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ログイン20  おにゅうの装備

貧乏高校生 当溜。格安ボロアパートに住みバイトをして生活費を稼ぐのが彼の毎日だった。明日から学校が夏休みに入る事で浮かれていた時に偶然おもちゃ屋で最新のVRヘッドギアを見つけ購入した。さっそくVRゲームを始めたまでは良かったのだが、本来なら無いはずのVRヘッドギアのホームにログインを果たした。彼は大嘘をつくAIの言う事を真に受け全てにYESと応えてしまった。身体構造スキャンを許し、問題箇所のリペアとしてハルモニア光なる謎の光を実際の身体に照射された。問題は解決したのだとAIに唆されてゲーム世界に送り出されてしまう。しかしこの事が当溜の生活をガラリと変えてしまう重要な出来事だった。ログインしたゲーム内でも問題が発生した。選択出来る性別が女性のみで男性の選択は不可能だった。なんとか女性アバターを男性的な姿に作る事に成功したが、間違えてランダム作成を押してしまい完成したアバターは幼女だった。


♤守ってください幼女な僕を♡ 

縮めて『守幼』をよろしくお願いします




      【ペラグロス城下街】


☆活気あふれる城下街で交易が盛んな街で有名

☆ニュービー達は新装備を求めてこの街までやって来る

☆ペラグロス城が中央にあり、ペラグロス国と言う国をペラグロス国王が統治している

(NPCの国王)

☆ペラグロス騎士団が城下街を警備や治安維持に務めている

(NPCの騎士団)


 ベニは寝て無いのに、朝っぱらからログインしていた


ベニ「ねみぃけど、装備品を探さねぇとな!確か【パルスモラの館】だったな」


 パルスモラの館を探して1時間弱ほど歩き回り、ベニはやっと店を見つけた


 パルスモラの館は路地裏通りにあり、その路地裏にとけ込んでいたので探すのに苦労した


ベニ「ここか!良し覚えたぞ!」


 ベニはまだログインしていないスカイやシャーロット、ムーとヒミコとアーサーやノブナガをここに連れて来なければと思い連絡を取ってみた


 朝早い時間帯だからあまり期待はしていなかったが、唯一スカイからは返事があった


ベニ「反応があったのはスカイだけか、良し一旦ニュービータウンに戻らねぇとな」


 ベニは広場にあるポータルで瞬時にニュービータウンにたどり着いた


 ポータルは街の広場には必ずあり、ポータルがある場所に一度でも訪れてアクティベートしたならそこに瞬時にワープが可能なのだ


 ワープするにはポータルをアクティベートして置く必要がある、そうしないとたとえ訪れた事があってもワープはできないのだ


 アクティベートとは英語で【活性化する】や【有効化する】といった意味を持つ言葉で、ゲームでは後者の有効化するという意味がよく使われている


ベニ「スカイはまだか………」


 しばらくするとスカイがやって来て、すぐ後にシャーロットとぬいぐるみ達がやって来た


 ぬいぐるみ達はあゆむがログインすると自動でゲーム世界にやって来ていた


 おそらくは【前髪当溜】の記憶が無くなってしまった事に関係があり、当溜の記憶を無くしたせいでスキルの【ぬいぐるみ魂込め】を()()()()()()()()()()()で使用する事が不可能になりその結果ぬいぐるみ達自身がゲーム世界に来る事が可能になったと思われる


