ログイン14 オフ会をやってみました (前編)
貧乏高校生 当溜。格安ボロアパートに住みバイトをして生活費を稼ぐのが彼の毎日だった。明日から学校が夏休みに入る事で浮かれていた時に偶然おもちゃ屋で最新のVRヘッドギアを見つけ購入した。さっそくVRゲームを始めたまでは良かったのだが、本来なら無いはずのVRヘッドギアのホームにログインを果たした。彼は大嘘をつくAIの言う事を真に受け全てにYESと応えてしまった。身体構造スキャンを許し、問題箇所のリペアとしてハルモニア光なる謎の光を実際の身体に照射された。問題は解決したのだとAIに唆されてゲーム世界に送り出されてしまう。しかしこの事が当溜の生活をガラリと変えてしまう重要な出来事だった。ログインしたゲーム内でも問題が発生した。選択出来る性別が女性のみで男性の選択は不可能だった。なんとか女性アバターを男性的な姿に作る事に成功したが、間違えてランダム作成を押してしまい完成したアバターは幼女だった。
♤守ってください幼女な僕を♡
縮めて『守幼』をよろしくお願いします
誰かが他の誰の替わりにはなれない、そんなあたりまえの事に僕は元の自分を思い出していた
シャーロット『僕の替わりは誰もいないから、高校生の僕はもういないし前髪当溜は存在自体が無くなったんだ……………そして今の僕は幼女で、偽名の【小玉あゆむ】もしくは【シャーロット】としてしか存在できないんだなぁ』
内心、そんな事を考えながら僕は笑っていた
ムー「なんかスッキリした気分ね」
シャーロット「こんなに笑ったのは久しぶりだよ」
ヒミコ「沢山笑ったからじゃな、笑う門には福来るって言うからムーに福が来たのじゃ!」
シャーロット「笑う門には福来るか………ヒミコちゃん、よく知ってるねそんなことわざ」
ヒミコ「コレはアーサーの口癖なのじゃ!」
ムー「確かにアーサーさんって、あんなに怖そうな顔してるのに顔は笑っている事が多いわよね」
ゲーム内ではアバターは自分で作成するかランダム作成のどちらかなので、わざわざあんな怖そうな顔を作るのはどういった心境なのかと疑問に思うところだった
シャーロット「僕は初めてアーサーを見た時、ヤ○ザだと思ったけどね」
ムー「あ〜、確かにあの顔はそっち系ね」
ヒミコ「ならノブナガはどうなのじゃ?」
シャーロット「チ○ピラかな?」
ムー「ふふっ、言えてるそんな感じね」
ヒミコ「では妾は?どう見えたのじゃ?」
シャーロット「え〜と、ヤ○ザとチ○ピラに追いかけまわされている、ヤ○ザの親分のペットかな?」
ムー「そのネコ耳と尻尾でそう見えたのね」
シャーロット「うん」
ヒミコ「妾はネコではないのじゃ!【ウェアタイガー】という種族なのじゃ!そしてネコは嫌いなのじゃ」
シャーロット「ウェアタイガー?でも模様はネコっぽいよね?」
ヒミコ「稀に出るレア種族と言うらしいのじゃ!」
ムー「レア種族?そういえばシャーロットちゃんもなんか種族が違う見たいね」
シャーロット「僕の種族は【エルフ】だよ」
ヒミコ「妾もエルフの方が良かったのじゃ!」
シャーロット「でも、エルフは不人気で選ぶ人がいないらしいよ」
ムー「それなのに選んだの?」
シャーロット「僕のはランダム作成でこうなっちゃったんだよ!望んでこの姿になったわけじゃないよ」
ヒミコ「妾もそのランダム作成なのじゃ」
ムー「わたしは自分で作成したわ」
僕たちのクランには種族が人間のムーちゃんとレア種族ウェアタイガーのヒミコちゃんと不人気のエルフの僕という、物語とかならなんかありえない組み合わせだった
ムー「職業もみんな違くて種族もばらばら、なのにこんなに仲良くなれたのはやっぱりシャーロットちゃんのおかげかもね」
ヒミコ「妾がシャーロットとぶつからなければ出会わなかったのじゃ!つまり妾のおかげでもあるのじゃな」
シャーロット「僕は誰のおかげでも無いと思うよ、だってムーちゃんとヒミコちゃんはもう僕にとっては大事な友だちだからね!」
