知らない事、知らせない事
マリをボコろうとした七人に説教をするカナタ。
マリも俺を殺す気かと文句を言う。
そんな中、カナタはジュラス、レオン、キリヒト以外の五人の家族関係について知り──
「……本当、勘弁してくださいね!?」
騒動を落ち着けると、カナタはマリ以外の全員に説教をしていた。
「すまない」
「つい悪乗りをした」
「ご、ごめん」
「すまない……」
「ごめんねー」
「ごめんよ、マリちゃんが慌てるのが見たくて」
「すまない、マリが調子乗りすぎてるのを見てな」
反省している面子と、反省していない面子がはっきりと分かれていて、カナタははぁとため息をついた。
「いくら俺でもお前ら全員とやり合ったら下手すりゃ死ぬからな?!」
「反省してない方々、反省してください、もう」
カナタは息を吐き出した。
「……そういえば、リヴン組は家族が……なのは知ってるんだけども、他の方々は家族は」
「アルビオンが身内だ」
「そうなる」
「どちらが兄?」
「……わからん」
「私もだ」
アルビオンとディオンの言葉に、そういうのもあるのかと納得してから、サリ達を見る。
「俺んところは少し前まで爺と婆がいたけど死んだわ」
「え」
「俺とレンちゃんは生まれてすぐ覚醒者だって分かって親が育てられないからって施設で育ったよ」
「え」
サリ達の言葉に耳を疑う。
「施設とマリちゃん家が近くてね、マリちゃんも同じ学校に覚醒者として通ってたから俺ら幼なじみなんだー」
「……生まれた時から、覚醒者……?」
カナタは必死に学校の授業の内容を思い出そうとした。
覚醒者に関して。
基本は後天的な者が多いが稀に先天的な者もいる。
その場合、親が育てられないと施設に預けられる場合が多い。
と言う事を思い出した。
「あ、あのマリさんはお祖父さんとお祖母さんと暮らしてたって……」
「ああ、俺の両親は俺を施設に入れると言ってな、爺と婆がそれにキレて俺を引き取って産んだ奴らとは縁切ったんだ」
「キレてって……」
「『覚醒者というだけでお前達は子どもを捨てるのか!』ってな婆が教えてくれたぜ。偏屈な爺だったが、俺の事を大事にしてくれたし、サリとレンの事も大事にしてくれてたよ。高齢で両方とも亡くなっちまったが」
「それから俺ら三人で暮らしてるのさー、何せマリちゃんの料理下手は致命的すぎるからね!」
「うるせぇ、欠陥のない存在なんてつまんねぇのは全員知ってるだろう!」
「まぁ、もっともだが、お前の料理は酷すぎる。あれは化学兵器よりもヤバいぞ」
「な、何をどうすればそんな物が……」
「俺が知りてぇ!!」
覚醒者の話が、マリの料理の才能ゼロ案件で吹き飛んだが、カナタは首を振った。
「えっと、その話を戻しますけど、三人は産んだ人達とは──」
「俺とレンちゃんは会ったことないけど、マリちゃんは会ったらしいよ、葬式で」
「ああ、遺産をよこせってな。まぁ爺の奴縁切りを法律上しっかりしてた上、弁護士に俺と婆以外の連中には渡さないようにするように書いてたからな。まぁ、レンとサリには分けてやってくれって書かれてたから分けたが」
「マリちゃんのお祖父ちゃんいい人だったよねー!」
「婆様もな、婆は爺亡くなって、息子夫婦だった連中の様を見てショック受けてそれが原因で心労で亡くなったがな。未だに許さねぇ」
「……あの、マリさんの……生みの親とは一体どんな……?」
「金の亡者になってた馬鹿だよ、あと俺がドミニオンで働いてるのも知ったら、産んだんだから金をよこせとわめいてきてな、見るに堪えなかった」
「……」
「その点、レンとサリはいいよな。両親が一度も顔をださないんだから」
「まぁ、そうかもな」
「醜いのは俺も勘弁だからねー」
三人の言葉に、自分がどれだけ恵まれているかカナタは理解した。
母親には金を渡すものの、カナタの母親は最初は受け取ろうとしなかった。
漸く受け取ったと思ったら、ほとんどをカナタに還元しているのを知って驚いた。
祖母も、未だに自分にお小遣いをくれている。
お小遣いを自分が渡せばその倍返そうとしてくるので、カナタは祖母への小遣いは母経由で渡すようになった。
兄に関してはよく分からない。
けれども、小遣いを渡すと、カナタの好物を作ってくれたりするのだ。
家族は自分が覚醒者だからという扱いはしない、今まで通りだった。
少し違うのは「無事に帰ってきて」と言うことくらい。
だから、カナタは傷跡をつけないように気をつけている。
無事帰れるようにいつも努力をしている。
「……覚醒者の多くの人って、普通の人と家族のままでいられないのかな……」
カナタは思わずぽつりと呟いた。
「あー……」
マリが言葉を濁した。
「それは事実だけども、普通の人と家族のまま、家族になる人もいるのよ」
レインがやってきてそうカナタに言う。
「本当、ですか?」
「本当よ」
レインは静かに言う。
「確かに覚醒者になって戻れないタイプの人は多くの場合家族関係が破綻するわ。でも、そうじゃない場合もある。それに破綻した場合でも新しい家族や仲間を作っていけるように支援するのもドミニオンの仕事だから、新しい家族を手に入れる人も多いのよ」
「でも……」
「そうね、覚醒者になって他と違う事で忌避されるのは今も続いている、これをどうにかするには意識改革が必要ね両方の」
「両方?」
カナタは首をかしげた。
「覚醒者になると精神構造が変わる人が多いのよ、良くも悪くも。例えば自己犠牲が強い人がさらに強くなったり、逆に真っ新な善人だった人が極悪人に──なんて精神に影響がでるのよ」
カナタはその言葉に心当たりがあった。
今は無いが、最初の頃殺意衝動がカナタの中にあった。
今はそれは無く、気楽にとは言いがたいが、なんとかやれている。
──人を殺すのは怖い、守る為に戦うんだ──
そう考えるようになって、カナタは若干変わったのかもしれない。
別視点では全く変わってないのかもしれない。
ただ、変わらない事はある。
『本当は戦うのは怖い』
『自分独りになるのが怖い』
誰にも言わないカナタの秘密。
家族にも友達にも言わない。
ただ「独りになるのが怖い」に関しては彼女は無意識に言っていた。
二人の美丈夫の前でうなされる様に。
カナタは、独りになるのが怖いんです。
覚醒者だから、友達は先に亡くなる、家族も。
それを知ってるのはアルビオンとディオンだけです。
カナタは知られてる事はしらないです。
ここまで読んでくださり有り難うございました。
次回も読んでくださると嬉しいです。