ベニ「いつものメンツだな!」


スカイ「なんでこんなに朝早くなのよ!」


シャーロット「眠いよ〜!」


ベニ「すまんな!『シャーロットちゃんやっぱり夢の中とは雰囲気が違うな、ってあっちはあゆむちゃんの方だったな………しかしまともに顔を見れねぇな』」


 ベニは夢の中のできごとが、まだ頭から離れずシャーロットの顔を長く見る事ができなかった


スカイ「どうしたの?」


ベニ「なんでもないぞ!それより別の街に移動するからパーティーを組み直すからな」


 いつもはシャーロットがリーダーでスカイとベニはパーティーメンバーだったが、今回はベニがリーダーでスカイとシャーロットがそのパーティーメンバーになった


スカイ「こうしないと別の街とかには行けないのね」


 行った事があるプレイヤーでしかそこには行けないのが、どこのゲームでも一緒のルールだった


ベニ「良し!手をつなぐか?」


スカイ「そんな事しないと行けないの?」


ベニ「いや、なんとなくな!」


スカイ「もう!わかったわよ」


 スカイは渋々手をつなぎ、シャーロットはまだ眠そうに目を擦りながらベニの手を握った 


 ベニを挟む様にスカイとシャーロットは手をつないだ


ベニ『やっぱ、手が小さいな!それに夢の感触に近い気がする』


スカイ「まだ?」


ベニ「今行くって!ポータル起動、ペラグロス城下街へ!」


 口頭(こうとう)でなくてもメニューから選んで移動は可能だがベニはあえて口頭にしていた、そしてニュービータウンからあっと言う間にペラグロス城下街に着いた


 ペラグロス城下街の大きな広場には巨大なポータルがあり、ニュービータウンよりも遥かに広くて開放感があった


スカイ「ここがペラグロス城下街?凄い活気のある街ね」


 早朝なのに行き交う人が多く、そのほとんどがNPCだと言うのは驚きを隠せないスカイだった


 巨大ポータルに出入りしているのはプレイヤーで人数はそこそこ、NPCは大通りを歩いて移動したり馬車や馬を使って行き交っていた


シャーロット「ふぁあ〜!凄い人ばかりだね」


ベニ「だろ?それじゃ行くか!こっちだついて来てくれ!」


スカイ「こんなに人が多いならシャーロットちゃんは抱っこね」


シャーロット「うん」


 スカイはいつもしている様にシャーロットを抱っこしてベニの後をついて行き、路地裏までやって来ていた


スカイ「だいぶ歩くわね」


シャーロット「人、少なくなったね」


スカイ「ここは路地裏だからね、人通りは少なくなるのよ」


 大通りから脇道に入りくねくねとした道を進むとそこは路地裏で、治安維持の為にNPCのペラグロス騎士団員が巡回していた


ベニ「ここが目的の【パルスモラの館】って店だ!」


 ベニがドヤ顔で紹介したがスカイもシャーロットもスルーしてお店を見ていた


スカイ「ここは、オシャレなお店ね」


 お店の雰囲気は路地裏にひっそりとある画廊のアトリエの様な外観で看板は吊り下げるタイプ、お店の名前が書かれている書体がなんともオシャレな感じだ


 外からお店の中が見える様に工夫がされていて、ウィンドーにも商品と思われる武器や防具をマネキンが装備して見える位置に立たせていた


 お店のドアには『オープン』の文字が書かれたプレートが下げてあり、営業中を示していた


シャーロット「ひらひらの服だね」


スカイ「こういうのは職業にもよるのよね」


ベニ「まぁ、それはともかく中に入ろうぜ!」


NPC「いらっしゃいませ!」


 プレイヤーが出している店には店番と思われるNPCがいて、客であるベニ達を出迎えてくれた


NPC「商品をお手に取ってご覧になられて構いませんよ、ご自身に会った装備をごゆっくりとお選びください」


 NPCはそう言い残してレジカウンターの方へ行ってしまった


ベニ「丁寧なNPCだな………」


スカイ「こういうお店はみんなそうじゃないの?」


 ベニ達3人は店内を見渡して、それぞれが装備できる品を探し始めた


シャーロット「コレ凄いね………布がほとんど無いよ?」


スカイ「そ、それはシャーロットちゃんには絶対に無理よ!」


ベニ「どれどれ…………いや、それは絶対無理だろ!」


 ベニは目を背けていた、なぜなら布面積が極端に少なくて本当にそれで隠せるのかと疑問に思うほど縦幅や横幅がまったく無かった


 以前にムーとシャーロットが防具屋で見た装備よりも過激で、とても際どいビキニの水着の様な装備だった


スカイ「こっちはどうかな?」


ベニ「まともなヤツか?」


スカイ「さっきのよりは布はあるわよ!」


シャーロット「でもひらひらだね」


 セパレートタイプの服だが上はベストで中のインナーがブラトップのようで、下がミニスカートで見せパンだった


ベニ「スカイにもシャーロットちゃんにも、それは合わねぇな」


スカイ「確かにコレは恥ずかしいわね」


シャーロット「僕、着れなくも無いよ?」


ベニ「シャーロットちゃんやめといた方がいいぞ、他を探そうか!『流石に露出が多いのはな………』」


スカイ「そうね『悪くは無いけど……』」


シャーロット「僕、着れるのに………」


ぬいぐるみ剣士「マスター、おれもベニの意見には賛成です!マスターにはもっと似合う装備があるのでは?」


ぬいぐるみ弓使い「マスターコチラなどはどうでしょうか?」


 ぬいぐるみ弓使いが差し出した装備は、ドレスタイプの装備でシャーロットにとても似合いそうな可愛らしさがあった


ベニ「それは悪くないが、値段がとんでもなく高いぞ!『すげ~0の数が多いぞ!とてもじゃないが買えないって!』」


 ざっと見ただけだが1万越えは軽くしていた


ぬいぐるみ魔法使い「ならこっちはどうだマスター?」


スカイ「ソレ、魔法使いスタイルよ?『まったく職業と合って無いわ』」


 ぬいぐるみ魔法使いが差し出したのは、The魔法使いの装備で黒いローブと黒いブーツそれに魔法使いがよく被る帽子がセットの装備だ


ベニ「シャーロットちゃんには合わないぞ?」


 なかなかシャーロットに似合うのと値段が手頃な装備品は見当たらず、スカイやベニの装備品も見てみたが値段が高過ぎててとも手が出せ無かった


 するとそこへ店の店主であるパルスモラがやって来た


パルスモラ「お客様、何かお探しでしょうか?」


 パルスモラの見た目はかなりぽってりとした体型で、富裕層を思わせる雰囲気がある女性だった


 パルスモラの髪型はまるで貴婦人の様なヘアースタイルで丈の長いロングドレスを着て、首元にあるネックレスの宝石がまるで存在感をアピールしている様に輝いていた


ベニ「俺達の装備品を探していたんだが、似合いそうなのと値段の問題で頭を抱えていたところなんだ」


 本来似合いそうというのは二の次だが、シャーロットには似合う装備をさせてやりたいとベニはそう口から言葉が出てしまっていた


パルスモラ「なるほど、似合う装備と値段が合わないといったお悩みでしたか………それならコチラの頼みを聞いてもらえませんか?」


スカイ「頼み?ソレは個人クエストって事?」


パルスモラ「そうなりますね、引き受けて頂ければ商品を半額以下でお売りいたしますが?いかがいたしますか?」


ベニ「半額以下か………クエストの内容によるな」


パルスモラ「簡単なクエストですよ」


 パルスモラはにっこりと笑って、クエストの内容を教えてくれた


 個人クエストとは依頼者がギルドなどの斡旋業(あっせんぎょう)を通さずに直接依頼するクエストがほとんどで報酬が依頼者の言い値が相場であり、また報酬そのものがお金では無くアイテムや武具など変わった物が多いのが特徴


 今回のパルスモラの様に、お店からの個人クエストだと売り物の商品の値段を安くして貰える事もある


ベニ「配達ねぇ………確かに簡単だが、時間もしくは期間の制限は?」


パルスモラ「現実の配達の様な制限は特にございません、ただ確実に配達して頂ければ問題はありません」


スカイ「けどそれって、プレイヤーに配達なのよね?」


パルスモラ「彼女もしくは彼らは時間などは気にしていませんから、どれほど遅くなっても確実に配達して頂ければ結構ですので引き受けて貰えませんか?」


スカイ「どうするベニ?」


ベニ「引き受けてもいいんじゃないか?」


スカイ「それなら配達の荷物は1人で預かった方が良さそうね」


ベニ「俺はまだストレージに余裕あるけど、スカイは?」


スカイ「あたしもまだ余裕はあるわ」


 結局ベニが配達の品を受け取る事になり、そして装備品を半額以下にしてもらえる事になった


パルスモラ「こちらが配達の品です、商品の数は全部で7つあります」


ベニ「配達先は?」


パルスモラ「こちらがその配達先のリストでございます」


 渡された羊皮紙にはプレイヤーの名前とIDがあり、プレイヤー名とIDのそのどちらも一致した相手に届けて欲しいとの事だった


 装備品を半額以下にしてもらうという事は既に報酬は受け取ったも同然なので、必ずやり遂げなければならないクエストだ


 シャーロットは似合う装備でベニとスカイは実用的な装備を選んでみた


シャーロット「コレが僕の新しく装備かぁ」


 シャーロットの装備は紺色のスクール水着の様なベースに革製の胸当てと焦げ茶色のロングコートそれから太もも辺りまでの丈の白いスカートと、紺色のニーソックスに白いウエスタンブーツと革製の指ぬきグローブそして革製の太めのベルトを腰に巻きそのベルトにはなぜかホルスターが付いていてちょっとガンマンっぽいスタイルだった