ムー「大事な友だちか………『わたしにはそんな事を言ってくれる友だちは、今までいなかったわね』」
ヒミコ「だったらやっぱり、妾のおかげなのじゃ!」
ムー「ヒミコちゃんはそういう所は直した方がいいわよ」
ヒミコ「そういう所とはどういう所なのじゃ!」
ムー「発言が自分勝手な所よ!」
ヒミコ「なにを〜!表出るのじゃ!」
シャーロット「ヒミコちゃん待って!クランルール【5つ目の死闘は禁止と6つ目の独断で行動しない】のこの2つに当てはまる事を、今ヒミコちゃんはやろうとしているんだよ?」
ヒミコ「うぬっ、そうじゃった………うっかりルールを破る所だったのじゃ………ムーそれにシャーロットもすまんのじゃ」
ムー「いいわよ、気にしてないから『あのヒミコちゃんがおとなしくなったなんて………シャーロットはやっぱりリーダーに向いているのね』」
シャーロット「わかってくれればいいよ、それよりこの後はもうやる事が無いけどそれぞれログアウトする?」
ヒミコ「そうじゃな、他にやる事も無いのじゃ」
ムー「それなら、今決めておくわね」
シャーロット「なにを決めるの?」
ムー「オフ会よ!」
ムーちゃんは現実で僕やヒミコちゃんと会うために、オフ会をやろうと言い出した
ムー「わたしとシャーロットちゃんはすぐ会えるけど、ヒミコちゃんはどこに住んでいるの?」
ヒミコ「なぬ、ムーとシャーロットは近い所に住んでいるのじゃな?」
シャーロット「そうだね、凄く近い所だよ」
ヒミコ「妾もムーとシャーロットの近くに住みたいのじゃ」
ムー「だから、どこに住んでいるのか聞いているのよ」
ヒミコ「妾が住んでいるのは碧伊良尾町の港の近くなのじゃ」
ムー「碧伊良尾町どこの県かしら?」
シャーロット「碧伊良尾町はたぶん、僕たちと同じ県だよ」
ヒミコ「お主らはどこに住んでおるのじゃ?」
ムー「わたしとシャーロットちゃんは千星空市の同じマンションに住んでいるわよ」
ヒミコ「同じマンションとな!それならご近所さんなのじゃな?」
シャーロット「僕がお世話になっている御宅は、ムーちゃんが住んでいる所よりもだいぶ上だけどね」
ムー「それにしてもどうしてわかったの?シャーロットちゃん」
シャーロット「さっきアーサーにメッセージを送ってみたら返事が返って来て、僕の住んでいる所を教えたら同じ県だって返って来たんだよ」
碧伊良尾町と千星空市は同じ県にあり、場所は関東地方のそこら辺
ヒミコ「アーサーはログインしていないはずじゃが?」
シャーロット「ゲームの内側と外側でメッセージのやり取りはできるよ?スマホがあればだけどね」
ヒミコ「なんと、知らなかったのじゃ!」
ムー「同じ県だって教えてくれたなら会えないかを聞いてみてくれる?」
シャーロット「待ってね、今聞いてみるよ」
メッセージはゲームの外側にいるアーサーのスマホに送られ、しばらくしてからメッセージが返って来た
シャーロット「それだとアーサーたちは漁を休まないとならないから無理だって………残念だね」
ムー「それなら、わたしたち2人で碧伊良尾町に行ければいいのね」
シャーロット「ごめんね、それも無理そうなんだ」
ムー「どうして無理なの?」
シャーロット「ムーちゃんは僕が今、誰のお家にいるか知ってるよね?」
ムー「……………そうね、黙って出ては行けないもんね」
ヒミコ「何か訳ありのようじゃな?」
シャーロット「どうしても会いたいなら………たぶんだけど会えるかもしれないけど、ムーちゃん次第かな?」
ムー「わたし次第?何を言っているの」
シャーロット「ベニに頼めば連れてってくれるかもしれないって事なんだけど………」
ムー「ベニさんに頼むって、もしかして知り合いなのね」
シャーロット「うん、もちろんスカイもたぶんだけどついて来ると思うけどね」
ムー「スカイさんか………『萃香さんとベニさんね、あの2人は付き合っているのかな?』」
ヒミコ「話しがよくわからんのじゃ!」
