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第三十八話 帝都

「よぉ〜しやっと到着だ!」



「ここが帝都ですか〜!王都とはまた違った雰囲気ですけど、やっぱり都会ですね〜!」



 オークキングの討伐をしてから数日、俺たち三人はイヴァリス帝国領内に入った。



 そして、ようやく帝都イヴァリスに到着したところだ。



「それじゃあ早速だけど、冒険者ギルドへ行こうか。場所は僕が知ってるから案内するよ」



「おっよろしく頼む」



 さすがAランク冒険者。



 他国での活動にも慣れているようだ。



--帝都内冒険者ギルド



「やぁ、依頼の達成報告にきたんだけど」



「達成報告ですね、どちらのご依頼でしょうか?」



 受付嬢は、無表情でナイジェルへ問い返す。



「Aランクのオークキング討伐依頼だよ」



 ナイジェルがそう言った瞬間だった。



「「「ダッハッハッハッハ!」」」



 ギルドにいる冒険者達が、威嚇するように大きな笑い声をあげる。



「お前らみたいなお子ちゃま集団が、Aランク依頼の達成報告だとぉ〜?」



「寝言は寝て言えってんだ!ねっ兄貴!」



 特にこのモヒカンの大小二人組は、俺たちにしつこく絡んできた。



 この二人のムキムキの身体に裸革ジャンという風貌は、他の冒険者とは明らかに違う空気を漂わせている。



「本当だよ?ねぇラルフ君、ルーナちゃん」



「あぁ、あれは確かにオークキングだった」



「はい、あんな思いはもうこりごりです……」



 俺たちは、絡んできた二人に対して反論する。



「嘘言うんじゃねえよ坊ちゃん達!俺達ァAランク冒険者だからよォ〜強えやつは一目で分かんだわ!ズバリお前らは雑魚中の雑魚!特にそこのお嬢ちゃんは雑魚ですらねぇ!ミジンコ以下だァッ!」



「うぅ……そこまで言わなくてもいいじゃないですかぁ……」



 モヒカン大男が罵倒したせいで、ルーナは涙目になっている。



「どうせお前らが討伐したのは、オークキングじゃなくてポークキングだろ〜!ねっ兄貴!」



「ハッハッー!ちがぃねぇ!」



 モヒカン二人組は、それでも嬉しそうに俺たちのことを罵倒する。



 周りの冒険者達もそれを止めるでもなく、ただニヤニヤと静観している。



 やれやれ……最低な奴らに絡まれたものだ。



「お取り込み中すいません、ご依頼達成の証明はお持ちでしょうか?討伐したオークキングの身体の一部などがあれば分かりやすいのですが」



 見兼ねた受付嬢が、淡々と手続きを再開する。



「それだったら……これでどうですか?」



 俺は討伐の証明に、切り取っておいたオークキングの耳を取り出す。



「ありがとうございます。すぐに鑑定いたしますので少しお待ちください」



 受付嬢はサッとオークキングの耳を受け取って、スタスタと奥の部屋へ入って行った。



 なんだか王国の冒険者ギルドと違って、雰囲気が全体的に排他的な感じがする。



 受付嬢も冒険者も人の温かさが無いのだろうか。



 するとナイジェルが、難しい顔をしながら口を開く。



「二人とも一応忠告しておくけど、帝国の冒険者ギルドはかなり身内贔屓なんだ。気を引き締めておいてくれ」



 なるほど、これから起こり得る展開が読めてきた。



 そして俺がナイジェルの話をきいていると、横からモヒカン大男がまた絡みにくる。



「坊ちゃんよォ、カッコつけたいのは分かるが、あんまり嘘つくもんじゃねえぞォ?オークキングって言ったら俺達A級冒険者でも、かなり対策しないと厄介な魔物なんだぜェ?」



「そうだぞ!なんてったって兄貴はつい最近、その依頼に失敗してんだからな!」



「おい!余計な事言うんじゃねえ!」



 モヒカン大男は、モヒカン小男の頭に拳骨を喰らわせる。



「いで!何すんだよ兄貴ィ〜!」



 モヒカン小男は、涙目で頭を抑えている。



 身内だったら面白いやり取りなんだろうが、あいにく最悪な第一印象の男達だ。



 こいつらのふざけたやり取りを見ていたら、段々腹が立ってきた。

 


 散々俺たちを馬鹿にしたというのに、まだ馬鹿にし足りないってか?



 気づいたら俺は、モヒカン二人組のやり取りに割り込んでいた。



「おい……Aランク冒険者様の御高説ありがたいんだが、お前らみたいな奴の話を聞いてる暇はないんだ。遊び相手なら他を探してくれないか?」



 先ほどまで静かだった俺が、急に怒りをあらわにしたからか一瞬空気が凍りつく。



 ナイジェルはあちゃーーと額に手を当て、ルーナはあわわわわと口に手を当てている。



 そしてこの空気を最初に破ったのは、モヒカン大男だった。



「なにィ……?下手に出てりゃいい気になりやがってェ!表ェ出ろガキィ!」



「だから、遊び相手なら他を探せって言ってるだろ?まったく……知能だったらオークキングの方がまだマシだな」



 自分でも、何故ここまでキレているのか分からない。



 だが、仲間を馬鹿にされた事が原因なのは間違いなかった。



「おいガキィ、決闘だ。このAランク冒険者ブライン様が、お前のそのなめた態度を直々に指導してやるよォ!本当にオークキングを倒したってんなら〜、この決闘を断る理由なんてないよなァ?」



 ブラインは今にも頭の血管がブチギレそうなくらい、顔を赤くして俺を挑発する。



「いいだろう……ただし、俺が勝ったらルーナを罵倒したことを土下座して謝罪しろ」



「いいぜェ〜?なら俺様が勝ったら、お嬢ちゃんを頂くぜェ〜!俺好みに調教してやるからよォ〜せいぜい楽しみにしててくれやァ!」



 どこまでも最低な奴だな。



 俺が嫌悪を表していると、隣でルーナが見た事もない表情を浮かべながら口を開いた。



「いいですよ……あなたには私もムカついていたところです。本当なら、わたしが成敗してやりたいですが……ラルフさん、絶対勝ってくださいね!?」



 いつもモジモジしているルーナが怒りを表わにしている。



 絶対にブラインをぶっ飛ばすぞ。



「わかった。ルーナ、俺に任せろ!」



 この決闘、絶対に負けられない。



「やれやれ……だから忠告したのになぁ、でも……やっちゃえラルフ君」



 一見呆れているナイジェルだったが、内心ブラインがぶっ飛ばされるのを楽しみにしているようだった。



 


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