ログイン8 思い出の故郷
貧乏高校生 当溜。格安ボロアパートに住みバイトをして生活費を稼ぐのが彼の毎日だった。明日から学校が夏休みに入る事で浮かれていた時に偶然おもちゃ屋で最新のVRヘッドギアを見つけ購入した。さっそくVRゲームを始めたまでは良かったのだが、本来なら無いはずのVRヘッドギアのホームにログインを果たした。彼は大嘘をつくAIの言う事を真に受け全てにYESと応えてしまった。身体構造スキャンを許し、問題箇所のリペアとしてハルモニア光なる謎の光を実際の身体に照射された。問題は解決したのだとAIに唆されてゲーム世界に送り出されてしまう。しかしこの事が当溜の生活をガラリと変えてしまう重要な出来事だった。ログインしたゲーム内でも問題が発生した。選択出来る性別が女性のみで男性の選択は不可能だった。なんとか女性アバターを男性的な姿に作る事に成功したが、間違えてランダム作成を押してしまい完成したアバターは幼女だった。
♤守ってください幼女な僕を♡
縮めて『守幼』をよろしくお願いします
ログアウト後はもう夜の9時半は過ぎていて、紅優は例の運転手をスマホで呼び出し帰った
萃香はウーサーイーツで晩御飯のデリバリーを頼んでいた
当溜『僕は使った事ないなウーサーイーツは………ほとんどコンビニ弁当だったし、バイトの時は賄を食べてたもんなぁ〜』
萃香「さてと、当溜!お風呂よ」
当溜「うん『ほ、本日もこのイベントやって来るんですかぁ〜!1人で入らせてよ(泣)』
こうしてほぼ強制的に僕は萃香とお風呂となった
約40〜50分ほどだろうか、やっとお風呂タイムが終わり頼んでいたウーサーイーツも届いた
当溜『さっぱりしたけど………萃香さん、コレ毎日ですか?僕のメンタルも尊厳もすり減ってなくなりそうなんですが?』
萃香「ウーサーイーツも届いたし、晩御飯にしようか」
当溜「わ〜い『こころなしか萃香も顔が赤い気がする………』」
ウーサーイーツで頼んだ食べ物は、この近くでは有名な高級うなぎ専門店のうな重だった
当溜『萃香さん、お金大丈夫ですか?後で僕が払っておくとか出来ない金額なのですが?紅優ならカードでポンと払えるかも知れないけど………』
その心配はしなくてもいいのに、つい貧乏人の癖でお金の心配をしてしまう僕
萃香「ん?どうしたの、食べないの……あっ、もしかして嫌いだった?うなぎ」
当溜「そんな事ないよ………ただ、萃香に世話になりっぱなしで良いのかなって考えちゃって………『これじゃ僕カモだよ……あれイモだっけ?』」
萃香「あたしが当溜にしてあげたいってだけなの、だからそこは気にしなくいいよ」
当溜「そうなんだけど夜は高級な物ばかりだから……」
萃香「当溜……『あたしうっかりしてたわ、高級な物ばかりとか自分では思ってなかった!当溜は高級な物ばかりで戸惑っていたのね』」
萃香自身は高級な物とは微塵も思ってなかった事を改めて知った
萃香「ごめんね当溜、次からは気をつけるわね」
見るからにしょんぼりしてしまった萃香を見て、僕は胸が苦しくなった
当溜「いや違うよ僕の方こそごめん、そんなつもりはなくてその……萃香にはいつも笑顔でいて欲しいし」
萃香「笑顔?」
当溜「僕は萃香の笑顔だけ見たいから」
で、そんな事を言ったせいか萃香の顔は見る見る赤くなってしまった
萃香「あ、あたしの笑顔?『え〜?何、それって告白?………いいえ違うわね告白なら好きとか言うはずだし…………それに幼女からの告白ってなんか変よね?』」
微妙なニュアンスに頭を悩ませる萃香
当溜「それよりも冷めちゃうから食べようよ『僕なんか変な事言ったかな?萃香の顔が真っ赤だ』」
当溜は一般常識はかろうじて知っているが男女間の恋愛に関しては知識が乏しく、自分がたった今なにを言ったのかまでは把握出来ていなかった