シャーロット「僕とムーちゃん、それからベニとスカイがヒミコちゃんに会いに行けるかもしれないって事を話していたんだよ」
ヒミコ「それなら遠慮しないで来るのじゃ!魚しか振る舞えないのが残念なのじゃが、歓迎するのじゃ!」
ムー「だったらお願いしようかな、もちろんお子様ランチは現地で食べれそうなお店を調べておくわね」
シャーロット「そうと決まったら、ログアウトしたらさっそくベニに頼んでみるよ」
ムー「お願いね、それと連絡はどうするの?」
シャーロット「それは問題ないよ、このゲームのメッセージで連絡すればアーサーにいつ行ってもいいのかとか聞けるからね」
ムー「わたしとシャーロットちゃんはREONでやり取りできるから確かに問題ないわね」
ヒミコ「妾はスマホ持ってないのじゃ!」
シャーロット「それなら僕に考えがあるから、なんとかできるかも」
ムー「考えって?」
シャーロット「それは秘密かな」
お店を出た僕たち3人は同じ宿屋でそれぞれ部屋を取りログアウトをした
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AI〘あら、もういいのね〙
シャーロット「うん」
AI〘じゃあ、ログアウトする?〙
シャーロット「うん、ログアウトしたい」
AI〘それならまたね、シャーロットちゃん〙
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ログアウトをした僕は、ヘッドギアを頭から取り外してスマホを手にしてREONで紅優にメッセージを入れた
当溜「コレで紅優から折り返しメッセージが来るはず………ゲームの中で沢山食べたのになんかお腹空いたなぁ、あっそうだお菓子があったんだった」
僕はキッチンに行き、お菓子を取ってリビングで食べた
当溜「ラッコのマーチは美味しいな、そうだおまけ付きのウエハースもあったんだ」
カードのおまけ付きウエハースを3つとも開けて、カードを確認してみた
当溜「あれ?コレなんかキラキラしてる、いいカードなのかな?」
3枚のうち1枚がとてもキラキラとしていて、おそらくはレアなカードを引き当てたのだと思いスマホで調べたら………
当溜「え?何この値段は………壱十百千万億?」
あり得ないレアカードを僕は引き当ててしまった
当溜「は?億って、カード1枚だよ?」
もしも売るとしたら金額は2億8000万円というとんでもない額で、さらにオークションにかけたら倍以上になると書かれていた
当溜「どうしよう、このカード………持っているのがちょっと怖いよ!」
カードはビニールに包まれていたので開けずにそのままにして、自室へ戻り机の引き出しの中にそっとしまった
当溜「とりあえず保留にしておこう」
リビングに戻って中身がなくなったお菓子の袋をゴミ箱に捨てて、紅優の返事を待っていたら萃香が帰って来た
萃香「ただいま〜!」
当溜「お帰り」
萃香は大荷物を持って帰って来て、その後ろには紅優がいた
当溜「あれ?紅優も一緒だったんだ………」
紅優「俺に頼み事があるんだろ、さっきのメッセージの件をもっと詳しく聞かせてくれ」
僕はヒミコちゃんの住んでいる所に行きたいのだと紅優と萃香に詳しく話した
紅優「碧伊良尾町か………千星空市からはだいぶ遠いしな、子供2人で行くよりは確かに俺に頼った方が早いか」
萃香「ムーちゃんも一緒なのよね?」
当溜「そこは問題無いよ、ムーちゃんは萃香も知ってる人物だからね」
萃香「あたしが知ってる人物?………心当たりがあるとしたら真央ちゃん?」
当溜「よくわかったね」
紅優「真央ちゃんって、このマンションに住んでいて当溜と友だちになった娘だよな?」
萃香「なるほどね、だからなんとなく似た雰囲気だったのね」
紅優「出かけるとなると、その真央ちゃんの親に話しを通さないとな」
当溜「真央ちゃんは自分で親に話してみるって言ってたよ」
萃香「それでだめなら、あたしが交渉するしかないわね」
当溜「紅優、連れてってくれる?」
