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気楽な彼らと昔話

学生生活を満喫しているカナタを呼ぶ友人。

友人はドミニオンで知り合った彼らと遊ぶ方が楽しいのではと指摘する。

それに楽しいと返すカナタは──




「カナタ……」

「んー?」

 久しぶりとも言わんばかりの学生生活を満喫しているカナタをアイカは不満げに呼ぶ。

「どうしたのさ?」

「……最近、カナタ楽しそうじゃん……」

「はぁ? 楽しそう?」

 理解できない発言に、カナタは思わず聞き返した。

「楽しそう! だって、ゲームわかんないけど、教えてくれる人ができたとか、休みの日食べ歩きとか遊びに行ける人が増えたとか言ってるじゃん!」

「あー……」

 アイカの言葉に確かに納得する。


 クリエイフォンで配信しているゲームに関しては、マリが攻略情報を即座に教えてくれたり、詰まったら本部に集まってクリアしてくれる。

 休みの日などの食べ歩きに関しては、こちらの食文化に興味を持ったリヴンの三名、ジュラス、レオン、キリヒトが何か同伴を求めてくるので一緒に食べている。

 ディオンとアルビオンは仕事でもそれとなく気遣ってくれるし、たまにゲームセンターに遊びに行くとき、危ないだろうとついて行ってくれることがある。

 プリントボックスで写真を撮ってくれることは他の仲間達とは違いないし、食べ歩きには付き合ってくれるが本人達は何も食べないが、大体の事に付き合ってくれる。

 楽しいと言えば、楽しいのだ。


「まぁ、ぶっちゃけマヤはともかくアイカと遊んでいるよりは楽しい」

「どうして?!」

「だってアンタカロリーがどうとかで食べ物見栄えで買って写真だけ撮ったら捨てようとしたり、ゲームはさっぱりだし、出先で男女にからんでトラブル起こすじゃないか」

 カナタの言葉にアイカはショックを受けたようだった。

「マヤは見栄えで食べ物は選ばないし、ゲームは分からなくても側で見守ってくれるし、トラブル起こさないし、今一緒に出掛けたりしてり人達もそういう感じだからアンタよりは気が楽」

「カナタ」

 まるで見かねたような表情のマヤがカナタに声をかけた。

「ん? どうしたのマヤ」

「アイカが灰になりそうだから、そろそろやめておいて」

「ん? うん、分かった」

 カナタはマヤの言葉に頷き、従う。


『ちょっとカナタちゃんー? お仕事なんだけどいーい?』


「あ、悪い仕事入った」

「行ってらっしゃい、怪我とかには気をつけてね」

「マヤ、ありがとう。じゃあ行ってきます」

 カナタはそう言って学校から姿を消した。





「アイカー、分かった? これがアンタと、おそらくカナタを狙っているであろう職場の方々との差だ」

「私悪くないよ!!」

「どの口が言うの」

 アイカの言葉にマヤは呆れたように彼女の頭を(はた)いた。

「私との比較も出したでしょう、私は見栄えじゃなくて美味しく食べられる物を選んでいる、ちゃんと食べきれるのをね。食べ物を粗末にするのはあの子にとって悪くとられる」

「う゛~~!!」

「う゛~~!! じゃない! それにゲームだって分からないけど側から離れないでちゃんと見ている、ゲームセンターにいる男にちょっかい出してトラブル起こすアンタと違うの」

