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3-1:国会動乱 嵐の前

「ですから、この法案はもっと審議に時間をかけるべきだとーー」

「これらの、グラフを見ていただくとわかる通り」

「少子高齢化に歯止めをかけるのはもはや日本の急務です! 年々税収が落ちているのは、ひとえに労働力の欠如が原因で」


 喧々諤々。喧々囂々。

 

 まさにそう評するのがふさわしい場所である。

 これが日本の中枢を担う、立法機関の元締め――国会議事堂。

 今日も今日とてここでは多くの議員が、日本のための政策にかかわる法案を通すため、血のにじむような努力と喉をを壊しかねないほどの議論に明け暮れていた。


「以上が私が提示いたします『一次芸術生成AIによる生成物の販売・利益獲得禁止法案』となります」

「質疑応答の時間といたします。意見のある方」


 そんな中、東條保文が提示した新法の扱いはというと――


「まず……お尋ねしたいのですが」


 南場 相一郎(なんば そういちろう)の開口一番の質問によって、こき下ろされることとなった。



   ■   ■   ■



「あそこまで言う必要はなかろう!?」

「何言ってんっすか。ここ国会ですよ西住先生」


 昼間のあまりに手ひどいといわざる負えない、総バッシングの嵐に激怒の感情を素直に吐露しているのはいつものごとく西住だ。

 

 対し、この程度は予見していたらしい黎明はいたって冷静といった態度でお茶を入れている。


 現在、鳴り物入りで国政入りした東條保文の改革は激しい逆風にさらされたと言える。

 

 まぁ当然と言えば当然だ。今まで地方政治で四苦八苦していた男が国会で通じる法案をいきなり作れるわけもない。

 だが何より厄介なのは――


「一番の障害は南場先生ですね」

「なぜあそこまで先生を目の敵にするのだ南場先生は!」


 時期総理大臣候補筆頭、南場 相一郎による徹底的な反対である。


 現代最大勢力であり与党である『日本民生党』党首である彼に敵に回られてしまっては、通る法案も通りはしない。


 一応国会前にあいさつ回りをして、根回しを行おうともしたのだが……にべもなく追い帰されてしまったのが現状だ。


「南場先生にも南場先生のお考えがあるのだろう。彼は長く、この日本政治の中心にいた重鎮だ」

「じゃぁ諦めますか、先生?」


 東條の呟くような独白に、にやけ面の黎明の声がぶつかる。


「まさか。私はこの政策が日本をより良くすると信じている。間違っているとおっしゃられるならとことんまで議論を重ねて理解してもらうつもりだ」

「そりゃ結構。んじゃまずは窓口作るところからですね」


 黎明のその言葉に、西住は瞳に炎をともし老秘書は口元に笑みを浮かべる。


「では、西住君は民生党の党員の先生方に話をしてくれないか。まずは足元から攻めていく。御柱君は引き続き南場先生へのアポを取ってくれ。秋島君は他野党への政策根回しを頼む」


「「「承知いたしました」」」


 その言葉と共に、おのおのの上着を持ち事務所から飛び出した三名。

 特に西住は燃え上がっており、


「うぉおおおおお! この程度の苦難に負けるものかぁああああ!」


 と気炎を上げて、事務所から走り去ってしまった。


 そんな西住の背中に苦笑を浮かべながら、


「だが、このままで済むとは思えない」

「まぁだろうな。あちらさんはこっちを叩き潰すつもりなんだから」


 秋島と黎明は不穏な会話を交わしながら歩きだす。


「どこからくると思う?」

「俺たちと一緒さ。まずは足元から。政治闘争の鉄則だろ」


 もっともあちらさんのは正攻法じゃないだろうが……。



   ■   ■   ■



 数日後……黎明たちが南場へのアポ取りで四苦八苦していたころだった。


「おはようございます」

「おや、御柱君。おはよう。今日は早いね」

「今日南場先生の秘書の方に話がついたんでこの後銀座で会う予定なんっすよ」

 そう言いながら、老秘書からコーヒーをもらった黎明がテレビを付けた時だった。


『えぇ、本日未明。民生改革党の吉田新議員が脱税の容疑によって逮捕されました。吉田新議員は「納税に関しては秘書にすべて任せており、脱税の事実は認知していなかった」と容疑を否認しております』


「おっ……とぉ?」

「なっ」


 驚く黎明と――民生改革党党首となった東條すら寝耳に水だといわんばかりの態度で愕然とする。


「思ったより早かったな……」


 だが、東條は最後に黎明が漏らした言葉を聞き逃し、黎明が獰猛な笑みを浮かべていることなどついぞ気づくことはなかった。


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