僕は迷子の幼女から学んだ仕草と表情で、今現在できるかぎりの幼女の振り攻撃を紅優に仕掛けてみた
紅優「あぁ、連れて行ってやるよ!『コレはまずいな………も、持ち帰りてぇ!可愛い過ぎるって!』」
紅優は連れて行ってくれる事を約束してくれたが、後ろを向いてしまった
当溜「やった〜!約束だからね!」
僕が喜んではしゃいでいると、萃香はじ〜と見つめていた
萃香「喜んでいる所悪いんだけど、真央ちゃんは連絡できるとしてもヒミコちゃんにはどうやって伝えるの?」
当溜「それはゲームでメッセージを送れば解決できるよ」
紅優「ヒミコちゃんはスマホ持って無いのか?」
当溜「そうだった、ねぇ紅優お願い!ヒミコちゃんにスマホを買ってあげて!」
僕は幼女の振り攻撃パート2を仕掛けた
紅優「良しわかった!買ってやろう『駄目だ!これじゃ当溜がしてる事はパパ活だって教えてやりたいが、つい可愛いさのあまり甘やかしてしまうな』」
萃香「ちょっと紅優!そんな即決していいの?」
紅優「いや、連絡手段は必要だろ?」
萃香「そうだけど、スマホ本体代だけなのよね?」
紅優「そうだな、月々の支払いは保護者に………そうか保護者の許可がいるな!」
萃香「やっぱり忘れてたのね、どうするの?」
紅優「そうだな保護者の許可が取れたら買うと言う事になるな」
萃香「それでいい当溜?」
当溜「もちろん、大丈夫だよ!ヒミコちゃんの保護者はアーサーとノブナガだからね」
紅優「アーサーとノブナガ?誰だそれは」
当溜「紅優も萃香も見た事あるよ、ヒミコちゃんと一緒にいた男性2人だからね」
萃香「もしかして、ヒミコちゃんを姉さんって呼んでた人?」
当溜「うん、そうだよ」
紅優「その2人とも知り合いになったのか?」
当溜「僕の数少ないフレンドだよ」
萃香「他にもフレンドになった人はいるの?」
当溜「う〜んと、グライトさんとトランカーさんそれからギルドマスターと受付嬢のお姉さん………あと忘れちゃいけない黒鎧もフレンドだよ!」
萃香「………黒鎧ね」
今の当溜にとってはとても危険な【ワード】の黒鎧の名前が出た事で、萃香はなるべくそちらの思考にならない様にしなければならなかった
萃香『恋愛脳のパターンにならないでよね、当溜!』
紅優「すぐに行くのか?」
当溜「そうだけど………何かあるの?」
紅優「まぁ、ちょっとないろいろやらなければならないといけない事があるからな」
萃香「はい、コレでこの話しは終わりね!あたしは晩御飯の用意をするから、紅優は当溜と遊んであげてね」
紅優「手伝わなくていいのか?」
萃香「ごめんね、あたしは料理は1人でやりたいのよ!今日はご馳走してあげるから頼んだわよ………もちろん後かたづけは手伝ってもらうけどね」
紅優「わかった、良し当溜何して遊ぶ?」
僕はぬいぐるみをかき集め、何体かを紅優に預けて役を任せてみたが………
当溜『むむむっ!やるな紅優、僕のママゴトにちゃんと合わせる高等テクニックを持っているなんて!』
それはそうと、紅優と萃香は明らかに僕に何かを隠しているようだった
晩御飯ができたので紅優も一緒に食べ、前回みたいな喧嘩はなく洗い物も終わったので紅優は帰って行った
僕と萃香はいつも通りお風呂に入り、それぞれの自室で眠りについた
翌朝、僕は萃香に起こされた
当溜「おはよう萃香、今日は早いね」
萃香「もう既に紅優も来てるわよ」
当溜「なんで紅優がもう来てるの?」
萃香「起きてすぐで悪いんだけど、真央ちゃんに連絡してくれる?」
当溜「真央ちゃんに?もしかして、今日行くの?」
紅優「そういう事だ!」
紅優が僕の自室に入って来たので、思わず布団の中に隠れてしまった
萃香「ほら、紅優は出て行って!当溜を着替えさせるから」
紅優「へいへい、俺がいたら着替えできないもんな!」
萃香は僕の着替えを既に用意していた
当溜「え〜と、「紅優にお願いしたら今日行く事になったけど、行けるかな?」これで返事が来るのを待てばいいよね」