萃香「そ、そうね食べましょう『当溜ってひょっとして天然なの?さっきの言葉はほぼ口説き文句なのに………天然たらし幼女?』」
僕は晩御飯を食べ終えて部屋に行き、萃香はリビングに残っていた
萃香「………あたしの笑顔かぁ………」
手に持っていたスマホから目を離して天井を見上げる萃香
萃香「そう言えば昔から、あたしは当溜の前では笑顔が多かったかもしれないわね」
萃香は、昔の幼かった日々で自身が常に笑顔であった事を思い出していた
しかし当溜の発言は確実に告白と捉えられる物に近くより一層萃香を悩ませた
萃香「でもやっぱりそれってあたしの事が好きって事よね?笑顔を見ていたいなんて言うんだから………『こんな事紅優にも聞けないし、たぶん知ってても誤魔化すわね』」
なんだかモヤモヤしている萃香だった
萃香「そろそろ11時ね、もう寝ないと」
萃香はリビングの明かりを消して寝る事にした
次の日
今日も朝1番に萃香を起こしに行こうとした僕だったが、萃香は既に起きていた
当溜『僕より先に起きていたのか………萃香お寝坊さんじゃなかったんだな』
萃香「そろそろ起きる頃だと思ったわ、朝ご飯にしましょう」
僕たちはキッチンのすぐ近くのダイニングテーブルで朝食を摂る事にしたが
当溜「え、和食?」
朝から和食の定番のご飯・味噌汁・焼き魚(鯵)・きゅうりの漬け物・海苔のつくだ煮がテーブルに並んでいた
萃香「あたしこう見えて、和食は得意なのよ」
当溜「それは知らなかったよ『僕、トーストのほうが良かったなぁ……でもまた萃香が暗い顔するのは見たくないな』」
萃香「さぁ、どうぞ召し上がれ」
僕は素直に食べ、朝食が終わった頃に紅優からREONのメッセージが萃香のスマホに入った
萃香「コレから紅優が迎えに来てくれるって」
当溜「迎え?どこかに行くの?」
萃香「そこまで書いてると思う?あの紅優よ」
確かに以前も僕にメッセージを送って来る時も、シンプルな文面ばかりでどんな事を言いたいのかわからない時もあった
しばらくすると紅優がやって来て、運転手を待たせていると言ってきた
萃香「外出用の服に着替えるわよ、当溜」
当溜『なんですと〜また、お着替え!結婚式でもないのにお色直しなんて必要ないよ!』
そして萃香にお色直しをさせられた僕
外出用の服はこれまたやっぱり萃香が昔着ていたフリルが沢山付いた黒系のゴシックドレスで赤いリボンが胸元にあるのが特徴的、同じ感じの黒いゴシック系の靴を履かされた
当溜『靴のサイズもぴったりとかある意味凄い偶然だよね?それともゲームみたいにこの靴、履く人に合わせてサイズが変わるとか?』
そして萃香はキャミソールを中に着ていて薄手のカーディガンを羽織り、ミニスカートを履いてオーバーニーソックスと厚底ブーツを履いていた
萃香『どこに向かうにしてもこれなら合いそうね』
当溜『パジャマから普段着、普段着から外出用の服………もういっその事ウエディングドレスを着せてよ結婚するからさぁ!………誰とするつもりなの僕は?』
待ちぼうけの紅優はともかく、運転手さんには遅くなって申し訳ないと僕と萃香は謝った
運転手「その様な事は気になさらずにささ、どうぞ!」
運転手はニコニコ顔で後部座席のドアを開け車の中に入るよう促した
萃香「ありがとうございます」
僕も萃香の真似をするが………
当溜「あんがとごじゃいます『うわっ、めっちゃ噛んだよ僕!』」
紅優「ぷっ、クックッあはははっ!なんだよあんがとごじゃいますって」
当溜「わ、笑うな〜!口が回らないの!『コイツは〜!』」
紅優「口じゃなくて舌だろ、舌!」
萃香「紅優、そのへんにしといたら」
運転手「坊っちゃん、お客様に失礼ですぞ!」
そんなこんなで僕たちは車で出かけた