 露出は控えめで腕と太もも辺りが見える程度の装備品で、シャーロットもまんざらでもない様子だった


【シャーロット新装備】

 紺色のスクール水着

 革製の胸当て

 焦げ茶色のロングコート

 太もも辺りまでの丈の白いスカート

 紺色のニーソックス

 白いウエスタンブーツ

 革製の指ぬきグローブ

 革製の太めのベルトホルスター付き

 

スカイ「あの〜ベルトのホルスターはどんな意味があるのですか?」


 スカイはパルスモラにホルスターの事を聞いてみた


パルスモラ「なんとなく付けたくて付けてしまいまして、意味は無いのですよ」


ベニ「よく銃とか入れたりするホルスターか、このゲームには銃無いもんな」


パルスモラ「代わりと言ってはなんですがコレとコレを無料で差し上げます」


 パルスモラが差し出した商品は帽子と、ホルスターにピッタリ入る魔法の銃だった


スカイ「この帽子は紺色のキャスケット帽ね、それとこっちはおもちゃの銃?」


パルスモラ「いいえ、ソレは魔法の銃ですよ」


ベニ「魔法の銃だって!そんなのがあるのか!」


パルスモラ「弾丸は魔法を詰めた弾丸で、6発まで装填可能なのです」


 弾丸はFPSゲームさながらの本物仕様の形で、魔法の銃の形状は本格的なリボルバータイプだった


 それほど重さは無く誰でも簡単に扱える魔法の銃は、プレイヤーにそこそこの人気がありサブウェポンとして持つのが今のペラグロス城下街での流行りだ


スカイ「魔法を詰める?」


パルスモラ「魔法使いにその都度詰めて貰わないといけないけど、威力はその魔法を詰めた者のLVによって変化します」


 弾丸に魔法を詰めるには、本来火薬が詰まっているところに親指を当て魔法を唱えてその効果を弾丸に詰める事で魔法の弾丸が完成する


 魔法の銃から撃ち出された弾丸は消して消える事は無く、回収が可能なので繰り返し使えるのが特徴でたとえ紛失しても持ち主のストレージに戻るので放置しても問題は無く金銭的にもかなりエコロジーな商品だ


ベニ「それなら、ピンチの時には使えそうだな」


パルスモラ「詰められる魔法の種類は[攻撃魔法・補助魔法・回復魔法・各種の術・特殊阻害系]の5種類は既に確認が取れています、もしかしたら他にも詰められるかもしれないと製作者は仰ってていたわ」


ベニ「製作者って事はプレイヤーが作ったのか?この魔法の銃は!」


パルスモラ「はい!間違いございません、プレイヤーが製作した商品でして現在はここでしか購入できません」


 魔法の銃はプレイヤーが製作した物で普通の鍛冶職の職業ではなく冒険職のプレイヤーが製作した物であると、なんとも驚きの事実をパルスモラの口から語られた


パルスモラ「製作者は特定される事を望んではおりませんので、プレイヤー名をお教えする事はできません」


ベニ「そうか、製作方法を聞き出そうとする輩がいるって事だな?」


パルスモラ「えぇ、そうです!あの方の望んでいない事にはこちらとしてもお教えする事ができないのですよ」


スカイ「秘匿情報って事ね!」


パルスモラ「そうなりますね」


 たった1人のプレイヤーがその製作技術を独占しているわけだが誰も文句は言えないのだ、もしも自分が同じく珍しい物を製作できるとしたら誰だって隠したくなるのは当然の事だから


パルスモラ「あの方が望むのは少しでも誰かの役に立つならと、こちらで商品として販売をさせて頂いておりますので是非ともお役立ててくださいね」


ベニ「壊れた場合は修復とかはやって貰えるのか?」


パルスモラ「修繕依頼ですね、確かに承っておりますのでどうぞ遠慮なくご利用なさってください」


スカイ「修繕依頼もできるなんて至れり尽くせりね」


ベニ「詰められる魔法だが、他にも詰められるってどういう事だ?」


パルスモラ「あの方もまだ試しては無い事があると仰っていたのですが、スキルを詰められるのではないかと試行錯誤をしているそうですよ」


スカイ「攻撃と補助それから回復はわかるけど、各種の術と特殊阻害系って?」


パルスモラ「各種の術とは術士の術の事ですよ、そして特殊阻害系は使用するとびっくり箱の様にポップアップするトラップの様な仕掛けを詰める事ができるのです」


 特殊阻害系を詰めるにはトラップスキルを持つ職業の罠術作成士と言う職業のプレイヤーに頼まなければならず、オーダーしなければならない


 罠術作成士にオーダーするには、パルスモラの館を通せば比較的簡単で安価で受けて貰えるので割りと常連さんがいるのだとか


 ちなみに罠術作成士に何の紹介も無くオーダーしに行くと、ゲーム内の全財産の半分以上のお金を取られるらしい


ベニ「いや、ソレは魔法じゃ無くないか?」


パルスモラ「こんな話しがあります、高度な文明をある先住民族が見たらソレは魔法と変わらないのだと………つまり見る人によっては魔法に見えると言う事なのです」


スカイ「なんか屁理屈みたいね」


シャーロット「凄いね、コレそんなに重く無いし僕でも持てるよ」


スカイ「危ないからホルスターに入れといてね」


パルスモラ「コチラの弾丸もセットなのでご遠慮なさらずにどうぞ」


 パルスモラが用意した弾丸は全部で18発分で、ホルスターに入れてある魔法の銃にも既に6発分が装填されているので合計24発分の弾丸を無料で貰えたのだ


 魔法の銃の弾丸にはまだ何の魔法も詰まっては無いが、とても心強いサブウェポンとなった


ベニ「ずいぶんと気前がいいな」


パルスモラ「こちらとしては特別なお客様ですからね」


ベニ「特別な客?」


パルスモラ「個人クエストの配達を引き受けてくださったお客様は今まで誰もいませんでしたので、特別なお客様と呼称(こしょう)させて頂きました」


ベニ「なるほどな、特別なお客様か悪くないな」


 シャーロットは空いていたホルスターに魔法の銃を入れ、紺色のキャスケット帽を被ってすぐ目の前にあった姿見の鏡を覗き指で拳銃の形をとり可愛らしくポーズを決めていた


シャーロット「なんかいいかも♪ばきゅーん!ふふっ」


【シャーロット新装備追加】

 紺色のキャスケット帽

 魔法の銃(本物仕様のリボルバータイプ)