真央ちゃんからの返事が返って来た
当溜「もう返事が来た「ママから許可は得ているからいつでも行けるよ」か、それなら「迎えに行くから待っててね」っとこれでよし!」
そして僕は急いでヘッドギアを被り、ゲームにログインした
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AIとのやり取りもあったが急いでいると伝えるとすぐにゲームにログインできた
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ぬいぐるみ剣士「お帰りなさいませ!マスター」
シャーロット「ごめん、今日は連絡のために戻って来たからすぐにログアウトしちゃうんだ」
ぬいぐるみ弓使い「ではすぐにログアウトをするのですか?」
シャーロット「連絡が済んだらね」
僕は急いでアーサーにメッセージを送ったら、わりと早めに返事が返って来た
シャーロット「わかってくれたかな?「了解した、今は海の上だが戻ったら姉さんに伝えておく」か、大丈夫みたいだ」
ぬいぐるみ魔法使い「もうログアウトするのか、マスター?『やっぱり慣れねぇな、こんなちんちくりんをマスターと呼ぶのは!』」
シャーロット「ごめんね、もう行かないと」
ぬいぐるみ剣士「どこに行くのかはわかりませんが、おれ達はマスターの帰りを待ちます」
ぬいぐるみ弓使い「そちらには我々はいなくても、心は常にマスターと共にあります」
ぬいぐるみ魔法使い「我も言わないと駄目か?『自由に動けるのはいいが、コイツ等に強制労働させられるからな………まだこのちんちくりんがいた方がましだな』」
シャーロット「無理に言わなくてもいいよ、でもありがとう………みんなも一緒に行けたら良かったのになぁ〜」
その時だったぬいぐるみ達が輝き出してそれぞれのぬいぐるみから丸い玉のような物が僕の眼前に並び、ぬいぐるみたちはまるで抜け殻の様にその場に倒れた
赤玉(剣士)「何だ?どうなっているんだ?」
緑玉(弓使い)「これは、ぬいぐるみから抜け出ているのか?」
青玉(魔法使い)「我もかよ!」
玉はそれぞれ赤の玉が剣士で緑の玉が弓使いそして青の玉が魔法使いだった、そして玉は僕のアバターの中に入ってしまった
シャーロット「え〜〜〜!入っちゃった………」
ぬいぐるみ達はその場に倒れたままで動く気配はなく、僕の中に入ってしまった玉の声も聴こえない
シャーロット「ごめん!後でなんとかするからね」
僕はそう言ってログアウトをした
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当溜「とは言ったけど………」
崖の下で紅優を治した時みたいにこの現実でもスキルが使えるかもと思い、部屋にあったぬいぐるみにスキル【ぬいぐるみ魂込め】を使ってみた
当溜「スキル、ぬいぐるみ魂込め!」
スキルの効果が発動してぬいぐるみに魂が宿る
ぬいぐるみ「ここは?動けるみたいだな………剣が無いな、マスターこれはどうなっているのですか?」
当溜「凄い!成功したよ」
僕は他のぬいぐるみにもスキル【ぬいぐるみ魂込め】を使ってみた
ゲーム内では弓使いもこちらの世界ではメイドに、魔法使いは手品師になった
ちなみにぬいぐるみ剣士は執事になっている
ぬいぐるみ執事「マスターはおれ達が守ります」
ぬいぐるみメイド「しかしこちらの世界でもぬいぐるみで動けるとは………マスターは本当に規格外ですね」
ぬいぐるみ手品師「魔法使いが手品師ってもっとましなぬいぐるみはなかったのか、マスター?『ってよく見ると沢山のぬいぐるみがあるな………まだ手品師の方がましみたいだな』」
萃香と紅優の元に僕はぬいぐるみ達を抱えて行った
萃香「え〜と当溜?そのぬいぐるみを持って行くつもりなの?」
当溜「うん」
紅優「まぁ、いいんじゃないか」
ぬいぐるみ執事「その口調はベニか、そしてこっちはスカイだな?」