萃香「で?目的地はどこなの」
紅優「まぁ、楽しい所だな」
当溜「楽しい所?遊園地とか」
萃香「それは楽しそうだけど………あゆむちゃん迷子になりそうね」
そうでしたこの運転手さんには僕は萃香の遠い親戚として紹介していて、しかも偽名の〘あゆむ〙を使わなければならないのだった
紅優「そん時は園内放送で迷子の知らせを聞くか、直接行けばいいさ………けど悪いなあゆむちゃん!遊園地じゃないよ」
当溜『遊園地では無いだと!その他の楽しい所なんて僕は知らないぞ?まぁ遊園地も行った事ないけど………』
しばらく車を走らせているが、まだ着かないようだ
運転手「では坊っちゃん、ここから高速道路に入りますぞ」
萃香『え?高速道路ってどこに行くつもりなの紅優は?』
紅優「休憩も必要だな、途中でサービスエリアに寄って来れ」
運転手「かしこまりました」
車でずいぶん走り途中サービスエリアで休憩したりして辿り着いた場所は、僕たちの故郷だった
のどかな田園風景と地元では大きな山がそびえ立つ、もっとわかりやすく言えば田舎だ
萃香「どうしてここに?」
紅優「懐かしむほど年月は経ってないけど、ここは俺たちの故郷だ!」
当溜「………懐かしい風だな、このぬるい風」
運転手「フム………『やはりこの娘は誰かに似てるようですな………』」
何かを勘づいている運転手だが、はっきりとは答えが出ていなかった
紅優「昔、遊んだ場所にいかないか?あの山にさ」
萃香「え〜この格好で!歩きにくいわよ『厚底ブーツなんて選ぶんじゃなかったわ、失敗したわね』」
当溜「僕、行きたい!」
という事で、運転手さんには車で待っててもらい3人で思い出の場所へ向かった
萃香「ふぅ、こんな山奥だったかな?」
紅優「たぶんあってるぞ、ほらそこに地蔵がある」
当溜「昔、紅優がこのお地蔵様の指折っちゃったんだよね」
紅優「あん時は三日三晩熱が出たからな、きっとバチが当たったんだったな」
萃香「それで3人で、お地蔵様を綺麗に掃除したりしたわね……懐かしいな」
そんな昔話をしていたら、目的の場所に着いた
萃香「ここ山のてっぺんだったのね、ん〜いい景色!スマホで撮っとこうっと」
紅優「確かに眺めは最高だな」
自身が成長したせいか目線が高くなり、周りの風景がよく見えるようになった萃香と紅優だった
萃香「あの頃と変わらないね」
紅優「だな、けど当溜は目線が変わらないだろうな」
萃香は気になった事を紅優に聞いてみた
萃香「当溜がときどき女児化してるからこんな所に連れて来たわけなの?」
紅優「まぁ、それもあるがただの気分転換だな………」
萃香「………ゲームでの無力感ね、あたしも感じていたし確かに気分転換にはなりそうね」
紅優「当溜を元に戻すには、あんな強そうなミノタウロスでも簡単に倒せなければならないしな」
萃香「元に戻す手がかりは何かわかったの?」
紅優「あのゲームには、あるアイテムの噂がある」
萃香「あるアイテム?それは何」
紅優「願いを叶えるアイテムだ」
萃香「願いを叶える?それがあれば当溜は元に戻せるの?」
紅優「わからない、まだ誰も見つけて無いからな………」
紅優の語った事は事実だった、多くのトッププレイヤーはその願いを叶えるアイテムを探しているからだ
噂でしかない幻のアイテムを、皆こぞって探すのは公式のホームページで幻のアイテムの事が書かれていたからだ
その内容は
〘天より舞い降りしモノある時、願いの雫は現れその願いで世界すらも変えるだろう。しかしその存在は既に人々から忘れさられてしまい、古い文献にのみ記されている幻のアイテム。その願いの雫の別名は【忘却のイディア】と言う〙
紅優「……ゲームのタイトルでもある忘却のイディア、これが当溜を元に戻せる可能性があると俺は思う」