 しかしこの時シャーロットの右側の太ももの内側にある模様がある事には今の所誰も気づいていなかった、そう()()の様な模様がある事に………


 スカイの装備は今まではよくある魔法使いの装備だったが、動きやすさを重視した結果見た目的に露出度少々多めの女盗賊風の格好だった


【スカイ新装備】

 タンクトップ

 黒いベスト

 短パン

 黒いロングブーツ


スカイ「コレなら動きやすそうね」


 ベニの装備は前よりも金属の比率が多くなり少々重量が増して甲冑まではいかないが、部分的に胸周りと腕や脚それに腰回りにブレストアーマーやガントレットなどの装備を身に着けた中級冒険者向け装備だ


【ベニ新装備】

 ブレストアーマー

 ガントレット

 レッグアーマー

 ウエストアーマー

 皮製のボディスーツ


ベニ「少し重くなったが、多少の攻撃なら問題無いな」


ぬいぐるみ剣士「重量が増した分素早さが下がるがいいのか?」


ベニ「シャーロットちゃんを守る為だしなそれにお前達もいるから、その点は信頼してるぜ!」


ぬいぐるみ剣士「そうか、信頼か………」


ぬいぐるみ弓使い『なかなかのお方だな、ベニ殿は………』


ぬいぐるみ魔法使い「我を信頼するのは正解だ!」


 シャーロットとスカイとベニの防具は決まり、武器はスカイとベニだけ新たな武器に変えた


 シャーロットの魔法の銃はサブウェポンなので変えたわけではなく、あくまでも補助的な武器の役割りだった


スカイ「短剣をやめて曲刀に変更したわ」


ベニ「曲刀?扱えるのか?」


スカイ「この前の戦いで曲刀の系統を得たのよ!そう言うベニは?」


ベニ「俺は双剣のままだよ、名がある武器は初めて使うがなかなかの双剣だぞ!」


 スカイの曲刀は武器屋にならどこの店でも見かける店売りの曲刀で名は無くとも斬れ味は抜群との評判がある


 ベニの双剣は鍛冶職のプレイヤーが作成した双剣で名を【ジョルジュジョノサン】と言う、見た目も変わった形でナックルガードが輪の形で両刃を合わせる様に持つとまるでハサミの様な形になる


ベニ「これでクロスブレイクを使うとハサミみたいだな」


スカイ「なんか外国人みたいな名前ね」


ベニ「【ジョルジュ】と【ジョノサン】でわけるとそれっぽいな」


パルスモラ「こちらが皆さまの武具の合計金額となります」


 パルスモラはレジカウンターを操作して金額を表示した


ベニ「これは!安くなってるな、本当にこんな値段でいいのか?」


パルスモラ「何も問題はありませんよ」


ベニ「パーティー決済は使えるのか?」


パルスモラ「できますよ、ご使用になられますか?」


ベニ「あぁ、頼む」


 パーティー決済とはパーティーを組んでいるメンバー全員かもしくは個人で支払う事ができるシステムで、大まかにわけて【個人での支払い】と【パーティー全員での支払い】の2種類がある


 個人での支払いは【全額の一括払い】と【分割払い】の2種類があり、パーティー全員での支払いでは【割り勘】と【(おご)り】の2種類があり全部で合計4種類がある


 そして今回ベニはパーティー全員での支払いの【奢り】を使って1人でパーティー全員分の支払いを済ませていた


 パーティー決済なのに個人で支払うのはおかしいと文句を言うプレイヤーもいるが、パーティー決済にする事によってどの支払い方法でも後ほどパーティーメンバーからお金を徴収(ちょうしゅう)できるのでやらないよりはやった方が得をするのである


 しかしベニは徴収するつもりは全く無く、なんとも男前な金銭の使い方をしていた


スカイ「え?払ってくれたの?ベニ」


ベニ「これくらい気にすんなよ」

 

