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波乱の初夜 ②

これから初夜が行われようとする寝室にて、夫婦として交わす第一声で「キミを愛せないかもしれない」宣言をされたハリエット。


巷の恋愛小説でよくある、

「キミを愛することはない」というセリフより中途半端な「かもしれない」宣言に、ハリエットは思わず唸るような低い声を発した。


「……は?」


その声にびくりと肩を振るわせたルキウスは、慌てた様子で自身の考えを口にする。


「こ、このような……しょ、初夜に言うべきことではないとわかっているんだ……!だけど僕の嘘偽りない今の胸の内を知って貰うために敢えて言うよっ……。すまないハリエット……と呼んでも?もう婚姻したのだからハリエット嬢と呼ぶのはおかしいだろう?……あぁ、ありがとう、では遠慮なく。ハリエット、僕の心はまだ千々に乱れたままなんだっ。そんな僕が夫として、妻であるキミを愛せるかどうかわからない、そう思ったんだっ……」


「はぁ~?」


ペラペラとよく回る口で合間に呼び方についての了承を求められ、その次に告げられた言葉にハリエットは思わず不遜丸出しの声を発してしまった。


とはいえ、実はこのような事になるのではないかとハリエットは予め考えていたのだ。

初顔合わせから極端に短い婚約期間を経て畳み掛けるように今日の婚儀と相成った。

(おそらくドリガー侯爵家の意向だろう)

オーラウン領内で問題が起き、その対応に追われたハリエットがルキウスとの時間が取れなかったせいでもあるが、その間一度も婚約者同士として交流ができておらず、不安を抱えたままの婚姻となってしまった。

だからもし、依然としてルキウスの心積もりが出来ていないのであれば、このような発言も有るかもしれないとハリエットは予測していたのだった。

外れて欲しい予測ではあったが。


小さく嘆息するハリエットを見て、ルキウスは尚も言葉を重ねる。


「ミラフィーナ様の……いや、王女殿下のために育てられ、生きてきた。僕の…僕ら王配候補だった者の生活の全てがこれまで殿下中心に回っていた。学びも殿下のため、剣術や体術の習得も殿下のため、健やかな心身も全て……殿下のためにと言われ生きてきたんだ。それをいきなり取り上げられ、新しい環境に放りこまれた。殿下という生きる指針を失って、僕はこれからどう生きたらいいのかわからないんだ……」


弱々しげに吐露したルキウスの言葉を聞き、ハリエットは対照的なハッキリとした口調で告げた。


「悩む必要はありませんわ。あなたはこれからはオーラウン伯爵家の者として、私の夫として生きればいいのです。人生を共にするのが王女殿下から私に変わった、ただそれだけのことですわ。だって、政略結婚とはそういうものでしょう?」


「それはそうなんだが……いや、僕は物心付く前から王配候補として生きてきたから、殿下とは政略的な感覚は存在しなかったよ。だからこそ僕はなかなか受け入れられない、そんなに上手く切り替えができない性分なんだ」


「そのようですわね……面倒くさい」


「え?」


「あらやだおほほ。失礼しました。でも困りましたわね……初夜にそのようなことを態々おっしゃるということは、当然閨も無理というわけですわよね?そうなればこれは白い結婚となります?……それはさすがに夫婦として生きていくのは不可能ですわね。私は後継を産み育てなければなりませんし、伴侶として支え合い人生を共にする夫が必要なのです。貴方にそれが無理だとおっしゃるなら離縁しなければなりませんわ。だけど最低でも婚姻を結んで半年間は離縁は認められておりませんし……一体どうすれば……」


頬に手を当て困った困ったと、半ば長い独り言のようにつぶやくハリエットの言葉を聞き、ルキウスが慌て出す。


「ま、待ってくれ、白い結婚にするなど誰も言っていないし離縁も考えてはいない。ただ少し時間が欲しいと言ったんだ。

王配候補から外れ家に戻されて直ぐに……三ヶ月後には婚姻だなんて、いくらなんでも気持ちが追いつかない。だからそんな不安定な状態でキミと契りを交わすのはキミに対し失礼だと思った故の発言なんだっ……」


「失礼だなんて思いませんわ。私は昔から現実的な人間で他のご令嬢方とは少し価値観が違いますし、何より私の方がルキウス様より年上なのですから寛容であるべきだと意識しておりますの。もちろん私とて体を乱暴に扱われるのは嫌ですから、そこは常識の範囲内で解していただいた上でさっさと突っ込んで、三度ほど腰を振って子種を吐き出してくだされぱいいのです。愛がなくてもきっとできますわ」


「キ、キ、キミはっ……お、乙女であるのになんてハレンチな言い方をするんだっ?しかも三度っ……三擦り半だなんてっ……/////」


キャーと言わんばかりに両手で顔を押さえて恥ずかしがるルキウスを見てハリエットは思った。

「乙女はお前だろ」と。

存外、内なるハリエットは口が悪いのである。

そして性的な行為は未経験なのに耳年増。

これも家を継ぐ前は文官として勤め、様々な人間と接してきた所以(ゆえん)である。


しかしさてこの状況、些か困ったものである。


ハリエットはゆっくりと椅子に座り、ティーテーブルを挟んで対峙する乙女……じゃない夫を見据えた。






•*¨*•.¸¸☆*・゜•*¨*•.¸¸☆*・゜•*¨*•.¸¸☆




次の更新は明日の夜でGZL……(ˊ̆ῗ ̀̆ ච ウホッ

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