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第五話 試験

「はっ!寝過ぎた!」



 目を覚ますとすっかり朝になっていた。



 旅の疲労がだいぶ溜まっていたようだ。



「こんなに寝たの前世で30連勤した時以来だな……」



 俺はボソボソと独り言を唱えながら、食堂へ向かう。



「ニアもケントもまだ寝てるのか……」



 2人の姿もないため起こしに向かう事にした。



「おーいニアー、入るぞーっておぉい!!」



 ニアの部屋の扉を開けると、全裸でベットに転がっているニアがいた。



「む、ラルフおはよう〜」



「服を着ろ!服を!」



 俺は寝ぼけ眼を擦って起き上がるニアに服を投げつけた。



「ん〜、寝る時は全裸派。」



 ニアが全裸派だという事をすっかり失念していた。



 まさか、外泊でも全裸になるとは……



「どーしたラルフ!何かあったのか!?」



 俺の声でケントが起きたのか、こちらへ走って向かってくる。



 あらぬ誤解をかけられては困る。



「すまない……ケント……」



 俺は転移魔法を使って、即座に自分の部屋へ転移した。



 数秒後、全裸のニアの部屋へ突撃したケントの悲鳴が聞こえた。





「あ〜いてぇ〜」



 顔を腫らしたケントが、文句を言いながら朝食を食べている。



「のぞきは犯罪。」



 そう言うと、ニアはぷんぷんと顔を赤くしながらパンを頬張った。



 どうやらビンタ一発ですんだようだ。



「まず俺はもっと大人な女性が好みであってだな〜?」



「ナニ?」



「ごめんなさい」

  


 ふんっとニアは鼻を鳴らしてスープを飲む。



 ケントは少し不服そうにしながらも、申し訳なさそうに肉を頬張っていた。



「まぁニア、俺のせいでもあるんだ。許してあげてくれないか?」



 ニアの全裸に驚いたとはいえ、でかい声を出した俺を心配してケントは駆けつけて来てくれた訳だからな。



 いきなり女子の部屋に突っ込むケントもケントだが……



「ん、わかった。」



「ありがとうニア」



「なんか悔しいが……ほんとごめんなニア」



 改めて頭を下げるケントに、よろしいと言わんばかりの顔で腕を組んで許すニア。



 とりあえず、これでこの件は大丈夫だろう。



「よし2人とも!準備ができたら学園に向かうぞ!」



「りょーかい!」



「ん、わかった。」



 準備を整えて、試験会場にいざ出陣だ!





「ここが学園か!」




『王立学園グレートベル』



 なんでも、世界一の大きさを誇る鐘が学園の時計塔に吊るされていて、過去の大戦で勇者達を鼓舞したのだとか。



 そんな歴史もあるんだなと感心していると、ちょうど鐘の音が鳴り響く。



「これがグレートベルの鐘の音か……」



「たしかになんだか元気出て来たかも!」



 周りで受験生達が騒いでいる。



 確かに、俺も少し鼓舞された気持ちになった。



 この入学試験、絶対に合格してやる。



「よっしゃぁー!受付はどーこだっとぉ〜」



「あそこ、受付。」



 相変わらずニアは何かを見つけるのが早い。



 俺たちは試験の受付へと進んだ。



「すいません、入学試験を受けに来ました」



「平民の方ですかね?申し訳ありませんが、平民の方の受付はあちらになります」

 


 受付の女が指差す方を見ると、ボロッボロの受付テントがあった。



「平民如きが高潔な学園の試験受けるなんて……なんと恥知らずな……」



「家畜の臭いが服についてしまうじゃない……」



 コソコソと試験を受ける貴族共の陰口が聞こえる。



「チッいこーぜラルフ、ニア」



 差別がある事は分かっていたが、いざ差別を受けると前世のいじめを思い出してしまうな……



「ラルフ、気にしない。」



 ニアが俺の心の傷を悟ったように励ましの言葉をかける。



 確かに気にしてもしょうがない。



 それに今の俺には仲間がいる。



 前世とは違うんだ。



「ありがとうニア」



「ん、いこ。」



 俺たちはボロッボロの受付へと進んだ。



「すいません、平民の受付はこちらと聞いたのですが……」



「これはこれは、平民の受験生とは珍しい」



 受付のテントには初老の男性が座っていた。



「はい、ソルバ村から3人で来ました。よろしくお願いします」



「うんうん、学園は平等な場所です。精一杯頑張りなさい。」



 初老の男性はそう言うと、俺たちに番号札を渡した。



「ありがとうございます!頑張ります!」



 初老の男性にお礼を言って、俺たちは試験会場へと向かった。





「第一試験の会場はこちらで〜す!受験希望の方は順番に並んでくださ〜い!」



 1次試験は魔法の試験のようだ。



 その内容は10メートルほど先に立っている的に向かって好きな魔法を放ち、その威力を測るものらしい。



 そして受験番号によって列が分かれており、俺たち3人はそれぞれ違う的の列に並んだ。



「では次!2152番!」



「はい!炎よ、我が敵を射貫け!ファイアアロー!」



 受験者から放たれた、下級火魔法『炎の矢〈ファイアアロー〉』が的へ命中すると、的の横にスコアが表示された。



「2152番!71点!」



「くそぉ〜まぁまぁの出来か〜」



 なるほど、あのレベルでまぁまぁの点数である71点が出るとなるとかなり手加減しなければならないな……



 と思っていると、隣の列から黄色い声援が聞こえた。



「きゃー!ナイジェル様ー!」



「ナイジェル様ー!応援しておりますわー!」



 ナイジェル?有名人か何かなのか?



「ハハハ、これは期待に応えなきゃいけないね」



 ナイジェルと呼ばれている男は詠唱を始める。



「水よ、我が敵を撃ち抜く弾となれ!アクアバレット!」



 ナイジェルが中級水魔法『水の弾丸〈アクアバレット〉』を的にクリーンヒットさせた。



「1052番!91点!」



「ふぅ……いい感じじゃない?」



「ナイジェル様すげぇー!」



「今年はナイジェル様が首席に間違いないわー!」



 ナイジェルの取り巻きが盛り上がっていると、更に横の列から大きな歓声が上がる。



「うぉぉぉ!!98点が出たぞ!!」



「どこの貴族だ!?なに!?平民だと!?」



 どうやらニアが上級土魔法『岩雪崩〈ロックブラスト〉』を放ったようだ。



 やはりニアの魔力は半端じゃない。



 歓声を浴びて、ニアがドヤ顔で鼻を高くしている様子が見えた。



 ナイジェルの取り巻きは悔しそうに唇を噛み締めている。 



 誰か分からんがナイジェルめ、少しいい気味だ。



「次!2974番!」



「おっ、やっと俺の番か」



 さて、何を使おうかな。



 こんなところで覇王級なんて使えないしな、とりあえず俺も上級魔法でいいかと思った。



 さっきまでは。



 やっぱりそれじゃあ面白くないよな。



「次元斬〈ディメンションスラッシュ〉」



 俺がそう唱えると、不可視の刃によって的が切り刻まれる。



 その場に居合わせた、試験官を含む全員が呆然としていた。



 それもそのはず、『次元斬〈ディメンションスラッシュ〉』は無属性魔法だからな。



 学園の入学試験で使う奴なんているはずがない。



 少し調子に乗ってしまった、反省だな。



「2947番……測定不能……です……」



 試験官が動揺しながら結果を伝えてくれた。



「ありがとうございます」



 そう言い残して俺は、次の試験会場へと向かった。



「おもしろそうな子、いるじゃないか……」



 ラルフを見てナイジェルはそう呟いた。


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