スカイ「ありがとう、それで他のメンバーはどうするの?」


ベニ「そうだったな!すっかり忘れてた」


パルスモラ「他にもお仲間がいるですか?」


ベニ「後からになるけど、俺達みたいに半額以下とは言わないがせめて割引とかして貰えないか?」


パルスモラ「ベニ様、まだお会いしていないお仲間の皆様も半額以下の値段にいたしますよ」


ベニ「本当か?」


パルスモラ「それには配達を忘れずに行う事、コレが絶対条件でございます!」


ベニ「わかった!必ず届けるよ」


スカイ「なんとかなって良かったわね、ベニ!」


 スカイは笑顔でベニの顔を覗きこんだが、ベニはずいぶんと青白い顔をしていた


スカイ「どうしたの、顔が真っ青よ!」


ベニ「悪い………昨夜寝れてなくてなすげ~寝不足なんだ」


 たったひと晩と言うわけではなく前日もほとんど寝れて無かったせいもあって、ベニの寝不足はピークに達していた


スカイ「何?調べ物とか?」


ベニ「この街に来る為にちょっと無茶な事しただけだよ」


 言い訳としては苦しいがありのまま夢の事を赤裸々に語るのはたとえ相手が信頼のおける幼馴染みでも、ベニに取っては恥ずかしかったのだ


シャーロット「ベニお兄ちゃん、大丈夫?」


 シャーロットはベニの手を握り、心配そうに下から見上げていた


ベニ「だ、大丈夫だからな!そんなに心配そうにすんなよ『や、ヤバいってその顔は夢の中の顔とダブって見えるから俺を見上げないでくれ!』」


 ベニはシャーロットと目を合わせてしまい、(ひど)狼狽(ろうばい)していた


スカイ「なんか変ね、シャーロットちゃんの方を向かないなんて………ベニ!何があったの教えてよ!」


ベニ「…………わかったよ、ならちょっと向こうで話さないか?」


 本当は夢の事を語りたく無かったがベニは覚悟を決めるとジェスチャーで自分とスカイを指差し、店の外も指差した


スカイ「シャーロットちゃん抜きでって事ね………ぬいぐるみ達にシャーロットちゃんを頼みましょう」


ベニ「悪いなシャーロットちゃんをちょっとだけ任せていいか?」


ぬいぐるみ剣士「何か事情があるみたいだな………マスターを守るのはおれの仕事だ問題無い、行って来い!」


ベニ「すまねぇ、パルスモラさんちょっとシャーロットちゃんを見てて貰えますか?」


パルスモラ「もちろん構いません」


ベニ「サンキュー!」


 ベニとスカイは店を出て外で話しをしていると、スカイのとても大きな驚き声が店の中まで聞こえていた


シャーロット「ん?何かな………」


ぬいぐるみ剣士「マスター!ベニとスカイは今大事な話しをしているので待ちましょう」


シャーロット「うんそうだね、ねぇ僕の装備を見て!可愛いでしょう?」


ぬいぐるみ剣士「似合っていますよマスター」


ぬいぐるみ弓使い「ずいぶんと可愛らしいお姿になられて、コレからはより一層守りを固めなければ!」


ぬいぐるみ魔法使い「(さら)われるってか?確かにマスターは可愛いし、以前の我でも側に置きたいと思うな!」


パルスモラ「あなた達は喋れるのですね、驚きました」


ぬいぐるみ剣士「マスターがいなければ、おれ達はまったく動けなかったし喋れもしなかったからな感謝してもしきれないな」


パルスモラ「まるでお姫様を守る騎士達みたいですね」


ぬいぐるみ弓使い「お姫様ですか?それなら今度から姫様とお呼びしなければな!」


ぬいぐるみ剣士「またお前はそうやって、真面目に捉え過ぎるなよ!弓使い!」


ぬいぐるみ魔法使い「マスターはマスターだろ?」


 その頃、店の外でベニはスカイに夢の中のできごとを話していたら………


スカイ「な、なんて事をしてるのよ!『信じられない!夢とはいえあんな小さな子に何してるのよ!』」


ベニ「俺じゃ無くて、夢の中の俺がした事なんだよ!俺は悪くない!『やっぱりな、絶対そう言うだろ!だから話すのは嫌だったんだよ!』」


スカイ「本当にもう、男の子ってエロイんだから!『もう本当、サイテーのスケベニ!』」


ベニ「でも、夢だぞ!現実にはしてない『俺でも夢と現実の区別はつくさ!』」


スカイ「あたり前よ!現実でしたらマジものの通報案件よ!………それで………まだそのアレがその状態なの?『あ〜もうこの男は!』」


ベニ「アレって?『なんだ?アレ?何を指す事だ?』」


スカイ「女の子にそんな事を言わせる気なの!『変態ロリコン男、サイテーよ!そんな事を言えるわけないじゃない!』」


 スカイが言う()()をベニはなんとなく察した


ベニ「あ〜………今はスタンドアップはしてないが、夢の事が頭から離れなくて一睡もできなかったんだ『まさかアレとはソレの事だったのか…………』」


 ベニは視線を下に向けて見ていた、スカイが言うアレとは自分の股にあるソレの事だったのだと


スカイ「その……それは…………性的な欲求不満が原因なの?『う〜!聞きたくないよこんな事は………でも聞かないと!』」


ベニ「たぶんそうかもな………これでも俺は健全な男子高校生だぞ?そいうのに興味があるのは仕方ないだろ?『普通の男子高校生は友達とエロ話しで盛り上がるものだろ?って当溜とはそんな会話してないな』」


スカイ「…………『このままだとベニはずっと眠れずに過ごしそうね…………仕方ないわね、シャーロットちゃんの為よ!そうあたしはシャーロットちゃんを守る為にベニにしてあげるだけよ…………シャーロットちゃんのいいえ当溜の為よね』」


ベニ「なんか考え事か?『何考えてんだ?』」


 覚悟を決めたスカイは意を決し言葉にして伝えた


スカイ「あたしがしてあげる…………『うわ〜言っちゃった〜!こんなの本当のあたしじゃないからね!か、勘違いしないでよね!』」


ベニ「え?今なんて言ったんだ?『聞き違いか?今あたしがしてあげるって言わなかったか?』」


スカイ「あたしがしてあげるって言ったのよ!『な、何度も言わせるなぁ〜〜〜〜!馬鹿ベニ!アホベニ!スケベニ!』」


ベニ「してあげるって何を?『なんだ?料理か?いや、違うな………まさかな?』」


スカイ「ベニの欲求不満を解消してあげるって言ってるのよ!『もうこの鈍感男!察しなさいよ!』」


 ベニは寝て無かったせいもありほとんど頭が回って無かったが、思考がようやく動き出し顔を真っ赤にしてテンパっていた


ベニ「は?え!いや、待って!俺はそんな言って無くねぇ!何言っての?スカイさん?『それはそれで嬉しいけど、将来的に俺の告白が成功してからの予定で今は望んでないぞ!抜け駆けみたいで当溜にも悪いしな!』」


スカイ「そのままだとずっと眠れ無いでしょう?だからしてあげるって言ってるの!『当溜の為とはいえ、あたしベニに何言てんだろ?自分からしてあげるなんてまるでビッチみたいな事を言うなんて恥ずかしいよ!』」


ベニ「いやだから、眠りとソレとは関係無くないか?『俺達まだ高校生だぞ?そんな事をしたらマジもんで妊娠するかもしれないのにスカイはどうしたんだ?』」


スカイ「誰かさんが眠れ無いって言うからでしょ!『あ〜駄目よ、この流れは喧嘩するパターンよ!うんって言ってよベニ!』」


ベニ「なら聞くが、ソレはスカイが望んでする事なのか?『望んでも無いのにしたらそれこそ責任を取らないとかなりまずいし、金で解決とかいかねぇからな!本当の所どうなのか言ってくれよ!スカイ!』」


スカイ「シャーロットちゃんの為よ!『あ〜言っちゃた、あたしは本当隠し事ができないわね』」


ベニ「俺がシャーロットちゃんを夢の中でしたみたいにするとでも思っているのか?『やっぱりそうか、シャーロットちゃんの為に自らの身体で代用させようて腹か!』」


スカイ「もしも、我慢できなくなったらシャーロットちゃんに手をかけるでしょう?『もうこうなったらぶちまけちゃえ、あたし!』」


ベニ「俺はそんなクズ男じゃ無いぞ!『1人でする方法だってあるし、スカイが身体を張る意味は無いんだ!』」


スカイ「それならどうするの?『かなりの自制心ね、ベニ!それがいつまで持つっていうの?明日?それとも明後日?』」


ベニ「しばらくは俺は、ソロプレイをするよ!そしたらそんな事も起きないだろ?『ソロプレイならそんな状態でも問題無いしな、それにイリスティナを紹介すれば俺が抜けても戦闘はできるからな!ぬいぐるみ達には信頼してるとか言っといて悪いけどな………』」


