波乱の初夜 ④
いい感じに媚薬が効いてきたハリエットは、同じくいい感じに媚薬が効いてきたルキウスの腕を引っ張り、ベッドへと押し倒した。
ベッドにボフンと身体を沈めたルキウスは狼狽え、上擦った声で抗議の声をあげる。
「なっ、なななななな!?なっ、何をするんだっ……!」
「何をするって……初夜といえばやるコトはひとつですわ」
「キ、キ、キミはそれでいいのかっ?こんなムードもない状況で初夜を迎えていいと言うのかっ?初夜は神聖なものなんだぞっ……それに、女性の方は体への負担も大きいのだぞっ……」
「誰かさんのせいで最初からムードもへったくれもございませんでしたもの。ならばこれは互いの責務として、作業として頑張りましょう。私はとうに腹を括りましたわっ……」
「さ、作業っ?僕には無理だっ、そんな風には思えないっ……!」
そう言って上掛けの中に逃げ込むルキウス。
ハリエットはそれを見て盛大なため息をついて見せた。
「はぁぁ~……不敬を承知の上で、貴方が今後に希望を見い出せるように敢えて申し上げますわ。……後継とスペアを産んだ女王が愛人を持つことは歴史上よくあるそうです。だから女王陛下となられた王女殿下もいずれそうなさるかもしれませんよ?その時、あなたもこの家に後継を齎すという責務を果たした後であるならば、それに名乗りを挙げればよろしいではありませんか……。だからその時のために、今はせいぜいお気張りなさいませ!」
「あ、愛人っ?そんなっ……キミは些か不躾すぎないかっ?デリカシーの欠片もないのかっ?」
「おほほほ、デリカシー?そんなものに気を取られていては女当主なんてやってられませんわよ。さぁ!いい加減覚悟をお決めになって!」
そう言ってハリエットは上掛けの端を両手でむんずと掴んだ。
その様子に乙女ルキウスは青ざめたり赤らめたりと忙しなく顔色を変える。
「ま、待って、待ってくれっ……ホントに心の準備がっ……」
そんなルキウスの懇願など問答無用でハリエットは上掛けを引っペ返した。
まるでちゃぶ台返しのように。
「えーい!ててーい!」
「きゃーっまたかっ!※□△☆~!?」
寝室にルキウスの悲鳴が響き渡った……。