「だってだって!!」

「だから、誘わなくなったんでしょうが。トラブル起こしたりする友人よりも、トラブル起こさない趣味を理解してくれる人を」

「やだー!! カナタ盗られるのヤダー!!」

 アイカは子どものようにだだをこねた。

「やだ、じゃない。私はカナタの幸せを願っているから、そっちの方を応援しているよ。あったことないけど」

「いじわる~~!!」

「いじわるじゃない」

 アイカの様子に呆れながらマヤはアイカは言う。


「悪いけど、不幸な恋愛は応援したくないのよ、そういうのは創作物だけでお腹いっぱい」


 マヤはそう言って教室から出て行った。

「まって、まってよぉ!」

 アイカも慌ててマヤの後を追う。


 ほどなくして、学校にチャイムが鳴り響いた──





「どっせい!」

 カナタは主犯格をハンマーで気絶させる。

「ふぅ、これで今日の任務はおしまいかな……あ、学校もう終わってるどうすんべ」

 カナタはクリエイフォンで時間を確認すると、困ったように首をかしげた。

「終わったか?」

「おわっ!? 何だアルビオンさん……あれ、それって」

 カナタはアルビオンの手に持っている自分の鞄を指さす。

「ああ、学校に取りに行かせてもらった。君の友人──マヤと言ったか? 彼女に事情を説明すると荷物をまとめて渡してくれたよ」

「マヤありがとう。これで学校行かずに帰れる」

 カナタはここにはいないはずの友人に、感謝の言葉を言う。

「それなんだが……」

「どうしたんですか?」

「マリがガチャで大爆死をしている、本部にいるか」

「あの人ガチャ回す度大爆死してません?」

「そうだな」

「ゲームのガチャ運だけないんじゃないんですかね? 普通のガチャだったら引きがいいですから」

「……そうもな」

 アルビオンはそう言うと、カナタに手を差し出した。

 カナタは何のためらいもなくその手を取った。

「本部へ行こう」

「はい」

 二人はその場から姿を消した。



「だー!! なんで俺が引くとこねぇんだ!! 十万ぶっこんだんだぞ!!」

 マリの叫び声を聞いて、カナタは苦笑いを浮かべた。

「大爆死じゃないですか……そういえば今日ジュエリナクエストのガチャ更新ありましたからね」

 カナタは呆れたようにため息をついてマリがいるであろう、休憩室へと向かった。


「マリさん、なんでそうぶち込んで大爆死する前に私呼んでくれないんですか?」

「お?! カナタちょうどいいところに来た!!」

「カナタ頼む、これ以上マリが課金する前に止めてくれ」

「カナタちゃんお願いだよ~~! マリちゃん大爆死するの見てらんない!」

「はいはい、分かりましたよ……まぁ、期待はしないでください」

 カナタはそう言ってマリのクリエイフォンを回した。

「金……から虹演出だ。よし引けましたよ、三人分」

「あと二人分引いてくれ!!」

 マリはすがるようにカナタに言った。

「もう……あまり期待しないでくださいね」

 マリはもう一度十連ガチャを引いた。

「……三人来ましたね、一人余りましたけど……」

「無問題だ! 交換券が手に入る!!」

「はあ……」

 クリエイフォンを受け取り、狂喜乱舞しているマリを、少し引いてカナタは眺めていた。


「そういえば、カナタちゃんは給料何に使っているの?」

 サリが急に問いかけてきた。

「好きなグッズと課金にちょっと、ほとんどは家に入れてます」

「家族がいるの?」

「ええ、父が亡くなって年金暮らしだったんですが、私がお金を入れるようになって楽になったんです」

「あ──そのごめん」

「いえ、別に……まぁ、父が亡くなったのは未だに不満がありますが」

「悲しいじゃなくて、不満?」

 レンが問いかけてきたので、カナタは少し表情を暗くして話した。

「効果のない治療とか未だに効果があるとか言ってる人達いるじゃないですか、被害が出たら逮捕されるじゃないですか、アレです。父はそういう医療を信じちゃってそっちにすがった結果亡くなったので……その医療を言った人は逮捕されましたけど……死んじゃった父は戻らないですからね……」

「──だから、不満、なのか?」

 レンの問いかけにカナタは首を振った。

「あの頭のいい父が信じてしまったんです、わらにもすがる思いだったのでしょう、治りにくい病気だったので……名前は忘れてしまいましたが、癌を引き起こす病気でした」

「……癌で?」

「いえ、その治療で体力が無くなり、漸く気づいた父が元の治療に戻ったのですが……体力がもうない状態で手術をした結果、亡くなりました」

「……そうか、だから不満か」

「どういうこと、レンちゃん?」

 レンの言葉にサリが首をかしげた。

「わかんねーのか? 逮捕とかじゃなくて、嬢ちゃんが不満なのは最初から元の治療ですぐ手術してれば生きてたかもしれないのに、やらずに偽治療にすがっちまって死んだ事に不満を抱いてんだよ。後、不満じゃなくてそういうのに無知だった自分に怒りも抱いてる」

 マリの言葉に、カナタは静かに頷いた。

 目元には涙が浮かんでいた。

「ああ、駄目だ。二年も経つのに、この話すると駄目だ」

 カナタはこぼれ落ちる涙を拭った

 ソファーに寝っ転がっていたマリが起き上がり、ハンカチを差し出した。

「身内が死ぬのを思い出すのは、仲が良い程辛いもんだ、二年も、じゃなくて二年しかだ。使いな」

「ありがとうございます……」

 カナタは涙を拭った。


「おい、誰だカナタを泣かせたのは」

 仕事を終えてきたディオンが入ってくるなり、じろりと周囲を見渡した。

「え?!」

「おい、ちょっと待て誰だ!!」

「泣かせた奴実験台ねー!!」


「そうなるとマリだな」

「マリちゃんだね」

「マリだな」


「追い待てお前ら!!」


 騒ぎになり出し、カナタは声を上げる。

「違うんです! 亡くなった父の事を思い出して泣いてしまっただけですー!!」

 と、騒動を終わらせるのにカナタは苦労する羽目になった。







問題のある友達は問題があるままですね。

もう一人マヤの方はドミニオンでのやりとりを応援しています。

そちらの方がカナタが幸せになれる、と。


ここまで読んでくださり有り難うございました。

次回も読んでくださると嬉しいです。

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