スカイ「本当に大丈夫なの?これでも心配はしてるのよ?『ソロプレイってそしたらあたしとシャーロットちゃんとぬいぐるみ達しかいなくなるじゃない!抜けた戦力はどうするつもりなの?』」


ベニ「もしどうしても我慢ができなくなったら、その時は俺はスカイに土下座しててもヤラせてくれと頼むからそれまでは聞かなかった事にしてくれよ『たぶんそれは永遠に無いけどな』」


スカイ「たとえ土下座してもヤラせてなんかあげないけどねそんなクズ男とはね、わかったわこの件は保留にしとくわね『当溜以外だったらベニとならそんな関係になってもあたしは平気なのに………そんなに魅力が無いのかなあたしの身体は………』」


ベニ「心配してくれてありがとうな、スカイ『危うく抱きしめそうになっちまったが、顔でわかるさ心配してくれてるのはな!』」


スカイ「あたし達の目的の為には、どうしてもベニは必要よ!心配するのは当然でしょう『そうよ!当溜を元に戻す為にはどうしても必要なのベニが!』」


ベニ「代わりと言ってはなんだけど、即戦力の知り合いを紹介するよ!『イリスティナはどんな反応するかな、それとシャーロットちゃんも』」


スカイ「え?即戦力って!それに知り合い?『そんな知り合いがいたの?』」


ベニ「スカイもよく知っている人だから大丈夫だ!ソレとシャーロットちゃんの事情も話したから力になってくれるはずさ」


スカイ「な、何勝手に話してるのよ!部外者でしょうその人は!」


ベニ「スカイ、あの人はとてもぶっ飛んだ性格になってたけどシャーロットちゃんの為ならと凄くやる気になっていたんだ問題はありそうだが心配はしなくてもいい」


スカイ「その人は誰なの?」


ベニ「会ってからのお楽しみって事だ!」


 ベニとスカイは店の中に戻りシャーロットとぬいぐるみ達を連れて、パルスモラにお礼を言ってから店を出た


ベニ「連絡すればすぐに来てくれるはずさ、今メッセージを送ったから広場で待とうぜ!」


スカイ「まったくもう、教えてくれないんだから!」


シャーロット「ふぁっ〜あ!眠いよ」


スカイ「もう少し我慢してね」


シャーロット「うん」


 ベニ達は広場に着いたが、そこには既にベニを待っていた人物がいた


イリスティナ「ねぇ?おっせぇ!おっせぇ!おっせぇわ!あなた待つのがお仕事です!」


 イリスティナはまるでカナリアがさえずる様な高い声で歌を歌っていた


スカイ「あの【Kado(カド)】の歌を歌っている人がそうなの?しかもあんなに高い声で歌えるなんて………」


ベニ「そうだが………なんで歌ってんだよ、アイツは!」


 【Kado】とはWeb上の歌手の事で、さまざまなSNS配信をしてメジャーデビューを果たし【おっせぇわ】は瞬く間に拡散されて話題を呼んでいる今現在注目をされてるアーティストの事だ


イリスティナ「あっ!ベニくん、やっときた!メッセージを送ったら2秒で待つのが常識でしょ?」


ベニ「どんな常識だよ!2秒じゃカップ麺もできねぇわ!………あ〜コホンっ!スカイそれとシャーロットちゃん紹介するよ、この人はイリスティナって名前で職業は武闘術士だ!接近戦が得意なんだ」


