一人に対して八人~知らぬは君だけ~
カナタが友人達の恋路を応援すると聞いて驚くサリ。
しかし、本人は恋をしたことがないので反応がいまいちで──
「え?! カナタちゃん割と人の恋路を手助けする人なの?」
本部でサリが驚いたようにカナタに問いかけた。
「本人同士が真面目に考えて、それで不幸にならないなら手助けはしますよ。ただそうじゃない場合は話を一回聞いて、で二人に冷静になって考えて貰いますね。恋は盲目、愛はそうじゃないですから」
その話を聞いていた他のメンバー達も驚いた表情を浮かべている。
唯一無表情なのは、ディオンとアルビオンくらいだった。
「でもさ、カナタちゃん恋したことないんだよね」
「まぁ、はい。恋とかよく分からないんで」
「分からないのに、説得できるのすごいよ」
レオンの言葉にカナタは苦笑する。
「恋はいわゆる熱病。浮かされてる状態、愛は心を受け取り合う物──と亡き父に言われたのでなんとなくですが、恋しあっている者同士が良い状態か悪く傾く状態かは分かります」
「しあっている?」
「ええ、一方通行の好きはよく分からないんですよ、おかげで。両方が思い合ってるのを主張したり、それとなく行動してるのは分かるんですが……」
「なるほど、つまり君は他人からの好意には鈍感という訳だね!」
「おい、キリヒト!」
レオンがたしなめるように言うと、カナタは苦笑した。
「レオン、事実だから仕方ないの」
「……もし、君を好きと誰かが言ったら君はどう反応する?」
「知らない人なら断る、知ってる人なら考える」
「そうかぁ」
キリヒトの言葉に、カナタは首をかしげた。
──どうしてそんなこと聞くの?──
「……知ってる人で悩まずに拒否するのは?」
「友人達と、アサギリの野郎」
「アサギリは分かるよ、君にセクハラしたから嫌なんだよね」
「ええ、奴は嫌だ」
「じゃあ友人達は? どうして?」
キリヒトの言葉にカナタは困ったように笑った。
「だって、私を置いて逝ってしまうじゃないですか、確実に。何も無ければ」
「そうだね、覚醒者じゃない者と覚醒者の寿命の差は明らかだ、特にS級以上になると」
「覚醒者同士の結婚で何か色々あったりしたことあるんですか?」
「あるわよー」
そこへレインが割って入ってきた。
「何があったんですか?」
「Sランクの女性陣五人と、Bランクの男性一人が結婚した例があるのよー実は」
「え」
「覚醒者はそういうのを許されているからね。と言っても、女性陣に押し倒されて男性が結婚した訳なんだけどねこれ」
「じょ、女性の方々、す、すごいですね」
「そう、でもまぁ男性は寿命がそこまで長くなかったのでもう亡くなってるんだけどね」
「え」
レインのその言葉にカナタは耳を疑った。
「じょ、女性達はどうしてるんですか?」
「ずーっと、彼を思って五人で暮らしてるわ。お子さん達は自立してるし」
「……」
カナタの表情は少しだけ明るくなったが、まだ暗いままだった。
カナタは家に帰ると、一人部屋に閉じこもった。
「……」
ベッドに体育座りをし、そしてうつむく。
「……ひとりぼっちは、やだな……」
そう呟いて、涙をこぼした。
「なんで、カナタにあんな話をした」
「レイン、言わなければ俺達も相応の態度を取るぞ」
「ちょ、ちょっと待ってよ! 八人がかりで一人を責めるとか酷くない?!?!」
「酷くないよ」
「そうだよ、カナタちゃん傷ついてたじゃん!!」
「だったらアンタ等さっさと告白しなさいよ!!」
「まだできない」
「なんで?!」
レインは理解できないと言わんばかりにディオン達に食ってかかる。
「カナタが結婚できるのは来年だ、あと一年。卒業後でないと告白はできない」
「……あの、もしかして、お付き合いすっ飛ばしてカナタちゃんと結婚考えてるの?」
「そうだが?」
レインは信じられないものを見るような顔つきになった。
「いやいやいや!! あり得ないでしょう!!」
「だが、彼女の退路を断つのはこれが一番だ」
「退路って……」
「八人と付き合うとなると彼女は逆にそれで良いのかと悩んで、結果一人の道を選んでしまう。だから結婚で退路を断つ、彼女を独りぼっちにさせないためだ」
ディオンの言葉に、レインはぽかんと口を開けてから悩む仕草をする。
「……まぁ、アンタ達がそう言うならいいけど、というかよく八人でってなったわね」
「最初はもめにもめたぞ」
レンが疲れたように息を吐いた。
「でしょうね」
レインはレンの言葉に、納得するように頷いた。
「出会った順番やら、プライベートでのやりとりやら、あらゆるもので2:3:3で対立して喧嘩になったからな」
「……よく、命のやりとりにならなかったと褒めたいわ」
「それは同意する、この面子でよく命のやりとりにならなかったと俺も思う」
「特にディオンとアルビオンはねぇ……」
レインが二人を見ると、二人は視線をそらした。
「ま、いいわ。そのときになったら分かることだし」
「ああ」
「そうだな」
「ところで」
「ん?」
キリヒトが笑ってない笑顔でレインを見る。
「最近入ってきた新入り、女の子引き連れててうっとうしいから締めていい?」
「あー……ケイのことか。彼女性トラブルもあるから一度絞めとくべきね……」
レインは納得したように頷いた。
翌日、カナタはドミニオン本部に来て、マリ達のいる遊戯室へと向かっていると、女性を引き連れた男がいた。
カナタは生理的に受け付けず、壁の端に寄った。
すると男が近づいてきて、カナタの手を握った。
カナタは全身が総毛立った。
「……何ですか?」
「美しい! 君のような美しい女性は初めて見た!!」
「は?」
「是非私とお付き合いを──」
「お断りします」
「何故?!」
「何か貴方からは嫌な気配がするので、お断りします」
カナタはそう言ってピューっと遊戯室へと走り去っていった。
「ちょっと、どういうこと?!」
「私達よりあんな子どもがいいの?!」
「おお、済まない美しい女性方……」
「はぁい、女性トラブル起こしまくってるケイくーん?」
「れ、レイン所長!」
「君さぁ……」
「地雷踏んだよ」
レインがそう言った直後、ディオンとアルビオン、レオンにジュラスにキリヒトが男──ケイの事をボコボコにたたきのめした。
「な、何故……?」
「カナタちゃんを口説いたからよー。君みたいなトラブルメイカーが」
「そんな?!」
「へっくしゅ!」
「おい、どうしたカナタ、噂されてんのか?」
マリがカナタがゲームで詰まっているところを代わりにやりながら尋ねると、カナタは静かに頷く。
「はい、そんな気がします」
「誰が噂してんだろうなっと……よしクリアできたぞ、次は楽だからやってみろ」
「ありがとうございます!」
カナタは嬉しそうに携帯ゲーム機を受け取ると、ゲームの続きをやり始めた。
「菓子もあるから食べるといい」
「俺とレンちゃんの手作りだよー」
「ありがとうございます」
カナタは嬉しそうに笑ってお礼を言った。
遊戯室の三人は、不埒者をボコるのは他の五人に任せつつ、カナタの精神の安定化を行えた事に安堵した。
独りになる不安はもっている模様。
そして、カナタへ不埒な事をした者は締められる。
カナタを不安にさせたものは怒られる、しっかりできてますね。
ここまで読んでくださり有り難うございました。
次回も読んでくださると嬉しいです。




