裏切りカラスは首落とされる
カナタは二時間近く防御を続けていた。
しかし、それに隙が生まれ攻撃を食らって意識を失う。
意識を失ったカナタは起き上がり、鎧を纏い「カラス」に向かっていく──
カナタは息を切らしながらも必死に男の攻撃を防いでいた。
もう二時間以上男と対峙している状況に彼女も気づいている。
──守らなきゃ、守らなきゃ──
その感情だけがカナタの体を支えていた。
汗を流し、疲労していく体を必死に動かしていた。
男は対照的に、汗一つかいておらず、たのしげに笑っていた。
──あ、やばい──
カナタがそう思った直後、カナタの額を男の手が直撃した。
激痛の中、意識が暗転するのをカナタは感じた。
鈍い音とともに、血がそこからあふれ出した。
倒れるカナタを男は見据える。
「……期待外れだった──」
カラスが最後まで言う前にカナタはゆらりと立ち上がった。
「守らなきゃ……」
そう呟くと、彼女の体を緋色の液体が包む。
それは鎧となり、カナタの姿を覆い隠した。
目の部分が青く光ると、カナタは緋色の剣を手に取り、カラスの目の前から姿を消した。
カラスはすぐさま背後へと攻撃を仕掛ける。
剣をなんとかはじくが手にじんわりと血がにじんだ。
「いや、期待通り……違う、予定外すぎるこれは!!」
カラスは、先ほどまでの見下すような笑いから焦りの表情へと変えた。
カナタは徐々に素早さをあげ、攻撃の頻度も上げ、そして威力も上げて攻撃を繰り返していた。
カラスの体に傷が増える。
カラスは鎧を破壊しようと、再度頭部を狙った。
頭部が砕け散るがすぐさま修復された。
その時のカナタの目に、光はなかった。
「もったいないが、仕方あるまい!!」
カラスはそう言って、カナタが避ければ仲間の誰かに当たるであろう、カナタの腹部へと狙いを済ました。
「う……」
ジュラスは意識を取り戻した。
「あ……」
レオンも同じ時に意識を取り戻した。
「カナタ……?」
レオンがつぶやき、ジュラスは顔を上げた。
そして硬直した。
レオンもそちらを向いて硬直した。
カラスに、腹を素手で貫かれ、鎧が粉々に砕け散っていくカナタの背中が見えた。
カラスが手を抜くとカナタはその場に倒れ込んだ。
「「貴様ぁ!!」」
レオンとジュラスはシールドを破り、カラスへと一気に飛びかかった。
カラスも予想外の事態だったらしく行動が遅れた。
レオンの炎と、ジュラスの雷の刃がカラスの首をはね、体を燃やした。
カラスは目の前の出来事が信じられなかった。
Sランクだった二人が一気にEXランクに能力が飛躍し、その上自分をこんな様にしたことが信じられなかったのだ。
──だが、二人は倒れている、なんとか体の炎を消せば──
「カラス、貴様にはほとほと愛想がつきた」
静かな男の声に、カラスは血の気が引いた。
「な、何故、貴方様が……!!」
黒い布で全身を覆った巨躯の存在がそこにいた。
顔すら見えない。
「お前を見逃していたのは、お前が改心することを祈ってだ、このような事をするのであったら、見逃して等いなかった」
その存在の言葉にカラスは短い悲鳴を上げた。
「イブリス」
「はい」
その存在の言葉にレイン──イブリスが姿を現した。
「燃やせ」
「かしこまりました」
イブリスは無表情のまま、手に短剣を取りカラスの頭を貫き、そして燃やした。
絶叫すら叫べぬ苦痛の中で、カラスは燃え続けた。
そしてその燃え続ける頭部は消えた。
「いつも通り永久監獄へ」
「それでよい」
「黒き御方──貴方様は──」
「私が今出るのはここまでだ、後は息子達に任せよう」
その存在はそう言って姿を消した。
イブリスはどこか悲しげな表情でその場を後にした。
「お、レイヴンの頭がやられたそうだぜ」
鏡の様な四角い板を無数に持った男がそう呟いた。
「本当マリちゃん?!」
「ちゃん付けはやめろ!」
カナタを持った男に、先ほどの男が嫌そうに言う。
「本当か、マリ」
何一つ武器を持たぬ男がそう尋ねる。
屍の山を築き上げた青年三人が話し合う。
そこが血のにおいのする凄惨な現場であることなど、全く気にもとめないように。
「ああ、功労者がちょっとヤバいらしいな」
「え?! 本当?!」
「カラスの攻撃もろに食らったそうだ、鎮痛剤効かないとか」
「あれ? それってつまり……」
「功労者は訳ありのSランクの覚醒者と言うことだ」
「あわわ~~!! ど、どうしよう?!」
「とりあえず戻るぞ、できることがあるかもしれない」
青年達はそう言って、その場から姿を消した。
「負傷者の緊急搬送はまだ終わらないのですか?!」
「一般人優先だから、覚醒者まで手が回らないのです!!」
「ああもう、せっかく準備して待ってたのにこのざまじゃ私アホすぎるわ!!」
レインは指示をだしながら、医療室で治療の手伝いをしていた。
「よお、レイン」
「マリにサリ、レン! よく来てくれた!! 手伝って!!」
「いいぜ、その分給料上乗せな」
「マリ、アンタのガチャが当分爆死することを祈るわ!!」
「やめろ!!」
戻ってきた覚醒者達は、負傷者は手当、負傷してない者は手伝いに追われる羽目になっていた──
カナタ絶賛ピンチ状態で終わりました。
傷は大丈夫なのでしょうか。
そして裏切りカラスの意味、あの御方の意思を裏切っていたからという意味です。
あの御方についてはまだ不明のままで。
そして新規キャラ、どう関わっていくのか。
ここまで読んでくださり有り難うございました。
次回も読んでくださると嬉しいです。