 イリスティナはスカイに近寄り間近でシャーロットを覗きこんでいた


イリスティナ「うっ、うわ〜!可愛い♡この娘がシャーロットちゃん?そしてそのシャーロットちゃんを抱いているのがスカイちゃんね」


スカイ「え?スカイちゃんってどんな紹介したのよ!ベニ!」


ベニ「いや、普通にスカイって言ったが?」


シャーロット「僕、可愛いの?」


イリスティナ「もう最速最高に最大限に可愛いの♡」


ベニ「最近聴いた曲の歌詞に似たようなのがあったな………」


スカイ「な、何この人は………なんなの」


 スカイはイリスティナのぶっ飛び具合にドン引きしていた


ベニ「まぁ、発言はかなりぶっ飛んでるが実力は俺が保障するよ」


スカイ「ちょっと待って!この人と今後パーティーを組めと?ベニはソロになるんでしょ?」


ベニ「それ以外あるのか?」


スカイ「無理よ!こんなぶっ飛んだ性格の人なんて、扱えきれないわ!」


イリスティナ「とかなんとか言って本当はシャーロットちゃんと2人きりになりたいだけでしょう?」


スカイ「な!そんな事無いわよ!だいたいなんですか貴女はそんなにグイグイと内側に入って来るみたいに!」


イリスティナ「スカイちゃんはずいぶんと変わったのね、昔はあとを追いかけて「待って〜!」なんて言ってたのにね?」


スカイ「え?何、なんであたしの昔の事を知っているの?」


ベニ「スカイ、悪いなちょっとメッセージを見てくれ!」


 ベニに言われてメッセージが届いているのに気づき、確認したスカイは目を見開いた


スカイ「え、え〜〜〜!嘘そんな、本当なの?」


ベニ「マジだよ!」


 ベニの送ったメッセージにはイリスティナが茶恋であるとそう書かれていた


イリスティナ「やっほ〜!スカイちゃん、私を覚えていたかな?」


スカイ「だって、なんでどうして!って変わり過ぎよ!あたし憧れていたのにこんな変な人になってたなんて信じられないよ!」


シャーロット「どうかしたの?スカイお姉ちゃん」


スカイ「だ、大丈夫よあたしは平気で、その………そうよ!この人が変なだけよ!」


 スカイはイリスティナを指差してそう言った


イリスティナ「とても平気そうには見えないけどね?」


ベニ「あんまりからかうなよ、それじゃ俺は落ちるから後は任せたからなイリスティナ!」


スカイ「え!ちょっとベニ、待ってよ!」


 ベニはログアウトをしてゲームから姿を消してしまった


スカイ『あ、あんにゃろ〜!放置とか覚えてなさいよ!』


イリスティナ「さてと、メッセージではまだ仲間がいると書かれていたけどその仲間はここにはいないのよね?スカイちゃん」


スカイ「ちゃん付けはやめてください!イリスティナ!」


イリスティナ「ちょっと言い方が、怖いわよ?」


スカイ「ソレはすいませんね!あたしはこういう性格なのでね」


イリスティナ「スカイ………はベニくんとはどこまでの仲なの?」


スカイ「は?言ってる意味がわかりませんが?」


イリスティナ「もうヤッたの?」


 イリスティナは無遠慮にそんな事を聞いて来た


スカイ「や、ヤッてません!ってかそんな関係でもありませんよ!『ついさっきしてあげるって言ったら断られたのよ!』」


イリスティナ「リアルのベニくん、いい身体してるもんね〜さぞモテるでしょね」


スカイ「リアルのベニ?会ったのリアルで………『嘘!いつの間に?』」


イリスティナ「えぇ、それはもう会ってアレとかコレとかいろいろな物を買って貰ったわよ(大嘘)」


スカイ「な、何やってるのよ!ベニは!それか!その為の資金集めか!」


イリスティナ「資金集め?何それ」


スカイ「説明したくありません!」


イリスティナ「なんかギスギスしてるわね?」


スカイ「別に、気のせいじゃないですか?」


イリスティナ「そう、それよ!その敬語をやめてよね」


スカイ「敬語……『あたし無意識に敬語を使っていたの?』」


 スカイは以前シャーロットに敬語を使わずに砕けた口調で言えないかと、自身でそう言っていたのを思い出した


イリスティナ「別に私は構わないんだけどね、シャーロットちゃんが怯えてるよ」


 はっとしたスカイは腕に抱いていたシャーロットの顔を見たら、確かに怯えていた


スカイ「ごめんねシャーロットちゃん、怖がらせちゃったね」


シャーロット「スカイお姉ちゃん、もう怒ってない?」


スカイ「怒ってないよ、本当にごめんね『あたしは自分の感情もまともにコントロールできないの?コレじゃ紅優の事怒れないじゃないのよ!』」


 腕に抱いていたシャーロットを地面に下ろしたスカイは、シャーロットの頭を撫でながらなんとか笑顔を作って見せた


 スカイは自身の未熟さを痛感していた


 高校生とはいえ、まだまだ精神的に大人の領域には届いていなくてそれがスカイにとってはキリキリと締付けられる様な痛みを心に感じさせていた


イリスティナ「それじゃあ、気お取りなおして行きましょうか?」


スカイ「行くってどこに………」


イリスティナ「ニュービータウンよ!」


シャーロット「ここじゃだめなの?」


イリスティナ「シャーロットちゃんの知ってる人を待つ為よ」


スカイ「それならあたしやシャーロットちゃんはここのポータルをアクティベートして置いたほうがいいわね」


シャーロット「ポータル?アクティベート?何それ?」


 シャーロットはポータルもアクティベートも知らなかった、以前の当溜でもおそらくはまったく知らない事だっただろうとスカイは思った


イリスティナ「シャーロットちゃん、まずはアレを見て」


 イリスティナはシャーロットの目線に合わせてしゃがみ込んで、小さな子でも理解できるようにポータルを指差しそれからアクティベートの説明し始めた


イリスティナ「シャーロットちゃんがアレに触れるとね、ここに来た事がありますよっていう見えない印をつけるのそうするとね別の街とか村からここに来れちゃうのよ」


シャーロット「僕のどこに印がつくの?」


イリスティナ「その印は見えないからどことは言えないわね」


シャーロット「ここに来たい時は、その印は誰かに見せるの?」


イリスティナ「誰かに見せなくてもここには来れる様になるのよ」


シャーロット「凄いね!」


イリスティナ「ね〜!凄いよね」


スカイ「じょ、上手ですね………あやすのが」


イリスティナ「そう?それとまた敬語になっているよ」


スカイ「あっ、ごめん!」


イリスティナ「別に怒って無いから謝らなくてもいいよ」


スカイ「あやす為の何かコツとかあるの?」


イリスティナ「私はね将来は保育士になろうと思うんだ」


スカイ「保育士?なんでまたそんな大変そうな職業になりたいの?」


イリスティナ「昔の事は覚えているよね?」


スカイ「少子化でほとんどの子供がいなかったのは覚えているけど、それと何の関係があるの?」


イリスティナ「同年代の子供も年下の子供もいなくて、普通の子供はどんな感じなのかが知りたくなって保育士を目指したのよ」


スカイ「でもわざわざ保育士になろうとしなくても、子供と接する事はどこにでもあるでしょう?」


イリスティナ「そうなんだけど私はね、ある男の子しか見えて無くて他の子供がどんな感じだったかはあんまり覚えて無いのよ」


スカイ「ある男の子?………まさか、嘘!そうなの!」


 スカイは気づいてしまった、イリスティナが見ていた男の子の正体を………


スカイ『イリスティナが見ていた男の子は…………当溜ね!間違いなくそうよ、それとあたし当溜の事が好きなんだ………今確信したよ………恋のライバルが現れたからかな?』


 萃香は自身が当溜の事を恋愛感情で見ていたのだと認識した瞬間は同時に【イリスティナ=茶恋】が恋のライバルとして認めた瞬間でもあった


イリスティナ「だからね、絶対にシャーロットちゃんを元に戻したいのよ!それでその後は………きゃ〜!言えないわ!」


 イリスティナはやはり何かぶっ飛んだ発想を頭の中でしているようで、手で顔を覆っていやいやと首を振っていた


スカイ「でもそれとその保育士になりたい事と、どんな関係があるの?『恋のライバルの事は知っておかないとね』」


イリスティナ「保育士になれないならいっその事、お嫁さんになって子供を自分で0から育てるしか無いかなって思って!(そそ)るでしょ?これは!」


スカイ「へ?何が唆るの?子供を育てる事よね?まさかそっちじゃないの?『こ、この人凄くヤバいわ!手強い相手よ!』」


イリスティナ「グヘヘヘっ唆るぜ!って感じじゃ無くて、ふふふっ唆るわねって感じよ!」


スカイ「言い方を変えただけで、どっちもどっちよ!『結局そっち系なの?』」


イリスティナ「あれれ~おかしいな?ウケると思ったのに………」


スカイ「某名探偵に怒られるわよ!ソレ!」


 なんとか打ち解けたスカイとイリスティナはお互いにに笑いあった


スカイ「まったくベニのせいで飛んだ事になったわね『あたしは当溜が好きなんだって事も改めてわかったし、恋のライバルも現れたし………絶対にこの人には負けたく無いなぁ〜』」


