憶そのものをちゃんと持っている事と劣化していない事が同時にわかったのだ


ステラ「僕がオリジナルなの?」


エルディア「前までは確信が持てなかったけど、今はっきりとわかったのよ」


黒鎧「記憶を元に戻す方法はあるのか?」


エルディア「いいえ、今の所はできないわ」


黒鎧「なぜだ?」


エルディア「また狙われる可能性があるから………それともう1人のシャーロットにも別の記憶が今もなお上書きされているからとても難しいわ」


黒鎧「別の記憶を持つシャーロットか………『まるでオレがいた世界線のシャーロットみたいになるのか?』」


エルディア「本当に任せてもいいの?」


黒鎧「次こそは必ず守ると、ここに誓うさ!」


エルディア「………貴方は誰なの?」


 まるで騎士のようにシャーロットを守る事を前提として行動している黒鎧に興味が湧いたエルディアは思わず聞いていた


 エルディアはギルドの受付嬢として黒鎧を見た事はあったが、これまで直接会った事は1度も無かった為興味が湧いたのだ


黒鎧「さすらいの異邦人って所だな」


エルディア「さすらいの異邦人、黒鎧ね………覚えておくわ!」


黒鎧「アンタの名前は?」


エルディア「エルディアよ!別の名前もあるけどここではそう名乗っているわ」


黒鎧「エルディア、ステラの事は任せておけ!」


エルディア「黒鎧、頼むわよ!ステラ!イディを連れていって」


ステラ「イディを?」


エルディア「きっと役に立ってくれるから………」


 エルディアはわかれを惜しむように僕を抱きしめた


黒鎧「コレが最後の別れではない!またステラに会えるさ」


エルディア「だと、いいけどね………」


   エルディアは悲しそうな表情だった


 そして僕はイディと共に黒鎧の手引きでここから脱出する事ができた






黒鎧「その身体は目立つな」


 裸では無いにしろツノや三つ目である事が目立つと言った黒鎧は、ストレージから外套と帽子を出して僕に渡してくれた


 シンプルな黒っぽい外套と同じ色の帽子だった


 今の僕はゲームのアバターではない為、トレードなどもできなかったので手渡しとなった


ステラ「まるで砂漠でも移動するみたいな格好になちゃったよ」


イディ「砂漠ごえは素体の身体でもこたえるって聞いた事があるな」


黒鎧「そのまさに砂漠をこえねば村にさえ辿りつけないぞ!」


ステラ「本当に砂漠ごえなの?」


黒鎧「そうだ!」


 黒鎧がストレージに持つ食料や水などは村まではもちそうだが、それは1人だった時の計算だ


   ステラはさらに最悪な事に気づいた


ステラ「砂漠には電気も無いよね?」


イディ「な、なに〜!電気が無いだと!」


 ステラとイディにとっては死活問題だった


黒鎧「それも村まではお預けだな………そんな装置とかがあればいいがな『最悪の場合はステラは抱えて、イディはストレージにでも放り込むか?』」


 あくまでもイディは物扱いだが、ステラはそうもいかないと黒鎧は思っていた


 僕にとってもイディにとっても過酷な砂漠ごえが今まさに始まろうとしていた

 


羽琉やステラのように快適とは言えなくても居場所があればそれだけでプチ幸せですよね?

次回は危険な砂漠ごえです

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素人の作品です   


           福望華雫でした

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