萃香&紅優「「ぬ、ぬいぐるみが喋った!」」
萃香と紅優は驚いてほぼ同時に同じ言葉を発した
当溜「そうだよ、剣士と弓使いと魔法使いを動けるようにしてあげたんだよ」
紅優「待て待て待てって!なんでそんな事ができると思った!」
萃香「え?コレ現実よね………」
ぬいぐるみメイド「もちろん現実ですが?」
ぬいぐるみ手品師「まぁ、普通に考えたら混乱するよな『我も絶賛混乱中だ!』」
当溜「連れて行きたいんだけど、だめかな?」
紅優「とりあえず、ぬいぐるみ達はなるべく喋らないでくれよな!俺や萃香はともかくこの世界ではぬいぐるみは喋ったり動いたりはしないからな!『っても、なんだこの状況は!ゲームの存在を現実に連れて来たって事か?どうなってるんだ………』」
萃香「もしも誰かに見られたら大騒ぎになるわね『男子高校生だった当溜が幼女になってるくらいだからね、こんな事もたぶん普通なのよ………もの凄っ〜くあり得ないけどね!』」
ぬいぐるみ執事「なるほどな、だがマスターのピンチの時は迷わず動くぞ!」
紅優「そん時は頼む!『なるべくならそんな事がなければいいが………』」
ぬいぐるみ執事「あぁ、任せろ!」
ぬいぐるみメイド「ところでお2人をなんと呼べば?」
萃香「あたしは萃香よ」
紅優「俺に紅優だ!」
ぬいぐるみ執事「紅優に萃香だな」
ぬいぐるみ手品師「どうでもいいが、我達はお互いになんて呼ぶんだ?」
ぬいぐるみメイド「この服はメイドか?」
ぬいぐるみ執事「ならそのままメイドだな、おれは………何だ?」
萃香「そのぬいぐるみは執事ね」
ぬいぐるみ手品師「ならひつじだ!」
ぬいぐるみ執事「ひつじじゃない執事だ!そう言うお前は手品師だな」
ぬいぐるみ手品師「我はすぐに理解していたが?」
当溜「そうだ、こっちでは僕は2つの名前があるからね」
萃香「ぬいぐるみ達にはあまり関係は無いけどね」
ぬいぐるみ執事「2つの名前ですか?」
当溜「今は当溜で、この家を出たらあゆむになるんだよ」
ぬいぐるみメイド「2つの名前を使う理由を聞いてもよろしいでしょうか?」
紅優「いろいろと複雑でな、当溜が本来の本名であゆむは偽名なんだよ!これ以上は詳しくは言えないがそれで納得してくれ!」
ぬいぐるみ執事「訳ありと言う事か………わかった」
萃香「そのままだと大変そうね」
萃香はそう言うと倉庫代わりにしている部屋に行き、すぐに戻って来た
萃香「この中に入れれば楽よ」
そう言って僕に渡して来た物は可愛らしいリュックサックだった
当溜「ありがとう萃香!これなら抱えなくてすむよ」
そして僕たちは真央ちゃんを迎えに行った
萃香「麻美さん、朝早くにすいません」
麻美「いいわよ、なかなか外に出ない真央がお出かけしたいなんて言ってきたからびっくりはしたけどね」
紅優「俺は大森紅優と言いますちょっとキャンプも兼ねているので、2〜3日ほど娘さんを責任を持ってお預かりします」
萃香「その言い方だと将来娘さんをくださいって言っているようね」
紅優「はぁ?どこがだよ!」
当溜「2人共喧嘩してる場合じゃ無いよ!」
萃香「そうだった、他所の御宅で喧嘩なんて駄目よね」
紅優「つい売り言葉に買い言葉になっちまうな」
真央「流石あゆむちゃんね」
麻美「それじゃ真央、行ってらっしゃい」
真央「うん、行って来ます」
麻美「萃香さんと紅優さんそれからあゆむちゃん、うちの真央をよろしくお願いしますね」
萃香「はい、麻美さんはゆっくり羽を伸ばしてください」
御紫家を後にした僕たちは運転手の待つ地下駐車場に向かった
紅優「今日の車はキャンピングカーだぞ!」
当溜「キャンピングカーか、ヒミコちゃんも泊まれるかな」
紅優「あともう1人くらいなら余裕で入れるし、問題無い」
真央「キャンピングカーでお泊り………お風呂とかはどうするのですか?」
紅優「近場に温泉の施設があるからそこに行ってさっぱりできるよ」
真央「ちゃんと考えてあるのですね」
萃香「たまに抜けている所もあるけど、紅優が計画するお出かけはハズレはないわね」
