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重なる喜び

前国王崩御からしばらくして、ハリエットの懐妊が明らかとなった。


ハリエット本人よりも彼女の体の異変に気付いたのは他ならぬルキウスで、妊娠の自覚症状のあまり出ない(個人差あり)段階で、ルキウスは邸に医師を呼んだ。


感知(診察)魔法を展開させた(のち)に、初老の医師は笑顔を浮かべてハリエットとルキウスに頷いて見せる。


「ご懐妊で間違いないですな。まだほんの僅かな感知ですが、赤子の心音を確認しました。おめでとうございます」


それを聞き呆然とするハリエットに対して、ルキウスは喜びを露わにして彼女の手を取る。


「おめでとうハリエット!そしてありがとう……!僕たちの子かぁ……男の子かな?女の子かな?どちらでもいいね、元気に生まれてきてくれるならっ……!」


とハリエットに告げた後に、

「予定日は?」「身重の体で気を付けることは?」「出産のために準備しておくことは?」

と矢継ぎ早に医師を質問攻めにしていた。

そのひとつひとつに答える医師に、ルキウスだけでなく下令のドライやメイド長と料理長、そしてなぜか庭師まで熱心にメモを取りながら聞き入っていた。


そしてその三ヶ月後、ハリエットが安定期に入った後に、女王ミラフィーナの懐妊が公表された。

ミラフィーナも既に安定期に突入しているとの事で、奇しくも妊娠が同時期であったと判明した。


きっとルキウスはこの慶事に複雑な気持ちとなっているだろうとハリエットは思う。

愛する女性が他の男の子を身篭ったのだ、それは仕方ないだろう。

表面上は偶然にも重なった二つの喜びに笑みを浮かべていたが、自身の子を宿したのがハリエットではなくミラフィーナであったのならもっと嬉しかったのだろうと彼女は思った。


そうして瞬く間に月日は流れ、ハリエットは嫡男を出産した。……だけでなく、続けて長女も産み落とした。

つまりは、双子を出産したのだ。


後継とスペア、最低でも子どもを二人儲けるのが貴族家や大きな商家のセオリーであるのだが、ハリエットとルキウス夫妻はなんと一度の妊娠と出産でそれを成し得たのだった。


そして……


ハリエットの出産から遅れること一週間。

王国の主要都市に号外が配布される。


【速報!女王陛下無事にご出産!なんと!二人の王子殿下ご誕生!】


これが運命というものなのだろう。

なんと、ミラフィーナも双子を出産したのであった。

しかも二人とも男児、王位継承権一位と二位の王子である。


互いを想いながらも結ばれることがなったルキウスとミラフィーナが、次代のために課せられた自身の責務を同時に果たしたのだ。


これを運命と言わずして、他の何がそう呼ぶに相応しいだろう……。

ハリエットは産後の床の中で我が子たちの健やかな寝顔を見ながらそう思った。


ハリエットはルキウスと相談し、

嫡男にエリック、長女にマリエッタと名付けた。



そしてオーラウン伯爵家と王家の双子がそれぞれ生後半年を迎えた頃。


ミラフィーナの夫である王配ロシュフォードが秘密裏に、ハリエットに面談を申し出てきたのであった。





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