萃香「願いの雫か………とにかくゲームを進めてみないとわからないわね」
紅優「あぁ、だからこそ俺たちはLVUPが必要だ!」
萃香「LVを上げるとなると………『当溜が危険になる確率が高くなるわ……』」
紅優「萃香も俺と同じ考えか?」
萃香「しばらく当溜には、ログインさせない方があたしたちのLVを上げやすいけど………」
当の本人は無邪気にちょうちょを追いかけていた
紅優「当溜には納得してもらうしかないな」
萃香「現実で1人で留守番ね………なんか不安ね」
紅優「遊び相手でもいれば違うんだよなぁ」
萃香「それよ!遊び相手を探してあげようよ」
紅優「なるほど、だったら女の子がいいな」
萃香「確かに、男の子だと乱暴な子もいるしね」
紅優「良し決まりだな、帰ったらさっそく探そう当溜の遊び相手をな」
紅優と萃香がそんな話しをしていたら
当溜「あれ?あんな所になにかある………なんだろう」
見た事の無い大きな金属製の物体があり、僕は紅優と萃香にその物体の事を伝えた
紅優「どこだ?」
当溜「ほらあれ」
萃香「何も無いわよ?」
しかし僕が指をさしている方向には何も無いと言う紅優と萃香
当溜「変だな?『なんで2人に見えないんだ?あんなに大きな物体が………』」
僕が見た大きな物体の形状はまるで金属製のまんじゅうのようだった
萃香「見える?」
紅優「ぜんぜんだな、萃香は?」
萃香「見えないわよ」
また幼児化しているのかと紅優と萃香は思っていたが、必死に伝えようとしている当溜を見て2人は首を傾げていたその時………
当溜「うわっ、ヤバい落ちる!」
前のめりになり過ぎたせいかバランスを崩して、目の前の崖から落ちそうになる僕
紅優「あぶねぇ、当溜っ!」
咄嗟に手を伸ばして掴もうとした紅優だったが、VRの時とは違い反応出来ず2人共崖から落ちてしまった
萃香「当溜!紅優!やだ、どうしよう2人共崖から落ちゃった!」
萃香は崖を降りる事もできないので、助けを呼ぶため山を下山して運転手の元に急いで戻った
その頃、崖下に落ちた僕と紅優は……
当溜「紅優!紅優!しっかりしてよ!紅優!」
紅優「へへっ、ドジっちまった……ぐっ……はぁ……はぁ…当溜は無事か?」
よく見ると、紅優は血だらけだった
当溜「僕は平気だよ!うっ……紅優が咄嗟に僕を庇って……くれたから……それより紅優ぅ!嫌だよ!……死なないで!」
紅優の出血は酷かった
当溜「僕が……バランスを…崩したから、紅優が!」
僕の手や服には紅優の血がべったり付いていた
当溜『あぁ〜紅優が、紅優が死んじゃう!僕のせいで………嫌だよ』
崖からの転落でまだ意識があるのは奇跡でしかないが、しかし紅優の状態は絶望的だった
崖上からの高さは約21メートル位でマンションで言えば8階からの転落だ
落下中に飛び出ていた木の枝で背中や脇腹などを切ってしまいさらに岩での衝撃で全身打撲と左足と右腕の骨を折った
致命的な傷は切った脇腹だった、酷い出血でゴツゴツした岩をつたって滴り落ちていた
紅優は意識が朦朧とする中、幼い頃の約束を思い出していた
昔の紅優「俺はすいちゃんが好きだ!そしてあーちゃんとはライバルだ、だけどすいちゃんがどっちかを好きになっても俺たちはずっと友だちだ!コレは男と男の約束だぞ!」
昔の当溜「うん約束だよ、くうちゃん!もし破ったら絶交だからね」
紅優『ヤバいな、コレ走馬灯だろ?俺死ぬな……』
紅優は最後の力を振り絞り、もう自分は助からない事を伝えようと口を開く
紅優「はぁ…はぁ……悪いな当溜……俺はもう助からないかもしれない……最後が…はぁ…こんなカタチで……悪かったな……はぁ…すいちゃんによろしくな…………『当溜の顔に俺の血が………元に戻してやれなくてごめんな!俺はあっちで見守っているからな』」