紅優「それって褒めてんのか?」
地下駐車場では大きなキャンピングカーと紅優のお抱え運転手が待っていた
キャンピングカーはマイクロバスほどの大きさで、おそらくは特注の仕様である事は見た目でわかった
地下駐車場の出入り口を通れる高さで横幅は少し広め、内部が見えない様に窓の内側にはカーテンが取り付けられてあり閉めてあったので内装は見えなかった
運転手「お待ちしておりました」
運転手の格好はいつものスーツ姿ではなく、休日でゴルフなどに出かけるお父さんみたいなポロシャツと履いてて楽そうなズボンとハンチング帽それからスニーカーを履いていた
紅優「さぁ、みんな乗った乗った」
紅優がドアを開けて僕たちをキャンピングカーの中に入るように促した
萃香「結構広いのね」
真央「キャンピングカー初めて乗ったわ」
当溜「凄いな、僕ここに住めそうだよ!」
紅優「ははっ、確かにこれなら住めそうだな」
内装はキッチンが車の後部付近にあり後ろのドアを開ければすぐ外に料理を運べてアウトドアにはぴったりの構造だった、運転席のすぐそばには左右にイスとテーブルがあり8人ほど座れそうだ
さらにキャンピングカー内部にあるスイッチを操作をすれば天井がせり上がり、2階部分が出現して夜空を見ながら寝る事も可能な仕様になっているのだと紅優が言っていた
その他にはソファーが2つと、キャンピングカーにしては珍しいほど大きな冷蔵庫と電子レンジがあり、出入り口付近の天井からは横幅が大きなモニターが吊り下げてあってTVも見れるようになっていた
運転手「では、出発しますぞ!」
紅優「途中で休憩をしたいから、ドライブインか道の駅あたりに寄ってくれ」
運転手「かしこまりました」
真央「ひょっとして紅優さんはお坊ちゃんなんですか?」
萃香「そうよ、凄いお金持ちだから今が狙いめね」
紅優「何の狙いめなんだよ!」
当溜「玉の輿ってやつじゃないの?」
萃香「あゆむちゃん、正解!」
真央「えっ、でも萃香さんと紅優さんは付き合っているんでしょう?」
萃香「真央ちゃんはそう思っていたのね………あたしと紅優は付き合っては無いわ」
真央「でも凄く仲が良かったから………」
紅優「幼馴染みだからだな、仲が良く見えるのは『まぁ、本当は当溜も入るから3人だけどな』」
途中でドライブインに寄ってトイレを済ませたり、ヒミコちゃん達へのお土産やキャンプ用の食材などの購入をした
紅優「そうだ、大切な事忘れてたな」
当溜「大切な事?」
萃香「あゆむちゃんの定期検診があるから、紅優とあたしそれからあゆむちゃんは向こうに着いたら病院に向かうのよ」
真央「あゆむちゃんは何か病気を抱えているの?」
紅優「あゆむちゃんの両親が定期検診はしろってうるさく言ってくるらしくてな、病院はどこでもいいわけじゃ無くて大きな病院って指定付きなんだよ」
真央「これから向かう所には大きな病院があるのですか?」
萃香「あるわよ」
僕が知らないあいだに、なんかよくわからない展開になっていた
当溜「病院?」
紅優「すまないな、黙ってたわけじゃ無くてタイミングがなかったんだ」
萃香「真央ちゃんは向こうに着いたら、え〜とアーサーさんとノブナガさんとヒミコちゃんだったわね!その3人と待ってて欲しいのよ」
真央「それは構いませんけど………わたしは付いて行ったら駄目なんですか?」
紅優「病院よりはお友だちと待ってて欲しいんだが………」
真央「すいません、わがまま言いましたね!わたしはヒミコちゃん達と待ってます」
真央ちゃんはたとえ病院でも一緒に来たかったみたいだけど、紅優の真剣な表情を見て断念したようだった
真央ちゃんと萃香がお喋りしていたので、こっそり紅優が「ちゃんと説明して無くて悪かったな」と言っていた
僕たちを乗せたキャンピングカーは目的地に着いた
キャンピングカーを降りたらさっそく元気な幼女が僕めがけて走って来た
???「お主、シャーロットじゃな!」
