愛される母~今と過去~
アサヒが式を挙げたのかカナタに問いかける。
カナタは式は挙げなかったが写真はあると言うと──
「ねえ、母さん」
「何、アサヒ?」
「母さん達って結婚式したの?」
カナタはアサヒがそんなこと言い出すなんて不思議だなと思いつつ事実を言った。
「式はしてないけど、写真はあるわよ」
「本当⁈ ……写真はあるんですか?」
「あるわよ、見る?」
「はい!」
カナタはアルバム置き場の部屋に行き、ウェディングドレスを着たときの写真を見せる。
「わぁ、母さん綺麗」
「有り難う、もう十年以上前の写真だから私もおばちゃんだけどね」
「母さんはいつまで経っても綺麗です!」
「そ、そう?」
怒るように言うアサヒにカナタは戸惑った。
「兄さん、何見てるの?」
「母さんのウェディングドレス姿の写真、一杯あるよ」
「何それみたい!」
「他の子達も見たいだろう、呼んできますよ」
「見せて見せてーキャー! 綺麗!」
「そ、そうかしら」
「うん、お母さんはいくつになっても綺麗よ。だから写真も綺麗!」
アサヒが呼んできた他の子ども達もやって来て、カナタのウェディングドレス姿の写真とカナタを褒めた。
カナタにはそれが何となくむずがゆかった。
「ウェディングドレスの写真見せて欲しいって言われて、むずがゆかった」
子ども達が寝静まった後、カナタは夫達と会話をする。
「綺麗だっただろう」
「そ、みんな綺麗綺麗。恥ずかしいよ」
「事実なんだから」
「そうそう、事実事実」
「子ども達の綺麗とか可愛いとか言われるのは恥ずかしいの!」
カナタは同意している夫達に文句を言う。
「では俺達が言う分には問題ないな」
「いや、そういう訳でもなくて」
「ないな?」
「……ハイ」
ディオンの言葉に、カナタは萎縮して答える。
「ディオンあんまカナタをいじめんなって」
「いじめている訳では無い、カナタは自分の魅力に気づかなすぎる点を指摘しているだけだ」
「あー分かるわー」
「結婚して20年は経過してるけど、分かるわー」
「な、何が?」
「だってカナタちゃん、未だあの馬鹿二人からセクハラ受けてるでしょう?」
「ああ、うん。アレね」
「その度に俺等が二人をボコボコにしてるけど、止めないのは二人がまだカナタちゃんに執着するくらい魅力があるから」
「嬉しくねー」
「うん、嬉しくないね!」
カナタは心底思った。
あの二人には未だ好かれているが嬉しくない。
だが子ども達が被害に遭うのだけは避けたい。
それがあった。
「お母さん、ゴウって人とケイって人に会った」
「げ」
二人の話をした翌日、長女のツムギが本部へ行ってきたらしく二人と遭遇したらしい、話を聞く限り。
「凄い変態臭酷かったからお父さん呼んでボコってもらった」
「それが良い、正常な判断よ」
カナタは、即座に父を呼んだらしいツムギを褒める。
「……お母さん、あんなのに結婚迫られたりセクハラされたの?」
「……まぁね」
「金玉潰して使い物にしとけば良かった」
「ばっちぃから止めなさい!」
「はーい」
ツムギが居なくなると、ふぅと息を吐いた。
「全くツムギも少し血の気が多いな」
「レン」
「あの二人は当分再起不能にさせてもらった」
「ごめんねー」
「いや、いいんだ。途中からアルビオンとディオンも加わってボコったからな」
「レインさんに何か言われなかった?」
レンは「そうだな」と少し思い出して、
「『二人の分働いてね、後こいつらの給料から天引きしとくから』とな」
「レインさんも悩ませてるのかあの馬鹿……」
カナタは盛大にため息をついた。
「レインさん、あの馬鹿二人は?」
翌日ドミニオンを訪れ、レインにカナタは尋ねた。
「拘束されてる、ちなみに世話する看護師は男の人オンリー」
「それなら安全だ」
「本当、あの馬鹿二人は仕事中でも馬鹿するから……!」
「ご心中お察しします」
「有り難う」
「これ差し入れというか……」
「エンプティのケーキ? わぁ、有り難う!」
「何を差し入れすれば良いか分からず……こうなりました」
箱を受け取ったレインはケーキを頬張り始めた。
「いいのよ、美味しい食べ物を食べる事が食を必要としないランクの高い覚醒者の楽しみなんだから」
「え⁈」
「あ、そうか言わなかったもんね、レイドの食事も不要だけどラーメン好きだから食べてるのよ彼奴」
「……でも、私何となくお腹が空きますし……」
「其処がカナタちゃんが他と違う理由なのよねー、でも食べる必要が無いって言うのは本当よ」
「お腹が何となく空くのに?」
「それは貴方の精神がそう訴えているのよ」
「私の精神」
「そう、覚醒者ではなく、人間としての精神が」
「人間としての、精神」
「まぁ、難しいこと考えず食を楽しめばいいのよ」
「はい」
レインが自分を気にして色々言ってくれているのは分かっていた。
だからカナタもそれに甘えることにした。
「何だ、気づかなかったのか?」
「何も言ってくれないんですよ⁈ 気づく方がおかしいです!」
「それもそうか」
レイドと会う約束をし、気に入りのラーメン店で食事をするカナタとレイド、それとサリ。
「カナタちゃん、レイドさんとこんなに仲良かったの~?」
サリが少しばかり嫉妬して聞いてくる。
「仲良しというか何というか……」
「私が一方的に気に入ってるだけだ、クロもな」
「えー! あのクロさんも⁈」
「やっぱり有名なのね二人とも……再確認したわ」
「有名なんてものじゃないよ」
サリがぼそぼそと言い始める。
「人間を生きたまま凍らせるレイドに、強力な呪いで死を望ませるクロ、どっちもヤバいんだよ」
「マジかー」
カナタはそんな連中の相手をさせてきたレインを少し呪った。
「あそこまできっぱりと自分の本心を述べる娘は珍しかったからな」
「カナタちゃん何いったの、どんな状況」
「いや、養豚場で、肥育されてる豚を守るために外に出てた人いた状況で、碌でなし達が居たから『あんたが怒ると養豚場だけじゃなくて周囲にも迷惑かかるの! 私はこいつらボコってムショ送りにする特務課待ってるの!! だから大事しないでくださいマジで!!』みたいな事を叫んだ記憶が……」
「割と鮮明だね」
「うん」
「そう、それも踏まえて周囲にも迷惑がかかると言い切った、外に出ている話を聞かなかった奴など無視すればよいのに」
「できるわけ無いでしょう、豚さん守ろうとして出てた人なんだから」
「それもそうか」
そして全員がラーメンを食べきる。
「代金は私が払おう」
「わーいやったー!」
「何言ってるのサリ、呼び出したこっちが払うのが常識でしょう」
「いや、気にするなお前との会話は楽しい」
レイドは笑う。
「カナタちゃんはあげないからね!」
「分かっている」
レイドは代金を払って店を出ると居なくなった。
「もう」
カナタはふぅとため息をついた。
「じゃあ、カナタちゃん、帰ろっか」
「そうだね」
「ええ」
カナタはそう言うとサリと共に姿を消した──
子ども達、遅いながらも両親の結婚時に興味をもちつつあるようです。
それが写真を見たいというのに現れてます。
そしてゴウとケイはやらかしてツムギ達に締められました。
レイドはやはり物騒。
ここまで読んでくださり有り難うございました。
次回も読んでくださると嬉しいです。