当溜「ひぐっ……嫌だよ!死んじゃ……だめだよ!うっく、僕のせいで紅優……が死ぬなんて、絶対認……めないよ!僕は認めない!」
その時だった、突然腕輪が眩いくらいの光を出し辺りを照らした
当溜「何?この光………」
【精神の限界突破を確認しました】
【新たな称号:幼き聖女を獲得しました】
【稚い御手により対象のHP及び欠損損傷の回復を行えます】
【実行しますか?】
【YES・ON】
当溜「よぐ……うっ…わがんないげど……YES!紅優を……くうちゃんを治じでよ!」
当溜の指先から薄い緑色の回復エフェクトが出て紅優を包み込み、全ての傷と欠損を跡形もなく治した
紅優「な、何が起こったんだ?あれ、俺なんともないぞ!」
当溜「くうちゃん〜良がっだ!うっ、死んじゃったがと思っだぁ〜!」
紅優「……当溜?痛みも無いなどうなっているんだ?『俺の身体に何が起こったんだ?………な、当溜の顔にあった俺の血が無い!』」
この現象は謎のままだが、ゲームと同じシステム音声が腕輪から聞こえたのは確実だった
紅優『意識が朦朧としてたとはいえ、すいちゃんって言っちまったな………恥ずいな俺……』
ようやく萃香は運転手を連れて崖の下に来たが、無傷の2人を見てほっとする
萃香「紅優!当っ、あゆむちゃん!『良かった〜無事で………けど危なかったわ今、当溜って言いそうになちゃったわ』」
紅優にも当溜にも怪我はなく、流れ出た紅優の血液も何処にもなかったが紅優の服は背中と脇腹辺りが裂けていた
もちろん当溜の顔や手と服にも紅優の血の痕跡はなくなっていた
運転手「坊っちゃん!ご無事でしたか、崖から落ちたと聞いた時には肝が冷えましたぞ!」
紅優「……あぁ、悪かったな心配かけて『血の跡すら無いな、どうなっているんだ?』」
紅優はたった今自分がいた場所をみたが、血の痕も無いただの岩や当溜の顔や手と服をそれぞれじっとみてみたが何もなかった
山を下り麓の茶屋で休憩をする事になった
紅優の破れた服の問題は、運転手のジャケットを借りる事で解決した
萃香「どうしたの紅優、難しい顔して」
紅優「……萃香、後で話しがある」
萃香「わかったわ『なんか様子がおかしいわね紅優……』」
当溜「この団子美味しいよ!」
運転手「左様でございますか、では私めもご相伴に預かりますよ坊っちゃん」
紅優「あぁ、食っていいから……」
萃香『心ここにあらずって感じね、今の紅優は』
紅優『当溜が言っていた物体はなんだ?それにゲームでもないのに回復した俺、効果エフェクトはゲームのソレだったな………わかんねぇ頭ん中ぐちゃぐちゃだ』
紅優は1人頭を悩ませていたが、自身の身体の事や当溜の謎の力これらを解明しなければならないなと思っていた
紅優「悪いなみんな、そろそろ帰ろうか?」
萃香「えぇ?もう帰るの?」
当溜「それだと、日帰り弾丸ツアーみたいだよ?」
紅優が帰ろうと言うのは、気がかりがある事を調べたいためだった
ここではろくに調べられないから、早く自宅に帰って自前のPCを弄りたいと思っていた紅優
萃香「わかったわ、帰りましょう」
真剣な表情で言ってる紅優を見た萃香は帰る事を承諾した
紅優「当溜もいいか?」
当溜「くうちゃんの判断で良いよ」
運転手「『くうちゃん?もしやこの娘は、まさかあの方では?いやしかし何故この様な姿になっておられるのか?』くうちゃんですか、懐かしい呼び方ですな坊っちゃん」
紅優「おい当っ……あゆむちゃん、くうちゃんはやめてくれないかな?」
引きつった表情の紅優が、僕に「くうちゃん」はやめて欲しいとお願いして来た
当溜「あっ………間違ちゃった、紅優だよね?」
紅優「そうだぞ!あゆむちゃん」
萃香「なにそのやり取りは?『何か隠しているわね、後で聞き出すからいいけどね』」