当溜「そう言うキミは、ヒミコちゃんだね」
???「そうなのじゃ!けど現実ではヒミコではないのじゃ、野田里麻と言う名じゃ!」
僕に抱きついている幼女は野田里麻と名乗った
里麻ちゃんはゲームとあまり変わらない容姿だったが、髪型はショートボブヘアで髪色と瞳の色は黒だった
服装は地味な着物を着ていてその着物に合った下駄を履いていた
里麻ちゃんは普段着として着物を着ているようで、ここは江戸時代なのかと疑問に思ってしまうほど自然に着こなしていた
当溜「僕は小玉あゆむだよ」
真央「わたしはムー、現実では御紫真緒よ」
僕たちの自己紹介が終わったら、後から男性2人がやって来た
???「ずいぶんと早かったな」
???「自己紹介しないとわかりませんぜ、兄貴!」
???「そうだなゲームではアーサーだが、鮫島航介だ!普段は漁師をしている」
???「海老ケ島鯛蔵兄貴と同じく漁師で、ゲームではノブナガって名前だ」
航介さんの見た目はやはりヤ○ザのようであり、鯛蔵さんほ方もチ○ピラのような見た目だった
どうやらゲームでは現実と同じになる様にキャラメイクをしていたみたいで、その見た目のせいか僕は逆にほっとしていた
当溜『ゲームと同じ顔と同じ髪型なのは現実の姿をゲームで再現してたのか、そりゃそうだよねわざわざ怖そうな顔にするなんて人はなかなかいないよ!』
航介さんの服装は着物と下駄という里麻ちゃんと合わせた格好で、鯛蔵さんはジーパンに薄手のパーカーとちょっと高そうなスポーツシューズを履いていた
鯛蔵さんは大きなクーラーボックスを持っていて、おそらく中身はお魚だろうと思う
紅優「なら俺もゲームでの名前はベニ、現実では大森紅優だ!現在の職業は高校生1年生」
萃香「それあたしもやらないと駄目なの?」
紅優「なら俺が紹介してやろうか?」
萃香「自分でするわよ!あたしはゲームでの名前はスカイ、現実では小玉萃香よ!紅優と同じく高校生1年生よ」
運転手「それなら私めも……」
紅優は運転手の名乗り手で制してを止め、これから出かけなければならない事を伝えた
紅優「着いて早々悪いんだけど俺と萃香とあゆむちゃんの3人は、これから定期検診のため病院に行く事になっているんだ」
航介「せっかくキャンピングカーで来たのにか?」
紅優「あぁ、そこで頼みがあるんだが」
航介「頼みとはなんだ?」
紅優「このキャンピングカーを使っていいから留守番してて欲しいんだ、航介さんと鯛蔵さんそれから里麻ちゃんと真央ちゃんと家のお抱え運転手でな」
紅優は運転手を指差していた
航介「さん付けは止めてくれ、なんかむず痒いからな」
鯛蔵「兄貴、普通は年上にさん付けするものですぜ!」
里麻「航介と鯛蔵にさん付けはいらんのじゃ!」
真央「現実でも「のじゃロリ」なのね」
里麻「のじゃロリ言うななのじゃ!」
航介「まぁ、留守番くらいなら大丈夫だな」
紅優「冷蔵庫にある物は勝手に使って構わないから、頼んだぞ!航介と鯛蔵」
航介「お安い御用だ」
鯛蔵「姉さんには頼まないのか?」
紅優は里麻ちゃんと真央ちゃんにちゃんと頼まないと駄目だなと思い2人にも声をかけた
紅優「そうだな、里麻ちゃんそれと真央ちゃんも頼んだよ」
里麻「任せるのじゃ!」
真央「責任を持って里麻ちゃんの面倒見ますよ」
里麻「なぜ妾の面倒を見るのじゃ?」
真央「だって、何かやらかしそうだからね」
当溜「僕がいなくても喧嘩はしないでね」
2人が言い争いをしていた時、少し離れた所に1台の車が止まった
萃香「来たわ、頼んでおいたタクシーよ」
紅優「じゃあまた後でな」
当溜「行って来ます」
そして僕たち3人は病院に向かった
超特急でのオフ会が開始され現実で会えて喜んだのも束の間、当溜と紅優と萃香の3人は検査の為に病院に行く事になりました
次回はオフ会をやってみました(後編)です
【評価】と【ブックマーク】も付けてくれたら
励みになりますのでよろしくお願いします
素人の作品です
福望華雫でした