イリスティナ「ベニくんは悪くないよ、私がややっこしくしているだけだからね!」


スカイ「ソレ自覚してるならやめた方がよくない?『まったくこの人は!』」


イリスティナ「もうどうにも止まらなくてね」


スカイ「なんかソレは、昭和の歌の歌詞にもあったわね」


シャーロット「前の街に戻らないの?」


イリスティナ「行こうか、無限の冒険(かなた)へ!」


スカイ「ベニが疲れるのも無理ないわね『この人とても厄介だわ』」


 とにかくアクティベートを済ませたスカイとシャーロットはイリスティナと共にニュービータウンに戻る事になった





       一方その頃


 謎の物体と同じ様な構造の建物なのか宇宙船なのかわからないが、そこにある人物が帰還していた


???「お帰りなさいませ!マキシリオン様」


マキシリオン「あぁ、何か変わった事は無かったか?」


???「えぇ、もちろん例の()()も滞りなく全ては順調に計画を進めていますのでご安心を………ところであの3人はどうなさったのですか?」


マキシリオン「あの3人?誰の事だ!」


???「マキシリオン様の力になりたいと懇願(こんがん)して部下とした、あの3人の地球人達でございますが?」


マキシリオン「あ〜そいつ等は使えん!手を抜いてでも勝てる相手に負けた愚か者共など捨て置け!」


???「し、失礼いたしました」


 例の謎の物体の中で遭遇した『黒鎧とシャーロットと戦った大男』と『ベニとムーが戦った松』と『スカイとヒミコが戦った蛇女』この3人は地球人だったのだ


 彼らが今どこにいるかは誰も知らなかった


マキシリオン「奪って来たぞ、コレが記憶が入った核だ!」


 マキシリオンは【前髪当溜の記憶】が入っている核を部下に手渡して、玉座の様な椅子に座った


???「コレですか………」


マキシリオン「どうした、ソレが無ければ俺様達の惑星は元には戻せ無いんだぞ!」


???「実はその事でお話しがありまして………」


 部下の女性は恐る恐るマキシリオンにある事実を話し始めた


マキシリオン「な、なんだと!では1人の記憶を奪っただけでは駄目だと言うのか!」


 激怒したマキシリオンは自身が座る玉座の様な椅子のひじ掛けを拳でひしゃげるほど強く叩いた


???「お、落ちついてください!マキシリオン様!」


 部下の女性の話しではたった1人の記憶を奪っただけでは世界の再構築が難しくなってしまったと言う報告だった


 ゲーム世界と現実世界が融合しつつある今の状態は想定外で、パワーが不足してしまい上手く再構築はできない自体に(おちい)り惑星はできてもその肝心の惑星に住む住人を再構築する事ができないのだ


 そしてそれには他の幼女化したプレイヤーの記憶も奪わなればならなくなったという事だった


マキシリオン「待機している騎士は何人いる?」


???「はい!現在待機中の騎士様は3名ほどおられますが、即座に動ける騎士様は2名でございます」


マキシリオン「では、その2名の騎士に命じておけ!幼女化したプレイヤーの記憶を奪って来いと!」


???「騎士様達に地球にある児童養護施設を襲わせるのですか?」


 幼女になったプレイヤーが収容されている児童養護施設の場所は既に把握されていて、万が一その中で精神の限界突破を果たした幼女がいればすぐさま記憶を奪える様に準備に抜かりは無かったのだ


マキシリオン「それ以外に方法があるのか?」


???「わ、わかりました!そうお伝えしておきます」


マキシリオン「しかし、もう1人の騎士はどうした!」


???「ゲーム世界を放浪すると言い残して出て行ってしまわれました、お引き留める事ができずに申し訳ありません」


マキシリオン「まぁ、いいさ!いずれソイツにもちゃんと働いてもらうからな!」


???「あのマキシリオン様!恐れながら、もっと大事な事が発覚しまして………」


マキシリオン「なんだ、言ってみろ!」


???「マキシリオン様は我らの姫様をご存知でございますか?」


マキシリオン「姫様?惑星と共に消滅してゲームに取り込まれたのでは無いのか?」


???「その姫様が惑星の崩壊前に転生をしていた事が判明いたしまして、その転生先がこの地球なのです」


マキシリオン「な、そんな馬鹿な!その転生後の姫様は何処(いずこ)に?」


???「はい、マキシリオン様も既にお会いしています【前髪当溜】と言う地球人の男性に転生なされていると判明いたしました」


マキシリオン「前髪当溜!そうか、そうなのか!フハハハハハッ!いいゾ!運が俺様達に向いているな!前髪当溜か!ならば攫って来ようぞ!我らが姫様には是が非でも戻って貰わなければな!」


???「マキシリオン様、姫様をよろしくお願いします」


マキシリオン「任せておけ!待っていろよシャーロット!今度はその身体ごといただくとしよう」


 またしてもシャーロットはマキシリオンに狙われる立場となっていた、シャーロットの中には転生をしたお姫様が今もなお魂の内側に自ら記憶や存在などを封印をして復活の時を待っているのだ


 惑星の崩壊前の転生という事は正しい手順を取っては無かったので、魂は流れに流れて地球までやって来てしまっていた


 マキシリオン達の惑星が崩壊したのはいまから数億万年前であり、お姫様は地球で何度も生まれ変わっていた事になる


 マキシリオン達の科学技術がとても発展していて現在の地球よりも遥かに高度な文明を持っていた、その為ゲーム世界に変えられた原因を突き止めるのは非常に簡単だった


 また時間自体の巻き戻しの技術も持っていたので遥か遠くに離れた地球にやって来た時に、惑星そのものにアクセスしていた者達のいる時間まで巻き戻してGM達を捉えては真実を吐かせていた


 復讐とは、たとえ何億万年経とうとも消えはしないのだとマキシリオンの行動が物語っていた



おにゅうの装備を手に入れたシャーロットちゃんは、とてもご機嫌でしたね

そして悪の組織のマキシリオンの方でも動きがあり、またしてもシャーロットちゃんは狙われる立場になってしまいました

次回はお兄ちゃんです

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素人の作品です   


           福望華雫でした

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