運転手「『なるほど、あくまでもしらを切るつもりですな坊っちゃんは………』
そして僕たちは帰る事になった
萃香『崖の下で何があったの紅優………』
紅優『あの当溜の腕輪、ゲームでは存在してなかったよな?宇宙から宅配された謎の物体………当溜はあの時、大きな物体があると言っていたが何か関係があるのか?』
当溜「『紅優が治ったのはなんでだろう?まぁいいかよくわからないし』帰りも休憩あるの?」
紅優「そうだな、サービスエリアに寄って貰うか?」
萃香「そうね、そうしてくれるとありがたいわ」
運転手「かしこまりました、では次のサービスエリアに寄りますぞ坊っちゃん」
紅優「あぁ、頼む」
休憩をするため、サービスエリアに寄った
紅優「俺は待ってるから先にトイレを済ませていいぞ」
運転手「坊っちゃんこそ行かなくてもよろしいのですかな?」
紅優「交代で後から行くって、だから先に行っていいぞ」
運転手「左様ですか、では私めも行って参ります」
紅優「あぁ、そうしてくれ」
1人なり考え事をしたかった紅優は、順を追ってみた
紅優「当溜が見たという謎の大きな物体、それに当溜の腕輪とゲームのシステム音声の様な声と俺自身に起こった奇跡の様な回復か………自分に起こった事なのに理解不能なんてな笑うしかねぇな」
現代医療が霞んでしまう様な出来事が紅優自身に起こったわけだが、もはや奇跡を通り越して不気味でしかない現象だった
紅優「確か、微かに聞こえた音声はこう言ってたな【精神の限界突破を確認しました】と【新たな称号:幼き聖女を獲得しました】と【稚い御手により対象のHP及び欠損損傷の回復を行えます】だったか?」
紅優はさらに深く考えてみた
紅優「精神の限界突破とは当溜の精神の事か?それと新たな称号、幼き聖女を獲得したと言ってたなあの当溜が聖女ねぇ………今の姿ならありかもな」
そしてもっとも不可解な現象である回復の事も考えてみた
紅優「ゲームの中でしかできない事をなぜ当溜は………いやあの腕輪が可能にしたのか?HP及び欠損損傷の回復とはなんだ時間を巻き戻したのか?いやだとしたら俺と当溜は崖の上に戻されたはずだな」
結局紅優はどのように頭を捻っても答えはでなかった
紅優「一度検査をしてみるしかないか………俺とそれから当溜もな、萃香に相談してからにするか……勝手にやると怒りそうだしな」
紅優は自身の検査と当溜の検査を、後で萃香に相談してみる事にした
ようやく当溜と萃香それに運転手も帰って来た
萃香「ごめんごめん!遅くなっちゃった」
当溜「お土産買いすぎ………」
運転手「こちらのお土産はトランクの中に、お入れしておきますぞ!萃香様」
萃香「ありがとうございます」
紅優「何買ったんだよ、こんなにいっぱい!」
萃香「もちろん、可愛いモノとか可愛いモノとかいろいろよ!」
紅優「そ、そうかいろいろか………『結局可愛いモノしか買ってないのかよ!』」
当溜「紅優?トイレ行かなくて大丈夫?」
紅優「今から行って来るって!」
運転手「では、坊っちゃんが戻り次第出発いたしますぞ」
紅優「なら早くトイレに行って、俺もお土産見てくるか!」
紅優を待つあいだに萃香の買ったお土産の食べ物の包みを開けて、3人で食べてみた
運転手「コレはなかなか美味ですな」
当溜「このもちもち食感、くせになりそう」
萃香「案外このお土産は買って正解ね」
萃香が買ったお土産は水まんじゅうのたぐいで、もちもち食感が大人気となった商品だった
商品名は【モチマル!水まんじゅう】と言う名らしい
ここのサービスエリアで、ほぼ毎日のように完売している売れ筋No.1のお土産だ
萃香は紅優にも残そうと思ったが、12個入りで運転手に3つで当溜にも3つそして萃香自身も3つ既に食べてしまったので残りは3つあるのだが………
萃香「さすがに紅優にも残さないとねぇ?」
運転手「ですが、ここにいない坊っちゃんが悪いのですぞ?」
当溜「だめ!これは紅優の分なの!食べちゃだめ!」
萃香「また買えばいいし、紅優だってもしかしたら買って来るかもしれないでしょ?」
運転手「あゆむ様、坊っちゃんを甘やかしてはいけませんぞ!さぁ食べてしまいましょう」
当溜「紅優だけのけ者はだめ!ちゃんと分けてあげないといけないの!」
萃香「そうね………食べ物の恨みは恐ろしいって言うもんね」
運転手「そ、そうでしたな!さすがは萃香様ですな」
幼い姿と言動と相まって、根負けした萃香と運転手だった
紅優「戻ったぞ………どうした?何かあったのか?」
当溜「紅優〜!やっと帰って来てくれた」
紅優「これは、水まんじゅうか?コレを俺に渡すために必死で守ってたのか?」
当溜「紅優の分なのに、2人が食べようとしてたんだよ!」
紅優「ははっ、別に食べても怒らないって!コレ買ったのは萃香だろ?」
萃香「そうだけど?」
紅優「なら、買った人に権利がある!食いたきゃ食っていいぞ!」
萃香「さすがに無理ね………罪悪感ができたからね」
運転手「ですな………食に目が眩むなどと、私めもまだ未熟ですな」
紅優「そんな年いってんのに未熟とか言うなよ!………しかしコレの解決方法は俺が食えばいいんだな?」
運転手「是非とも、そうしてください坊っちゃん!ひとおもいにガブッとですぞ!」
萃香「あたしからもお願い!」
当溜「食べるのは紅優だよ、それとも僕が食べさせてあげようか?」
紅優「な、何言ってんだ当っあゆむちゃん!自分で食えるからいいって!」
上目遣いで見て来る当溜は、紅優にとっては小悪魔のように見えてしまっていた
しかし紅優は別の事も思う、当溜がだんだんと幼児化が進んている事を自分の目で見てそう感じていた
紅優『当溜はちょっと前までなら、食べさせてあげるなんて言わなかったはずだ!たぶん幼児化が進行しているんだな!」
当溜「紅優〜どうしたの?」
紅優「いや、何でもない『それとコレだ!こんなに俺にべったり張り付くなんておかしいとしかいえないぞ!』」
事あるごとに紅優に抱きつく姿はもう幼女そのものだ
萃香「紅優モテモテね………」
運転手「坊っちゃんにも春が来ましたな〜」
紅優「モテモテってたった1人に使う言葉だっけ?それに春って歳の差開き過ぎてるだろ!『こいつ等言いたい放題言いやがって!こっちの身にもなれって!』」
運転手「さて、坊っちゃんも帰って来ましたし自宅まで送りますぞ萃香様『坊っちゃんにとっては、コレも試練ですな』」
萃香「よろしくお願いしま〜す『いいな〜あんなにべったりされて………あたしにはしないのになんで紅優にだけ?………あっ、もしかして当溜は紅優を好きになったの?』」
当溜「ねぇ、紅優食べなと腐っちゃうよ?『僕どうしたんだろう?紅優が気になっているみたいだ………僕、まるで女の子みたいだ』」
紅優「食うって!食うから食べさせようとしなくていい!つーか、すぐには腐らないからな?『おいおいおい!当溜どうしたんだ?それじゃまるで恋する女の子だぞ?』」
幼女となって偽装ごっこまでしていた当溜だったが、偽装でもごっこでも無くなり自身の変化に多少の戸惑いはみせるもののソレを受け入れはじめていた
そして一行は萃香の自宅にようやく着いた
紅優の気分転換が予想外の事を引き起こし、新たな称号を何故か現実での取得した当溜
それと当溜は女児化が進んでしまい、高校生だった彼の存在が揺らいでしまっています
次回は友だち探しです
【評価】と【ブックマーク】も付けてくれたら
励みになりますのでよろしくお願いします
素人の作品です
福望華雫でした




